健康寿命を延ばすことだ
本人は全くそんな認識はしていないのだが、私はどうやら一昨年に傘寿を迎えたようだ。しかしそんなことは全く関係なく、闊達に「二兎を追うものは二兎共を得る」という自らのポリシーの下、事業活動と言論活動を楽しむ毎日を送っている。傘寿のテーマカラーは黄色や金色で、それをもって長寿の祝いをされている方も多いと思うのだが、今や時代は百歳を超える人が珍しくなくなってきている。厚生労働省が公表した二〇二四年九月一日時点の住民基本台帳から把握できる百歳以上の日本人の数は九万五千百十九人で、一九七〇年以降連続で過去最高を記録している。女性が八万三千九百五十八人と全体の八八%を占め、男性は一万千百六十一人となっている。百歳以上の日本人は、一九六三年には百五十三人、一九八一年に千人を、一九九八年に一万人を超えたことを考えると、今のこの人数は隔世の感がある。これからも百歳以上の方の数はどんどん増えていくだろう。
そんな中、これからは単に長く生きるのではなく、どれだけ健康寿命を延ばすことができるかが重視される。これに関しては、慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターが興味深い研究を行っている。百寿総合研究センターでは日本でも百数十人しかいない、百十歳以上の「スーパーセンチナリアン」と呼ばれる人々のデータを分析している。これらに基づく研究によると、スーパーセンチナリアンは百歳まで健康寿命を維持していることが多く、彼らの共通点としては認知機能が高い(認知症ではない)、身体的な衰えがない、心臓を中心とした循環器系血管が丈夫の三つが挙げられるという。また性格の特徴としては、一度決めたことをきちんと守る「誠実性」や、好奇心が旺盛で新しいもの好きという「開放性」を強く持つ人が、長寿になりやすいということもわかっている。私のように事業活動や言論活動に積極的に取り組むことも、健康寿命の延長にはもちろん効果的だろう。
高齢者の増加による社会的な負担の増加は、今後の政治の大きなテーマとなる。今俎上に載っているのは、後期高齢者の医療費の問題だ。現行では七十五歳以上の後期高齢者の医療費の窓口負担は原則一割で、一定の所得がある人は二割、現役並みの所得がある場合には三割となっているが、この三割負担の対象の拡大が今検討されている。慎重な議論が必要だと思われるが、現役世代に負担を掛けない永続性のある保険制度の維持のためにも、一定基準に基づく高齢者の医療費負担増は、やむを得ないことだろう。それを踏まえて、高齢者は自らの健康維持にしっかりと取り組む必要がある。
トランプにひれ伏すIT業界
かつては一九六二年~六三年にかけての「三八豪雪」、一九八一年の「五六豪雪」等の大雪によって、全国で様々な被害が発生したこともあった日本だが、地球温暖化の影響なのか、近年は降雪量が少なくなったように思う。実際金沢市ではかつては最深積雪が一〇〇cm以上の年が数年に一回あったが、最近は最深積雪が三〇cm台の年が多くなっている。私は小松市や金沢市等、例年降雪量の多かった裏日本と言われる日本海沿いで育ってきたため、東京での降雪は楽しみの一つでもあり、かつては雪が降ればよく雪合戦をしたり、雪だるまを作ったりして楽しんでいたこともあった。これを考えると、今の積雪の少なさには少し寂しいものを感じる。
地球温暖化については、多くの科学者のコンセンサスが得られているが、これを全く信じていないのが、一月二十日に就任したトランプ米大統領だ。産経新聞は二〇二四年十一月七日付の「トランプ氏、バイデン政権の気候変動対策を全面否定へ パリ協定再離脱も 鍵握るマスク氏」という見出しの記事で、以下のように報じている。「米大統領選で勝利した共和党のトランプ前大統領はバイデン政権が進めた気候変動対策を真っ向から否定する方針で、一期目と同様に地球温暖化対策の国際枠組み『パリ協定』から離脱する可能性が高い。トランプ氏は『どの国よりもエネルギーコストが低い国にする』ことを公約に掲げ、石油や天然ガスの生産拡大を主張。一一日から始まる国連気候変動枠組み条約第二九回締約国会議(COP二九)ではトランプ氏への警戒ムードが一層高まるとみられている」「トランプ氏は大統領選中の演説で『ドリル、ベイビー、ドリル(掘って掘って掘りまくれ)』と繰り返し叫んだ。石油や天然ガス開発に対する制限やバイデン政権が強化した自動車の排ガス規制などを撤廃し、パリ協定から再脱退することを公約に掲げた」「トランプ氏が脱炭素に反発するのは、米国経済の足かせになると考えているからだ。トランプ氏は環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)分野に積極的な企業を支援する投資手法『ESG投資』を『パフォーマンスの悪い詐欺まがいの金融商品』と酷評する」「裏を返せば、トランプ氏はビジネスマンとして『パフォーマンスがよければ』、態度を変えることもあり得るということだ。トランプ氏は、これまで東京電力福島第一原発事故を例に挙げ、原子力発電に否定的だったが、今回の公約では、エネルギーコストの低減策として、原子力の推進を主張した。昨年のCOP二八では、脱炭素の有効手段として、原子力エネルギーの活用が議論された。二〇五〇年までに世界の原子力発電設備容量を二〇年比で三倍とする宣言が発表され、日本を含む米英仏など二二カ国が賛同。原子力発電に対する風向きも変わっている」「鍵を握るのが電気自動車(EV)メーカーのテスラを率いるイーロン・マスク氏だ。かつては原子力やEV規制を巡り、トランプ氏と対立したが、今回の大統領選では急接近。トランプ氏は選挙期間中、自らが当選すればマスク氏を要職に起用し、産業の規制緩和や政府の財政削減を担わせると話していた」「IT産業では、世界的な電力不足への対策が至上命題となっており、経済の浮沈を左右するほど深刻化している。米IT大手各社のトップもトランプ氏との距離を縮めており、一期目のような急進的なエネルギー政策に比べ、態度が軟化する期待もある」。
実際、トランプ氏はイーロン・マスク氏を政府効率化省(DOGE)の責任者に任命する予定となっているし、十一月から十二月にかけて、Facebookを運営するメタのマーク・ザッカーバーグ氏、グーグルのスンダー・ピチャイ氏、アップルのティム・クック氏、アマゾンのジェフ・ベゾス氏がトランプ大統領の邸宅「マー・アー・ラゴ」を訪れている。地球温暖化は二の次として、EVやIT業界に有利になるような低価格の電力供給を目指すことは、もはや明らかだろう。今年はこの「第二次トランプショック」に、全世界が対応する年となる。
アメリカで高い評価に
昨年の元日に起こった能登半島地震の被災地は、厳しい冬を迎えている。石川県小松市出身の私にとって能登の地は大変思い出深い場所なのだが、少子高齢化により、地方の復興もなかなか思うようにいかない時代となったというのが、正直な実感だ。また、今こそ国家の在り方を抜本的に見直し、歴史・伝統・文化の詰まった郷土、日本を末永く繁栄させる展望を抱く時だとも感じた。
こんなことを考えている時に入った朗報が、テレビドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」が、米ゴールデングローブ賞においてテレビドラマ部門の作品賞、主演男優賞(真田広之氏)、助演男優賞(浅野忠信氏)、主演女優賞(アンナ・サワイ氏)の四冠に輝いたというニュースだ。この作品について、オンライン雑誌「クーリエ・ジャポン」が二〇二四年三月二日に「『SHOGUN 将軍』は正しい日本文化を世界に伝えた記念碑的作品である」というタイトルの記事を配信、真田広之氏がプロデューサーを務めたこの作品の製作姿勢を高く評価している。「切腹が意味するものからサムライ・スピリットとは何かについて考え続けたなど、日本文化とその国民性、精神性のルーツを突き詰めていく姿勢も徹底していて驚くほどだった」「『本物の日本を描く』というのが『SHOGUN 将軍』の第一義と言っていいだろう」「あらゆるパートに日本人のスーパーバイザーが配置されたというセットや美術のほか、素晴らしい衣装の数々から所作、歩き方、髪型など、どれをとっても日本人から見ても違和感はない。すり足で歩く女性の姿や、武将が座る際にさっと着物を捌く所作などに見惚れてしまう」「侍の帯刀の位置には帯が重要で、この時代の刀の角度を正確にするために、日本から帯締めの専門家を招いてカナダのクルーにやり方を教えた」「『視聴者は理解できないのだからこれぐらいでいいだろう』という考え方をよしとせず、取材時に何度も口にしていた『オーセンティック』を徹底して貫いた真田の本作にかける思いの強さには圧倒されるばかりだ」「真田が“ドリームプロジェクト”と呼ぶほどの本格的な日本の描写を実現させたのは、これまでハリウッドで『正しい日本文化』を伝えるために尽力してきた真田の努力が、ついに結実したものであるだろう」という。本当の日本文化を世界に伝えたいという真田氏の情熱は、多くの日本人は範とすべきものだ。そのことが結果として、アメリカの多くの人々の心を動かしたことが、今回の受賞に繋がっている。日本人は自国の文化を、大いに誇りに思って良いのではないだろうか。
改めて安倍元首相を偲ぶ
「日本を末永く繁栄させる」ための未来への展望をしっかりと持っていた政治家が、安倍晋三元首相だった。私は第一次安倍政権が発足する前から、「安倍晋三を総理にする会」の副会長を務めていて、その頃から彼の動向の全てを見てきた。その中で一番心に残っているのは、丁度十年前の二〇一五年に出された「戦後七〇年談話」だ。「日本では、戦後生まれの世代が、今や、人口の八割を超えています。あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。しかし、それでもなお、私たち日本人は、世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません。謙虚な気持ちで、過去を受け継ぎ、未来へと引き渡す責任があります」「私たちの親、そのまた親の世代が、戦後の焼け野原、貧しさのどん底の中で、命をつなぐことができた。そして、現在の私たちの世代、さらに次の世代へと、未来をつないでいくことができる。それは、先人たちのたゆまぬ努力と共に、敵として熾烈に戦った、米国、豪州、欧州諸国をはじめ、本当にたくさんの国々から、恩讐を越えて、善意と支援の手が差しのべられたおかげであります」「そのことを、私たちは、未来へと語り継いでいかなければならない。歴史の教訓を深く胸に刻み、より良い未来を切り拓いていく、アジア、そして世界の平和と繁栄に力を尽くす。その大きな責任があります」「我が国は、いかなる紛争も、法の支配を尊重し、力の行使ではなく、平和的・外交的に解決すべきである。この原則を、これからも堅く守り、世界の国々にも働きかけてまいります。唯一の戦争被爆国として、核兵器の不拡散と究極の廃絶を目指し、国際社会でその責任を果たしてまいります」「我が国は、自由、民主主義、人権といった基本的価値を揺るぎないものとして堅持し、その価値を共有する国々と手を携えて、『積極的平和主義』の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献してまいります」「終戦八十年、九十年、さらには百年に向けて、そのような日本を、国民の皆様と共に創り上げていく。その決意であります」というものだ。私は「私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」という言葉に大きな感銘を受け、正しい歴史を伝え日本人に誇りを取り戻す言論活動への意欲を新たにした。この活動の一環として行っている勝兵塾は、今年十四周年を迎える。今後、安倍氏のように未来を語り、世界を股にかけ活躍する政治家が勝兵塾から輩出されることを、私は強く期待している。
2025年1月16日(木) 21時30分