Essay

安倍政権の一年の凄い成果

藤 誠志

日露関係の強化など具体的な進展が目立つ外交

 第二次安倍政権誕生からそろそろ一年が経過しようとしている。
 
それまでの民主党政権とは一変し、内政・外交に亘って大きな成果を上げてきたことは、誰もが認めるところではないだろうか。特に大きなことは、アベノミクスの好スタートだろう。長年日本経済を苦しめてきたデフレ経済から脱却するために、安倍政権は発足直後から「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の三本の矢を矢継ぎ早に放った。特に安倍首相の意向を受けた黒田東彦氏が三月に日銀総裁に就任、二%のインフレ目標を掲げて、異次元の金融緩和を行ったことや、国土強靭化政策に基づき必要な公共投資を推進したことによって株価は上昇、為替も円安へと向かい、実質GDP伸び率が今年前半は約四%と、主要七カ国で最大となった。九月に安倍首相がアメリカ・ニューヨークの証券取引所での演説で、「Buy my アベノミクス」というジョークを飛ばしたのは、自らの政策とその実績への自信の表れだ。
 安倍首相は外交にも積極的だ。一月にベトナム、タイ、インドネシアを訪問したのを皮切りに、二月にはアメリカ、三月にはモンゴル、四月にはロシアと中東諸国、五月にはミャンマー、六月には北アイルランドで行われたサミットに出席し、更にポーランドなど東欧四カ国に、七月にはフィリピン、シンガポール、マレーシア、八月にはバーレーンなど四カ国、九月にはG二〇のロシアに加えて、カナダ、アメリカ、そしてアルゼンチンへ。ここで行われたIOC総会で安倍首相は力強いスピーチを行い、二〇二〇年のオリンピックを東京に呼び込むことに成功した。十月にはバリ島でのAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議に出席、さらにブルネイでのASEAN(東南アジア諸国連合)の首脳会議に出席した。また日本企業が建設に参加したボスポラス海峡横断地下鉄の開通に合わせて、今年二回目のトルコ訪問も行い、二兆円規模の原発受注というお土産を携えて帰国した。そして今、二十五カ国目となるカンボジアとラオスを訪れ航空協定の締結交渉をしている。
 これら外遊の目的は経済関係の強化だけではない。中国周辺国との結びつきを強めることは、中国包囲網の形成、ひいては東アジアの安全保障に繋がる。二〇〇七年のインドネシアへの三隻の巡視船引き渡しに続き、今年七月の安倍首相の訪問で、フィリピンに十隻の巡視船を供与することで合意した。ベトナムも巡視船供与を含む海上保安業務の日本からの支援に大きな期待を寄せている。海洋権益を拡大しつつある中国は、フィリピンやベトナムへ強い圧力をかけてきている。それに対抗して、日本と一緒に共同戦線を張っていこうという意志が、多くの東南アジアの国々に芽生えているのだ。またアメリカとの二プラス二(外務・防衛担当閣僚会合)を初めて東京で開催、集団的自衛権の行使についてアメリカが歓迎する旨の言質を獲得した。さらにロシアとも初めて二プラス二を行うという、歴史的にみても画期的な外交を展開し、北方領土の返還へと繋がるロシアとの関係強化に大きな道筋をつけた。

日本版NSCの創設など国内の体制整備も着々と

 国内の安全保障関連の整備での成果も大きい。二月には国家安全保障会議(日本版NSC)創設に関する有識者会議をスタート、六月に決定した法案が十一月に衆議院を通過し、成立が確実となっている。安全保障に関する最高機関として首相、内閣官房長官、外務大臣、防衛大臣による四大臣会合が常設され、新設の国家安全保障局がこれを補佐。省庁間の縦割りの弊害を排除しながら、国防のために情報収集・分析から戦略立案、政策決定を集中的に行うというものだ。この法案と共に国家安全保障の両輪となるのが、特定秘密保護法案だ。十一月から国会で審議が始まっているが、その意図を曲解したマスメディアや野党の反対が湧き上がっている。安全保障問題でもう一つ重要なのが、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」「安全保障と防衛力に関する懇談会」の二つの懇談会だ。前者によって集団的自衛権行使をはじめとした安全保障上の法整備が、後者によって武器輸出三原則の見直しを含む国家安全保障戦略の取りまとめが行われており、日本は自らの守りを、自らの力で考え固める国へと徐々に変貌を遂げようとしている。
 産経新聞は十月十六日の朝刊一面トップで、「元慰安婦報告書 ずさん調査浮き彫り」という見出しの一大スクープ記事を掲載した。「河野談話」の根拠となっていた韓国の元慰安婦の聞き取り調査報告書を入手、証言があまりにもいい加減で、調査自体がずさんだったことを暴いた。そもそもこの慰安婦問題は、勤労奉仕組織である「女子挺身隊」を従軍慰安婦の組織だと捏造・大誤報を行った朝日新聞の記事から始まったものだ。日本の歴史がここまで貶められているのは、終戦直後、アメリカ占領軍がメディアや教育に関して、日本弱体化政策を徹底したからだ。日本に誇りと自信を取り戻すためには、マスメディアを真っ当にすることが必要だ。国会による同意人事となっているNHK経営委員会委員に日本たばこ産業顧問の本田勝彦氏、特攻隊を扱った小説「永遠の0」の作者である作家の百田尚樹氏、埼玉大学名誉教授で哲学者の長谷川三千子氏らが新しく起用された。経営委員会にはNHK会長を選ぶ権限がある。二〇〇九年にNHKが放送したNHKスペシャル「JAPANデビュー」で描かれた日本による台湾統治の実態があまりにも偏向しており、日本人や台湾人の一万人以上が原告となる集団訴訟にまで発展した。次第に中国寄りが鮮明になってきたNHKを正すためにも、まず会長の交代を行い、過去の数々の誤った報道を正す宣言を行い、真っ当な報道へと近づけていくべきだ。その点からも、今回の新経営委員には大いに期待できる。

敵基地攻撃能力保有へ真の防衛力強化の布石も

 今後の日本を取り巻く東アジア、世界の状況は、決して楽観できるものではない。特に中国と北朝鮮の動向が日本にとっての当面の脅威である。十一月九日付けの日本経済新聞朝刊によると、政府は年内決定予定の防衛計画の大綱(防衛大綱)によって、陸上自衛隊の定員を初めて増員するという。一九七六年に十八万人だった陸自の定員だが、一九九五年には十六万人、二〇〇四年には十五万五千人、二〇一〇年には十五万四千人と減る一方だった。特に今回、念頭に置かれているのは、対中国を想定した島嶼防衛の強化だ。水陸両用車やオスプレイの配備を前提とした水陸両用部隊の編成が考えられており、十五万四千人を起点として増員を検討することになるという。
 これまでの防衛政策は、ひたすら防衛力を整備し、「攻撃力を備えることは近隣諸国を刺激する」と控えさせられ、攻撃されても反撃は専ら米国に依存せざるを得ない憲法と安保条約の下、自制を強いられてきた。「攻撃は最大の防御なり」という言葉がある中、世界第五位の軍事費を費やしながら攻撃用兵器を持てない日本は、いたずらに高額な防衛兵器を米国から購入させられてきた。
 現在のミサイル防衛(MD)構想では、弾道ミサイルに対してイージス艦からの迎撃ミサイルか、地対空誘導弾パトリオットPAC‐三で対処する想定になっている。しかし一気に数発のミサイルが連続して飛来した場合は、これでは対応できない。北朝鮮のミサイルの性能が向上する中、従来の防衛システムでは対処できない。これからの日本は、戦闘機や艦船からの巡航ミサイルでの相手国のミサイル基地攻撃も、選択肢に入れなければならない。「敵基地攻撃能力の保有」も含めた対処能力を持つことこそ、まさに安倍首相が主張する積極的平和主義だ。やられたらやり返すぞという姿勢を見せることで抑止力を持ち、単に発射されたミサイルから国を守るのではなく、力によって発射されることがない状況を作り出すのが、積極的平和主義の真髄だ。水陸両用部隊の充実も敵基地攻撃力の保有も、日本の安全のために是非実現して欲しい。
 前回の失敗を教訓に、ストレートに主張を前面に出すのではなく、迂回戦略を取りながらも、保守的な政策を着実に進め、安倍政権はこの一年でかなりの成果を出してきた。私は安倍首相にはできるだけ長く政権を担当して欲しいと願っている。二年半後の参院選に併せて衆院選も行い、憲法改正に賛成する議員を両院共に三分の二以上獲得して、一気に憲法改正へと突き進むべきだろう。万が一、三分の二に足りない場合は、両院で議員の二分の一以上の賛成で現日本国憲法を破棄するのである。それぐらいの気概を持って、正しい憲法を早急に創る必要があるのだ。その次の衆参同時選挙にも勝利して、株価を高めて経済力をつけて、先端科学技術立国、観光立国として、日本は世界第二位の経済大国に返り咲く。その後の選挙まで安定政権を続け、安倍首相のフィナーレとして東京オリンピック開会式を迎えるというのがベストシナリオではないか。

長期政権を阻む勢力には最大限の注意を

 「日本の敵は日本人」と言ったのは故前野徹氏だが、その背景には、アメリカの「見えない壁」がある。アメリカは最も有効な日本占領政策として、アングロサクソンの伝統的統治策である「デバイド・アンド・コンカー(分割して統治せよ)」に基づき、天皇の権威を背景に官僚機構を使いメディアを手懐けて、憲法と安保条約を力に占領政策を実施した。戦後、どんどん激化してくる冷戦を考えれば、アメリカの日本統治政策は、アメリカにとっては当然であるが、サンフランシスコ平和条約が締結されて日本は独立国家となったのだから、その時に憲法を自主憲法に改正すべきだったが、その機を逃した。その後の冷戦終結時も世界第二位の経済大国としての強い経済力を背景に憲法改正をすべきだったのにそのチャンスを逃した。アメリカは血と汗と金を注ぎ込んでやっと冷戦に勝利したのに、日本にその果実を奪われては…と、日本とドイツを仮想敵国とする経済戦争を始めてきて日本は敗れ、二〇年に亘るデフレ不況となった。
 
今回の安倍政権の誕生は、最後のチャンスと言える。安倍政権が長期に亘ることを阻むのは、日本の反日勢力だ。またそれに加担するのが、中国と韓国である。アジアの国々で日本を批判しているのは、中国と韓国だけなのだ。しかも彼らの主張は先に挙げた慰安婦に関する産経新聞のスクープでもわかるように、なんら根拠を持たない。アメリカでもイギリスでも関係のない国でも日本批判を続ける韓国の朴槿恵大統領だが、批判を続ければ続けるほど韓国経済は疲弊し、政権支持率もどんどん低下している。
 南京虐殺についても、史実の捏造だという事実がだんだん明らかになってきていて、中国もこのカードが使えなくなっている。さらに天安門広場でテロが起きるなど、政権の足元が揺らいでいるのが現状だ。貧富の差の激しさから年間十数万件の暴動やデモが行われ、新疆ウイグル自治区やチベットなどの問題も抱える中国は、内部分裂への道を着実に歩んでいる。韓国にとっても中国にとっても、日本批判は滅びゆく者の、断末魔のようなものかもしれない。
 安倍政権が長期政権になるために、引き続き最大限の注意を払わなければならないのは、アメリカの動向だ。第一次政権時、安倍首相はあまりにも「戦後レジームからの脱却」を声高に語ったために、その戦後レジームを築いたアメリカの壁に阻まれて、わずか一年で辞任する羽目になった。今のところ迂回戦略が功を奏しているようだが、油断は禁物だ。今年の頭には支持率十四%を誇った日本維新の会が、今は見る影もない。これは自民党と維新の会という改憲勢力が、衆参同時選挙で一気に三分の二議席を獲得して、改憲に突っ走るのでは…ということを恐れたアメリカが、慰安婦に関する橋下徹維新の会共同代表の発言をユダヤとアングロサクソンが支配する世界中のメディアを動員して批判させ、衆参同時選挙を潰したのである。
 世界の警察の役割から手を引こうとしているアメリカは、日本の集団的自衛権行使は認めるなど、自国の利益に合致しそうなことは容認する構えだ。これを見誤ってはならない。
 昔も今も、世界の戦いの主戦場は情報謀略戦と経済戦争だ。日本の一番の強みである経済力を生かすためにも、情報宣伝省といった組織の設立が急がれる。諸外国で根拠のない日本批判が報道された場合には、即座にこの組織が反論するのだ。また元CIAのスノーデン氏が暴いたような情報収集活動までは望むべきもないが、様々な形で入手した情報を自国産業が有利なように利用したり、逆に防諜体制を強化したりと、情報宣伝省の役割は大きい。この組織は日本版NSCの下にあって、その実行部隊という位置づけになるだろう。
 二〇一三年を振り返ってみると、改めて安倍政権の偉大さがよくわかる。さらなる日本の経済発展は、中国バブル崩壊後の世界経済の牽引車として、世界経済に貢献することである。安倍政権が、長期政権となるよう、来年も私はできる限りの支援をしていくつもりだ。