日本を語るワインの会256

ワイン256恒例「日本を語るワインの会」が会長邸で行われました。昨年九月十三日まで復興大臣を務めた衆議院議員の渡辺博道氏、クルド人問題に揺れる川口市を地盤とする衆議院議員の髙橋英明氏、要人警護の会社を経営しながら映画監督も務める株式会社カートエンターテイメント代表取締役社長の柿崎ゆうじ氏、日乃本の会の発起人も務めた大東文化大学法学部教授の松原孝明氏をお迎えし、様々な話題で盛り上がりました。
台風等の災害対策も考えて
北陸新幹線は米原ルートに
 アメリカ・ワシントン州のハンフォードは、かつて日本に投下された原子爆弾のプルトニウムが精製された場所で、放射能による汚染も懸念されていた。しかし現在は廃炉や除染を進めながら、見事に町興しに成功している。渡辺博道氏は二年前にハンフォードを視察、その復興の手法を学んで今進めているのが、福島県浪江町で二〇二三年に活動を開始した福島国際研究教育機構(F‐REI、エフレイ)だ。ロボット、農林水産業、エネルギー、放射線科学、原子力災害等のテーマの研究、産業化、人材育成を行い、これからの福島の復興の中核拠点となる。日本やヨーロッパはこれまで、三Kと呼ばれる「きつい」「汚い」「危険」な仕事を海外からの労働者に任せてきたが、アメリカでは技術者等高度な人材を招き入れる、質の高い移民政策を行っている。日本もそうなるべきで、特にF‐REIは、その受け皿となることを目指している。
 かつては上司に気を遣わなければならなかったが、令和では部下に気を遣う。ハラスメントという概念が一般になり、パワハラ、セクハラで上司が訴えられる時代だ。今や一番下っ端が一番強く、トップが一番弱いという恐ろしい時代になった。だからサラリー「パーソン」経営者はリスクを取らない。最近は台風が襲来する前に「計画運休」と言って、新幹線等がストップしてしまう。急な運休によって、利用者やメディアから批判されるのを避けるがためだろうが、全く台風が到達せず、飛行機は増便までして飛んでいるのに、新幹線だけストップしているのは異様だ。東海道新幹線の運休によって、北陸新幹線を使用して敦賀経由で大阪へ行く人も出てきた。敦賀以西の北陸新幹線の開通時期は未定だが、かなり先になる目処が出されている。であればフル規格に拘らず、在来線利用のミニ新幹線として米原ルートにして、一刻も早く開通させるべき。今回の台風のような災害を考えれば、急ぐことを第一に議論を行うべきではないか。
考える力をつけるために
CEOが提唱する「一日一所見」
 移民大国・アメリカは、出生率が低くなっているにもかかわらず移民の数が増えることで、全体の人口が増加している。近年顕著なのは、カリフォルニア州からテキサス州へ人口が移動していることだ。伝統的にカリフォルニア州は民主党、テキサス州は共和党支持で、そもそもテキサス州の方に富裕層が多い。さらにテキサス州のオースティンやヒューストン、ダラス等の街が発展していて、法人税の優遇等もあって企業の移転も続いている。逆にカリフォルニア州はサンフランシスコの治安が極端に悪化する等、衰退の傾向が強い。これはカリフォルニア州法で九五〇ドル未満の万引きや窃盗を罪に問わないとしたことが万引きの横行に繋がり、多くの店舗が閉店を余儀なくされていることとも関連する。
 アパグループは会長からCEOに代替わりして二年半が経過したが、いよいよ絶好調。九月十一日付の日経MJの一面と三面には、CEOの写真と共にアパグループに関する記事が掲載されていて、「二代目が掲げる『一ホテル一イノベーション』」という見出しが目を引く。これはCEOが経済原論の限界効用逓減の法則に沿って、考え出したものだ。お腹が空いている時にカレーを食べると満足できるが、二杯目のカレーは一杯目と全く同じものでも満足感は減る。同じ満足になるには、味変が必要だろう。つまりリピーターを獲得するには、変化が必要だ。だからどの新築もしくはリニューアルのアパホテルも、常に他とは異なる先進的な特徴を一つ備えさせてリピーター対策にするというのが、CEOの戦略だ。新築ホテルをどんどん増やす一方、定期的に既存ホテルの改装を行い、陳腐化して満足度が下がらないよう、時代をキャッチアップしていく必要がある。現在ブランドアップを強化すべく、改装の前倒しも実施中だ。
 日経MJの記事でもう一つ目立つのは、「目指すは考えるアパである」という見出しだ。記事冒頭に「創業から五〇年続いたカリスマ経営から脱し、次の五〇年へ自ら考える組織を目指す」とあるのは、まさにCEOが目指す組織型経営を示している。このポリシーの下、CEOが全社員に奨励しているのは「一日一所見」だ。人は失敗したくないあまり成功体験を繰り返す傾向が強いが、それでは失敗への道まっしぐらだ。だから毎日、何か新しいことを行って、自分の脳に刺激を与えて、常に「考える脳」にするのだ。CEOの場合はこの「一所見」として、コンビニエンスストアへ行って、いつものではなく新商品を買うことを心掛けている。新商品の多いコンビニは「一所見」にはぴったり。馴れたものしか買わない、食べない、飲まない姿勢では、幅広い知見の中から最良のものを導き出すことができず、マンネリ化する。この「一所見」は、例えば「普段とは異なる道で帰宅する」でもいいのだ。CEOは、若い社員には「三所見」を目指せと伝えている。
シアトルに初の所有ホテル
新ブランドホテルも好評
 この六月にアパホテルは、北米で四十五棟約四千六百室を展開するコーストホテルチェーンの一つとして、アメリカで初の所有ホテルとなる「Coast Seattle Downtown Hotel by APA」をワシントン州シアトルにオープンした。シアトルはかつてMLBのシアトルマリナーズに所属したイチローが住んでいたことで知られているが、グーグルやアマゾン、スターバックスが本社を置く街でもある。コーストホテルチェーンはそもそもバンクーバー等カナダの西海岸を中心に展開されていたが、シアトルはバンクーバーから約二百三十kmで、これは東京と静岡県掛川市との距離とほぼ同じ。国境は跨ぐが時差もなく連携が取りやすい。今後はバンクーバーとシアトルを二大拠点として、さらに北米にホテル網を広げていく予定だ。
 ホテルは所有、運営、ブランドの三つの要素から成り立っている。海外の有名ホテルの場合、所有、運営は別会社でブランドのみを使用させているケースが多い。そのブランドを持つマリオットやハイアット等の巨大ホテルグループの集客力が、世界的に絶大だから成り立つビジネスだ。しかしアパホテルは、自社ブランドのホテルを所有し運営するのが基本だ。だから三〇%にも及ぶ高い経常利益率を出すことができる。
 この二月にグランドオープンした新ブランドのアパホテル、アパホテルステイ〈富山〉が若い人を中心に好評だ。一番の特徴はサウナ。オートロウリュのメインサウナ室に加え、セルフロウリュの個室サウナブースが男性用に四ブース、女性用に一ブースある。水風呂は色とりどりの陶器風呂、外気浴・内気浴スペースもしっかりと確保されているという、サウナーに嬉しい施設だ。もう一つの特徴は、オールインクルーシブシステムを採用していること。宿泊料金だけでサウナはもちろん、ソフトドリンクから夕方からは一部アルコールも無料で楽しめ、深夜にはカレーも無料で食べることができるラウンジの利用が可能、さらに富山の旬の食材が豊富に登場する朝食バイキングも無料で味わうことができる。無料のマッサージチェアや千五百冊の最新コミックや電子書籍、ハンモックもあり、ゆったりとホテルステイを楽しむことができる。
日系人の日本での就職を
積極的にサポートすべきだ
 川口市にクルド人が多いのは、三十年前に解体業の会社に最初のクルド人が就職、彼が非常に真面目に働いたために、社長が仲間を呼ぶことを勧めたことが発端だ。川口市の芝園団地は中国残留孤児の関係者が住んだことから中国人の数が増え、団地の住民の約半数の世帯が中国人になっている。
 渡辺博道氏はこの八月に特派大使として、カリブ海の島国・ドミニカ共和国の大統領就任式典に出席してきた。一九五〇年代に当時の大統領による募集によって、千人を超える日本人がドミニカ共和国に移民として渡航したが、事前に謳われた破格の条件は偽りで、土地も耕作に適さず、土地の所有権も認められずに非常に苦労をした。政府による集団帰国も行われたが、二〇〇〇年には移民が日本国政府に対して国家損賠賠償を求める訴訟を行い、二〇〇六年に和解している。今も三世、四世の日系人が住んでいるが、その中には日本に帰国したいという人がいる。ただ問題は語学の壁であり、彼らはスペイン語しか話せない。日本語学校で学んでもらい、日本で働くことができる道を作るべきだ。日系人が日本に帰ってきて働くというのは、日本にとってはウェルカムなことだろう。
 東京大学の授業料値上げは、やむを得ないことだ。とにかく今は大学が多く、黒字の大学は少ない。国立大学の一部を大学院のみの研究機関にして、残りの国立大学は私立化して淘汰されるに任せてはどうか。トップ層は研究のために大学院に進み、特に成績優秀者は学費免除等の特典を与えるべきだ。昔は大学教員になると奨学金が全額免除になったが、今はその制度はなくなった。かつては国立大学の教員が、六十五歳の定年退職後に私立大学の教員となるケースも多かったが、今ではすっかり少なくなっている。大学に就職して教員・研究者になることがリスクになっている。奨学金の全額免除の復活や定年退職後のセカンドキャリアの斡旋などを行うべきではないか。また、学校推薦やAO入試等で、学力的に問題のある学生が地方の国立大学に入学するケースが増えている。入試にセンター試験を課さないAO入試もあり、高校時代の成績と小論文、プレゼンテーションだけで合格することができる。AO入試においても、例えばセンター試験において一般入試で合格する学生の八〇%の成績を取ることを条件とするなど、学力の担保が必要ではないだろうか。