日本を語るワインの会157

ワイン156二〇一六年十二月一日、恒例「日本を語るワインの会」が代表自邸にて開催されました。二〇一七年には創業五十周年を迎える加賀電子株式会社の代表取締役会長の塚本勲氏、今年五冊本を出し、さらに十二月に二冊最新刊が出る、カリフォルニア州弁護士のケント・ギルバート氏、日本酒好きが高じて最近利き酒師の資格を取得した慶應義塾大学経済学部教授の塩澤修平氏、トランプ氏勝利を二〇一六年三月に出した自著「トランプ革命」で予言した共和党全米委員会顧問・アジア担当の饗庭直道氏、公認会計士・税理士・中小企業診断士として、企業を総合的にコンサルティングする、株式会社K’sプライベートコンサルティング代表取締役の金井義家氏をお呼びして、「力の論理が支配する年」となる二〇一七年の展望を語り合いました。
思い込みで予測を外した
リベラルな米メディア
 トランプ氏がアメリカ大統領選を制した。一説には平日はワシントンで執務を行い、週末はマンハッタンの家に戻るのではという憶測もある。人事が今着々と進んでいるが、国務長官にロムニー氏が指名されると面白くなる。ロムニー氏は前回二〇一二年の大統領選挙での共和党の大統領候補だったが、オマバ大統領に敗北した人物だ。今回の大統領選挙では予備選挙の段階から徹底して反トランプの言動を続けてきた。その彼がトランプ政権の閣僚になれば、大きなインパクトがある。トランプ氏が、予備選挙から本選挙に至るまで自分に反対していた人々を全部取り込んでいっているのは、大した交渉力だと言わざるを得ない。暴言から思慮の浅い人間だと思われがちなトランプ氏だが、実は全てに関して相当思慮深く行動している頭の切れる人物だ。暴言も、発言にニュース性を持たせてメディアへの露出を増やし、広告と同じ効果を持たせるという戦略だった。これに乗って視聴率が取れればいいとトランプ氏の言動を報じ続けたメディアは、今反省を始めている。日本の政治学者はほとんどが、アメリカ国民もバカじゃないので、トランプ大統領など実現しないと言い続けてきた。その中で代表は、二〇一六年三月から十八回、Apple Town誌上や勝兵塾でトランプ氏勝利は日本の独立自衛のチャンス、勝つ確率も高いと言い続けてきた。また元々リベラル色が強いアメリカのマスメディアだが、今回はほとんどがクリントン支持に回っていた。CNNなどはトランプ氏に「クリントン・ニュース・ネットワーク」だと皮肉られるぐらい。ニューズウィーク誌はクリントン氏勝利の特集号を印刷して、十二万五千部を出荷してしまった。結局回収され廃棄されたと思われる。日本のメディアがちゃんと調べずに、アメリカのメディアの言うことを鵜呑みにした。そもそも多くの日本人はカリフォルニア州やニューヨーク州にばかり行って、海岸から二十五キロメートルより先のアメリカ内陸に入ろうとしない。たまにグランドキャニオンに観光に行くぐらいだ。だから本当のアメリカ人というものを知らない。日本人でもアメリカ内陸部まで入って調査した人は、トランプ氏勝利を予測していた。またトランプ氏は非常に効率の良い戦い方をしていた。アメリカ大統領選挙の仕組みは、州ごとの選挙人の奪い合いであり、勝った州の選挙人を総取りできる。負ける可能性の高い州は捨て、激戦の州にエネルギーを集中したのだ。その結果、総得票数ではクリントン氏の方が多かったにもかかわらず、選挙人数ではトランプ氏が圧勝した。クリントン氏の方が得票数が多いのに選挙に負けたことを問題にする人もいるが、最初からそういうルールで戦った以上、負けた後にクレームを入れるのはおかしい。過去にも、二〇〇〇年のゴア対ブッシュの時に勝者の方が得票数が少なかったことはあったのだ。世論調査と選挙の結果がなぜずれたのか。熱狂的なトランプ支持者の他に、支持を口に出すと批判されると考える「隠れトランプ」がいたからだとも言われている。

トランプ・タワーの
デザインと設計は素晴らしい
 代表の目標は勝兵塾から首相を輩出することだ。その最有力候補は稲田朋美防衛大臣だろう。南京での「百人斬り競争」という嘘の新聞記事が原因となって、先の大戦後の軍事裁判で日本軍将校が戦犯として処刑された。その遺族が毎日新聞、朝日新聞などを相手取って起こした名誉毀損の裁判の弁護人を稲田氏は務めていたのだが、それを当時幹事長代理だった安倍晋三氏がスカウトした。まだ政治家歴も浅く、今は安倍首相が与えた防衛大臣として試練に耐えているが、これを乗り切れば首相への道が大きく開けるだろう。安倍首相が稲田氏を要職に就けているのには、ライバル対策の意味もある。都道府県の知事でも、優秀な人を副知事には任命しない。寝首を掻かれるからだ。それと同じことだろう。しかし安倍首相の任期が三期九年に伸びると、最長で二〇二一年九月までとなる。それまでに稲田氏が成長して跡を継ぐというのが、理想の形ではないか。防衛大臣になった後の二〇一六年八月十五日に稲田氏が外遊をしていて靖国神社に参拝しなかったことを、逃げずに行って欲しかったと批判する人もいる。しかし防衛大臣である以上、余計な波風を立てるわけにもいかず、戦略としては上手。安倍首相が段取りをしたのだろう。
 トランプ・タワーの全てをトランプ氏が所有しているわけではない。トランプ氏の事業は設計とデザインとブランド貸し業なのだ。資産保有で考えれば、代表の保有しているものの方が多いかもしれない。ケント・ギルバート氏はカリフォルニア州弁護士で、その息子はニューヨーク州とカリフォルニア州の弁護士資格を取得した。全米で通用する弁護士資格というものはなく、州ごとに取得しなければならない。大変なように思えるが、試験には共通の部分とその州特有の部分があり、州ごとに後者を勉強すればいい。そもそもアメリカの司法試験は日本ほど難しくない。モンタナ州ではモンタナ州立大学を卒業するだけで弁護士資格が取れる。フロリダ州の司法試験の合格率は九八%だ。

憲法前文の通りであれば
世界に軍事力は必要ない

 二〇一七年は力の論理が支配する年、帝国主義が復活する年だ。日本が独立自衛の国になる必要性がさらに急激に高まったと言えるだろう。アメリカのバイデン副大統領が二〇一六年八月に「アメリカが日本を核武装させないために日本国憲法を書いた」と発言した。トランプ氏は、選挙中は日本と韓国の核保有容認とも取れる発言をしたが、選挙後はそんなことは言っていないと否定している。アメリカは日本の核武装を絶対に認めない。中国や北朝鮮から核攻撃される可能性がある以上、アメリカは日本が核攻撃されても絶対に反撃せず、核の傘は幻だ。日本が抑止力を持って自国を守るために独自の核武装をすることが無理なのであれば、同じ敗戦国ドイツには認められているニュークリア・シェアリングの日本への導入を、アメリカに認めてもらう必要がある。アメリカは攻撃用兵器も日本に持たせようとしない。迎撃ミサイルシステムは、アメリカが日本の防衛予算を理解した上で、日本に攻撃用兵器を持たせないために売りつけたものだ。しかし迎撃ミサイルには、迎撃能力以上の飽和攻撃を受けた場合には対抗できないという、致命的な問題がある。同時に十発のミサイルしか迎撃できないシステムであれば、二十発のミサイルが同時にやってきた場合には撃ち落とせないのだ。やはりニュークリア・シェアリングの導入や攻撃用兵器の保有で抑止力を持つべきだ。そのためにも、憲法改正を早急に行わなければならない。
 日本国憲法の前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とあるが、世界がこの通りであれば、軍事力など必要ない。平和を愛する諸国民の中に北朝鮮や中国が入るのだろうか。アメリカからソ連、中国と拡散した核兵器を、北朝鮮までが保有するに至った。このままでは三回目の核攻撃を受けるのはまた日本になってしまう可能性が高い。しかし多くの日本人は九条があるから、これを唱えていれば日本は平和だと信じている。これは正に百田尚樹の「カエルの楽園」で描かれていることだ。この憲法九条だが、それ自体が憲法違反だという説もある。憲法の目的は国民の生命を守るはずのものなのに、九条によってそれが妨げられているというのだ。少なくとも九条二項は削除されるべきだろう。現在衆参両院とも三分の二の改憲勢力がいるとされているが、どの部分を改正するかについて、コンセンサスが取れていない。一気に全ての改憲をするのではなく、多くの人の同意を得やすい部分から改憲し、二段階で行うべき。まず前文など、誰が見ても明らかにおかしい部分で発議、国民投票での承認によって憲法改正を行い、その次に九条など本格的な部分の改正に取り組むべきだ。九条の様にまだ議論が多い改憲にいきなり臨むことは、国民投票で否決される可能性が高い。一旦否決されると、再度改正発議することが非常に困難になるからだ。

トップチェーンは百万室!
進むホテルチェーンの統合
 アパホテルはカナダとアメリカに三十九ホテルを展開するホテルチェーンを買収し、二〇一六年十一月に’COAST Coal Harbor Hotel by APA’というブランドでのグランドオープンを果たした。三十九ホテルの内、五つのホテルが保有、六つが直営、残りはフランチャイズという布陣だ。APA Hotelとしなかったのは、APAのブランドは北米ではまだまだこれからであり、元のCOAST Hotelの方が、親しみがあるという判断からだ。最近ホテル業界では、’by〜’とオーナーホテルグループの名称がホテル名のお尻に付くことが一種の流行りとなっている。それだけホテルチェーン間の買収が盛んなのだろう。二〇一六年で最も大きなホテルチェーン買収劇は、マリオット・インターナショナルによるスターウッド・ホテルズ&リゾートの買収だろう。買収金額は約一兆五千億円。これでマリオットの運営客室数は百万室以上となり、ヒルトンを抜いて世界一のホテルチェーンとなった。アパホテルの目標は二〇二〇年に十万室だから、その十倍の規模のホテルチェーンが世界のトップに君臨しているということだ。ホテルチェーンはスケールメリットを享受するために部屋数を増やすのだが、一つひとつのホテルを買収するのではなく、ホテルチェーンを買収しないと部屋数は一気に増えない。アジアで今、観光客が大きく減少して危機に陥っているのは、台湾のホテルだ。その理由は台湾総統に民進党の蔡英文氏が就任した後の台湾に、中国が嫌がらせをして、中国本土からの観光客を制限しているのだ。台湾のホテルをこのタイミングで買収しようとしているホテルチェーンは多いだろう。