Essay

先の大戦は日本を叩く白人国家の謀略だったVol.300[2017年9月号]

藤 誠志

共産党の謀略を隠すため
日中戦争の起点を変更

 七月八日の読売新聞に「日中戦争『共産党が大黒柱』」という見出しの記事が掲載されている。「日中戦争のきっかけとなった一九三七年の盧溝橋事件から八〇年にあたる七日、中国・北京郊外の盧溝橋近くにある抗日戦争記念館で記念式典が開かれた」「共産党序列五位の劉雲山(リウユンシャン)政治局常務委員が演説し、『(日中戦争で)中国共産党が民族の大義に基づき、大黒柱としての役割を発揮した』と強調した。」「式典には、日中戦争に参加した元兵士や現役軍人ら一〇〇〇人以上が参加した。劉氏は演説で『侵略の歴史を否定、美化しようというたくらみは歴史の進歩という流れに逆行する』と、日本をけん制。習近平党総書記(国家主席)を党の『核心』と呼び、習政権の2期目が発足する今年秋の第19回党大会の成功を呼びかけた」「劉氏はまた、日中戦争が『14年の長きにわたった』と強調した。中国国内では日中戦争の期間の解釈について、盧溝橋事件を起点としてきた従来の『8年』を、31年の満州事変を起点とした『14年』に統一している動きを受けたものだ」「日中戦争で旧日本軍と戦ったのは主に国民党軍だった。期間についての解釈の統一は、戦争の起点が国民党が不抵抗主義を採った満州事変当時まで遡ることで『共産党が発揮した中心的役割をより強調する』(中国メディア)との指摘がある。第2次世界大戦勝利への貢献がより長期にわたったことを誇示する狙いもあるとみられる」「『14年』説は習氏が2015年7月に提起しており、教育省は全国の小中学校に今年から、教材を『14年』に統一するよう通達」していると報じている。
 日中戦争の始まりを盧溝橋事件から満州事変に変えようとする中国の動きの背後には、盧溝橋事件が中国共産党によって引き起こされたことが明らかになってきたことがある。歴史評論家の竹下義朗氏のウェブサイト「帝國電網省」内の連載コラム「歴史再考」の「仕掛けられた『日中戦争』―盧溝橋事件の真実」には、以下のように書かれている。「『日中戦争』の発端となったこの事件は、決して日本軍が仕掛けたものではありません。日本軍が最初に銃撃を受けた際―つまり演習をしていた際、日本軍は『丸腰』(演習の為、実弾を携行していなかった)だったのです。ですから、橋本群・陸軍中将(駐屯軍参謀長)も当時の状況を、『実弾を持たずに発砲された為、応戦出来ず、非常に危険な状況に置かれた』と証言しています。それは、そうでしょう。『丸腰』の所を銃撃―しかも、暗闇からの銃撃を受けたのですから、堪ったものではありませんでした。しかし、支那現政権は日本軍が先制攻撃したと言い、村山富市・元首相も当地を訪れた際、『盧溝橋で往事を反省してきた』等と寝惚けた発言をしています。その様な事は到底あり得ないのです。考えても見て下さい。『丸腰』で演習していた日本軍が『銃撃を受けた』と称して、自ら好きこのんで『武装』しているであろう国民党軍と事を構えたでしょうか?」「実は事件当時、当の国民党軍も、日本軍同様、銃撃を受けているのです。盧溝橋で銃撃を受けた日本軍は国民党軍によるものと思い込みましたが、反対に、国民党軍は日本軍によって銃撃を受けたものと思い込んだ訳です。この事件が発端となって、日本軍と国民党軍は交戦状態に突入したのですが、双方共、腑に落ちない点があり、現地解決・事件不拡大方針で交渉、事件発生後5日目に、日支両軍は停戦協定を結んだのです」「それでは、日本軍・国民党軍双方に『銃撃』を加え、双方を戦わせる様にし向けたのは、一体『何者』だったのでしょうか?」「実は、『盧溝橋事件』は何を隠そう、共産党による『謀略』だったからです。つまり、共産党の工作員が夜陰に乗じて、盧溝橋付近に駐屯していた日本軍・国民党軍双方に発砲し、両軍が交戦する様にし向けたのです。その証拠に、共産党軍の兵士向けのパンフレットには、『盧溝橋事件は我が優秀なる劉少奇同志(後の国家主席)の指示によって行われたものである』とはっきりと記述されていました。又、昭和24(1949)年10月1日、『中華人民共和国』成立のその日、周恩来首相も、『あの時(盧溝橋事件の際)、我々の軍隊(共産党軍)が、日本軍・国民党軍双方に、(夜陰に乗じて)発砲し、日華両軍の相互不信を煽って停戦協定を妨害し、我々(共産党)に今日の栄光をもたらしたのだ』と発言しています。共産党自らが『自白』しているのですから、これ以上の証拠はありません」「当時、国民党に対して劣勢だった共産党は、『起死回生』を図る為、日本軍・国民党軍双方を戦わせて疲弊させ、『漁夫の利』(つまりは、支那全土の支配権)を得ようと考えたのです」「その意味においては、『盧溝橋事件』とは、日本軍が共産党軍(支那)に『填められた』訳で、『日中戦争』とは、日本が支那に『仕掛けられた』戦争だった訳です」としている。こういったことが明らかになってきたために、中国共産党は都合が悪くなって、日中戦争の始まりを変えて十四年戦争にしたいのだろう。

白人支配の世界を維持するため
日中分断を図った白人国家

 日中戦争に関しては、歴史を冷静に振り返る必要がある。日本と中国の関係が悪化し出したのは、一九二八年の張作霖爆殺事件からだ。この事件の犯人が関東軍の河本大作大佐というのが歴史学上の通説だが、最近、関東軍の仕業に偽装したソ連の特務機関による犯行だということが明らかになってきた。二〇〇七年にイギリスの公文書館で公開された、イギリス陸軍情報部の極東課が事件直後に本国に宛てて送った報告には、ソ連の犯行だと記載されていたという。日本が自ら犯行を認めたために、イギリス本国は再調査を指示したのだが、その結果はソ連製の爆薬が使用されていることを根拠に、同じくソ連の特務機関の仕業だというものだった。一方ロシアの作家、ドミトリー・プロホロフ氏は独自の調査で、張作霖爆殺がソ連の特務機関の仕業であることを突き止め本に書き、この記述が世界的ベストセラーとなったユン・チアン、ジョン・ハリディ夫妻の共著『マオ 誰も知らなかった毛沢東』にも引用されている。私はロシアのサンクトペテルブルクまでドミトリー・プロホロフ氏を訪ね、その後日本に招いて記者会見も行ったが、日本の大手メディアはこれを完全に無視した。張作霖爆殺の結果、反日に燃える息子の張学良は西安事件(東北軍の張学良が国民党の蒋介石を西安で監禁し、国共内戦の停止を迫り、同意させたクーデーター)を起こして、一九三七年の第二次国共合作への流れを作り、対日統一戦線が生まれた。ソ連によって、日中の分断が深められたのだ。
 ではなぜソ連は日本と中国との関係を裂いたのか。ジャーナリストの高山正之氏の著書『世界は腹黒い―異見自在』の中には、「日本と中国について古くは十九世紀、松前藩に捕まった(ヴァシーリー・)ゴロブーニンが『両国が手を握れば、百年といわず白人国家の最大の脅威になる』と報告している。後にムッソリーニが同じことをいい、第二次世界大戦前にはハリファクス英外相が『日中の争いは長引いた方がいい。この二国間の仲直りは欧米国家の利益にならない』(C・ソーン「形だけの連合国」)とも語っている」という記述がある。元々二〇世紀の前半まで、世界は白人のものだった。中国の清王朝は実質的には権益を求める白人国家に分断統治されていた。
 この分断統治体制下の、一八九四年に起こった朝鮮を巡る戦い、日清戦争の勝利によって得た日本の権益に対し、白人国家のフランス、ドイツ、ロシアは三国干渉を行って遼東半島を清に返還させる一方、ロシアはしたたかにも旅順の租借権を得た。これが遠因となり一九〇四年に日露戦争が勃発、日中両国を疲弊させたかった白人国家にとって日本の勝利は大きな脅威となった。そこで中国と日本を分断して、それぞれの力を削ぐことに、白人国家が注力するようになる。

満州での日本の特殊地位を
リットン報告書は肯定した

 そんな中で起こったのは一九三一年、関東軍が自ら南満州鉄道の線路を爆破したことを中国軍の犯行と断じた柳条湖事件を発端とする満州事変だ。日本の教科書には、事件後のリットン報告書によって「日本の行動は正当ではない」と認定されたと書いてあるが、この報告書はそんなに単純なものではない。東京裁判時にインドのパール判事は、このリットン報告書を根拠に満州事変は侵略戦争ではなかったという結論に至っている。日本政策研究センターのウェブサイトに掲載されている「パール判事は満州事変をどう見たか」という一文から、少し引用してみよう。パール判事は満州事変を理解するためには、特殊事態を理解しなければならないと言う。「最初に確認すべき特殊事態は、当時の日本が満州において『特殊な地位』を有していた事実である。まず日本は当時満州に、遼東半島の租借権、東支鉄道の南満州支線などの権益を有していた。日露戦争後のポーツマス条約に基づき、ロシアが日本に譲渡したものである。これについては、日清間でも満州善後条約が結ばれ、清国も日本への譲渡を承認した。つまり、日本の満州における特殊地位は、条約に基づく正当な権利と言えるのである」「パール判事は、満州における日本の特殊地位について、リットン報告書の次のような分析を記している」「『一九〇四年から一九〇五年、満州の野において戦われたロシアに対する日本の大戦争の記憶は、全ての日本人の脳裡に深く刻み込まれている。この戦争は、ロシアの侵害の脅威に対して、自衛のため生死を賭して戦ったものである』」「つまり、日本の在満権益が多大な国民的犠牲の結実である点を踏まえ、諸外国の権益とは異なる事実に同報告書は理解を示している」「同報告書は、満州が日本にとって国防上の『戦略的重要性』を有する事実についても、次のような見解を示している。『満州はしばしば日本の「生命線」であると称されている。満州における日本の利益のなかで根本的なものは、日本の自衛と国家的生存にとって、同地方の有する戦略的重要性である』」「このように、『条約上の権益』と『国防上の絶対的必要』が合体して、日本は満州で特殊地位を有するに至ったわけで」「国際社会もそれを認めていたということである」という。パール判事はこの特殊な地位を踏まえて、日本には満州事変を「『自衛の必要上』と主張する資格がある」と結論付けたのだ。日本はロシアからの自衛のために満州を重視し、この地域から搾取するのではなく、この地域を豊かにすることで日本に対する脅威を減じようとし、満州国を建国した。これらの行動は自衛のためであり、中国への侵略とは一線を画するものだ。
 しかし満州事変後、日本と中国が一体化することを極度に恐れた白人国家は、日中を対立させる分割統治を実行する。盧溝橋事件を主導した中国共産党だが、その背後には、日中を戦わせたい白人国家・ソ連のコミンテルンの存在があった。アメリカもペリー来航以来の念願でもある太平洋の覇権を握る為に、全面的に国民党を支援した。日本では天皇の存在があったためにキリスト教はあまり広がらなかったが、中国ではかなり広まった。対中国支援には、こういった宗教的背景もあっただろう。明治維新から日清戦争まではまだ良かったが、日露戦争の勝利によって日本は白人国家による世界覇権の継続を危うくする存在となった。そんな日本の台頭を許してはならないという白人国家の戦略が、先の大戦の正体である。
 一九一九年、第一次世界大戦後のパリ講和会議において、日本は国際連盟の規約に人種差別の撤廃を明記すべきだと提案した。しかしウッドロウ・ウィルソン米大統領が、急に多数決ではなく全員一致でなければ認められないと不公平な議事裁定を行ったために、この世界初の人種差別撤廃条項は、同会議で否決された。その後も人種平等を掲げて日本は戦い、先の大戦で敗北はしたものの、結果において、世界の植民地は無くなり人種平等の世界へと変貌を遂げることができた。それは正しく日本が果たした世界への実に大きな貢献なのだ。日本人は正しい歴史認識を持ち、日本に対する誇りを取り戻さなければならない。東京裁判史観に洗脳されたままでは、将来日本は中国の自治区かアメリカの準州であるプエルトリコやグアムのような被保護国になってしまうだろう。

反日メディアの報道では
世界の危機が伝わらない

 国際社会での善悪は力の論理によって左右される。これまでも日本にとってアメリカによる「核の傘」は、核保有国であるロシアや中国に対しては幻想に過ぎなかったのだが、小型の核弾頭と大陸間弾道ミサイルの開発に成功した北朝鮮に対しても無力となった。核兵器に対して有効な対策は核兵器しかないが、日本は核武装を許される立場になく、密かに製造することもできない。したがって私がかねてから主張しているように、NATO四カ国(ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー)がアメリカと結んでいるニュークリア・シェアリングを日本も導入し、核のパワーバランス維持を図るべきだ。自国第一主義のアメリカのトランプ大統領は、世界に展開するアメリカ軍の縮小に向かう。日本は国民と国土の安全を自らの力で守るために、憲法を改正して抑止力としての攻撃用兵器も持ち、核兵器による威嚇に屈しないためにアメリカとニュークリア・シェアリング協定を結ぶべきだ。
 日本が独立自衛の国家となるためには憲法の改正が必要だが、それは二段階にならざるを得ない。憲法改正に賛成する国会議員は三分の二を超えているかもしれないが、それぞれが考える改正内容はばらばらだ。憲法第九条第二項の改正に手を付けることは、今の政治情勢では不可能だ。であれば、安倍首相が五月に提案したように、第九条の第一項第二項を残して、第三項を「加憲」する選択肢もあり得る。ただその際も警察権で動く自衛隊ではなく、戦力であり交戦権を持つ国防軍として加憲すべきだ。
 加憲による憲法改正を提案した安倍首相に対してメディアは謂われなき森友問題で批判を繰り返し、加計問題では前愛媛県知事の加戸守行氏の歪められた行政が正されたのだと証言した事を、メディアは報じずにこれまた批判を繰り返しているが、それに屈せず真実を大々的に発信して支持率を高めていき、これから国民運動を起こして来年六月の国会会期末までに憲法改正の発議を行うべきである。そして、その後解散して、(国民投票で)過半数を獲得できるように、国民投票と衆議院議員選挙を同時実施するのが望ましい。そしてこれは憲法改正の第一弾。まず改憲可能なことを国民が実感した上で、独立自衛のできる自主憲法の制定に取り組まなければならない。
 日本を取り巻く情勢はだんだん厳しさを増してきている。ニューズウィークの七月十一日号に外交アナリストの河東哲夫氏が「危機不感症に陥った日本を世界の激震が襲う日」というコラムを書いている。「今の世界では危機が起き過ぎて、何でもすぐ忘れられる。北朝鮮のミサイル危機でも、『何も起こらなかった』と日本はまた能天気だ。しかし今や国際政治の激震がいつ日本を巻き込むか分からない時代となった。まずは変動する『プレート』を概観することで、日本の『耐震性』を見直してみよう」「隣国・韓国の文在寅大統領は北朝鮮ミサイルの盾になる米軍のTHAAD(高高度防衛ミサイル)追加配備を先送りし、日本とは慰安婦問題を蒸し返す構えだ。そうやって対米・対日関係を棚上げすれば、韓国は北朝鮮や中国に対して弱い立場に追い込まれるだろう」「北朝鮮の核ミサイルが米本土に届く性能を獲得しようとしているのに、アメリカは日韓両国が北朝鮮から報復攻撃を食らうのを考慮して武力行使に踏み切れない。そこでアメリカは北朝鮮問題を中国に委ねて、朝鮮半島から実質的に押し出されつつある。南シナ海でもトランプ政権は中国の懐柔を受け、米軍は中国が人工島の守りを着々と固めるのに手出しできない」…など世界は不確実性を増している。日本人がこの危機を実感できないのは、日本のメディアの多くが反日日本人による反日メディアで、本当の事が人々に伝わっていないからだ。教科書もメディアの報道も誤っているために、間違っていることが正しいと思われている日本の国際的地位は、どんどん低下している。このままでは日本は、中国やアメリカ、下手をすれば北朝鮮の支配下になってしまう。
 日本は一日も早く真っ当な憲法を手に入れ、独立自衛の国家にならなければならない。

2017年7月15日(土)18時00分校了