Big Talk

縄文時代から今日まで常に日本は世界のトップランナーVol.326[2018年9月号]

札幌医科大学 教授 髙田純
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APAグループ代表 元谷外志雄

核放射線防護の専門家として、シルクロードやマーシャル諸島、そして福島など世界の核放射線災害地の調査、研究を続けてきた札幌医科大学教授の髙田純氏。「真の近現代史観」懸賞論文でも優秀賞と最優秀藤誠志賞の二回の受賞に輝く氏に、考古学も交えた最近の研究に基づいて、日本文明の素晴らしさについて語っていただきました。

髙田 純氏

1954年東京生まれ。弘前大学理学部物理学科を卒業。広島大学大学院理学研究科で修士を、1990年には同大学にて理学博士の学位を取得。シカゴ大学ジェームス・フランク研究所、京都大学化学研究所、広島大学原爆放射線医科学研究所などを経て、2004年より札幌医科大学教授。「真の近現代史観」懸賞論文にて、2010年優秀賞(社会人部門)、2011年「福島は広島にもチェルノブイリにもならなかった」で最優秀藤誠志賞を受賞。『核爆発災害―そのとき何が起こるのか』(中公新書)、『中国の核実験─シルクロードで発生した地表核爆発災害─』(医療科学社)など著書多数。

古くから日本は海洋大国
縄文時代の航海術は世界一

元谷 本日はビッグトークへの登場、ありがとうございます。

髙田 お久しぶりです。二年続けて「真の近現代史観」懸賞論文で賞をいただいて、もう七年が経ちます。二〇一一年に最優秀藤誠志賞を受賞した論文「福島は広島にもチェルノブイリにもならなかった」の通り、日本は消滅することなく、しっかりと復活しました。

元谷 東日本大震災の福島第一原発を巡る被害は、明らかに民主党政権下であったことが原因の人災です。

髙田 その通りです。一九九五年の阪神・淡路大震災でも村山富市政権の対応の遅れで、被災者は大変な目に遭いました。東日本大震災でも政権の問題ある対応によって、死ななくていい人が多数亡くなりました。

元谷 福島県だけでも震災関連死は二千人以上に上ります。

髙田 また一九八六年のチェルノブイリ原発事故の時でも、原発から三十キロメートル以内の家畜が避難させられたのですが、福島では菅直人首相は家畜の避難を行わなかった。結果家畜の多くが餓死と殺処分になりました。

元谷 さらに民主党政権は、本来緩和すべき食品中の放射性物質の基準を厳しくしました。

髙田 そうです。その結果、世界一厳しい放射性物質の基準となったのですが、その必要は全くありませんでした。この基準のために、風評被害が増えたという話もあります。基準だけは厳しく、自らには甘い民主党政権は、原発事故後に福島や東日本が復興を遂げたのと逆に、震災の翌年に消滅しました。

元谷 民主党政権下で、全ての原発が一旦停止することになりました。最近ようやく再稼働が認められる原発が出ていますが、原子力安全協定を盾に地元自治体の同意が必要とされ、再稼働が知事の考え次第になっているところもあります。原発が停止することで日本のエネルギーバランスは崩れ、現状では非常に不安定です。また石油の輸入量が増え、その分日本のお金が海外に流れています。

髙田 ただ震災や噴火、津波などの自然災害は日本では太古からあり、その記憶を生かして災害を乗り越え、日本民族は発展してきました。今回の東日本大震災でも同様で、日本人の凄さを十分証明したと思います。

元谷 いざとなると日本人は結束します。これは民族の大きな特徴でしょう。

髙田 「和」という精神は、日本人を表す重要な特徴です。最初に興った全国的な政府は大和朝廷ですが、これも「大きな和」と書きます。日本は太古からこの和の精神が継続している国家です。私はこの和の精神を忘れ、考えることなく欧米に追随するようなビジネスを行う個人や組織は、早晩消滅すると考えています。日本は一つの精神が、少なくとも縄文時代の初め、つまり一万六千年前からずっと続いてきているのです。

元谷 そんなに昔からですか。

髙田 はい。例えば寄せ鍋は縄文時代の発明です。竪穴式住居の中の囲炉裏で、縄文土器と呼ばれる土鍋の中に貝や魚、野菜を入れて、ぐつぐつと煮て家族で食べる。これが今にまで続いているのです。北海道から沖縄まで、三日月状に島が連なる日本列島の原型ができたのは、約五千万年前です。日本海が誕生し、日本は大陸から完全に孤立しました。そのために臨海地帯が発展するのです。海に面しているメリットは、海産物を捕獲すればいいので、食料が豊富だということです。また海が側にあることで、海洋輸送が発達しました。福井県の三方五湖など各地で発掘されているように、縄文時代の初期に日本人はすでに丸木舟を発明していました。本州と北海道の間も舟が行き来しており、当時の日本人の航海術は世界一だったでしょう。

元谷 それは知りませんでした。

簡素・合理化の日本精神で
数々の発明を世界へ

髙田 私達は学校で、日本人の祖先は島国に住む農耕民族だったと教えられましたが、それは大きな間違いです。日本は海を行き来する海洋国家だったのです。大和朝廷が成立する三世紀には、日本の船は大陸にも到達しています。日本史ではいかに多く物や人が大陸から日本に伝来したかが語られますが、日本からも大陸に大きな影響を与えているのです。卑弥呼の時代の訪問が、大陸の魏国に記録されています。

元谷 日本文化が大陸に進出しているのですね。

髙田 七世紀から編纂が始まり、八世紀初頭に完成した日本最古の歴史書である日本書紀には、大和朝廷が百八十隻からなる海軍を保有、斉明天皇が阿倍比羅夫をトップとして北海道にこの海軍を派遣したと書かれています。阿倍比羅夫は蝦夷を平定し、さらに北海道に入り込んできた異民族を蝦夷と一緒に撃退したとあります。これらには、考古学的な裏付けもあります。

元谷 私達が知っている日本史とは異なりますね。なぜ史実が人々に伝わっていないのか。日本人が誇りに思うことは教えず、悪いことをしたとばかり、戦後の教育で教えてきたからでしょう。優れた民族としての歴史があるのに、自虐史観を植え付けられてきたのです。

髙田 そのことを世の中に知らしめたのが、「真の近現代史観」懸賞論文だったと思います。第一回で最優秀藤誠志賞を獲得した田母神俊雄氏の「日本は侵略国家であったのか」には、私も衝撃を受けました。私も私なりに正しい歴史を伝えるべく研究を行い、『誇りある日本文明 中韓が絶対に超えられない、先進と継続の理由!』(青林堂)という本を昨年出版しました。この中で書いたのですが、日本書紀には、斉明天皇が、阿倍比羅夫の二百隻の海軍を派遣し、弊賂弁島の砦に籠る凶暴な異民・粛慎を、蝦夷の要請を受けて成敗したと書かれています。この弊賂弁島とはどこかというのが考古学的な議論の的です。私の結論では北海道南部の奥尻島。この異民族はオホーツク人と言われる人々なのですが、彼らの遺跡が奥尻島に残っているのです。どうも考古学の研究者は日本書紀などの史料をきちんと読み込んでいないので、オホーツク文化の遺跡を研究していても、その本質を理解していない。この戦は日本最初の国防でした。日本書紀や古事記などの史料研究と遺跡発掘などの考古学の整合性がとれるようにならないと、真っ当な歴史研究ではありません。

元谷 もっと歴史を正しく教えるべきですね。日本は戦前は悪い国で、戦争に負けて民主主義のいい国になったというストーリーが、東京裁判史観として戦後延々と教育の場で蔓延ってきました。しかし「真の近現代史観」懸賞論文の田母神論文をきっかけに、東京裁判史観に疑問を持つ人が増えてきました。そのことが第二次安倍政権の誕生に繋がっています。

髙田 私は過去を正しく理解して、それを基に現在から未来への正しい指針を立てることが、二十一世紀に活躍する企業の存在意義だと考えています。アパグループは、正にこれに合致する企業です。これから健全に成長できる日本企業とは、日本を知り、その上で世界との関係を持つ企業でしょう。

元谷 アパホテルも海外展開を始めていますが、まだまだ伸びしろがあります。ニューヨークのマンハッタンにある、ロケーション抜群の高級ホテルに宿泊したことがありますが、どう考えてもアパホテルの方が使い勝手が良いのです。

髙田 私も今年のGWに千葉のアパホテルに宿泊しましたが、自動チェックイン機もあって、少人数のスタッフでもきちんと切り盛りできる工夫がされていて、とても感心しました。質素・倹約、簡素化、合理化というのは、日本の精神に合致しています。

元谷 アパホテルに導入されている自動チェックイン機は、メーカーと共同開発したものです。まもなくフロントのカウンターの上に置く、卓上型のクレジットカード専用自動チェックイン機も登場します。

髙田 こういった質素・倹約、簡素化、合理化の精神は縄文時代から脈々と続いています。例えば江戸時代に誕生した寿司は、頼んですぐに出てくる合理的なファストフードです。蕎麦もそうですね。

元谷 さらに技術と組み合わせ、廻る寿司まで出てくるのが日本ならでは。皿に時間情報がインプットされていて、一定時間経過した寿司を自動で廃棄するシステムもできています。

髙田 私の著書で取り上げた日本らしい現代の発明は、ハイブリッド車とLED照明とウォシュレットです。特にウォシュレットは日本人の清潔感の表れです。二年前にシンガポールに行き、マリーナエリアの五つ星のホテルに宿泊、近くにある最新のショッピングモールにも行ったのですが、TOTOのトイレなのにウォシュレットがない。これは文明的に受け入れる素地がないからでしょう。

元谷 アパホテルは第一号から全ての部屋にウォシュレットを完備しています。アメリカのアパホテルにも設置、ニューヨークでの記者会見では、これからはウォシュレット付きのアパホテルが、世界のホテルのスタンダードになると宣言しました。

髙田 紙を余分に使用しないという意味で、ウォシュレットは省資源・省エネにも貢献します。日本にノーベル物理学賞をもたらした青色LEDですが、このLEDも、エジソン以来の技術を塗り替える、照明器具の革命と言って良い日本の省エネ技術です。エネルギーがふんだんにあるアメリカのような国では、思いつかないでしょう。

元谷 オイルショックで石油が高騰しても、技術で石油の消費量を抑えることで乗り切った国ですから。

文明の尺度となるのは
ノーベル賞の数と平均寿命

元谷 伝統に縛られていては、新しい発想はできません。従来の考えを捨て、ユーザー志向を追求したのがアパホテルです。これまでのホテルは、召使い的なスタッフがご主人たるお客をいかにもてなすかで、一流度合いが決まっていました。しかし今ユーザーが求めているのはプライバシーと時間です。ドアマンや部屋までやってくるベルボーイは、もはや不要なのです。

髙田 なるほど。

元谷 アパホテルはスペースではなく満足を売っています。ベッドを広くして照明を明るくしているので、ベッド上で書類を広げたり、荷物の整理をしたり。最新のアパホテルではベッド下に収納スペースも設置しました。どんどん進化するのが、アパホテルです。社員からの新しい提案も多いですね。

髙田 従業員一人ひとりに至るまで、常にカイゼンマインドを持って進化を続けるのが、日本の特徴です。和の精神も生かされて、あまり上下関係を考えずに、集団で最適な答えを出していきます。みんなでやるのが好きなのでしょうね。

元谷 基本的に日本人は大家族主義ですし、国家自体も家族国家なのです。

髙田 国家という文字に「家」が入っているのが、その表れです。他の国ではこういう感覚はありません。

元谷 同一言語・同一民族など、大半の人にとって、いろいろなことで共通項が多いのが日本の社会です。ですから、多くの人が疑いもなく日本人というアイデンティティーを持っています。アメリカであれば世界中の民族が集まっていますから、国旗の前で国歌を歌って再確認をしないと、アメリカ人というアイデンティティーが定着しない。この辺が日本とは異なります。だから、人口が減少しているからといって安易に移民を入れることに、私は反対なのです。

髙田 そこは一捻り、知恵が必要ですね。

元谷 個家族化しているから少子化が進行しているのです。本来日本人が志向するはずの大家族制度を復活させれば、子供は増えます。大きな家の固定資産税を下げるなど、税による誘導で大家族を増やしていく必要があります。また家族を分断する単身赴任も減らしていくべき。アパホテルでも地元採用を増やすことで転勤者を減らすなど、家族を大事にする会社を目指しています。

髙田 誇りある日本文明のためにも、そういう企業が増えるべきでしょう。明治維新が起こって「文明開化」が到来したと言われますが、それ以前から日本には独自の先進文明があったのです。

元谷 そう思わせない教育が、戦後続いてきました。今私は誇れる祖国日本を取り戻す運動を行っています。

髙田 私は文明の指標として二つの数字を重視すべきだと考えています。一つが二十一世紀になってからのノーベル科学賞の数です。ここでいう科学賞とは、特に栄誉とされる物理学賞、化学賞、生理学・医学賞の三つのことです。二〇一六年段階での一位はアメリカの四十四人なのですが、二位は十五人で日本、一人差で三位はイギリスです。中国はあれだけ人口が多くても、この基準での受賞者は一人です。

元谷 そう考えると、日本は凄いですね。例えば韓国は金大中がノーベル平和賞を受賞しているだけで、科学分野でのノーベル賞は獲得していません。また将来も獲得しないでしょう。その理由は漢字を捨てて、ハングル文字に走ったことです。人々は漢字がわからないために過去に書かれた論文も読めず、歴史も振り返れません。

髙田 文明の断絶ですね。

元谷 そうです。歴史を受け継いでいないから、慰安婦強制連行という虚構の歴史で日本を責め立てるのです。またハングル文字は完全な言語ではなく、学術研究には不向きです。

髙田 一方日本語は多様性のある高度な言語です。ひらがな、カタカナ、漢字があり、外来語はカナカナでなど多様な表現が可能です。幼いうちから日本語を鍛えれば、非常に賢く成長すると思います。

元谷 私も同感です。日本でも幼児から英語教育を行うご両親がいますが、まず母国語をしっかり学ばないと。日本語と英語、どちらも中途半端な子供になってしまいます。

髙田 その通りです。

ピンチをチャンスにして
大きく成長する日本人

髙田 文明のもう一つの指標は平均寿命です。これは国力に比例しています。平均ですから、特定の富裕層が長生きしても、一般の人々が早死していれば低くなるのです。つまり様々な恩恵が広く国民に浸透している国が、平均寿命が高くなります。二〇一六年のWHO(世界保健機関)のデータで見ると、日本の平均寿命は八三・七歳で世界一。二位が八三・四歳のスイスです。もう一つ、介護などが不要で日常生活を送れる年齢の平均である「健康寿命」という指標もあるのですが、これだとシンガポールが七六歳で一位、二位が七五歳の日本です。

元谷 シンガポールは東京二十三区ほどの面積に約五百六十万人が暮らす都市国家です。日本と比較するには、規模が違いすぎます。比較するなら、東京とシンガポールで行わないと。

髙田 そうかもしれません。またさすがにシンガポールにはノーベル賞受賞者はいません。経済は発達していますが、それを支える技術は外から入ったものです。しかし日本は優れた言葉を持っていて、社会や技術など多くの分野で縄文時代から二十一世紀まで、世界のトップを走ってきたのです。こんな凄い国は他にはないでしょう。大陸にも文化的に大きな影響を与えている一例としては、羅針盤があります。中国で発明されたとされる羅針盤ですが、実は海洋国家・日本の発明です。日本書紀に発明者の名前まで記述されています。その人は沙門智踰です。7世紀の日本の技術は、遣唐使により、大陸へ伝えられたはずです。

元谷 そうですか!

髙田 マルコ・ポーロは、モンゴル帝国による日本侵攻である元寇の際に、クビライ・カーンの下にいたのです。そして日本がモンゴル帝国を撃退したことを知ってヨーロッパに戻り、日本を凄い国、ジパングとして紹介しました。この頃から、日本は西欧から尊敬される誇りある文明だったのです。

元谷 万世一系の天皇の国であったことが、日本文明を維持できた一つの要因ではないでしょうか。例えばユダヤ人は国を奪われて二千年、流浪の民となりました。大変な歴史を経ているので、今のイスラエルは非常に強い国家です。

髙田 しかし日本も征服される危機はあったのです。最大のものは元寇でしょう。当時大陸を支配していたモンゴル帝国を東の島国が破ったというのは、モンゴル人にとっては凄まじい衝撃だったでしょう。同様の衝撃を世界に与えたのが、日露戦争でした。大国相手に絶対不利と言われながら、海でも陸でも戦いに勝利します。これらは日本人の大きな自信に繋がっています。

元谷 そのような話も『誇りある日本文明 中韓が絶対に超えられない、先進と継続の理由!』という本に書かれています。物理学者がこのような本を書くというのが、少し驚きですね。

髙田 物理学者というのは、普通の人が気づかないことに科学的に気づく仕事をしているのです。日本が誇りある文明を維持してきたことは、日本書紀などの歴史書と考古学が科学的に証明しています。

元谷 問題は本来誇りある民族なのに、多くの日本人がそのことを知らないということでしょう。

髙田 ノーベル賞世界第二位も知らないでしょう。私は大学で毎年医学部新入生のセミナーを担当していて、その中でノーベル物理学賞を獲得したマリー・キュリーの伝記映画を観せています。すると一人の学生が西欧の学問・技術は素晴らしく、日本は独創性なく真似をしているだけと言い出しました。そこで日本のノーベル賞の数を聞くと知らない。優秀だと言われる医学生でも、こうなのです。

元谷 そういった人々にも、もっと真実の日本を伝えていかなければなりません。最後にいつも「若い人に一言」をお聞きしています。

髙田 まず日本が誇りある文明を維持してきたことを、うすうすではなくしっかりと知ることでしょう。それに立脚して学校教育も企業活動も、政治活動も行っていく日本になって欲しいですね。

元谷 私は会社経営でも「誇り」を言い続け、屈服したことがないのが誇りです。「真の近現代史観」懸賞論文で田母神俊雄氏が更迭された時も、昨年の書籍炎上問題の時も相手に屈することなく主張を貫きました。トップが挫けると社員もおかしくなりますからね。

髙田 ピンチをチャンスにして大きく成長するのが、日本人は得意です。アパグループもそうですし、先の大戦も東日本大震災もそう。今回のサッカーワールドカップもそうでした。最後は負けましたが、次への大きなチャンスを築きました。

元谷 世界に日本をアピールしましたね。今日は本当にありがとうございました。

髙田 先進のアパ代表と、日本文明を語り合えて、誠に有意義な時間でした。

対談日 2018年7月5日