日本を語るワインの会257

ワイン257恒例「日本を語るワインの会」が会長邸で行われました。アパホテルの大ファンで盛んに利用しているという参議院議員の森まさこ氏、九州人は全員知っているアイス「ブラックモンブラン」を製造する竹下製菓株式会社代表取締役社長の竹下真由氏、外務省の後援を受け音楽一座・ヘブニーズで座長を務め世界各地において民間音楽外交を展開する作家の石井希尚氏、ヘブニーズ共同プロデューサーの石井久美子氏、日本の着物文化を世界に発信する活動を展開するコスチュームデザイナーの小林栄子氏、新宿・渋谷で幅広く不動産事業を展開するヒューマックスグループの三代目となるジョイパックレジャー株式会社専務取締役の林大統氏をお迎えし、それぞれの活動について語り合いました。
神道はキリスト教と
そのルーツで繋がっている
 ヘブニーズという音楽一座を主宰する石井希尚氏は、ミュージシャンであると同時に牧師でもあり、久美子夫人と一緒に教会も運営している。しかし聖書を研究する石井氏は、「キリスト教を信じるな」という牧師だ。キリスト教の教典である聖書を重視するのが聖書主義だが、キリスト教文明の西欧諸国が一番聖書的ではなく、非ヨーロッパ文明の日本が一番聖書的というのが、石井氏の主張だ。四世紀に日本に渡った帰化氏族の秦氏だが、その時に日本にキリスト教をもたらした。聖徳太子の同志として国造りに大きく貢献した秦河勝をはじめ、秦氏は神社建設などに貢献したが、そのため神道のルーツには聖書が深く関与している。また平安京への遷都において、和気清麻呂は秦氏の所領である山城国の一角を選定し、秦氏の支援を受けて遷都を成功させた。従って日本的なものは、キリスト教的なものと深く結びついている。石井氏は神道とキリスト教の関係を、ヘブライ大学の研究者と一緒に研究している。また、石井夫妻や彼らがプロデュースする音楽一座・ヘブニーズは、日本精神を聖書的な立場で世界に発信する活動を行っている。
 小林栄子氏が代表理事を務めるNPO法人美・JAPONは、主に明治、大正時代のアンティーク着物をリメイクし、ドレスや舞台衣装に再生、これらの作品を国内外で発表している。この十一月五日には、フランス・パリの国立美術館「ギュスターヴ・モロー美術館」を舞台にして、「天照‐あまてらす‐」という公演を行い、日本の古き良き文化と現代的な美が融合したファッションと、絵画とのコラボレーションを実現させる。十七カ国の大使も出席する予定だ。三月には、今年の日本とベトナムの外交関係樹立五十周年を記念した事業として、ハノイで美・JAPONが主催する「着物・アオザイファッションショー」が行われ、森まさこ氏も出席した。故郷である福島県伊達市のシルクがショールとして使われていることに、森氏は深く感動したという。美・JAPONは、来年同じくパリにあるマルモッタン・モネ美術館で公演を行う予定だ。
繁華街のエンタメに加え
都心の室内墓地事業も展開
 林大統氏は、ヒューマックスグループの三代目だ。新宿・歌舞伎町のアパホテル〈新宿歌舞伎町タワー〉の隣にあるヒューマックスパビリオン新宿歌舞伎町等、都心の繁華街に不動産を保有し、映画館事業や飲食事業、ボーリング等のエンタテインメント事業を展開している。ブラジルの有名プロサッカー選手も食べに来る本場のシェラスコ料理専門店「バルバッコア」や、アメリカ仕込の絶品ローストビーフが味わえる「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」等、グルメ垂涎の店舗も多数経営している。林氏の祖父である創業者の林以文氏は台湾出身。台湾では立法委員(国会議員)も務めた人物で、蒋介石総統とも懇意にしていた。以文氏が日本にやってきたのは、蒋介石総統の意向だった。台湾が中国と対立するにあたって、世界中に散らばる華僑の力を集結させて対抗していきたいと考えたからだ。そこで以文氏は世界華僑協会を作り、初代代表となった。以文氏はまた、現在ビックカメラ新宿東口店のある場所で、戦火で三回も焼け落ちたムーランルージュ新宿座を再建して劇場経営を開始、その後事業は発展を遂げて現在に至っている。
 ヒューマックスグループが手掛ける事業で一つ毛色が変わっているのが、麻布十番にある納骨堂「ゆめみどう」だ。これはいわば、都心にある室内型のお墓。朝九時〜十八時の間に予約なく自由に訪問でき、お花やお香も常設されているので、専用の参拝カードを持ってくるだけ。参拝室で参拝カードをかざし、墓石を選ぶと、骨壺がセットされた墓石が現れ、それに向かってお焼香をしたり、拝んだりできる。これは龍澤寺というお寺の納骨堂だけを管理しているもので、お寺には本堂もあるし、ご住職も常駐している。檀家さんと一緒に考案した、新しい形のお墓のカタチだ。
 竹下真由氏は、発売から五十五周年を迎えた、バニラアイスクリームをチョコレートとザクザク食感のクッキークランチでコーティングした「ブラックモンブラン」を製造する佐賀県の竹下製菓株式会社の五代目社長だ。九州では誰もが知るこのアイスは、竹下氏の祖父が六十年前にフランスのシャモニーを訪れた時に、真っ白なモンブランを目の前にして、これにチョコレートをかければ、さぞ美味しいだろうと思ったことを基に開発したものだ。竹下氏も六年前にその場所を訪れ、その時撮影したモンブランの写真が「ブラックモンブラン」の広告やパッケージに使用されている。専務の仲介で知り合った縁で、ポケモンのキャラクターを採用した「ふわふわケーキ ポケモンがいっぱい」などのお菓子を発売したこともある。最新のタイアップ商品は、怪盗グルーシリーズの人気キャラクター「ミニオン」とタイアップした「ブラックモンブラン バナナ/ミニオン」で、セブンイレブンで購入することができる。アパホテル&リゾート〈東京ベイ幕張〉のポカリスエットプール等、夏のアパホテルのプールでは、竹下製菓より提供を受けた「ブラックモンブラン」等商品の無料配布を行っており、大好評。アパホテルとしてはお客様へのサービスとなり、竹下製菓としては知名度が低い首都圏での効果的な宣伝活動になっている。
ホテル事業の拡大を求め
アパのフランチャイジーに
 竹下製菓では、竹下氏の父親が一九九六年にホテル事業を開始した。当時の佐賀駅前は駐車場ばかりで、地域に賑わいを持たせたい、人の集まる場所を作りたいという竹下氏の父親の想いからのホテル業への進出だった。当初は別のホテルチェーンのフランチャイズだったが、二〇一八年にアパホテルのフランチャイズに変更、アパホテル〈佐賀駅前南口〉としてリブランドオープンした。フランチャイズを変更した理由は、さらにホテルを増やして事業を拡大していきたいという竹下氏の構想と、アパホテルが提供するITパッケージ等の支援システムがマッチしたことだ。その後、二〇二二年にフランチャイズ二号店となるアパホテル〈別府駅前〉を、二〇二四年には三号店としてアパホテル〈福岡行橋駅前〉を開業、竹下製菓は現在三ホテルを持つフランチャイジーとなった。ホテル社長の経験としては、最初にホテルを作るのが一番難しく、二番目がその半分の労力、三番目だと三分の一となる。増やせば増やすほど、開業は楽になる。竹下氏は現在、フランチャイジーとしてアパホテルを五つまで増やす目標を持っている。売ったり買ったりする経営だけでは不安定。ホテル事業であれば減価償却も可能で、含み資産を増加させることができ、会社経営が非常に安定する。特にアパホテルは二千万人を越える会員を持っているので、安定的な集客も望める。一番の問題は立地。こればかりは後で変更はできないので、駅に近い立地にホテルと建てるという条件は、絶対に守るべきものだ。
地震被害からの復興が完了
台湾に見倣うべきは見倣え
 森まさこ氏の夫の三好豊氏は、日本サッカー協会の顧問弁護士であり、理事も務めていた。福島県にあるJヴィレッジは、一九九七年に開設された日本サッカー協会のナショナルトレーニングセンターだ。ただ二〇一一年の東日本大震災時に発生した福島第一原発の事故の後は、事故対応や廃炉のための作業員の基地として、長く活用されていた。二〇二〇年の東京オリンピックが決まり、Jヴィレッジをトレーニング施設に戻すという機運も高まったが、一方では原発事故の近くのこの場所でサッカーのトレーニングを行うことに抵抗を示す人もいた。日本サッカー協会の理事会はこの件で紛糾したが、東京の会議室で話すばかりでなく、一度現地で理事会を行うべきだという案が出て、田嶋幸三会長も同意した。実際にJヴィレッジで理事会を行ってみると、理事の多くがその施設に感動して、もう一度芝生を植えてサッカーの聖地にというビジョンで話がまとまったという。
 森氏はこの六月に、四月に地震に襲われた台湾の花蓮県を訪問し、女性の徐榛蔚県長にも会って話をした。花蓮県まで訪れたのは、日本の国会議員では初めてだった。地震の大きさはマグニチュード七・四で、今年一月の能登半島地震のマグニチュード七・六とほぼ同規模の地震だったが、もうほとんどの復興作業は完了したという。能登半島では復興に時間が掛かり、九月には今後は豪雨による水害で大きな被害を受けた。この台湾と日本の違いは何か。台湾では二十四時間工事をすることが可能だからという話もあるが、その他の要因も含め、しっかりと検証をするべきだ。
 アパホテルでは支配人に昇格した女性には、エルメスのカレ(スカーフ)をプレゼントしてきた。これは二十年前に、ホテル社長とCEOが決めたことで、ホテル業界には男性が多すぎる、もっと女性が増えるためのインセンティブを作ろうと始めたことだ。このカレを購入する役割は、今はCEOから専務に変わった。毎月銀座や日本橋のエルメスでカレを購入しているが、以前は五〜六万円だった商品が、今は七万円以上するようになってきている。
 この五月には、アシックス商事の協力も受け、ビジネスシューズでありながら軽量で履き心地抜群のブランド「テクシーリュクス(男性用)」と「レディワーカー(女性用)」を、ホテル業務に適したアパホテル推奨シューズに採用した。この「レディワーカー」を履いたホテル社長の写真をアパグループホームページのニュースリリースに掲載したところ、その美脚ぶりがネットで話題になるという、思わぬ副次的効果もあった。