恒例「日本を語るワインの会」が会長邸で行われました。野党第一党を目指す日本維新の会代表の衆議院議員・馬場伸幸氏、二〇一五年から国政選挙に挑戦、二〇二一年に初当選した衆議院議員の沢田良氏、著書『空から提言する新しい日本の防衛』(ワニ・プラス)が今年のアパ日本再興大賞の候補となった元航空自衛隊空将の織田邦男氏、環境省時代の経験から再エネ普及を専門としながら日本の歴史研究も行う日本史探求家の内藤克彦氏をお迎えし、激動期を迎えた世界、そして日本について語り合いました。
安全保障を学んだ学生は
武器をとって日本を守る
武器をとって日本を守る
織田邦男氏は大学で安全保障の講義を行っている。受講者の数は最初六十五名だったが、今年の前期は百八十名、後期は三百十二名になった。海外での動向も踏まえて、若い人が安全保障に興味を持ち始めている。学生はテレビも新聞も見ずに、ネット記事の見出しだけを見ているから、ハマスがイスラエルを攻撃したことは知っていても、その詳しい内容は知らない。ハマスと国際人道法の関係を講義すると、学生は目を輝かせて聞き入っている。若い人々が今、安全保障を学びたがっている。「他国に侵略されたら武器をとって戦うか」という質問の国際世論調査で、「はい」と答えた率が日本は一三・二%で最下位だった。リトアニアがブービーで、トップは九八%のベトナム、先進国は大体六〇%台で並んだ。織田氏の講義で最初にアンケートをとったら、初回は一五%だった「はい」が、十四回の講義の最終回に聞くと七九%に跳ね上がった。これは日本の教育が間違っていることを示している。戦争放棄で戦争は起こらないと綺麗事を教えているが、実際には戦争放棄をしても、戦争は日本を放棄しない。国家や国民、人権、核抑止、国連等、安全保障の基本を教えるだけで、これだけ学生の考え方が変わるのだ。日本の一流大学でも安全保障を教えていないために、日本のトップエリートは安全保障を知らない。国会の議論を聞いていても、交戦権の概念すらわかっていない。安全保障を知らないで大臣や官僚がアメリカと外交交渉を行っていると思うと、織田氏は背筋が寒くなるという。
自衛隊の幹部として諸外国の軍隊の高官と話をしていると、彼らは今でも特攻隊という作戦を行った侮れない軍隊の末裔という視線で自衛隊を見ていることがわかるという。こうして、日本は今でも先の大戦の英霊に守られているのだ。
ウクライナのゼレンスキー大統領は戦時の指導者としてはピカイチだが、戦争の勃発を食い止めることはできなかった。ロシアのプーチン大統領は、二〇二二年二月二十四日という北京での冬季オリンピック終了直後に開始したこの「特別軍事作戦」を、パラリンピックが始まる三月四日までに終えるつもりだった。ゼレンスキー大統領は、そんなに簡単にはいかないことを明確にプーチン大統領に事前に伝えて、侵攻を留まらせるべきだったのだ。抑止には三つの原則があり、反撃する「能力」と「意志」、そしてそのことを「伝達」することが求められる。「伝達」ができていれば、プーチン大統領は戦争を起こしていなかった。
自衛隊の幹部として諸外国の軍隊の高官と話をしていると、彼らは今でも特攻隊という作戦を行った侮れない軍隊の末裔という視線で自衛隊を見ていることがわかるという。こうして、日本は今でも先の大戦の英霊に守られているのだ。
ウクライナのゼレンスキー大統領は戦時の指導者としてはピカイチだが、戦争の勃発を食い止めることはできなかった。ロシアのプーチン大統領は、二〇二二年二月二十四日という北京での冬季オリンピック終了直後に開始したこの「特別軍事作戦」を、パラリンピックが始まる三月四日までに終えるつもりだった。ゼレンスキー大統領は、そんなに簡単にはいかないことを明確にプーチン大統領に事前に伝えて、侵攻を留まらせるべきだったのだ。抑止には三つの原則があり、反撃する「能力」と「意志」、そしてそのことを「伝達」することが求められる。「伝達」ができていれば、プーチン大統領は戦争を起こしていなかった。
総動員のイスラエルには
短期決戦しか道はない
短期決戦しか道はない
日本のメディアは決して認めないが、力の空白が軍事行動を招く。二〇一三年九月にシリアに軍事介入しないことを表明したアメリカのオバマ大統領は、同時に「アメリカは世界の警察官ではない」と宣言した。すると翌二〇一四年の三月にロシアがクリミア半島を併合し、中国が南シナ海での人工島建設を加速させた。アメリカは今、ウクライナと中国という二正面の戦いを行っているが、イスラエルとハマスの紛争が拡大すると、中東にも力を注がざるを得なくなる。日本が早急にやるべきことはイランを説得してヒズボラの参戦を防ぎ、戦火の拡大を抑えることなのだが出来ていない。イスラエルには短期決戦しか道がない。三十六万人の予備役動員を行っているが、イスラエルの人口は約九百万人で内二百万人がアラブ人、ユダヤ人は七百万人程だ。その三十六万人とはその約五%で、日本で言えば六百万人が軍隊に行くということ。社会を停滞させないためにも長期の動員はあり得ない。今の状態は五十〜六十日が限界だろう。
バランス・オブ・パワーが戦争を抑止するということを、メディアも含め多くの日本人が理解しなければならない。一九八七年にゴルバチョフ書記長とレーガン大統領が締結した中距離核戦力全廃条約だが、適用外の中国が中距離核兵器をどんどん増やしていることから二〇一九年失効、アメリカは来年から中距離核兵器の配備を再開する。アメリカのインド太平洋軍司令官が指摘しているように、バランス的には日本の南西諸島付近への配備が一番いい。力のバランスを理解できない人々が反対しているが、戦争を抑止するために、日本は非核三原則を止めて中距離核兵器の国内への配備を認めるべきだ。
航空自衛隊の飛行隊長は四十歳ぐらいが限度だ。部下はパイロットが五十五名、整備兵が二百名。しかし厳しい戦闘機パイロットの世界では、隊長でも上空の訓練で「負ける」と発言権を失う。そのため無理をして亡くなった飛行隊長が結構いる。二〇二二年に小松基地のF‐15が墜落した時のパイロットもベテランだったが、事故原因は空間識失調(バーティゴ)という、パイロットが感覚的に飛行方向がわからなくなる現象だった。当時の気象は冬のみぞれで薄暮だったが、これはバーティゴが起こりやすい状況だ。またバーティゴにはどんなに訓練しても陥る可能性があり、とにかくその時は感覚ではなく計器を信じろと教えられるのだが、ベテランほど自分の感覚を信じて事故になることがある。織田氏と同期で防衛大学に入学したのは五百三十名、卒業したのは四百二十名、その内航空自衛隊に入った百名でパイロットを目指したのは五十八名なのだが、実際にパイロットになったのは十八名だ。パイロットは常に技量の向上を求められ、この観点からチェックを受けて、どんどん脱落者が出ることになる。
バランス・オブ・パワーが戦争を抑止するということを、メディアも含め多くの日本人が理解しなければならない。一九八七年にゴルバチョフ書記長とレーガン大統領が締結した中距離核戦力全廃条約だが、適用外の中国が中距離核兵器をどんどん増やしていることから二〇一九年失効、アメリカは来年から中距離核兵器の配備を再開する。アメリカのインド太平洋軍司令官が指摘しているように、バランス的には日本の南西諸島付近への配備が一番いい。力のバランスを理解できない人々が反対しているが、戦争を抑止するために、日本は非核三原則を止めて中距離核兵器の国内への配備を認めるべきだ。
航空自衛隊の飛行隊長は四十歳ぐらいが限度だ。部下はパイロットが五十五名、整備兵が二百名。しかし厳しい戦闘機パイロットの世界では、隊長でも上空の訓練で「負ける」と発言権を失う。そのため無理をして亡くなった飛行隊長が結構いる。二〇二二年に小松基地のF‐15が墜落した時のパイロットもベテランだったが、事故原因は空間識失調(バーティゴ)という、パイロットが感覚的に飛行方向がわからなくなる現象だった。当時の気象は冬のみぞれで薄暮だったが、これはバーティゴが起こりやすい状況だ。またバーティゴにはどんなに訓練しても陥る可能性があり、とにかくその時は感覚ではなく計器を信じろと教えられるのだが、ベテランほど自分の感覚を信じて事故になることがある。織田氏と同期で防衛大学に入学したのは五百三十名、卒業したのは四百二十名、その内航空自衛隊に入った百名でパイロットを目指したのは五十八名なのだが、実際にパイロットになったのは十八名だ。パイロットは常に技量の向上を求められ、この観点からチェックを受けて、どんどん脱落者が出ることになる。
支持率低下の岸田首相を
財務省は見放した
財務省は見放した
内藤克彦氏は、一般社団法人日本トラッキング協会の代表理事を務める。企業が事業の使用電力の再エネ率を一〇〇%にする「RE一〇〇」という国際的な目標があるが、これを達成するためには、取引によって再エネを集めてくることが必要で、再エネを取引可能にするためには不動産登記同様、電気を生産から記録する「トラッキングシステム」が重要になってくる。日本トラッキング協会は、このトラッキングシステムの普及を目指している。再エネは自給可能な国内資源であり、これを充実させることは安全保障に繋がる。ヨーロッパが再エネに力を入れているのは、ロシアや中東のガスや石油への依存度を減らしたいがためだ。
馬場伸幸氏が自民党を辞めて維新の会に入った時、支援者から多くの批判が届いた。馬場氏がよく覚えているFAXには、「二度と応援しません。そもそもあなたのネクタイの結び方が最初から嫌いでした」と書かれていた。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ではないが、一旦嫌いとなったら何もかもが嫌いになるのだなと感心したという。
LGBT理解増進法成立の先頭に立った衆議院議員の稲田朋美氏のおかげで、自民党の支持率が下がった。今臨時国会の稲田氏の岸田首相への質問でも、応援の声を送っているのは立憲民主党の議員だ。LGBT理解増進法をろくな審議もせずに可決させるなら、憲法改正案をとっとと通すべきだ。支持を失った稲田氏の選挙区である福井県は、自民党以外の党にとってはチャンスの地となった。
自民党は組織がしっかりとした凄い政党だが、大企業の従業員のようになっていて、一人ひとりの議員の地域や日本への愛が薄れている。日本維新の会は代表も幹事長も地元愛が強く、地元の話をしっかりと聞く。また、沢田良氏のような当選二年目の議員にも責任ある役職を任せてくれるので、若い議員が非常にやりがいを感じている。
今衆議院が解散したら、自民党は惨敗するだろう。安倍元首相は岩盤支持層の三〇%を失わなかったが、今の内閣支持率は二〇%代になった。それは岸田首相一人の責任ではなく、内閣等政権スタッフ全員の責任だ。岸田首相が税収増加分を国民に還元する主旨での減税をぶち上げたが、鈴木財務大臣は税収増分が既になく、減税を行うならば国債の発行が必要だと答弁した。財務省は岸田首相を見放したのだろう。安倍氏の回顧録でも、財務省の倒閣運動の怖さについて触れている。
馬場伸幸氏が自民党を辞めて維新の会に入った時、支援者から多くの批判が届いた。馬場氏がよく覚えているFAXには、「二度と応援しません。そもそもあなたのネクタイの結び方が最初から嫌いでした」と書かれていた。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ではないが、一旦嫌いとなったら何もかもが嫌いになるのだなと感心したという。
LGBT理解増進法成立の先頭に立った衆議院議員の稲田朋美氏のおかげで、自民党の支持率が下がった。今臨時国会の稲田氏の岸田首相への質問でも、応援の声を送っているのは立憲民主党の議員だ。LGBT理解増進法をろくな審議もせずに可決させるなら、憲法改正案をとっとと通すべきだ。支持を失った稲田氏の選挙区である福井県は、自民党以外の党にとってはチャンスの地となった。
自民党は組織がしっかりとした凄い政党だが、大企業の従業員のようになっていて、一人ひとりの議員の地域や日本への愛が薄れている。日本維新の会は代表も幹事長も地元愛が強く、地元の話をしっかりと聞く。また、沢田良氏のような当選二年目の議員にも責任ある役職を任せてくれるので、若い議員が非常にやりがいを感じている。
今衆議院が解散したら、自民党は惨敗するだろう。安倍元首相は岩盤支持層の三〇%を失わなかったが、今の内閣支持率は二〇%代になった。それは岸田首相一人の責任ではなく、内閣等政権スタッフ全員の責任だ。岸田首相が税収増加分を国民に還元する主旨での減税をぶち上げたが、鈴木財務大臣は税収増分が既になく、減税を行うならば国債の発行が必要だと答弁した。財務省は岸田首相を見放したのだろう。安倍氏の回顧録でも、財務省の倒閣運動の怖さについて触れている。
同族経営のメリットは
長期的視野と即断即決
長期的視野と即断即決
今の日本の若者は日本の歴史に自信が持てないために、消極的になっている。しかし教科書の歴史は嘘であり、本当の歴史は別のドライビングフォースで動いている。例えば鎖国は武力がないとできなかった。実際、当時のヨーロッパの文献には、日本の武力の強力さ故に、侵攻することができない旨の記述がある。幕末に黒船が来た時には日本の優位性は失われていたが、幕府は各藩に参勤交代を止めて海軍力を増強することを要請、全国諸藩の軍艦の建造、購入で、保有軍艦は約百隻、内蒸気軍艦は四十隻になった。しかし当時アメリカはペリーの艦隊の五隻を含む計八隻の蒸気軍艦しか持っていなかった。これだけの軍事力があったから、明治の動乱期にも日本は欧米の侵略を受けなかった。
同族経営のメリットは長期的な視野を持てることと、即断即決が可能なことだ。森ビルが同族経営なのは、投資を二〇年スパンで実施する必要があり、これは外からの株主が入るとできないことだからだ。安倍元首相からの新型コロナ陽性者へのホテルの客室提供の要請に対して、会長が即断で了承することができたのも、家族でアパグループの株式を全て保有しているからだ。了承はしたが、当時はまだ新型コロナについてはわからないことが多く、先が見えなかった。陽性者を収容するホテルの導線設定等は自衛隊の指示も受けつつ進めた。自衛隊は基本に忠実にと訓練されているが、先が見えない時には基本に徹して、むやみに応用に走らないことが大事だ。
同族経営のメリットは長期的な視野を持てることと、即断即決が可能なことだ。森ビルが同族経営なのは、投資を二〇年スパンで実施する必要があり、これは外からの株主が入るとできないことだからだ。安倍元首相からの新型コロナ陽性者へのホテルの客室提供の要請に対して、会長が即断で了承することができたのも、家族でアパグループの株式を全て保有しているからだ。了承はしたが、当時はまだ新型コロナについてはわからないことが多く、先が見えなかった。陽性者を収容するホテルの導線設定等は自衛隊の指示も受けつつ進めた。自衛隊は基本に忠実にと訓練されているが、先が見えない時には基本に徹して、むやみに応用に走らないことが大事だ。