阿羅 健一氏
1944年仙台市生まれ。東北大学文学部卒業後、会社員に。1982年の教科書誤報事件をきっかけに南京事件の調査を始める。月刊誌「正論」に調査を執筆し、その後、近現代史の研究まで広める。現在、南京戦の真実を追求する会会長、有限会社情報出版 代表取締役。杉原誠四郎氏との共著『対談 吉田茂という反省』(自由社)は第2回アパ日本再興大賞にて優秀賞を受賞。他の主な著書は、『ジャカルタ夜明け前』(勁草書房)、『再検証 南京で本当は何が起こったのか』(徳間書房)、『「南京事件」日本人48人の証言』(小学館)、『日中戦争はドイツが仕組んだ』(小学館)、『秘録・日本国防軍クーデター計画』(講談社)、『謎解き南京事件』(PHP)、『史料が語るノモンハン敗戦の真実』(勉誠出版)、『決定版 南京事件はなかった』(展転社)、『決定版「南京事件」日本人50人の証言』(育鵬社)。
日本の教科書が歪められた
元谷 今日はビッグトークへのご登場、ありがとうございます。阿羅さんは杉原誠四郎さんとの共著『対談 吉田茂という反省』で二〇一九年の第二回アパ日本再興大賞優秀賞を受賞、勝兵塾でも度々講師としてお話してもらっています。
阿羅 今日はよろしくお願いします。
元谷 よろしくお願いします。阿羅さんが近代史研究の世界に入ったきっかけは、何だったのでしょうか。
阿羅 昭和五十七(一九八二)年に教科書誤報事件がありました。これは高等学校の日本史教科書において、中国華北に対する日本軍の行動が「侵略」と書かれていたのを、文部省が教科書検定において「進出」と改めさせたと、大手新聞各紙やテレビが一斉に報じたものです。実際にそのような修正があった教科書はなく、一大誤報だったのですが、この日本の報道に対して中国と韓国から激しい反発があり、これに屈した日本政府は教科書図書検定基準に、「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること」という近隣諸国条項と呼ばれるものを追加することになったのです。そのため、教科書に記述されることが何年も途絶えていた南京事件に関しても、教科書誤報事件以降は自由に記載されるようになっていきました。そんな教科書を是正する運動が翌年から始まり、私もそこに参加するようになったのです。
元谷 どの国でも教科書で教えるのは、自分の国はいい国であるということです。これが当然なのに、日本では日本が悪い国だったということが学校で教えられたり、報道されたりしています。これはおかしいと考え、本当は何があったのか、正しい歴史を知る機会として、この月刊Apple Townを発行してこのビッグトークやワインの会を掲載したり、勝兵塾を開催したり、「真の近現代史観」懸賞論文やアパ日本再興大賞を行ったりしているのです。
阿羅 はい、そんな会長を非常に尊敬しています。私は運動に参加すると同時に南京事件を研究するようになったのですが、会長は早々と南京事件について明確に否定する主張を展開されていて、運動や研究を行っていた私達にとっても、とても励みになりました。
元谷 本当はどうなのかということは、調べれば見えてくるはずです。にも拘わらず、誤った歴史をずっと主張して、日本を貶めている人がいます。これはとても恥ずかしいことです。
阿羅 日本ではその後も様々な歴史に関する問題が起こっており、それらに対して会長がいろいろな主張を展開したり、真の歴史を伝える活動をされてたりしているのは素晴らしいと思っています。
元谷 教科書も問題ですが、さらにメディアに問題があります。日本がかつて悪いことをしたというスタンスで書かれる記事が多すぎる。先の大戦についても、あの戦いを日本が行っていなかったら、今でも白人の西欧列強の世界支配が続いていて、有色人種の国は全部彼らの植民地になったままだったかもしれません。西欧列強にとって明治維新直後の日本は、植民地にするには軍事力や統治能力が高すぎたのですが、自分達の脅威になるほどの国ではありませんでした。しかし明治になってからの富国強兵政策が功を奏し、日清・日露戦争、第一次世界大戦に勝利した日本は、アメリカ、イギリス、フランス、イタリアと並び、世界の五大国の一つとして国際連盟の常任理事国となりました。しかし西欧列強は、日本がそれ以上に力を付けてくることを警戒して様々な締付けを行うようになり、大東亜戦争に至ることになるのです。
阿羅 その通りだと思います。
元谷 戦後に関しても、諸外国からの謂れのない批判には、日本国民として猛然と抗議をして反論するべきだったのです。しかし日本の左翼的なメディアは逆に諸外国と迎合して、事実ではない日本を貶めるようなことを、嬉々として報道してきました。日本の弱体化を喜ぶようなメディアの報道スタンスは、やはりおかしいと思います。
阿羅 日本はずっと植民地解放を謳ってきて、その理念の下に大東亜戦争を戦ったのに、このことが戦後完全に無視されています。また敗戦後の東京裁判で、南京事件のようにやっていないこともやったことにされて、それに反日日本人とメディアが便乗して今の日本の空気を作っているのです。
南京事件があったと主張
元谷 日本を貶めることは正義であり、その正義を行っていることがカッコいいと、自分に酔っているのでしょう。しかしそれは錯覚です。そんな反日日本人がいることで、海外からは「お前の同朋は認めているじゃないか」と言われ、それ以上の反論が封じ込められてしまう。本来、日本政府が断固否定して反論するスタンスを取らなければならないのですが、外務省がまた反日的だったりするのです。
阿羅 外務省でいえば、一九九八年から二〇〇一年まで駐中国大使を務めた谷野作太郎氏は南京事件があったと主張、その根拠の資料を挙げているのですが、それらはどれも根拠になっていません。また昨年の四月三日に参議院決算委員会で和田政宗参議院議員が外務省のホームページに書かれている「日本政府として、日本軍の南京入城後、非戦闘員の殺害があったことは否定できないと考えている」という一文の根拠を、林芳正外務大臣に尋ねたのです。林大臣は、一九七五年に出版された防衛庁防衛研修所戦史室による戦史叢書「支那事変陸軍作戦」第一巻を政府機関作成の資料として挙げたのですが、ここには日本軍の具体的な虐殺に関する記述はありません。つまり、根拠がないことを林大臣は認めたのです。しかしそれから一年経過しても、外務省はその根拠のないホームページの記述を変更していません。質問から一年経過したこの四月に、私達は議員会館で集会を開いて外務省の担当者に面会、ホームページの変更を強く求めました。和田議員は今後もこの問題を追求していくと仰っていますので、外務省がホームページの記述を変更するまで運動を進めていきたいと考えています。
元谷 是非やってください。そもそも南京事件で日本軍が三十万人を虐殺したと中国は主張するのですが、ただの一人も犠牲者の名前が出てこないのです。誰であっても家族や親戚や友人がいるはずで、その繋がりからも名前が挙がってこないのは、虐殺が事実ではないことの証でしょう。このような国を挙げての虚偽の主張に対してはしっかりと反論しないと、本当のことにされてしまうのです。そして反論は本来外務省の仕事であるにも拘わらず、自分が一緒になって南京事件を認めているのです。
阿羅 その通りです。
元谷 当然、他国は自分の国益に沿って主張します。それに迎合するメディアや外務省が問題なのです。日本人の敵は日本人、反日日本人が蔓延っています。
阿羅 南京事件に関しても、中国というよりは日本の中の一部の日本人が一番悪いのです。南京事件があったという学者やそれを信じるメディア、役人ですね。根拠と言われるものが、全然根拠になっていないのですから。
元谷 南京事件があったと主張している人は、自分が正しいことをしていると錯覚しているのです。
阿羅 世間のためになっているという感覚なのですね。全く理解できないですが。
元谷 歴史的に数々の残虐行為を行った西欧列強を良い国として、何も悪いことをしていない日本を悪い国と教える日本の教育やメディアは、本当に根の深い問題です。そんな西洋列強の国々による世界支配を打ち破り、世界を人種平等へと導いたという意味で、日本の先の大戦での戦いには大きな意義があるのです。
阿羅 日露戦争の日本の勝利には、インド人がものすごく興奮したと聞いています。また大東亜戦争で日本が戦ったことによって、東南アジアの様々な国が独立できるようになりました。これらの正しい歴史を、若い人々にきちんと教えなければならないでしょう。それを日本政府は、例えば一九九五年の村山談話では、日本が「植民地支配と侵略」を行ったと言っています。この村山談話はその後の政権も踏襲していますが、和田議員が植民地とはどこを指すのかを質問しても、政府は答えられなかったのです。このような態度では、国民に正しい歴史は教えられません。
核兵器の保有を曖昧に
元谷 また武力の保有に関しても誤解があります。日本が人種平等に貢献できたのは、武力を持ち、敢えて戦いに参加したからです。やはり武力を持つことは重要です。バランス・オブ・パワー、つまり力の均衡が平和を作り、これが崩れると戦争が起こるのです。強い国が弱いと認識した国に侵攻するのが戦争ですから、弱い国だとなめられないように、近隣諸国に負けない軍事力を身につける必要があるのです。特に急速に経済成長し、それを軍事力へと転換してきた中国は、今やアジア最大の軍事強国となり、日本への圧力を強めています。日本も中国とのいらぬ衝突を避けるために、ちょっかいを出しても損害を出すだけだよと中国にしっかりと伝えることができるだけの軍事力を備えるべきなのです。この点で、私は「持たず」「作らず」「持ち込ませず」の非核三原則はナンセンスだと考えています。核兵器は保有しているかどうかがわからないことで、潜在的な戦争抑止力になるのです。高い技術力を持ち、原爆数千発分のプルトニウムを保有している日本だからこそ、核兵器の保有についてはっきりさせないことで他国からなめられないようにして、戦争抑止力とするのです。
阿羅 仰る通りです。
元谷 ちなみに、原爆投下にも人種問題は絡んでいました。通常であれば、原爆のような威力のある新しい兵器が完成した場合には、威嚇のために海の中に落としたり、人のいない場所に落としたりして、相手の継戦意欲を削ごうとしたでしょう。そして実際に使用するにしても、事前に警告を行ったでしょう。そうしなかったのは、日本が西欧列強の白人国ではなく、有色人種の国だったからです。さらに八月六日の広島へのウラン使用の「リトルボーイ」、八月九日の長崎へのプルトニウム使用の「ファットボーイ」と続けて二発のタイプの異なる原爆を投下したのは実験的要素が強く、間隔を空けると国際的な非難で二発目が投下できないと考えたからでしょう。こんな非道な作戦は有色人種国相手だったからで、ヨーロッパでドイツ相手にはとてもできなかったはずです。日露戦争に勝って、有色人種でも白人に勝てることを実証した日本は、原爆による虐殺からも急速に復興して、戦後経済大国となって再び世界の大国の仲間入りを果たし、このことで人種平等を建前だけではなく現実のものとすることに貢献したのです。阿羅さんの言う通り、これらの功績を伝えて、日本人が再び自国に誇りを持てるようにしなければならないと思います。
阿羅 会長が仰るように、もう間違いのない歴史が解明されているのです。ただ現実には間違った歴史が流布されている。特に教育現場とメディアに対して、誤った歴史を正していくという活動が、非常に大切になります。この意味から月刊Apple Townの発行をはじめ、会長がやられている全ての活動の重要性は今後も増すばかりだと思うのです。
元谷 特に月刊Apple Townは三十年以上継続して発行していますから、それなりの影響力がついています。
阿羅 その努力には本当に感服いたします。私と代表は同い年ですが、私もこれからもっと頑張らなければという思いを新たにしました。
元谷 私は自分が若いと思っている内は、若いと考えています。そうやって生きていった方が、人生をエンジョイできると思うのです。自分はもう歳だから駄目だと思ったら駄目なのです。まだ若い、もっとやれると思わないと。阿羅さんも私もまだ若いですよ。
阿羅 はい、私も自分は若い、もっとやれると考えて生きていきます。月刊Apple Townは毎月読んでいます。冒頭のビッグトークはいつも多彩なゲストとの対談で興味深く、藤誠志のエッセイはその時々のトピックスが取り上げられていて、とてもわかり易いですね。
元谷 藤誠志は私のペンネームで、日本一の真の武士道精神で世の中を斬るという思いで名付けました。一度アメリカから連絡があって、熱烈な藤誠志のファンで一度会いに行きたいと。私が紹介できるよと言うと、本当に訪ねて来られました。藤さんはどこですかと聞かれたので、眼の前ですよと答えて。さすがに、びっくりしていましたね。
阿羅 もう一つ楽しみにしているのが、APA的座右の銘です。どれも人生の核心を突いていて、短くてわかり易く、すごく共感できる言葉が多いのです。
元谷 英訳も載せていることもあって、APA的座右の銘も多くの方に読んでいただいていて、非常にファンが多いのです。私としては一言で言えば「日本人は誇りを持て」ということに繋がる言葉を、いつも書いています。例えば二十年前に掲載した「勝兵は先ず勝ちて 而る後に戦を求む」というのは孫子の言葉です。勝つ見込みが立ってから戦えというのは今に当てはめれば、自分の強みを探してそれを武器に生きていくべきだということです。
二兎とも得る可能性の追求
阿羅 私は時折アパホテルに宿泊するのですが、見ているとお客様のメインは若い方のように思います。そんな人々が客室で月刊Apple Townを手にして、会長の座右の銘に感動したり、歴史の真実を知ったりして、実は凄く大きな力になってきているのではないかと思うのです。
元谷 教育は人に大きな影響を与えます。先の大戦が聖戦だと教えられるか、悪いことをしたと教えられるかで、その後の考え方も大きく変わるでしょう。正しい歴史を知ることによって、日本人に誇りを持たせるのが、私の活動の目的なのです。
阿羅 数々の調査で、日本人の自己肯定感は諸外国に比べて低くなっています。これも歴史教育が原因の一つではないかと思うのです。
元谷 どんな国でも自国に誇りを持つ教育をしています。しかし日本では日教組の教育方針がおかしく、誇りを持つような教育をしていません。
阿羅 その通りです。これは一部の人間が言っていることではなく調査で明らかなことなのですから、日本も自己肯定感が高まるような教育をしていかなければならないのです。
元谷 同感です。そして日本人が誇りを持つということは、差別をしないということに繋がります。どうも日本人は白人にペコペコしすぎる一方、アジア人やアフリカ人には横柄です。自らにしっかりとした誇りと自信があれば、相手が何人であろうが全く同じ態度で接することができます。
阿羅 仰る通りです。日本人はまだ大東亜戦争に敗けたことで、小さくなる習性があるのかもしれません。しかしそれでは駄目ですよね。
元谷 そうです。
阿羅 もう一つ、会長の活動で素晴らしいと常々思っているのは、日本に駐在する様々な国の大使と対談をして、それを月刊Apple Townに掲載していることです。これは日本と大使らの国との交流に、大きく貢献していると思います。
元谷 日本に来ている外交官は、その国のエリートなのです。その人が日本を正しく理解して、自国に帰った時に「日本は素晴らしい国だ」と周囲に広めてくれることが、将来に亘って日本にとってプラスになると思っています。ですから私は、どの国の大使館にも分け隔てなくパーティー等の招待状をお送りしているのです。私が主催するパーティーには、他のどんな催しよりも多くの大使館関係者の方がいらっしゃいますよ。また月刊Apple Townの主要な記事に英訳を付けていることも、効果が大きいと思います。英語は世界共通言語ですから、英訳を掲載することで私の主張を理解する人が、より多くなる可能性があります。
阿羅 素晴らしい戦略だと思います。また私は、会長が良く仰る「二兎追うものは二兎を得る」という言葉が好きで。
元谷 今の時代、「二兎追うものは一兎をも得ず」という発想だと何もできません。そうではなく、追わないものは捕まえられないと考えて、二兎を追えば二兎が、三兎を追えば三兎が手に入る可能性を追求していくべきなのです。
阿羅 なるほど。
元谷 最後にいつも「若い人に一言」をお聞きして、締めくくりにしています。
阿羅 日本の歴史を良く知るということに尽きるのではないでしょうか。今日お話してきたように、日清戦争、日露戦争、そして第一次世界大戦で日本は五大国の一つとなり、さらに大東亜戦争を戦うことで、世界の白人支配を打破したという歴史を、きちんと知ることです。また全くの嘘である南京事件が教科書に書かれていることで、国民の九割が本当のことだと思っています。若い人には是非「戦線後方記録映画『南京』」を観て欲しいですね。この映画は昭和十三(一九三八)年に公開されたものですが、陥落して二、三日後の南京に撮影隊が入り、リアルな街の様子を撮影しているものです。街は平静そのもので、正月には子供達が爆竹を鳴らしてお祝いしている姿も出てきます。とてもじゃないですが、虐殺直後の街とは思えません。また、映画の中には、南京市内に漢奸(親日派市民)を見つけて殺せというポスターが貼られているシーンと、多い時には一日数千人の漢奸が処刑されたというナレーションが入っています。この大量処刑を日本軍のせいに転嫁したのが、南京事件だったのではないでしょうか。「戦線後方記録映画『南京』」を観れば、多くの人が南京事件の虚構が理解できると思います。
元谷 その通りだと思います。今日はいろいろと面白いお話をありがとうございました。
阿羅 ありがとうございました。