日本を語るワインの会248

ワイン248恒例「日本を語るワインの会」が会長邸で行われました。毎年数百人の若者を連れて靖国神社へ集団参拝を行っている株式会社キャリアコンサルティング代表取締役社長の室舘勲氏、自衛隊退官直後にガンの告知をされたが、以来十七年治療なしで元気に活動を続ける英霊の名誉を守り顕彰する会会長の佐藤和夫氏、劇団夜想会を主宰し演劇演出から映画監督までを手掛ける映画「めぐみの誓い」監督の野伏翔氏、『日米開戦 陸軍の勝算』(祥伝社新書)等の著書のある近現代史研究家の林千勝氏、昨年秋に長年勤めた産経新聞社を退職した前産経新聞・論説副委員長の佐々木類氏をお迎えし、年明けから天災・事件が続く日本の今年を占いました。
能登半島地震の教訓を
南海トラフ地震対策へ
 元日に起こった能登半島地震によって、石川県を中心に甚大な被害が出ている。加賀屋のある和倉温泉の宿は全て休業、今後の観光業界への影響の広がりはまだ予想がつかない。観光以外でも北陸全体でビジネスの動きが弱まっている。一月十四日の段階で、アパホテル&リゾート加賀片山津温泉佳水郷以外の北陸のアパホテルは、一部施設の制限がある場合もあるが全て営業中。佳水郷も三月十六日に予定されている北陸新幹線の敦賀延伸までには、営業を再開する予定だ。
 日本社会も企業も人々も、今回の地震を将来発生する可能性が高い南海トラフ地震等への「ケーススタディ」と捉えるべきだろう。アパグループの場合売上の約四%が北陸であり、今回の地震は経営の根幹を揺るがすものではない。しかし人口集積地で南海トラフ地震が発生したらどうなるのか。今回のケースでも被災したり、避難所暮らしのアパグループの社員がいたり、社員の家族が限界集落で食料に困っていたりする。今はまだ今回の地震の対応に追われているにせよ、この能登半島の地震をここだけの問題とするのではなく、これを教訓に他の地域の対策をもっと充実させて、必ず来る地震にしっかりと備えなければならない。
 折しも韓国映画「コンクリート・ユートピア」がロードショー公開されている。激しい地震でソウル中の建物が倒壊する中、一棟のみ残ったマンションの住民と、避難しようとする人々が争うというストーリーだ。これはフィクションだとしても、今回の地震の避難所の状態も悲惨だ。親戚など身寄りがあって金沢に行く人もいるが、そのあてのない人々は避難所に居続けて、次第に精神が荒み人間関係が崩れていく。円滑だったものが円滑ではなくなり、水を飲むにせよ食べ物を食べるにせよ、隠れて行う羽目になっている。
 不幸中の幸いは、コロナ禍後の震災だったということだろう。避難にせよ何にせよ、コロナ禍の最中であれば、もっといろいろなことが大変だったはずだ。ただ昨年五月に新型コロナの感染症としての位置付けが二類相当から五類に変更になり、一気にインバウンドも増えて今年はいい年になると思っていた矢先のこの地震は、少し残念な感じだ。
 能登半島の復興のための拠点は金沢にならざるを得ないだろう。石川県の人口は約百十一万人だが、能登半島の人口は二十万人程度で、多くの人が金沢周辺や加賀に集中している。今回の地震で輪島市の朝市は焼け、棚田の白米千枚田もずたずたになった。重要な観光資源を失い、ますます能登半島からの人口流出が激しくなるだろう。地震の石川県の産業への影響はまだ未知数だが、金沢市内でも穴水港の牡蠣や甘エビ等能登半島の水産物が入荷しなくなり、居酒屋は出すものがなくて困っていた。
非常時に求められる円滑な
コミュニケーション体制
 アパグループでは副支配人以上の社用スマートホンにコミュニケーションアプリのSlackを導入して、円滑な連絡体制を構築している。今回の震災でも一月一日の十六時以降にSlack経由でどっと情報が行き交い、三日には現地に救援物資を送るなど、CEOも早めの手を打つことができた。和倉温泉にアパグループの保有のアパートがあったが、この地震で全壊した。しかし既に老朽化はわかっており、賃貸契約を結んでいた三世帯を昨年十一月末に別のアパートに移したばかりだった。またCEOは地震の時には、スポンサードしているサッカー日本代表の試合観戦のため、国立競技場にいた。VIP席に珠洲市が本社の企業で唯一東証プライムに上場しているアステナホールディングスの岩城社長を招待していたのだが、社長は家族と一緒に東京にいることで今回の被災を免れた。これらは全て、不幸中の幸いと言えることだ。
 東日本大震災の時、NORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)はこのどさくさに紛れて、北朝鮮が日本に向けてミサイルを撃つ可能性があると、非常に警戒をしていた。このことは星条旗新聞(アメリカ軍の機関紙)にも記事が出ていたのだが、日本では全く報道されなかった。日本は危機への感覚が甘い。アメリカが常に最悪を想定して備えるのはさすがだが、これはアメリカ自体が陰謀を企てることに慣れている国だからかもしれない。
 今回の震災では能登空港が被災したために、航空の拠点としての機能は小松空港が担った。やはり都道府県に一つの空港は厳しい。災害を考えれば、二つ以上の空港は必要だろう。様々な災害を乗り越えてきた日本だから、今回も力強く復興に向かうのは確かだが、観光需要の復活には時間が掛かるかもしれない。特に被害の大きい和倉温泉の再生がかなり遅れる可能性があり、「おもてなし日本一」の加賀屋も厳しい状況に直面することになる。
大東亜戦争の評価をはじめ
歴史教育を正していくべき
 林千勝氏も佐藤和夫氏も、大東亜戦争の正しい位置付けが行われるための活動を行っている。一般的には日本軍の大失敗とされるインパール作戦だが、この作戦はイギリスがインドの植民地支配を止め、安倍晋三元首相が提言した「自由で開かれたインド太平洋戦略」の礎にもなっている。インパール作戦こそ大東亜戦争の本意を示したものであり、日本が戦ったからこそ世界から植民地が無くなったのだ。四月から防衛省の統合幕僚学校と陸上自衛隊の指揮幕僚課程でマスコミ論と社会情勢の講義を行う佐々木類氏も、戦前の日本人がやってきたことは悪いことばっかりだったという日本の歴史教育を正すべく、言論活動を続けていくという。
 室舘勲氏は若者に日本書紀を語り、二千六百八十年にわたる歴史を伝えることで、自然に日本っていいなと思ってもらう活動を行っている。社会で活躍しているカッコいい男女が当たり前のように靖国神社に参拝し、当たり前のように正しい歴史観を語るようになれば、同じように考え、行動する若者が自然と増えていくようになる。
 野伏翔氏の監督した映画「めぐみへの誓い」は、最初は演劇として行ったものを映画にした作品だ。制作費七千五百万円は全て寄付によって賄われた。日本だけではなく、アメリカやドイツ、韓国等海外でも上映している。昨年三月にはチェコのプラハでも上映した。旧共産圏の人は東西冷戦時代に同様の記憶があるのか、この映画の内容が非常に良くわかると言ってくれる。一方アメリカ人は、こんなことは信じられない、日本政府は何をやっているのだという反応だ。未だに拉致被害者を取り戻せていない原因の一つは、誤って伝えられた歴史に基づく間違った贖罪意識だ。映画ではそれを正すべく、先の大戦中に朝鮮人女性二十万人を強制連行したのは嘘だという台詞を入れたりしている。一九五〇年代から始まった在日朝鮮人の帰還事業だが、一緒に帰還した約千八百人の日本人妻を含む日本国籍を持つ約六千六百人は、ほとんどが北朝鮮で処刑されたと見られている。しかし日本は、拉致や処刑の罪を北朝鮮に償わせることができない。これを正していかないと、我々の子孫の未来が心配だ。
自社所有にこだわることで
経常利益五百億円へ

 ホテルを分解すると、「所有」「運営」「ブランド」に分かれる。世界的に有名なホテルでもブランドがそうであるだけで、所有と運営は全く異なる企業というのが普通だ。しかしアパホテルは所有、運営、ブランドをすべて自社で行っている。だから、他のホテルの三倍となる三〇%を超える経常利益率を叩き出すことができる。アパグループは昨年十一月の決算での経常利益が五百億円を超える見込みだ。
 アパホテルの海外進出はユニークだ。通常の日本企業であれば、韓国等近隣の国から東南アジアへと領域を広げていくが、アパホテルは四十一ホテルのチェーンホテルを買収する等で、カナダとアメリカの北米に一気に進出、その後北米の収益だけを原資に新しいホテルも建設している。新しいホテルは日本のアパホテルと同様の運営をしているが、元からあるホテルは現地独自の運営方法を踏襲している。そもそも黒字だから買収したわけで、利益が出ているホテルに対して、オーナーだからといって占領軍のように権力を行使するようなことはするべきではないというのが、会長の考えだ。北米のホテルは西海岸に集中しているが、今後はドジャース入りした大谷翔平氏の「効果」もあって、さらなる集客が望めるはずだ。
 ホテル社長の決め台詞である「私が社長です。」は、アパホテルによって商標登録されている。似たようなことを言う人が沢山出てきたからだ。アパホテルは実直にお客様にいいと思うサービスを続けてきたのだが、その結果として日本一のホテルになっていた。インターネットや温水洗浄便座もいち早く導入、部屋を明るくしたり、スイッチ類をベッドサイドに集中させたりする等の工夫も行ってきた。また自社HPでの予約システムの充実も業界に先駆けて行い、旅行会社やOTA(オンライン旅行会社)に過剰に頼る必要のない集客体制構築に成功している。
 一九九七年に社名をAPA(アパ)に変更したが、これはAlways Pleasant Amenity(いつも気持ちの良い環境)の略であり、環境重視はアパが建売住宅事業を行っていた頃から着目していたことだ。アパホテルの部屋が小さいのは、ランニングコストが掛からないことと、温暖化ガスの排出量を減らすため。その他、節水のため卵型にした浴槽、一定量出ると自動で止まる定量止水栓、お湯に空気を含ませる節水シャワー等、客室の至る所に環境保護のための工夫がなされている。