日本を語るワインの会232

ワイン232恒例「日本を語るワインの会」が会長邸で行われました。官僚出身の政策通議員として「山の日」の制定等数々の議員立法に携わってきた衆議院議員の務台俊介氏、財務・会計システムを開発・販売する事業で会計事務所の二五%のシェアを持つ業界トップ企業・株式会社ミロク情報サービス代表取締役社長の是枝周樹氏、自分観音と祖母観音というオリジナルな観音様を鉛筆画や日本画で描く神仏画家・アートセラピストの翁長結生乃氏をお迎えし、選挙から新型コロナまで、今の日本について様々な話題で盛り上がりました。
一票の格差を解消すると
地方の声が中央に届かない
 自民党の柴山昌彦衆議院議員を代表とする再生エネ普及拡大議員連盟が、北海道を訪問し、各地の風力発電の実情や室蘭で計画されている洋上風力発電計画等の視察を行った。室蘭では同時に港の整備も行われている。洋上風力発電等再生エネルギー事業は、地域産業の発展も期待できる重要なものだ。しかしかつては世界一だった日本の風力発電技術だが、今は主要な機器は輸入に頼らざるを得なくなっている。それでも温室効果ガスの排出削減のために、再生エネルギー事業はスピード感を持って推進していかなければならない。
 金沢市の村山卓市長は、務台俊介氏が自治省で人事を担当していた時に採用した元自治省の官僚だ。富山市や福井市は先の大戦で空襲にあったが、金沢市にはなかった。だから金沢には昔の町並や雰囲気が残っている。会長の住民票上の自宅はまだ金沢の長町武家屋敷跡にあり、庭に水の綺麗な川が通っている。長野県池田町は、数十年前から水路を整備、稲田で農薬を使わない等水質の保全に努めたことでホタルが復活、多くの見物客が訪れる観光名所になった。今は自然を復活させることが、観光資源になる時代だ。
 この六月に政府の審議会が出した一票の格差を是正するための衆議院の小選挙区の区割り案は、「十増十減」だ。東京都は五議席増える一方、地方の十県が議席を一つずつ失う。しかし、東京選出の国会議員はこれ以上東京の国会議員はいらないと言っている。普通は仲間が増えればいいと思うはずなのだが、違う力学が働いている。定員が増えた選挙区に誰を候補に立てるかの議論も始まっている。人口比でいけばこの案が正しいのだが、それでは地方の民意が中央に反映されにくくなるという意見もある。選挙区改革は非常に難しい。
ゼロリスクを求めることが
子供の教育への悪影響に
 若い時はアメリカでミュージシャンを目指した是枝周樹氏は、かつてガンズ・アンド・ローゼズ等有名ミュージシャンとも一緒に演奏を行ったことがある。今音楽は是枝氏にとって趣味だが、ビジネスマンも仕事以外に趣味を持つことは非常に大切だ。また、アメリカは例えばヨセミテ国立公園等、大自然が圧倒的に凄い。ナイヤガラの滝に飛び込んで生還しようとする挑戦者は後を絶たず、滝の近くにはそうして命を失った人々の石碑が建てられている。子供の内に絶対的な自然の美しさを経験しておくと、自然に対する畏怖の念が生まれる。長野県は小中学生の学校登山の伝統がある。子供の頃に日本アルプスの山々の驚くほど美しい景観を見ると、自分が思い悩んでいたことなど小さいことに思える。
 しかし近年、保護者からの意見もあって、学校登山を取りやめるケースが増えてきた。逆にこのような子供の体験は全国規模で増やすべきで、政策として推進する必要がある。子供のことに限らないが、とにかくリスクを避ける風潮がある。一つ事故があると二度とそれが起きないよう過剰な対策が求められるが、それは間違いだ。新田次郎の小説「聖職の碑」にも描かれたように、長野県は大正時代に学校登山での大規模な遭難事故を経験している。それでも中止することなく、学校登山を続けてきたのは長野県教育界の矜持だ。しかし継続は風前の灯となっている。
 学校登山でも、事前に父兄の同意書を取って行えばいいのではという意見もある。今は人間ドックでも様々な同意書を書かされる。これは、昔は気にしなかったリスクが、医療裁判等であぶり出されてきたからだろう。外で遊ぶ子供達が減っているのは、家でゲームをすることが増えていることもあるが、怪我のリスクを回避するためにボール遊び禁止等、公園での禁止事項が多いこともその一因だ。昔の子供達が手軽に楽しんだ柔らかいボールでの三角ベースができず、少年野球チームに入らないと野球ができないのはおかしいだろう。ゼロリスクを過度に求める風潮は是正すべきだし、これを煽っているマスコミも姿勢を改めるべきだ。
 アメリカでは民主党が政権をとって、政治的に左派色が強くなるにつれ、特定の人間や事象を歴史まで遡って過度に攻撃してその地位や存在を否定する「キャンセル・カルチャー」が蔓延ってきている。リスクにも過敏になってきていて、今アメリカのホテルのアメニティーにはカミソリがない。フロントでリスクを警告した上で渡すようになっている。
都道府県で異なる「弁当代」
どう対応したかを記録に
 アパホテルは全国に約十万室のホテルネットワークを形成しているが、日本で一番病床数の多い徳洲会グループでも、一万八千床しかない。有事に豊富なアパホテルの部屋を活用しない手はない。安倍首相から会長に直接電話で依頼があり、会長が即決した新型コロナの検査陽性者の療養施設としてのホテルの一棟貸しだが、アパホテルはピーク時には三万室を療養施設として提供していた。また、療養者の快適さと運営側の負担減を考え、例えばアパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉等、最新の大型ホテルを一棟貸しした。新型コロナが問題となった最初の頃、武漢から政府チャーター機で帰国した人々を勝浦ホテル三日月が受け入れたが、その後風評被害が酷かったという。二〇〇三年のSARS(サーズ)、二〇一二年のMERS(マーズ)の世界的流行の経験から、会長は以前からホテル事業の大きな障害は近隣における戦争と感染症のパンデミックだと予言していた。それもあり、アパホテルは冷静にコロナ禍を乗り切ることができている。アパホテルで療養した人からも感謝のメール等が届いている。〈横浜ベイタワー〉は一年七カ月ぶりに十一月から通常営業を再開する予定だ。ゾーニングの展開等のノウハウも含め、今回のホテルの療養施設への転換の経験は記録に残し、今後の有事に有効に活用すべきだ。
FITの早急な解禁と同時に
万一の消毒代負担の軽減を
 二〇二二年七月の訪日外国人旅行者数は、十四万五千人だった。政府は六月に観光目的の訪日ツアーを再開、一日の入国者数上限を二万人にしていたが、その上限の四分の一ほどしか利用されていない勘定だ。九月七日から一日の入国者数上限を五万人に引き上げ、ワクチン三回接種を条件に入国時の陰性証明提出も不要にしたが、七月の調子であれば、入国者数は増えないだろう。やはりポイントはFIT(外国人の個人旅行)の解禁だ。政府は十月を目処に個人旅行客の入国解禁の方向という報道も行われているが、一刻も早く実施するべきだ。そうなれば、インバウンドは一気に増加する。長野県も冬に向けて外国人観光客の予約が相当数入っているが、入国条件が厳しければ全てキャンセルになる。しかし政治家の中でも、早急な入国条件の緩和が行われるに違いないと楽観視している人が多い。外国人旅行客で問題となるのは、日本に来てから発症・コロナの検査で陽性となる人だ。その場合は部屋の消毒代を請求する旨が、宿泊約款にはちゃんと記載されている。しかしインバウンドが増え、陽性になる人も増えれば、その消毒代で揉めるケースも必ず出てくるはずだ。ホテルの部屋の消毒については、国負担で行えるようにはできないか。またアパホテルでは損害保険会社に、ホテル向けの消毒保険という商品を作るように要請している。
 二十世紀初頭にアメリカ大リーグで活躍したベーブ・ルースの背景には、スペイン風邪と第一次世界大戦による選手不足があった。今コロナ禍の下、大谷翔平は大リーグでベーブ・ルース同様の投手と打者の二刀流で大活躍している。大谷選手のプレーを見ているだけで元気になる。スターはやはり、世界的な危機の時に生まれるものだ。
 札幌市が開催地として手を上げている二〇三〇年の冬季オリンピックの開催地の決定が、二〇二三年五月の予定だったのが九月以降にずれ込む事になった。理由は、インドのオリンピック委員会で役員選挙が適正に行われていないことと伝えられている。札幌以外の候補地はアメリカのソルトレークシティ、カナダのバンクーバー、スペインのカタルーニャ州とアラゴン州の共催だが、冬季のオリンピックはその収益性への不安から、手を上げる都市が減少してきている。施設にも膨大な費用負担がある。札幌で冬季オリンピックが開催される場合、リュージュやボブスレーの競技は一九九八年の長野オリンピックの際に建設した施設が使われる予定だ。札幌に新たに競技場を作れば百億円掛かるが、長野の施設を改修すれば二十億円で済む。長野の施設に対して、冷気を送る管等のチェックが行われたが、当時過剰なスペックで作られていたので、まだまだ再利用可能とのことだ。