日本を語るワインの会174

ワイン174二〇一七年十一月十日、代表邸で恒例「日本を語るワインの会」が行われました。国土交通副大臣として観光政策に力を入れている衆議院議員の秋元司氏、高卒の叩き上げでありながら日本郵便株式会社の副社長まで昇り詰めたミツフジ株式会社取締役副社長の上田伸氏、経営する企業がルーマニアのランキングで三十二番目に入るIntercorp Holdings S.A. Chairmanのステファン・スタン氏、ステファン・スタン氏の妻でネットテレビ局事業などを手掛けるIntercorp Holdings S.A. General Managerのエルヴィラ・スタン氏、注目の技術・ブロックチェーンを日本に根付かせる活動を行っている東京大学大学院 民間共同研究員の赤澤正純氏をお迎えし、観光行政からホテル社長の新刊本まで、幅広い話題で盛り上がりました。
二〇三〇年六千万人のため
やるべきことは多い
 俗にインバウンドと呼ばれる訪日外国人旅行者に関する日本政府の目標は、二〇二〇年に四千万人、二〇三〇年に六千万人となっている。二〇二〇年の東京オリンピックまではまだ増加が見込めるが、目標達成のためには、その後の観光政策が重要だ。訪日外国人からよく聞かれるのは、夜のエンタテインメントが充実していないということ。そこで注目されるのがナイトタイムエコノミー、すなわち夜遊びに適した経済環境づくりだ。自民党の有志議員は、時間市場創出(ナイトタイムエコノミー)推進議員連盟を今年(二〇一七年)四月に立ち上げ、日本の夜のエンタテインメントの充実のために活動を開始した。秋元司氏はこの議連の事務局長を務めている。まず日本は終電の時間が早すぎるため、従業員の帰宅を考えれば、遅くまで店を開けておくことができない。今東京オリンピックに間に合うように検討されているのは、東京メトロの二十四時間運行だ。これが実現すれば、東京の「眠らない街化」に一歩近づくことになる。羽田空港の二十四時間化への対応も可能になるだろう。
 日本のエンタテインメントの弱さのもう一つの原因は、大きなコンサート会場が不足していることだ。東京ドームは野球の合間にコンサートを行うしかなく、日本武道館は音響が悪い。公演前後の準備期間も含め、最低五日間場所を確保しなければならないことも、コンサート専用ホールではない会場の利用を難しくしている。今、東京オリンピックに向けて新設される有明アリーナの、オリンピック後の文化利用に期待が集まっている。コンサート会場をもっと充実させて、世界中のアーティストがアジアツアーを必ず東京から始めるような環境を整備するべきだ。
 また日本を出国する旅行者対象に「出国税」が検討されているが、これは目的を明確にするために観光振興税とすべき。さらに旅行者がストレスを感じないための空港や港の整備など、手をつけることは多い。日本に海外からの観光客を増やすことは、日本の人口が減少しても国勢を落とさないことに繋がる。年間八千万人以上の観光客が訪れるフランスや、七千万人以上が訪れるスペイン、アメリカに比べれば、まだ日本のインバウンドは規模が小さすぎる。観光庁の年間予算四百億円をフルに活用して、これから世界に通用する観光地に日本を仕上げていく必要がある。

民泊最大の懸念は衛生
カジノ法案は来年可決へ
 二〇一七年六月に民泊新法が成立し、二〇一八年六月から施行される予定だ。この法律によって、年間百八十日を超えずに有償で住宅を利用者に貸し出す場合は、旅館業法に従うのではなく、都道府県知事に定められた届出を行うなど民泊新法に従えば良いことになる。国としてはこのように民泊を認める方向なのだが、地方自治体が条例で制限を行うケースが増えている。東京で言えば江東区がそうだし、京都市も独自の考えを踏まえた条例で制限してくるだろう。民泊でやはり問題になるのは良好な衛生状態の確保だ。誰かが宿泊するごとにきちんと清掃していればいいのだが、次々と貸しっぱなしにした場合はどうなのか。チェックの行いようもなく、感染症が民泊施設から広がる可能性もある。民泊はやはり日本ではマイナスイメージが強く、法律が施行されても、実際にはあまり広がらないのではないか。
 IR(統合型リゾート)実施法案は来年(二〇一八年)の通常国会での可決を目指す予定だ。賭博という観点からパチンコとカジノは混同されやすいが、この二つは存在する意味も顧客となる層も異なる。パチンコは地域の娯楽、カジノは観光だ。普通の人々が楽しむのがパチンコであり、カジノの顧客はもっと富裕層になるだろう。IRの建設場所は国が決めるのではなく、手を上げてきた地域を国は認めるだけだ。まずは全国三カ所程度からスタートし、最終的にはひと桁台の地域にIRが誕生するのではないか。アパホテルにとってカジノホテルはライバル。なぜならカジノホテルは宿泊ではなくカジノが収益源であるため、部屋の仕様に比して、かなり低価格の宿泊料金設定を行うからだ。
 日本で今大きな問題となっているのが、企業の後継者不足だ。今も事業承継に関しての優遇税制はあるが、引き継いだ後の五年間は平均八割の雇用を維持するなど条件が厳しく、税制の活用は年間五百件程度に留まっている。これを抜本的に見直し、二〇一八年度からの十年間、特例として事業承継を税制で優遇することが自民党税調で決まった。大胆な税制の変更によるショック療法で、日本を変えていかなければならない。

ブロックチェーン技術が
日本の産業の牽引車になる
 東京都の事業が、小池百合子知事に問題があるため、かなり滞っている。トップダウンで駄目だと突っ返されるので、都職員が戦々恐々で新しい案件を上げてこないのだ。豊洲移転の件も都市整備の件も進まず、来年はその停滞ぶりが誰の目にも明らかになるはずだ。築地市場の豊洲移転は大移動であり、その動きは銀座周辺に既に現れている。築地も豊洲も活かすというが、本来は片方を売って片方を運営というはずなのに、売らずに両方持っていれば、借金が増えるだけだ。都政で追い込まれる前に、小池知事は国政に逃げたかったのだろうが、無理だった。彼女は風を呼ぶのは天才的に上手いが、それを長続きさせられない人だ。
 ビットコインなど仮想通貨に使われて注目を集めている技術がブロックチェーンだ。企業活動の根幹となる決済業務や、多くの企業が参入しているポイントサービスなどのシステムをブロックチェーンのシステムに変えることで、運用コストの大幅削減が可能になる。世界でもこの技術の研究、普及が進んでいるが、日本もこれに負けずに多くの技術者と企業を育てていかなければならない。
 ルーマニアはローマの伝統を引き継いでいる国で、六つの世界文化遺産がある。かつてはプロエシュチを中心に世界有数の産油量を誇る油田と精油施設があった。先の大戦時、ルーマニアは枢軸国として石油をナチス・ドイツに提供、その石油を使ってヒトラーはソ連へと攻め込んでいった。

「アパ社長カレー」ショップ
首都圏第一号店がオープン
 ホテルは宴会場を作ると儲からない。シンプルさを追求したアパホテルは世界最強のホテルのビジネスモデルであり、昨年のグループ連結決算の経常利益は三百三十八億円と、三十%を超える利益率となった。今年の連結決算でもこれを超える利益計上を見込んでいる。まさに新しいホテルのスタンダードを作ったと言えるだろう。この好調な業績もあってアパホテルの採用活動も順調で、来春には有名大学の卒業生も多数入社する予定だ。また北米でホテルを展開するようになってから、英語が堪能な学生の入社も増えている。
 新しくオープンしたアパホテル〈飯田橋駅南〉に、十一月一日首都圏初の「アパ社長カレー」ショップが誕生した。店内にはホテル社長の帽子が飾られ、シャンデリアが煌めくなどカレーショップらしからぬ高級感を演出。店舗のマークにも登場するなど、ホテル社長を前面に押し出したプロモーションを行っている。某雑誌でホテルカレーの実力ナンバーワンにも選ばれた「アパ社長カレー」は、金沢カレーをイメージした洋食風。定番のロースカツだけではなく、ラタトゥイユ、ハンバーグなどのトッピングもあり、平均客単価は七百五十〜八百円だ。十七平米(五坪)十二席という非常にこぢんまりとした店だが、売り上げが三十万円を超えた日もあった。モデル店舗として直営から始め、将来はフランチャイズ展開も検討していく。
 インタ―ネットの経済ニュース共有サービスであるNewsPicksで「APA VS Airbnb」という特集記事が組まれ、その中で「一人勝ちを生んだ『狂気の経営』」というタイトルで代表のインタビューが一万字に亘って掲載されている。NewsPicksでは記事に対して、読者がコメントできるようになっているのだが、かなりの著名人から大学教授まで多くの人達が、アパの経営に感嘆する言葉をアップしていた。インタビューの後半のタイトルは「『炎上騒動』の真相」であり、今年(二〇一七年)一月にアパホテルの部屋に置いてある「南京大虐殺はなかった」と主張する代表の書籍が原因で火が付いた騒ぎのことにも触れている。中国政府からの名指しの非難にも動じなかったことから、この騒動が逆に大きな広告効果をもたらし、アパホテル全体の稼働率のアップに繋がった。中国での予約ができなくなったので、アパホテルに宿泊する中国人は大幅に少なくなったが、代わりに台湾を中心とする他国のお客様が増えた。台湾人が最も嫌がるのは中国人に間違えられることだが、アパホテルであればその心配がないからだ。元々アパホテルでは特定の国からの宿泊客が増えないようにコントロールをしてきた。それは二〇〇三年のSARS(サーズ)騒動の時に、中国からの客が一気に減った経験を踏まえてのこと。特定の国からの客に依存することは経営的なリスクだということで、基本的には一国で一〇%を超えないようにしてきた。これが今回、功を奏したのだ。
 ホテル社長の最新著書『強運 ピンチをチャンスに変える実践法』(SBクリエイティブ)が十二月七日に発売を予定している。どんなハプニングでも必ず良い方向に持ってきたホテル社長の人生ノウハウが詰まったこの本には、すでに数多くの予約が入っている。