ジェイソン・モーガン氏
1977年アメリカ・ルイジアナ州生まれ。2014~2015年フルブライト研究者として早稲田大学大学院法務研究科で研究。2016年ウィスコンシン大学で博士号を取得。2022年Holy Apostles College and Seminaryから修士号(キリスト教哲学)を取得。研究テーマは日本の法制史、政治史など。著書に『私はなぜ靖国神社で頭を垂れるのか』(方丈社)、『日本が好きだから言わせてもらいます グローバリストは日米の敵』(モラロジー道徳教育財団)、『バチカンの狂気』(ビジネス社)などがある。
世界の人種平等が実現した
元谷 今日はビッグトークへの登場、ありがとうございます。また、第七回アパ日本再興大賞の受賞、おめでとうございます。
モーガン 本当にありがとうございます。会長や審査委員の皆様には、心から感謝しております。私はアメリカ出身で、当然第二次世界大戦でアメリカが行ったことが「正義」だという教育を受けたのですが、日本に来てから少しずつ日本語で書かれた史料を読み、次第に大東亜戦争ではアメリカ兵ではなく日本の英霊がヒーローなのだと思うようになりました。この思いをまとめたものが、今回賞をいただいた『私はなぜ靖国神社で頭を垂れるのか』という本になります。
元谷 素晴らしい内容の本で、審査委員の満場一致で大賞に選ばれました。今日初めてお話するのですが、モーガンさんは非常に日本語がお上手です。最初に日本に来たのは、いつでしょうか。
モーガン 二十一歳の時に日本に来て、滞在している間に二十二歳になりました。それから二十五年が経過しています。その間、アメリカや別の国と行き来をしていますが、合計すると十四年程度日本で暮らしていることになります。私はアメリカの南部、ルイジアナ州のニューオリンズという街で生まれたのですが、大学はテネシー州のチャタヌーガという街にあるテネシー大学のチャタヌーガ校で、そこで日本史と中国史を専攻していました。このチャタヌーガ校にやってきた日本人の留学生の一人と仲良くなり、日本語や日本のことをいろいろと教えてもらいました。その後日本に留学したり、日本で仕事をしたりして、今に至っています。
元谷 そんなモーガンさんは、アメリカ人として日本の歴史や日本自体をいろいろと研究してきて、日本の英霊を高く評価しています。私も、もし先の大戦で日本が戦わなければ、人種不平等で白人優位な世界が今でも続いていたと考えています。しかし敗れたとはいえ日本が戦ったために、戦後世界に人種平等が訪れたのです。
モーガン 私も同感です。さらに私は日本は負けてない、あの戦争は長い目で見ればまだ続いていると考えています。依然として、「ワシントン」が日本を占領している状態なのです。私の祖父は先の大戦に兵士として参加、空母に乗り組んでいました。祖父には、あの戦争はルーズベルトの方から仕掛けたという意識があったのですが、参加した戦争に勝ったことは、それはそれでいいことだったと考えていました。これは、アメリカ人の一般的な意識だと思います。しかし、英霊がヒーローだったとすれば、私がそれまで正しいと考えていた、幼い頃から学んできたことの一切が覆ります。この抵抗感と格闘しながら、『私はなぜ靖国神社で頭を垂れるのか』を書きました。今では私は英霊こそが自分の仲間だと考えており、彼らが持っていた「大義」が世界に今、必要なものだと確信しています。その大義とは、「真実を求め、自分より大切なものを守るため命を惜しまない」ということです。
元谷 モーガンさんの本には、先の大戦で世界に対して日本や英霊が果たした役割が、しっかりと書かれています。
モーガン その通りです。また、私はアメリカと「ワシントン」を分けて考えています。祖父もそうで、愛国者であるのは間違いないのですが、日本人同様に行う必要のない戦争に参加させられたと思っており、常々「『ルーズベルト』に騙された」と言っていました。アメリカは本来あるべき姿ではなく、「ワシントン」がアメリカを乗っ取って、政府を牛耳っている状態なのです。この「ワシントン」とは、南北戦争の北部の流れを汲む、白人至上主義のグローバリストのエリート達のことです。私はニューオリンズという南部の街の出身なのですが、南北戦争の結果、北部が「善」で南部が「悪」となりました。それと同じように、先の大戦後に「ワシントン」が「善」で日本が「悪」となり、「ワシントン」は日本の占領を今でも続けているのです。これが私は一番悔しい。多くの保守の人々が主張しているように、日本は「ワシントン」から離れ「真の独立」を目指すべきですし、私も微力ながらもそれをお手伝いしたいと考えています。
元谷 私は、先の大戦はその前の日露戦争と繋がっていて、その頃から世界の人種平等を勝ち取ろうとする勢力と、非白人国を属国化しようとする勢力が争っていたと考えています。このような視点が近現代史の解釈にはどうしても必要だと思うのですが、私と同様の見方を、白人で勝ち組であるはずのモーガンさんが本に書いていることに、大きな意義があると感じました。
モーガン 自分が白人だと思っておりませんが、そう言っていただけると、私も本を執筆した甲斐があります。
「国体」が日本人に浸透
元谷 ところが、日本には私やモーガンさんとは異なり、日本は戦争を起こした悪い国だという本や言説が絶えないのです。ここから脱却して、先の大戦では人種平等を勝ち取った日本こそが真の勝者であることを知り、日本人が誇りを取り戻すことを目指して、私は様々な活動を続けています。
モーガン 素晴らしい活動だと思います。今の「ワシントン」は八十年前の「ワシントン」と変わらず、本当に人種平等を求めている人などほとんどおらず、白人至上主義が未だに蔓延っているのです。私は白人が勝ち組という意識はなく、私達一般のアメリカ人も日本人同様、この「ワシントン」がもたらす思想から自由になりたいと考えているのです。
元谷 一つ、モーガンさんにお聞きしたいことがあります。アメリカは無警告で、日本の広島と長崎に原爆を投下しました。こんなことを、例えばドイツのような白人国家相手にも行った可能性はあるのでしょうか。
モーガン その可能性はありません。
元谷 私もそう思います。明らかに人種平等ではない考え方が働いていました。そんな人々の指示で作られたのが、今の日本国憲法です。自主憲法ではなく、アメリカ占領軍の支配下での憲法ですから、早く憲法改正をするべきです。本来日本人であれば日本人が作った憲法を持つべきで、その中に日本ならではの考えをいろいろと反映させるべきなのです。ですから、今でも日本の多くの人が信じている、「憲法をとにかく一字一句変えずに守る」という考え方には、強い違和感を感じます。
モーガン 憲法問題は国体から考えるべきだと、私は思っています。皇室のある日本が、文章で日本の国体を表すことができるかどうか、私は疑問を持っているのです。日本が本当にあるべき姿は、天皇陛下であり皇后陛下が具現化しています。アメリカやヨーロッパの国々は、自由民主主義等抽象的な考えの上に作られた国家です。しかし日本は二千六百年の歴史と伝統を持つ国家であり、特に言葉で書き表わさなくてもその国体は人々に浸透しており、それが日本の大きな魅力の根源となっています。従って、私は日本には、憲法は特に必要ないと考えているのです。
元谷 確かにそういう主張もあり得ると思います。先の大戦で敗れた日本ですが、他の国であれば分裂してしまったかもしれないところを、ずっと一つの国として継続しています。日本の歴史である二千六百年の間には、内戦もありましたし、群雄割拠の時代もありましたし、原爆の投下や敗戦もあったのですが、結局まとまって一つの国体を形作ってきました。阿吽の呼吸の連帯感を持つ大和民族であるが故に、世界の経済大国である現在の日本を築いてくることができたと言っても過言ではないでしょう。こんなにも素晴らしい国は、世界を見渡しても他にはないと思います。モーガンさんの言う通り、本来日本には憲法は必要ないのかもしれません。
モーガン 私の研究に大きな影響を与えたのは、北畠親房という後醍醐天皇に仕えた鎌倉時代、南北朝時代の歴史家です。彼の著した『神皇正統記』という日本の歴史を綴った書物の冒頭には、「日本は神国である」と明言されています。最初にこれを読んだ時には、雷に打たれたように感じました。アメリカにはピューリタンという選民思想の持ち主が大陸を略奪しましたが、北畠親房が使う「神国」と意味が全く違いますし、ヨーロッパのものとも全く異なります。日本はこの特別さを、大事にしなければならないと思うのです。
元谷 その通りです。そして、その日本の特別さを象徴しているのが、私は特攻隊だと思うのです。約四千人にも及ぶ特攻隊員らは自ら志願して、自分を犠牲にして国に殉じました。これと同様のことができた国がかつてあったでしょうか。非常に厳しい状況の中でも、大和民族は結束を保ち、自らを犠牲にしてでも国を守ることを厭わなかったのです。これは、天皇を中心とする神の国という考えが日本人の精神の根底にあるからこそ。この根底の考えから、日本人の平和好き、清潔好き、団結力が生まれています。世界の平和のためには、このような精神を世界の常識とする活動が必要かもしれません。
モーガン その自己犠牲の精神こそ、私が英霊を尊敬する理由の最も大きなものです。また、私は日本に合計で十四年滞在していますが、大和民族の親切さに毎日助けられています。私が知っている海外から日本に来た人は、皆同じです。日本は明らかに他の国とは異なるのです。
元谷 それが、日本人にとって普段の自然な振る舞いなのであって、誰かに強制されて行っているものではないのです。
モーガン はい、そのことが、他の国との大きな違いなのです。権力者に言われたわけでも、宗教の教義にあるわけでもないのに、皆が自然に振る舞うのです。
日本らしさが表れている
モーガン 私が特に「日本らしさ」を感じる言葉は、「お世話」と「感謝」です。この「お世話」の意味を最初に聞いた時には、それを理解することができませんでした。
元谷 英語に翻訳することができないのではないでしょうか。
モーガン できません。私が私なりに研究と発信を行っていると、英霊の名誉を守り顕彰する会の佐藤和夫氏や山下英次氏など、私のような者を助けてくれる人がたくさん現れてくる。このように、いろいろな方に「お世話」になっているのですが、一番英霊の皆様に「お世話」になっていると感じています。英霊の「お世話」で日本は成り立っているのです。私もこれに対して、非常に「感謝」をしています。
元谷 欧米であれば、何らかの約束をする場合でも、契約書を作ったり念書を作ったりと文書にする場合が多いと思うのですが、日本人は文書になっていなくても、強要されていなくても、約束を守るのです。憲法に関しても、他の国であれば書かれていることは守りますが、書かれていないことは守らないでしょう。しかし日本人は、書いてあることはもちろん守りますが、書かれていないことも守るのです。こんな感覚を持つ国は、なかなか他にはないと思います。日本が島国だったことが、このような国民性を育んだ大きな要因だと思います。大陸であれば、占領したり占領されたりということがあり、ある地域の結束は高まるかもしれませんが、周辺の他の地域との敵対関係も生まれるでしょう。また文化も、様々に混じり合うことが多いようです。しかし、海に囲まれていた日本人は、ここで生まれてここで育ち、移動距離も短かったので、常識や文化などを濃密に共有することが多かったのです。自分の命に代えてでも子孫を守るという発想も、この共有する生き様から出てきたもので、だからこそあれだけ多くの特攻隊員が志願をしたのでしょう。海外の方から見れば、自死が確実な出撃など、クレイジーに思えるかもしれませんが。
モーガン 外国人として言えば、特攻隊はクレイジーどころか、非常に美しいものです。三島由紀夫氏の英霊に対する考え方は、私と同じような考え方かも知れません。
元谷 三島由紀夫は一九七〇年に自衛隊市ヶ谷駐屯地にて、切腹の作法に従って、割腹自殺をしました。こういうことを行うことができる民族は、なかなか世界にもいないでしょう。しかし今の日本人には、その気概が少し薄れているようにも思えるのですが。
モーガン 日本文化は非常に強靭なものです。もし国難になって、日本本土を巡る戦いが起きれば、日本人はやるべきことをやると思います。日本人が過去から培ってきた精神は、そう簡単には無くならないかと。
元谷 アメリカで生まれたモーガンさんにそう言っていただけると、とても嬉しいですね。様々な日本語の本や史料を読んだり、多くの日本人と会話をしたりすることで掴まれた真理だと思います。
モーガン ありがとうございます。しかし、私も最初に日本に来た時には、自分の心の弱みが原因なのですが、強い違和感を感じました。それは先程お話した「お世話」に関することです。私自身のプライドの高さ故に、お世話になりたくない、自分でやり遂げたいと常に思っていました。何年か日本にいることで、そのプライドも次第に無くなっていったのですが。
元谷 それは、アメリカ人としての誇りがあったからでしょうか。
モーガン それに近いものでしょう。アメリカ人の場合、何でも自分でやることが、国民性というか基本的な人々のスタンスになっていますから。日本に来た時には、それが一番大きなハードルになりましたね。裸になって他の人と一緒に入浴することにも、最初は強い抵抗感がありました。しばらくすると、私が日本に来て感じた違和感のほとんどが、「私が日本人同様にできない」が由来であることを認識するようになりました。それから好きになった日本語が「素直」という言葉です。これも英語にするには難しい、幅広く奥深い意味を持った言葉です。その時から毎日を教訓として、素直に学ぶようになりました。
元谷 今は日本人のことを深く理解しているモーガンさんでも、最初の頃はそういうことがあったのですね。しかし日本にいる日本人は、モーガンさんのように外から来た方の意見をもらわないと、なかなか自分達のことがわからないものです。モーガンさんが称賛してくれている日本人らしさを、いつまでも持ち続けることができる国・日本でいたいと思います。
事業に誇りを持つ
元谷 最後にいつも「若い人に一言」をお聞きして、〆としています。
モーガン 一言で言えば、日本の歴史に誇りを持って欲しいですね。
元谷 それは非常に重要なことです。実は赤坂見附にあるアパグループのビルの屋上には、「誇」の漢字一文字が掲げられていて、首相官邸や議員会館、アパホテルプライド〈赤坂国会議事堂前〉から見える方角にあります。今は日本人でも誇りを持った人が減っていますが、そうじゃないだろうという思いを込めて、設置しました。
モーガン それは素晴らしいことです。日本人が誇りを守るために行うべき手段の一つが、靖国神社への参拝です。あの場所の空気に触れれば、英霊が何を成し遂げたのかを自分の肌で感じることができ、歴史がまだ終わっていないことに気付かされます。そして、日本人であることに誇りを持って、これからのことを考えていって欲しいですね。
元谷 その通りです。靖国神社に参拝して、多くの日本人が誇りを持てる人生を歩んでいって欲しい。
モーガン 今日の機会に一つお聞きしたいことがあります。アパグループは創業以来、赤字を出したことがないと聞いたのですが、それは本当でしょうか。
元谷 はい、創業以来五十三年間、一度の赤字を出したこともなく、累計で数千億円の税金を支払ってきました。
モーガン 世界中を見ても、それだけの期間、ずっと黒字という会社はないでしょう。
元谷 国内でもまずないでしょうし、世界でもそうでしょう。
モーガン それだけ継続して黒字を出し続ける秘訣は何なのでしょうか。
元谷 無理をしないことですね。上手くいったらボロ儲けですが、逆に失敗すれば赤字に転落という経営方法もあります。しかし私は、取引業者も従業員も大切にしたいと思っていますから、赤字だから仕事を発注できないとか、赤字だから給料が支払えないなどとは絶対に言いたくない。だから常に会社が黒字で継続できるよう、最善の方法を探りながらやってきたのです。自分の利益だけを考えていては、とてもじゃないですが、ビルの屋上に「誇」の文字は掲げられません。事業は需要と雇用を創造して、その上で利益を出して税金を払うことに存在意義があり、それを続けていって初めて自分の会社や事業に誇りを持つことができるのです。
モーガン 素晴らしいお考えだと思います。また、その事業と並行して、アパ日本再興大賞や「真の近現代史観」懸賞論文、勝兵塾を主催する等の言論活動をされているのが、凄いことだと常々感じています。私が今回、『私はなぜ靖国神社で頭を垂れるのか』をアパ日本再興大賞に推薦していただく時に思ったのは、あの第一回「真の近現代史観」懸賞論文の最優秀賞に田母神俊雄氏の論文を選んだあのアパグループの賞だということでした。私は田母神氏の論文「日本は侵略国家であったのか」の内容に感激し、以来ずっと田母神氏のファンだったのです。常々アパグループの言論活動には注目していましたので、今回の受賞は本当に嬉しいです。
元谷 私は言いたいことを言うには、まず税金を払えというポリシーですから、事業と言論活動を両輪として進めてきました。田母神氏をはじめとする各賞の受賞者が、また新たな受賞者を生むということで、徐々に良い循環になってきていると感じています。改めて受賞、おめでとうございます。また、今日は貴重なお話をありがとうございました。
モーガン ありがとうございました。