Big Talk

先の大戦を日本が戦ったことで、世界の人種平等が実現したVol.393[2024年4月号]

ジャーナリスト 井上和彦
×
アパグループ会長 元谷外志雄

大東亜戦争の真実を伝える著作で、昨年のアパ日本再興大賞を受賞したジャーナリストの井上和彦氏。防衛関連の専門商社に勤務した経験を活かして、国内外の歴史の証言者に直接取材をする手法で事実を明らかにし、著作活動のみならずテレビ等メディアのコメンテーターとしても活躍する井上氏に、日本人が今知らなければならない史実等をお聞きしました。

井上 和彦氏
1963年滋賀県生まれ。法政大学社会学部を卒業後、航空宇宙防衛関連専門商社に入社。商社での経験から軍事、安全保障、外交問題、近現代史をテーマに言論活動を開始、各種バラエティー番組やニュース番組のコメンテーターを務める。2016年フジサンケイグループ第17回「正論新風賞」を受賞。2023年第6回アパ日本再興大賞を受賞した最新刊『歪められた真実 昭和の大戦 大東亜戦争』(ワック株式会社)をはじめ、著書多数。

「定説」を打破することで
アパ日本再興大賞を受賞

元谷 本日はビッグトークへの登場、ありがとうございます。また昨年のアパ日本再興大賞の受賞、おめでとうございます。

井上 素晴らしい賞をいただき、心より感謝申し上げます。この受賞を励みとして文字通り日本再興のために頑張る所存です。

元谷 アパ日本再興大賞を受賞したのは、『歪められた真実 昭和の大戦 大東亜戦争』という昨年井上さんが上梓した本でした。旧日本兵の皆さん等に井上さんが実際に会って取材した事実を基に、これまでメディアや教育現場で語られてきた大東亜戦争の「定説」がいかに間違っているかを鋭く指摘した本で、この点が非常に高く評価されて今回の受賞となりました。私は、大東亜戦争で日本が果たした役割は大きいと考えています。

井上 ありがとうございます。歴史を振り返りますと、日本が果たした役割はたいへん大きく、それまでの世界を一変させたといっても良いと思います。

元谷 植民地を無くして、人種平等を実現したということですね。

井上 まさにそれなのです。

元谷 もし日本が戦っていなかったら、世界は未だに西欧列強の支配下にあり、彼らのキリスト教、白人優位の思想の下、植民地が継続していた可能性があります。結果は敗北でしたが、日本が戦ったことが西欧列強の世界支配の打破に繋がり、自由平等の世界を生み出すことができたのです。この功績が、従来あまり語られていません。

井上 その最も重要なことが語られず、ありもしない出来事がデフォルメされて喧伝され、まるで日本が悪いことをしたように語られてまいりました。

元谷 それはアメリカ日本占領時のGHQによる洗脳政策によって、そう思い込まされたのでしょう。世界を相手にして戦ったことは凄いことであって、負けたとはいえ、今の世界を生み出したという意味では日本は勝者だったのです。

井上 私も偏った戦後教育と歪な報道の中で育ったのですが、大人になって世界に出てみると日本の学校教育や報道がいかにデタラメであるかがわかったのです。特に終戦記念日の八月十五日が近づくと、まるでテレビや新聞等のマスメディアは、かつて日本が悪いことをしたという自虐史観で報道を繰り返す。学校教育も同じです。ところが、大東亜戦争の戦場になったアジア諸国を含め世界各国では認識が全く異なります。私自身、これまで数十か国を訪問しましたが、一度も戦前の日本の行動を批判する声を聞いたことがありません。日本のマスメディアはいったいどこで、どんな人に取材しているのでしょうか。

元谷 やはり日本の教育とメディアの報道が、間違った認識を多くの日本人に与えているのです。私は本当のことを知る機会を多くの人に与えるために月刊Apple Townを発行し、このビッグトークや藤誠志のペンネームで執筆するエッセイで真実を伝えています。『歪められた真実 昭和の大戦 大東亜戦争』の出版で、井上さんも私と同じことを目指したのではないでしょうか。

井上 その通りです。

元谷 ところで、井上さんはどのようなきっかけで、軍事ジャーナリストになったのでしょうか。

井上 大学では歴史や軍事ではなく、メディア論を学んでいました。大学卒業後は、防衛・航空宇宙関連の専門商社に入社して、世界中を飛び歩きました。当時はまだインターネットやSNSなどがありませんでしたから、自分が見聞することが全てであり、そのどれもが新鮮でした。また同時に日本の学校教育やメディアで伝えられていることと、海外との違いにも驚きました。そんな中、休暇でソ連邦(当時)の首都モスクワを皮切りにヨーロッパを訪れたのですが、その帰路にモスクワでクーデターが勃発し、その後ソ連が崩壊したのです。世の中の大きな変化と日本の平和ボケした状況のギャップを感じ、日本に世界の動きと真実を伝える必要を強く感じて、ジャーナリスト活動を行うようになりました。

軍政が行った良いことが
日本では一切報道されない

元谷 アパ日本再興大賞を受賞した『歪められた真実 昭和の大戦 大東亜戦争』は素晴らしく、今回の対談もきっかけに、一人でも多くの人に読んで欲しい一冊ですね。

井上 ありがとうございます。しかし昔は月刊Apple Townのような雑誌が、日本一のホテルチェーンの部屋に置いてあるということもなかったので、真実に触れることが非常に難しく、教育現場やメディアで“定説”とされ伝えられることに疑問を呈するのもご法度という時代が長かった。私も取材先となった台湾で、台湾の年配者の方々から、日本の真の歴史を学ばせてもらいました。

元谷 私は台湾の元総統の李登輝さんと親しくさせていただいていました。李登輝さんの認識も、日本が世界に果たした役割というのは非常に大きいというものでした。また台湾が現在のように民主的で経済的に発展した国家になったことについても、日本に対して感謝の念を持っていました。李登輝さんは日本を非常に正しく評価していましたね。

井上 ところが残念なことに、自分の生まれ育った祖国である日本を悪く言う人々がいます。このことについて私は疑問を呈し問題視してきたのです。まったく不思議なことに、いわば“戦前憎悪”ともいうべき戦前の日本を批判するような主張をする人がまるで賢者のように思われてきたふしがあります。まったく理解に苦しみます。なぜ「日本は素晴らしい国だった」と称賛し先人に感謝してはいけないのでしょうか。マスコミや教育界は、史実を曲解しすぎだと思います。たとえば台湾統治ですが、日清戦争の結果、日本は台湾を半世紀にわたって統治することになりましたが、その日本統治時代に生きた人々は、日本統治時代の教育やインフラ整備などを高く評価し、感謝してくれています。同様に、大東亜戦争で戦場となったフィリピンやインドネシア、マレーシア、ミャンマーなど東南アジア諸国の人々からも大東亜戦争に対する評価は日本にすこぶる好意的で、日本の戦いへの称賛や感謝の声こそあれ、日本に対する批判の声など聞いたことがありません。ガダルカナルやラバウルなど島嶼国でも同様です。私だけではなく、多くの日本人がこうした経験をしているはずです。

元谷 アジアが日本に占領されたと見るのか、それとも植民地支配をしていた西欧列強から日本が開放したと見るのか。これまでの日本は前者の自虐史観に基づき、お詫びの外交を続けてきました。

井上 村山談話はその典型的なものでしょう。しかし日本はベトナム人ともマレーシア人とも、その他のアジアの人々とも戦ったわけではないのです。そこを植民地として支配していた西欧列強諸国の軍隊と戦ったのです。こんな基本的なことを理解していない人がいるのですから困ったものです。

元谷 日本のおかげで世界が平等になったことを、日本自身が積極的に伝えてこなかったことも問題です。外務省は弱腰で、悪いことをしました、ごめんなさいとしか言わない。それでいいのでしょうか。

井上 まったくその通りだと思います。それと、残留日本兵の戦いについてもスポットを当てる必要があると思います。大東亜戦争が終結してもなお、ベトナムでは約八百人、インドネシアでは約二千人の日本軍の兵士が復員せず自らの意志で現地に留まってこうした国々の独立のために、再び植民地支配のために戻ってきたフランスやオランダなどの軍隊と戦っています。そしてこうした残留日本兵は現地で感謝されています。二〇一七年にベトナムをご訪問された今の上皇陛下と上皇后陛下は、ベトナム人の熱狂的な歓迎を受け、残留日本兵の遺族にもお会いになっています。また昨年、天皇陛下と皇后陛下がインドネシアをご訪問され、首都ジャカルタのカリバタ英雄墓地で供花をされた時も現地の人々からとても温かい歓迎を受けられております。この墓地には残留日本兵二十八人も埋葬されています。現地の人と結婚した残留日本兵もいて、今でも彼らの子孫がいらっしゃいます。このような史実になぜ光を当てて顕彰しようとしないのでしょうか。

元谷 忘れてはいけないことだと思います。

井上 当時の蘭印、現在のインドネシアにおいて、開戦劈頭の一九四二年にオランダ軍を駆逐した今村均中将が指揮する日本軍は、インドネシアの解放後ただちに政治犯として囚われの身となっていた独立運動家のスカルノやハッタを救出し、そして各地にインドネシア人のための学校を建て彼らに教育の機会を与えました。ところがこの教育を日本語で行ったことを取り上げて日本がインドネシア人に日本語を押し付け、皇民化教育を強要したと批判する人がいます。曲解も甚だしい批判です。これまで就学の機会すら与えられなかった現地の人々に教育を施すのに、日本人がいったい何語で教えろというのでしょうか。日本語で行うより他なかったのではないでしょうか。

元谷 またインドネシアでも島が異なれば言語が異なっており、統一の言語がなかった。日本軍は日本語教育を進める一方、インドネシア語整備委員会を設置して全土統一のインドネシア語の体系化を図り、そのインドネシア語を公用語としました。

井上 そうですね。つまり日本軍の軍政のおかげで、インドネシア語が普及したのです。台湾でも日本語が共通言語となりました。台湾には、高砂族(当時)と呼ばれた原住民が住んでおり、彼らの言語は部族によってバラバラでした。そこで日本が日本語教育を行ったことで、初めて共通言語が生まれることになったのです。このことは台湾近代化の大きな原動力になりました。

元谷 これらの日本が行った「良いこと」が全く報道されずに、占領時の暗黒部分のみを日本のメディアが伝えているのは、本当に奇妙なことです。

井上 全く同感です。

元谷 東南アジアの国々に対する日本軍の軍政は、それまでの西欧列強の植民地支配とは全く異なるものでした。西欧列強は自分達に都合の良い施策を植民地に押し付けていましたが、日本軍はそうではありません。言語に関しても西欧列強は自国語を押し付けましたが、日本はインドネシアでのように、現地の言葉も重視したのです。

大東亜戦争では最後まで
日本軍は善戦し続けた

井上 日本が、これまでの白人支配の世界を打ち破ったのですが、その端緒となったのが日露戦争でした。日本が大国ロシアに勝利したことは世界中を熱狂させ、欧米列強諸国の植民地となっていた世界の諸民族に独立の機運を生んだのです。列強の植民地になるまいと近代化に邁進した明治維新の結実といっても過言ではないと思います。欧米列強諸国の脅威に晒されていた江戸末期に、武士達がその特権を捨てて明治維新を行ったのは、このままだと日本も列強の植民地になるという深刻な危機感があり、安全保障感覚が機能していたからです。江戸末期に優れた安全保障感覚がなければ、明治維新はなしえず、近代戦で日本が大国ロシアに勝つことはできなかったでしょう。

元谷 全くその通りだと思います。

井上 それから三十八年後の一九四三年十一月五日、六日に画期的な国際会議である大東亜会議を東京で開催しています。フィリピン、ビルマ、タイ、インド、満州国、中華民国から代表が集まり、共存共栄、伝統の尊重、自主独立、経済発展、そしてなにより人種差別撤廃を謳った大東亜共同宣言を採択したのです。戦後、この大東亜会議や大東亜共同宣言は日本の戦争を正当化させるものとして批判されているのですが、この会議を公正に検証し直して再評価する必要があると思います。

元谷 確かに世界の人種平等の達成に対して、日本の果たした役割は非常に大きいと思います。

井上 『歪められた真実 昭和の大戦 大東亜戦争』の中でも書いていますが、歪曲された歴史が今や「定説」としてまかり通っているのです。まずは「なぜ日本は負ける戦争をやったのか」などという批判です。そもそも日本が想定した戦いのシナリオは、開戦劈頭に相手に大きな損害を与え、適切なタイミングで講和を行う“日露戦争型”の戦争のつもりでした。アメリカとの国力の差は、当時の軍上層部はもとより政治家も皆知っていたことです。大東亜戦争は個々の作戦や戦闘も含めて、こうした“後出しジャンケン”のような批判にさらされ続けています。しかしながら個々の戦いをしっかりと検証すると、日本軍は敗れたとはいえ敵の心胆を寒からしめるほどの大きな戦果を挙げ、最後まで善戦していたことがわかります。開戦劈頭の電撃戦、神風特別攻撃隊、本土防空戦、そして終戦後の対ソ戦など我々の先人は本当に善く戦ってくれたと思います。

元谷 先の大戦を詳細に見ると、戦争末期においても日本軍が非常に良い戦いをしていたことがわかります。繰り返しになりますが、世界の人種平等に日本が果たした役割は大きい。だから一九五五年に開催されたアジア・アフリカ会議(バンドン会議)では、参加各国が口々に日本を称賛したのです。しかしその後は謝罪外交に徹したために、日本が称賛されることはなくなってしまいました。

井上 タイの首相だったククリット・プラモード氏は、「日本のおかげでアジアの諸国はすべて独立した。日本というお母さんは難産で母体を損なったけれど、それによって生まれた子供はすくすくと育っている。今日、東南アジアの諸国民が米英と対等に話ができるのは、いったい誰のおかげであるのか。それは身を殺して仁をなした日本というお母さんがあったためである」とまで言っています。こんな日本への賛辞があるにもかかわらず、現代の日本人はこうした日本に対する称賛の声を一切封印してきました。

元谷 全く同感です。

井上 先ほども申し上げましたが、現代の日本社会では、軍事に精通した戦略家気取りで、大東亜戦争時の作戦指導や指揮官などを結果から遡って批判する声も少なくありません。中にはとんでもない陰謀論もあります。むろん軍事作戦の検証や反省も必要ですが、しかしその前に、二十歳前後の当時の若者達が、未来の日本人のために命を賭して戦ってくれたことへの感謝の気持ちがないのかと言いたいのです。そして戦没者が英霊として祀られている靖国神社に参拝することが、どうして戦争賛美になるのか。こうした不条理に憤りを感じるのです。こうしたことは現代の安全保障の問題でもあります。というのも、この先、日本が他国から侵略を受けた時に、一体誰が命を賭して国民の命を守るために、国土を守るために戦ってくれるのかということです。大東亜戦争で戦死した将兵と同じように、感謝もされず、後に「無駄死にだった」などと言われると思ったら、自衛官は外敵と命がけで戦えるのでしょうか。このことは警察官や海上保安官、そして消防隊員も同じです。我々のために命の危険を顧みず日夜戦ってくれている組織や人々に感謝も敬意もなく、ただ理想論を掲げて平和を叫ぶことが知的な態度だと考えている日本人のなんと軽薄なことか。そんな国は、世界に日本しかないと思います。

英霊への感謝と敬意を礎に
日本を守り立てていく

元谷 日本はもっと、自国に誇りを持てる教育とメディアの報道をしなければならないのです。占領政策等もあって、今の日本では正しい歴史認識がなされていません。正しいことを知れば、皆保守になります。自国に誇りと自信を持つことで、世界のリーダーとして君臨する日本になるべきなのです。

井上 まったく同感です。そのために、大東亜戦争を再検証して、その意義を再評価することが必要ですね。また私は、第一次世界大戦で日本が果たした役割についても、改めて検証したいと思っています。作家のC・W・ニコルさんは生前、もし日本が地中海に艦隊を派遣していなければ、第一次世界大戦で連合軍は勝利していなかったと分析しておられました。ところが戦後の学校教育では、日本の第一次世界大戦参戦の意義や連合軍勝利への貢献度、そして世界からの高い評価などは、ほぼ習うことはありません。せいぜい青島攻略戦でドイツと戦ったくらいのことではないでしょうか。ではなぜその程度の参戦で大戦後に日本が五大国に列せられ、国際連盟の常任理事国になれたのでしょうか。それは第一次世界大戦で連合軍の勝利に大きく貢献したからにほかなりません。したがって第一次世界大戦を再検証する必要があります。また五大国になった日本が、国際連盟規約前文に「人種的差別撤廃」を盛り込むよう提案したことは画期的なことでした。このことを我々は誇りとしてもっと喧伝する必要があると思います。おまけに、アメリカのウイルソン大統領の采配でこの日本の素晴らしい提案が否決されたことも知っておく必要がありましょう。

元谷 戦後日本の問題は、戦争を一律に否定する価値観が蔓延ったことです。第一次世界大戦の後に戦争は世界的に違法化されたのですが、第二次世界大戦後にはそれはさらに精緻化して、侵略に対する武力の行使については、明確に国連憲章で認められているのです。この正しい戦いも、侵略のような悪い戦いも全て否定するのが、日本の戦後教育でした。しかし侵略されれば自衛のために戦うしかないし、そうならないためには戦争抑止力としての軍事力をきちんと備える必要があるのです。

井上 おっしゃる通りで、小学生に、理由はどうであれ喧嘩はだめと教えることと同じように、自国を守るための自衛戦争も一括りに“戦争”として、してはいけないこととして単純化されています。であればロシアに侵略されても、ウクライナは抵抗するなというのでしょうか。自国を守る自衛戦争を否定する国などどこにもなく、自衛戦争すら否定するのなら日本は国家として失格です。

元谷 ウクライナもまずゼレンスキー大統領が逃げることなく自ら戦って、緒戦でキーウを守り抜いたからこそ、EUやアメリカの支援を受けて戦いを継続することができました。日本も有事にはまず自らが戦い、日米安保は足らざるを補うために機能させるべきなのです。

井上 まったくその通りで、侵略を受けた当事国が自らの国を守るために戦わないのにアメリカ軍が戦うことはあり得ません。まずは自分の国は自分で守るという決意と十分な備えが必要です。そして世界の出来事に当事者意識をもって警戒しておかねばなりません。近年の日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増し緊迫が高まっています。にもかかわらず、日本の報道はスキャンダルや芸能ニュースばかりで、日本の防衛に関する報道は極めて少ない気がします。いったいこの国はどうなってしまうのかと思います。

元谷 かつては自衛隊と在日米軍は中国軍を圧倒する力がありましたが、経済力を背景に力をつけた中国軍との力関係は今や逆転しています。中国を見くびっている日本人は非常に多いですが、それは間違い。主席の五年二期十年までとする任期を撤廃して習近平帝国と化した中国は、周辺に弱い国があれば、必ず飲み込もうとするでしょう。そのような気を起こさせないだけの軍事力を、日本はしっかりと蓄えなくてはならないのです。

井上 そんな状況にありながら、「他国に侵略されたら武器をとって戦うか」という質問の国際世論調査で、「はい」と答えたのが日本は一三・二%で調査参加国中最下位だったことです。こんなことで、同盟を組んでいるアメリカが助太刀をしてくれるのでしょうか。

元谷 かつてはオレンジ計画で対日戦を想定していたアメリカですから、日本があまりにも弱体化していると見れば、傘下に収めたくなるかもしれません。フランスのド・ゴール大統領はドイツだけを仮想敵国とするのではなく、周りの国は全て敵だとして核兵器の保有に踏み出しました。日本も同様に自国以外は全て敵というぐらいの覚悟が必要かもしれません。

井上 寄らば切るぞという断固たる意思と構えを常に見せておくことが大切です。日本に手を出すと、軍事的にも経済的にも痛い目にあうぞと相手に思わせておく必要があります。これが抑止力なのです。こういった戦略や気概が今の日本の政治家にはないことが、実は日本の安全保障上の大きな問題だと思います。

元谷 その通りですね。井上さんのこれからの活躍にも期待しています。最後にいつも「若い人に一言」をお聞きして、結びとしています。

井上 平和で豊かな日本が、未来永劫存続してゆくためには十分な防衛力の整備が必要です。それはまた経済大国日本の国際社会に対する責務でもあるのです。そしてこの日本という国を守ってくれた先人への感謝と敬意を忘れてはなりません。今の平和と繁栄があるは、先人が命を賭して戦ってくれたおかげなのです。どうかそうした意識をもってこれからの日本を守っていってください。

元谷 今日はいろいろと興味深いお話を、ありがとうございました。

井上 ありがとうございました。