衆議院議員 古川康
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APAグループ代表 元谷外志雄
1958年佐賀県唐津市生まれ。1982年東京大学法学部政治コース卒業、自治省(現・総務省)に入省。沖縄県、長野県、岡山県、長崎県など地方自治体にも派遣され、課長、部長を歴任。2003年佐賀県知事選挙に初当選、以後3期当選。2014年佐賀県知事を辞職して衆議院選挙に出馬して初当選。
東京・大阪から地方へ
元谷 本日はビッグトークへの登場、ありがとうございます。古川さんには、佐賀新聞社社長の中尾清一郎さんからまずいろいろお聞きしていて、それから実際にお会いしたのです。
古川 よろしくお願いします。私も代表のことを中尾社長からお聞きしてきました。続々とホテルを作られているのも知っているのですが、この流れはまだ続きますか?
元谷 まだまだ続きますよ。中四国最大級の七百二十七室を擁するアパホテル〈広島駅前大橋〉が十月六日にオープンしました。駅前にあってビジネスにも観光にも便利なホテルで、オープン以来ほぼ満室です。
古川 このホテルができたことで、広島市の宿泊施設の客室数がかなりアップしたとお聞きしています。なぜ広島にこんな大きなホテルを建設したのですか?
元谷 二〇〇九年にオバマ大統領が「核なき世界」を提唱したことで、ノーベル平和賞を受賞しました。私は任期中にレガシーを作るために、オバマ大統領が必ず広島に来ると読んだのです。元々広島は、日本国内では珍しくアジアからよりも欧米からの観光客が多い街です。そこにオバマ大統領が来ることがあれば、堰を切ったように海外からの観光客が殺到すると見込みました。予想通りにオバマ大統領が広島を訪問、さらに広島東洋カープが優勝したことで、街は盛り上がっています。そのタイミングでの〈広島駅前大橋〉のオープンでしたから注目度は高く、全ての新聞が記事で扱ってくれました。
古川 アパホテルのオープンは最早ニュースなのですね。
元谷 話題を作ることで集客に繋げられればと考えています。二〇一〇年四月一日からの五カ年計画では、東京に力を集中して中央・港・千代田の三区でトップを獲る頂上戦略を実行、東京だけではなく日本でトップになることができました。二〇一五年の第二次五カ年計画からは全面展開です。東京圏を中心に大阪や名古屋など、今二十七ホテルの設計・建設という数千億円規模の事業を進めています。また海外展開として、まずアメリカのニュージャージー州にフランチャイズでアパホテル〈ウッドブリッジ〉をオープン、加えて北米で三十九棟のホテルチェーンを運営している企業を買収しました。金利が安い今、事業を拡大させるのは経営者として当然です。
古川 代表のような経営者ばかりが事業をやっていれば、日本はもっと景気が良くなると思います。
元谷 こんなチャンスなのに、投資を行うことなく内部留保の積み増しばかりを行っているサラリーマン社長が多いのです。民間だけではなく国や自治体も、どんどん借金をしてでも事業を展開すべきなのです。
古川 一時、アパホテルが海外からの観光客の増加によって予約が取りにくくなった東京のホテルの象徴になっていました。赤坂のホテルの宿泊料金が一泊三万円以上とか…。
元谷 それは昨年のことです。昨年は東京と大阪に観光客が殺到し、そのような高値が付くことがありましたが、今年は落ち着いています。海外からの観光客はまず東京や大阪の大都市を訪れますが、二回目、三回目になれば地方に行くのです。ですから今年は、北海道や中四国のアパホテルの宿泊客が増加しています。この流れで〈広島駅前大橋〉も順調なスタートを切ったと言えるでしょう。
古川 分散してきているのですね。
元谷 とはいえ、東京のホテルの月間稼働率はずっと一〇〇%です。アパホテルの場合、平日にはビジネス客が、週末には観光客が、海外からの観光客は曜日に関係なく宿泊されます。ずっとお客様が入るというビジネスモデルなのです。ですから利益率も高く、売上の三割が利益です。通常のホテルの利益率は五?六%ですよ。アパの利益率の高さは日本では文句なくナンバーワン、世界的に見てもホテル業界のトップクラスでしょう。
古川 佐賀県知事時代、欧米からの観光客をいかに佐賀へ呼び込むかに苦労しました。キャンペーンを冷静に分析してわかったのは、広島に絡めると反応があるということです。東京を訪れる客を佐賀に連れてくるよりも、広島を訪れる客を連れてくる方が遥かに現実的。ですから広島に関係のある露出物に、積極的に佐賀の情報も掲載するという取組を行ったりもしていました。
元谷 そのやり方は正解だと思いますよ。少し前はハブ空港という考えが主流でしたが、LCCといった格安航空会社の路線が増えてきた今は、ローカル・トゥ・ローカルが主流です。日本に来るのも、成田や羽田を経由するのではなく、ダイレクトに地方空港に便を飛ばすことが多くなっています。
古川確かに、非常に安い航空運賃が出てきています。同じ路線でも価格差が凄いですね。
元谷 アメリカが昔からそうでした。今でも海外のものが遅れて日本に入ってくることは多いですね。私も世界八十一カ国を訪れ、いろいろと学んだことが今の事業に生きているのだと実感しています。先日はリオデジャネイロ・オリンピックの開会式にも行ってきました。同行者が治安が心配だというので、リオでは一泊で経由地のドバイでもう一泊して、二泊六日の弾丸ツアーでした。
古川 閉会式の東京オリンピックのプレゼンテーションは素晴らしかったですね。安倍首相のスーパーマリオも奇抜でしたが、ブルガリアン・ヴォイスを使ったアレンジの「君が代」が、非常にスタイリッシュだったと思います。日本の表現力もここまで来たかと、大変感心しました。
元谷 日本には誇れるものが沢山あるのに、メディアを中心に自虐的にそれを認めない態度が蔓延しているのです。
古川 誇りと言えば思い出すことがあります。日本がPKOで人を派遣したのは、アンゴラの選挙監視団が最初です。その直後にカンボジアのPKO派遣も始まっています。アンゴラ及びカンボジア政府からゼロからの国造りを手伝って欲しいと依頼されて、日本政府は文民と自衛隊を派遣しました。私は当時まだ役人で、選挙監視でアンゴラとカンボジアに行きました。文字の読み書きができない人が多いので、投票も支持政党のシンボルマークに印をつける方式です。しかしまず鉛筆の持ち方がわからない。印をつける見本を見せると、それと同じ所に印をつけようとするなど、いろいろと苦労がありました。カンボジアには各国から軍隊が派遣されてきていたのですが、日本の自衛隊は他国の軍隊に比べて、非常に規律正しかったですね。地元の評価も高く、撤収する時には多くの人から「残ってくれ」と懇願されました。
こんな話もあります。現在南スーダンにPKO派遣されている自衛隊のところに、ある女性兵士がやってきました。カンボジア軍の兵士でした。「私も子供の頃に日本の自衛隊がPKOで派遣されてカンボジアの国造りの支援をしてくれた。自分もいつかカンボジア軍の兵士になって他の国の国造りの支援ができるようになりたい。今カンボジア軍は南スーダンのPKOに参加できるようになりました。自分の夢がかないました。そのきっかけをつくってくれた自衛隊にお礼を言いたい。」と自衛隊に挨拶にこられたのでした。日本がまいた平和の芽が育っているという事だと思います。
元谷 正に日本らしいエピソードですね。こういった日本人気質も、世界に誇るべきものです。
古川そんな魅力をもっと海外に発信しなければなりません。
元谷 古川さんはPKOにも派遣されたように、元々自治省出身です。何年いたのですか?
古川二十年です。その後四十四歳で佐賀県知事になりました。十一年ちょっと知事をやり、国政へと衆議院選挙に出馬、当選することができました。そもそも自治省に入ったのは、「地方を元気にする!」を一生の仕事にしたいと思ったからです。それは今でも変わりません。
元谷 知事時代の古川さんと言えば、陸上自衛隊のオスプレイの佐賀空港への配備を推進したことが印象に残っています。
古川 国防に関しては、国が責任を持ってやっていくことだと考えています。従って、地方は基本的にはそれに協力する義務がある。しかし無条件に…とはいかないので、様々な項目を検討した上、条件をクリアすればOKというスタンスでした。
元谷 反対の声も大きかったと思います。古川さんがそういう決断ができたのも、地元メディアの力が大きかったのではないでしょうか?
古川 いえいえ、メディアには随分叩かれましたよ。
元谷 地方新聞はそのエリアではシェアが高く、大きな力を持っていることが多い。当選を望む政治家が過度に迎合して、おかしなことになるケースが多々あります。
古川 そうならないよう、身を律していたのですが。ただ新聞の論調が気になるのも事実です。知事の役割は決断をする事なのですが、意見が分かれている案件に決断を下すと、マイナスになるのも確かです。一方でマイナスになる事でも決断しつつ、他方で皆に喜ばれる仕事も手掛けて、選挙に勝っていく。それが知事の仕事だと考えていました。
元谷 だから知事で三選できたのですね。
古川 そうかもしれませんね。
元谷 私は昔も今も、メディアの誤誘導が悲劇を招くと考えています。日露戦争で得た賠償金や領土の少なさを当時の新聞が指摘して人々を煽ったことで、日比谷焼打事件が起こりました。これに恐怖した外相・小村寿太郎は鉄道王ハリマンと桂太郎首相が南満州鉄道について交わした合意をひっくり返します。結局このことで日本はユダヤ人とアメリカを敵に回し、先の大戦へと引き摺り込まれてしまうのです。
古川 確かにそうですね。
元谷 今話題となっている東京の豊洲新市場の問題ですが、メディアは地下水の基準値超えを盛んに報道しています。しかしあの基準値は飲料水のもので、地下水を飲用にはもちろん、清掃用にも使用しない豊洲新市場では、健康被害など出ようがありません。一方今の老朽化してネズミも出る築地の衛生状態にも、大いに疑問があります。大局から冷静に考えて、どうすれば都民にとって安全なのかを考える必要があります。普通に考えれば、新しい市場の方が安全なはずなのですが…。
古川 全く同感です。あと地方自治体のトップを経験しての実感なのですが、安全を重視していると言いたいがために、国の基準よりも厳しい基準を独自に作りたくなるのです。しかしそれによって、基準値超えが出た場合には、物凄い健康被害が出るかのような誤解を生んでしまうのです。私が豊洲の件で疑問に思っているのは、透明化を強調する小池都知事なのに、移転延期を決めたプロセスがブラックボックスになっていることです。数値もいろいろと出ていますが、本当に健康に影響があるのかどうかをまず明確にしなければならないでしょう。
元谷 地下にモニタリング空間を作ったことが悪いことのように言われていますが、盛り土よりも安全管理には意味があると思います。専門家会議の提言からより良い方法を役人が考えて、実行しただけだと思います。
古川 私も役人でしたからわかるのですが、健康に影響があるのが明白なことは、絶対役人はしません。
元谷 ただ良いと思っても、専門家会議と異なることが大っぴらになってはまずいと思ったのでしょう。だから公表しなかった。今となっては、問題は振り上げた拳の下ろしどころがどこかということです。処分する人は処分して、早く安全宣言をして移転を進めるなど上手く収拾しないと、小池さんの再選はありません。
古川 移転延期という小池都知事の決断が喝采を浴びましたが、それによってコストも発生します。今は告発者としての働きばかり強調されていますが、知事の本来の役割は決める事ですから、小池さんもどこかで決めなければならないでしょう。
元谷 この小池都知事にも、さらに親中派にも公明党にもパイプのある二階さんを幹事長にしたのは、安倍首相の妙手でした。第一次安倍内閣の時にはお友達人事と揶揄されたのですが、第二次では逆で、官房長官に管さんを据えるとか幹事長に二階さんとか、元々は安倍首相と合わなかった人を積極的に登用して成果を挙げています。党総裁の任期の三期九年への延長が確実になってきましたが、これも当然でしょう。これまで一国の首相が短い期間で変わり過ぎていました。
古川 首相の任期が政党の内規で決まるというのもおかしいでしょう。法律で定めるべきです。
元谷 確かにそうですね。三期九年になれば、安倍首相は改憲に挑むでしょう。私は二段階で改憲すべきだと考えています。まず改憲勢力全体でコンセンサスがとり易い、前文など明らかに問題がある部分の改正の発議を行い、国民投票を経て改憲を実現するのです。この実績を持って、次に本格的な自主憲法制定に向かうのが良いと思います。
古川それが現実的ですね。
元谷 福島第一原発事故後にメディアが放射能の恐怖を煽り立てたのも誤誘導です。それによって、自然放射線の量よりも低い年間一ミリシーベルトが除染の基準になってしまい、膨大な除染費用が発生しています。さらに原発が止まることで、年間四兆円もの国富が原油輸入のために余分に使われています。
古川 震災時に私は佐賀県知事でした。震災後に最初に再稼働すると言われていたのが、佐賀県の玄海原発でした。物凄い反対もあったのですが、どうしても必要だということで、当時の経産大臣の海江田さんの協力も得て進めていたら、菅首相が自分の政権の下では原発の再稼働はさせないと言い出したのです。あの時再稼働させていれば、日本の富の流出も少しは防げたと思います。
元谷 菅直人さんは、原子力のことがわかったふりをして、本当は全然わからず不安ばかりを煽っています。彼が人気取りのためか、事故直後に福島第一原発を訪れたことでベントが遅れ、その後の水素爆発に繋がったのです。
古川 災害発生時、自治体のトップが現場に行くのは、全てが治まってからというのが鉄則です。災害直後には訪問対応のために割くマンパワーも惜しいですから。
元谷 メディアは誤誘導をしても、自らの無謬性に固執して訂正をしようとはしませんし、したとしても不十分です。二〇一四年に朝日新聞は慰安婦問題に関する誤報を認めて謝罪しましたが、二十年以上に亘る誤報で失った国益はこれからも含めて数兆円にもなり、その程度の謝罪では済みません。会社を解散してでも国家や国民に対して損害賠償すべきです。
古川 全く同感です。
元谷 確かにメディアの第四の権力としてのチェック機能も重要なのですが、そのメディアのおかしさをチェックして指摘する第三者機関がないのです。BPO(放送倫理・番組向上機構)は第三者機関ではないですから。
古川 世の中のメディアの報道の多くが政府や自民党に批判的なのですが、大変ありがたいことに国政選挙では連続して勝利しています。人々がメディアを信用していないのでしょうか。
元谷 今はネット世論がありますから。こちらの方が信頼のおける情報が行き来しています。ただネットの人はあまり選挙にいかない。旧来のメディアを支持する人の方が、選挙に行くはずなのですが…。
古川 それでも自民党が支持されています。
元谷 他に支持する政党がないということも大きいでしょう。健全な野党が存在しないのです。民進党も二重国籍の問題の発言で二転三転、挙句にはうやむやにするような人を代表に選ぶようでは、政権奪回など不可能です。
古川 二重国籍の問題の発覚がもっと早ければ、候補にもなっていなかったでしょう。
元谷 そんなメディアの誤誘導に対抗して、「真実を知れば、皆保守になる」と信じて私は活動を行ってきました。このApple Townも今号で通算三一〇号になります。勝兵塾は通算百五十回を越え、参加者も延べ一万人以上になりました。何度も来る方は、次第に本当のことがわかってきて、目から鱗だと言っています。数百万部発行する新聞よりは影響力は少ないかもしれませんが、着実に真実が世間に浸透していっています。
古川 素晴らしい活動だと思います。
元谷 常に訴えているのは日本人が誇りを取り戻すことです。日本人が優れた民族であるのは、ノーベル賞を三年連続で獲得していることでも明らかでしょう。
古川 しかも基礎科学の分野ですから、重みがあると思います。
元谷 ノーベル平和賞は非常に政治的です。韓国でも金大中が獲ったぐらいですから。
古川 リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックでも日本選手が大活躍でした。非常に頼もしかったですね。
元谷 そうですね。表彰式の国旗掲揚と国歌の演奏が感動的でした。教育現場で頻繁に問題になる国旗・国歌ですが、佐賀県では徹底できたのでしょうか。
古川 佐賀県ではそのような問題はありませんでした。しかし県庁に日の丸を掲げていない県もあります。
元谷 そのような県の態度をメディアが奨励するから、なくならないのです。批判すれば一変しますよ。このようなメディアに負けずに安倍首相には、今の良い流れで政権を運営してもらえれば。古川さんもそのサポートをよろしくお願いします。
古川 わかりました。全力で頑張ります。
元谷 最後にいつも「若い人に一言」をお聞きしています。
古川 今は昔に比べて若い人に多くの可能性があります。何にならなきゃならない、何をしなきゃならないというのがないですから。若い人なりの発想のビジネスで成功することもできるでしょう。心配するよりも世の中のドアは開いていますから、どんどん積極的に挑戦して欲しいですね。また日本は人口が減っています。もっと広いステージとして海外をイメージしておけば、発展の可能性が大きくなるはずです。
元谷 いろいろ海外に出掛けて、見聞を広めて欲しいですね。今日はいろいろいいお話をありがとうございました。
対談日2016年10月7日