Essay

韓国は報復として北に予告限定攻撃せよ

藤 誠志

韓国哨戒艦沈没は北朝鮮のテロ行為だ

 五月十五日の朝日新聞朝刊の一面トップは、『韓国艦「魚雷で沈没」』『国際調査団発表へ』という見出しだった。韓国哨戒艦沈没とは、『朝鮮半島西側、黄海の南北軍事境界線といわれる北方限界線(NLL)付近を航行していた韓国軍の哨戒艦「天安」が三月二十六日の夜、大きな衝撃を受け、艦体が真っ二つに割れて沈没。乗組員百四名のうち四十六人が死亡、行方不明となった。李明博・韓国大統領は国際社会に説得力をもたせるため、米英など四カ国も加えた軍民の合同調査団に沈没原因の究明を委ねた』という事件だ。『李明博大統領は報告書を受け、数日後に談話を発表する。韓国政府は北朝鮮による攻撃との見方を強めているが、談話で「北の関与」を明言するかどうかは慎重に判断する』と、沈没時から北朝鮮の関与を疑いながらも、韓国の対応は妙に冷静だ。
 『英、米、豪、スウェーデンも参加する調査団は、引き上げた哨戒艦の切断面の形状から水中での外部爆発による沈没と判断。さらに、採取したアルミニウム片や高性能爆薬「RDX」(ヘキソーゲン)などを分析した結果、機雷ではなく魚雷による攻撃と結論づけた』『外交筋によると、北朝鮮軍の魚雷と証明する決定的な証拠は見つかっていないが、韓国政府当局者は沈没当時の状況などから「北の犯行だとみている」と語った』『決定的な証拠がなくても政治的に「北朝鮮の犯行」と結論づけた場合、韓国は国連安全保障理事会での協議を求めたい考えだ』という。
 これまでも北朝鮮は、多くのテロ事件を引き起こしてきた。例えば一九六八年一月に発生したのが、「青瓦台襲撃未遂事件」だ。三十一名の北朝鮮軍兵士が、朴正煕大統領暗殺を目的として韓国軍の制服を着て韓国に潜入、大統領府である青瓦台へと突入する寸前に発見され、掃討作戦によってほぼ全員が射殺、逮捕されるも、韓国側も六十八人の犠牲者を出したという事件だ。一九七四年八月には、北朝鮮からの指令を受けた在日韓国人の文世光が、光復節の祝賀行事の式典で朴正煕大統領を狙撃、大統領は無事だったが、夫人ら二名が射殺された(文世光事件)。一九八三年十月には、時の全斗煥韓国大統領を狙った「ラングーン事件」が発生。ビルマのラングーンのアウン・サン廟に三名の北朝鮮軍兵士が爆弾を仕掛け訪れた大統領を暗殺しようとしたが、先に到着した駐ビルマ韓国大使を大統領と間違えて爆弾を起爆、韓国・ビルマの要人二十一名が爆死した。全斗煥大統領は難を逃れた。実行犯の三名はビルマ警察に追われ、一名が射殺され、二名が逮捕。この二名が犯行を自供し、事件は北朝鮮の仕業であることが確定した。

体制維持が困難になると北朝鮮はテロに走る

 日本人の記憶に一番残っているのは、韓国のオリンピック開催を妨害するために起こした一九八七年十一月の「大韓航空機爆破事件」である。北朝鮮工作員の金賢姫と金勝一が、アラブ首長国連邦のアブダビからソウルに向かう大韓航空機に爆弾を仕掛け墜落させ、乗員乗客百十五名全員を殺した事件だ。犯人の二人が偽の日本のパスポートを持っていたこと、また金賢姫の日本人化教育を行った「李恩恵」と呼ばれる女性が、拉致被害者である田口八重子さんだとみられていることなどから、日本でも大きく報道された事件だ。このような国家的なテロ活動は、北朝鮮が困難に直面した時に行われる。世界の目を抱える問題から逸らし、外向けには緊張を、内向けには統制を強めるためのものだ。冷戦も終結し大韓航空機爆破事件から二十三年も経過した今年発生した韓国哨戒艦沈没事件は、魚雷の使用からも工作員のテロというものではなく、軍が関与しての「攻撃」といっていいだろう。これは北が核を保有したことで、反撃の恐れがないと判断して行ったことだと思うが、その荒っぽさを見ると、北朝鮮は今や崩壊寸前ではないかと思える。金正日は魚雷攻撃が北の犯行であるとの発表される前の五月上旬に、脳梗塞の後遺症をおして中国を訪れたが、これも決定的な証拠が出て国際的非難を受ける前に自らの犯行を否定して体制維持への危機を訴え中国に支援を求めてのものだ。核実験に対する諸外国からの制裁が効果をあらわし、今や北朝鮮は崩壊・暴発寸前の状況へと陥っているのであろう。北が崩壊・爆発時にストレートに巻き添えをくらうのは韓国である。今回の韓国哨戒艦撃沈は「援助しないと暴発するゾ」との北朝鮮からの「脅し」と受け止めるべきである。
 一九九一年の冷戦終結以降、東アジアの情勢は往時より緊張感を増していると言っても過言ではない。その原因は、北朝鮮に対する「甘やかし」だ。冒険主義に走る北朝鮮が問題を起こす度に穏便に収め、むしろ支援を強化する事すらあった。その結果が核実験だ。韓国が哨戒艦撃沈のような暴挙を見過ごすかのような対応をとった場合、北朝鮮はますます増長し、第二・第三の事件を起こすことは間違いない。今回の相手は韓国だったが、次は日本に向けた攻撃かもしれない。もしそんなことが現実となった場合、いつも坊ちゃまが怒られてこれ以上怒られないように同情をかう様な顔をする鳩山首相はいかに対応するのだろうか、想像するだけでも恐ろしい。このような事態を再び招かないためにも、まだ核がミサイルに搭載できる程度に小型化する前に韓国は必要な反撃として予告の上、魚雷攻撃をした小型潜水艇と母船の帰港地、黄海の海軍基地に対して、「限定的な」報復ミサイル攻撃を行うべきである。

参加人数水増しが常識の基地反対県民集会

 沖縄の普天間基地移設問題が迷走を続けている。鳩山首相は五月に沖縄を訪問した際に、『昨年の衆院選当時は、海兵隊が抑止力として沖縄に存在しなければならないとは思っていなかった。学べば学ぶほど(海兵隊の各部隊が)連携し抑止力を維持していることが分かった』(五月四日付産経ニュース)などと、抑止力の意味を十分に理解していないことを暴露した。野党時代が長いとはいえ一国の首相が、また衆議院議員を八期も務めている政治家が言うことだろうか、こんなレベルの人物は首相になってはいけない。また普天間飛行場を辺野古沖に移設することは、日本とアメリカが長い時間をかけて協議した上で合意した、国と国との約束だ。政権交代が行われたといって、反故にしてよいものではない。それを口先だけの「できれば国外、最低でも県外」という言葉で覆し、蜂の巣をつついたような騒ぎを起こしてしまった鳩山首相は、万死に値する。
 普天間基地移設問題で注目が集まっている海兵隊とは、どういう軍隊なのか。海兵隊は、陸軍、海軍、空軍からも独立したアメリカ第四の軍隊だ。その最も大きな役割は、即応部隊としてのもの。だから海兵隊は、戦車から上陸用舟艇、英国が開発した垂直離着陸ジェット戦闘機ハリアーにヘリコプターなど、陸海空すべての機能を持っている。そして、「即応」のために、紛争が起こりそうな地域のできるだけ近くに基地を設けている。だから普天間の移設先はグアムや日本中どこでもいいから…というわけにはいかないのだ。またメディアは、航空機の墜落など事故の危険性や、婦女暴行や交通事故など海兵隊員の住民に対する不祥事ばかりが大きく取り上げる。日本が日米安保に頼らず、独立自衛の国として自ら攻撃力を持ち、抑止力も確保できるのであれば、確かにアメリカ軍は不要だろう。しかし日本国憲法の制約により、自衛隊ができるのは自衛のみ。攻撃力による抑止力という部分はアメリカ軍にお願いするというのが、今の日米安保体制での役割分担なのだ。この背景の下に沖縄の海兵隊が抑止力として存在していることを理解せず、事故と不祥事だけで基地を排斥しようとするのは、間違った行動だ。この反基地意識を煽っているのが、沖縄タイムスや琉球新報など、左傾化した沖縄のメディアなのである。
 私の友人でもあるテイケイ株式会社会長の高花豊氏は、沖縄で「県民大会」が行われる度にその写真を上空から撮影し参加人数を数え、主催者発表の数字との余りにも酷い乖離を指摘し続けてきた。二◯◯七年九月に宜野湾市で行われた教科書用図書検定意見への反対集会では、朝日新聞などが主催者の十一万人参加という発表をそのまま伝えたのだが、テイケイ調べでは六分の一の一万八千人だった。また、今年の四月二十五日に行われた普天間飛行場県内移設反対の県民集会では、主催者は九万人と発表し、メディア各社もそれをそのまま報道した。私も写真や映像で集会の様子を見たが、どう考えてもそんなに人がいるようには思えない。せいぜい二~三万人程度ではないかと考えていた。今回テイケイから、実際にカウントした写真付きで資料が送付されてきたのだが、参加者はなんと一万一千五百六十九人(テント下、木陰含まず)。主催者発表の実に八分の一だったのだ。こんな過大な報道がまかり通っているのは、異常である。デタラメな数字が報じられる一方、丹念にカウントした実際の参加人数は、メディアから一切無視されているのである。メディアの報道はやはりおかしい。そして、その「おかしなこと」をおかしいとは気づいていないのだ。
 アメリカ軍の基地には地元の負担という面があるのはもちろんだが、それだけではない。逆に基地がすべてなくなると、沖縄経済はかなり厳しくなる。徳之島でも、基地に反対する人ばかりが目立っているが、島の経済の建て直しのために基地を歓迎するという人もいる。沖縄でも表向きは反対だが、内心では税金がかからない莫大な軍用地の借地料や、各種補障金に基地の雇用による経済効果に期待してる人がかなりいるのだ。実際移設先となっていた辺野古周辺には既に、先行的な経済支援が行われていた。この問題は、一面的ではなく多面的に理解する必要がある。

小沢幹事長の院政を許すな

 鳩山内閣の支持率は下落に下落を重ね、とうとう二十%を切るような水準となってしまった。また調査によっては、民主党への支持が自民党のそれを下回っているという。今のまま参院選に突入すれば、民主党は過半数はおろか、ボロ負けをすることは必至。そうなれば、鳩山首相も小沢幹事長も詰腹を切らされるのは確実である。また検察審査会で起訴相当とされた小沢氏、検察がまたもや不起訴にしても、再度審査会が起訴相当とすれば、強制的に起訴されることになる。後に影響力を残すのならこのタイミングに…と、二人とも選挙前に辞任して派手に党首選を演出、親小沢でも反小沢でもない適当な人物を党首として、新生・民主党で選挙に挑み、その後は小沢チルドレンや小沢ガールズをバックに、小沢一郎氏が院政をしくのではないかと私は先月号の本誌に書いたのだが、幹事長を辞任すれば税務調査が入り脱税罪に問われ起訴されるのではと一向に支持率が回復しないのに、現体制のままで参院選へと突き進んでいる。参院選で負ければ連立相手を社民党・国民新党に変えて公明党と手を組む腹積もりも見え隠れする。選挙後に行われる民主党党首選で小沢はポスト鳩山に菅直人財務大臣をあてるだろうという声もよく聞くが、国民はかつての民主党のCMで嵐に吹っ飛ばされた小沢氏を鳩山首相とともに支えていた菅氏の姿をしっかりと覚えていて、イメージが良くない。しかし新党首が誕生したとしても小沢院政下での日本の将来には大きな不安が残る。
 私が期待しているのは、真正保守主義を掲げる党が、今度の参院選で躍進を遂げることだ。今年になって数多くの新党が登場してきたが、その理念に共鳴できそうなのは、山田宏杉並区長を党首とする日本創新党だと思う。彼は毎年行われる成人式で特攻隊の遺書を読み「彼らは自分たちが犠牲になることで、日本を守り、新しい日本がつくられるのだと信じて、命を捧げたのです。今日、君たちがきれいな着物を着て、乾杯ができるのは彼らのおかげでもあるのです。その人たちの分まで立派に生きていくことが君たちの責務なのだ」と伝えます。平沼赳夫氏のたちあがれ日本にも期待をしたいのだが、どうもバックに過去に国政を担い、自民党をだめにしてしまった長老の姿が見え隠れする。なかなか私が期待する「誇れる国日本の再興を目指す」ことを党是とする新党が作られないが、真正保守主義を主張する人が参院選で善戦し一定の力を得て、政界再編の目となることに期待したい。
 東西冷戦が終わり日本は軍事費を毎年削減してきたが、その一方お隣の中国の軍事費は一九八九年以降、毎年二桁の伸び率を示している。北朝鮮が核兵器を保有したことで自信をつけて、韓国哨戒艦を魚雷で沈めたことは、明らかに暴挙であり戦争行為だ。このとばっちりがいつ日本にまで及ぶか、わからない。そんな時に、即時対応能力のある海兵隊を沖縄からはずして、九州やグアムに遠ざけるなどというのは、愚の骨頂だ。愚かなブレーンの進言に基づく鳩山首相の人気取りの言葉遊びで、日本の安全保障が危険にさらされるのは、真っ平御免である。北朝鮮の今回の暴走は、周辺国の妥協の産物だ。特に責任が重いのは、金大中、盧武鉉と二代の大統領の十年間も続いた韓国の太陽政策であり、これによって北朝鮮は増長したのだ。今の李明博政権は過去とは一線を引くためにも、哨戒艦撃沈の報復として北朝鮮への予告限定攻撃を行うべきだ。これを行わないと、今後も一歩ずつ後退させられ、援助をむしり取られ、いずれ全面戦争となる。この攻撃は韓国のためであり、隣国の日本のためでもある。これを機に、日本も強い政権をつくり、独立自衛のできる軍事力を持つべきではないか。そんな思いから、『誰も言えない「国家論」』という本を今月上梓した。一人でも多くの方に読んでいただきたいと願っている。