日本を語るワインの会243

ワイン243恒例「日本を語るワインの会」が会長邸で行われました。京都生まれ、京都育ちの衆議院議員の前原誠司氏、十年前に約二百人抜き、四十二歳で社長に抜擢されたアース製薬株式会社代表取締役社長CEOの川端克宜氏、取引先のドラッグストアの社長だったのを川端氏にスカウトされた、アース製薬株式会社常務執行役員の貴島浩史氏、新聞記者として日本中の多くの企業を見てきた日本戦略情報研究 所長の林文隆氏をお迎えし、日本の経済・安全保障等について、語り合いました。

殺虫剤から虫ケア商品へ
‘Act For Life’を実践する
 川端克宜氏がアース製薬の社長になってから、「殺虫剤」という名称を「虫ケア商品」に変更した。いくら歴史があるからといって、商品に「殺」という文字が入るのはどうなのかという発想だ。何千もの案の中から「虫ケア製品」にした。「虫を守るように聞こえる」という批判もあったが、ポジティブな印象を重視した。しかし虫を殺すことは、病気を防ぐことでもある。人を一番多く殺している動物は、マラリアやデング熱といった伝染病を媒介する蚊であることは明らかだ。
 「ゴキブリホイホイ」はアース製薬を代表する基幹商品だったが、今その売上はあまり多くない。発売当初はゴキブリが大量に取れることを視覚的にも感じることができる商品だったが、今の家は気密性が高く、そもそもゴキブリが少ない。他にもいろいろ良いゴキブリ対策の商品が出ている。今では「ゴキブリがいない」ことの確認のために、ゴキブリホイホイが使われている。
 口の中を清潔にする「モンダミン」は、先代の社長(現会長の大塚達也氏)がアメリカで同種の製品が一般的に広まっているのを見て開発、発売したものだ。同種の他社の製品は海外で製造されているものが多いが、モンダミンは国産だ。口は万病の元とも言われるが、口中の衛生状態を考えると、寝る前と朝起きぬけにモンダミンでうがいをすることは、非常に効果的だ。またブラシによる歯磨きだけだと「クセ」によって磨かれないところも出てくるが、モンダミンであれば全体をケアすることができる。
 川端氏が広島支店長時代のこと、最大のライバルは広島本社のF社だった。あるスーパーに営業に行くと、そこの社長がウチは広島の会社なので、広島の物しか扱わない。個人的にも野球はカープ、サッカーはサンフレッチェ、相撲は安芸乃島のファンだという。これを聞いて川端氏は「わかりました。ただ一箇所だけ納得できません。これに納得いくご返事をいただいたら、二度と顔を出しません。どうして社長の車はレクサスなのでしょうか」と聞いた。川端氏は激怒した社長に「帰れ」と言われると思ったが、社長はしばらく考え込んで、「いいものは確かにいい。アース製薬の商品もいい。入れなきゃだめだな」と商品を納入してくれたという。
 その川端氏がアース製薬に入社したきっかけが面白い。アパレル系の企業の内定を得て一安心の川端氏、デートの約束で相手の家に向かったが、時間を間違えていて彼女はまだ不在。在宅していた彼女の父親と話をすることになった。後で聞くと、川端氏がアパレル系に行くことに父親は不満とのことで、彼女も他の会社に行って欲しいという。仕方なく就職部で求人票を確認、五十音順の最初にあったアース製薬に応募、入社することになったという。
 先代の大塚会長は五十歳の時に、「五十五歳で社長を辞める」と宣言した。その理由はそこで辞めないと、資産を死ぬまでに使いきれないということだった。川端氏はその話を他人事だと思って聞いていたが、三年後の四十歳の時に大塚氏に密かに「次の社長はお前」と聞かされて、仰天した。優秀な営業マンでアイデアマンである川端氏を大塚氏が高く評価していたのだが、社内のジェラシーは相当なもの。しかし社長に就任して十年、社員二千人の会社を見事に率いている。
 アパリゾート 栃木の森ゴルフコースのINコース一三番のショートホールには「アースジェットホール ホールインワンチャレンジ」がある。ここで見事ホールインワンを達成すると、「アース製薬 Special Earth Set」がもらえる。また、アース製薬はアパホテル&リゾート〈六本木駅東〉のプールのネーミングライツも購入、「バスロマンプール」として人気を博している。
日本の成長のためには
財政出動による投資が必要
 通常であれば、経済は毎年二%程度成長する。一九九七〜二〇一九年のG七の国々の動向を見ても、イタリア・フランス・ドイツは二〜三%、イギリス・アメリカ・カナダは三〜五%の経済成長を遂げているが、日本は〇%の成長だ。一九九七年に日本の一世帯当たりの所得が一番多かったが、今は当時に比べ各世帯、月十万円ずつ所得が減っている計算だ。この二十年間に日本経済は何度も成長路線を取ろうとしたが、その度に消費税増税や金利上昇等がその勢いを止めてきた。
 日本の歳出の約二割を国債の償還が占めるが、世界の他の国では歳出に償還を入れない。国債の期限が来たら、新発行の国債に乗り換えていくのが普通だ。歳出の約三五%を社会保障費が占めるが、おかしなことに歳入には年金や健康保険等の社会保障費が入っていない。税務省は歳入を小さく、歳出を大きく見せて、常に増税を狙っている。
 OECD(経済協力開発機構)の各国では、名目GDPが成長している国ほど投資を行っている。日本は投資をしないから成長しない。日本国内の需給ギャップは三十五兆円あり、これを財政出動による投資で埋めることで、日本を経済成長路線へ向かわせることができる。このような方針をとるためには、日本の政策司令塔の役割を果たす内務省が復活する必要がある。大久保利通が作った内務省が富国強兵をテーマに欧米に追いつく政策を実行したのと同様に、新しい内務省が超高度科学立国宣言を行い、三十兆円を技術開発に十兆円を地方経済の発展のために投入するのだ。
 労働人口が減少していく日本にとって最も重要なのは、ロボット産業への投資を活発にして、さらにこの産業を伸ばしていくことだ。これを国策でやるのである。全世界のロボットのソフトウェアの四三%が日本で作られていて、アメリカがこの分野でコラボして二国で世界シェアの七〇%の確保を狙っている。またロボット製造にどうしても必要な「核心部品」の多くも日本製だ。若者が減る日本の安全保障のためにはロボット兵器が必要だし、これから爆発的に増える高齢者の介護のためにも介護ロボットは必須だ。
 さらに日本が投資すべきはエネルギーと食料の分野だ。エネルギーで注目されているのが、マグネシウム循環社会の実現だ。海水からマグネシウムを取り出し、マグネシウム燃料電池やマグネシウム燃焼火力発電所等で発電、生じた酸化マグネシウムを太陽光によってマグネシウムに戻して再利用するというものだ。資源量は全世界のエネルギーの一億年分あるという。その他日本全国にある温泉によるバイナリー発電も有力なエネルギー源だ。食料自給率向上の切り札は米粉パンの普及だ。各地の学校給食でも導入され始めている。減反を行うぐらいならもっと米を作って、パンの原料にするべきだ。

まず自分で戦ったから
世界がウクライナを支援
 牛の飼育方法も出荷時期も、日本とアメリカでは異なる。アメリカは放牧で、十八カ月で出荷する。日本は大事に大事に穀物を与えて室内で育て、平均二十九カ月で出荷する。このため、脂と赤身が分かれるアメリカの牛に対して、日本の牛の肉は霜降りになり、肉製品として両者は全くの別物だ。ただこの日本の牛は、いわば成人病の状態だ。日本でも各地で放牧による牛の牧畜が行われており、経費が少なくて済む等のメリットが確認されている。
 軍事力だけではなくエネルギーや食料を含めた安全保障政策で、日本は自分の国は自分で守るという考えを持つことが重要だ。この観点からすれば、第六世代戦闘機を日本、イギリス、イタリアで共同開発するという決定は、日本にとっての朗報だ。日本の国土面積は世界で六十一番目だが、領海を含めた排他的経済水域の広さでは世界第六位になる。海は資源の宝庫であり、メタンガスが氷となっているメタンハイドレートだけでも、日本のエネルギーの百年分あると言われる。また南鳥島には放射能を帯びていないレアアースもある。
 ウクライナを世界が支援したのはなぜか。それはまず自らが戦って、ロシアに負けないことを証明したからだ。最初からNATOに頼ることはなかった。日米安保に頼るのも危険だ。アメリカは誰が大統領で、その大統領の支持率が何%で、議会の二大政党の構成がどうなっているかで日本有事への対応が全く異なるが、それは民主主義国家だからしょうがない。常に、必ずアメリカが助けてくれると思う方がおかしいのだ。
 前原誠司氏は浪人時代に、京都大学の高坂正堯教授の本「国際政治」を読んで国際政治を将来の仕事と決め、京都大学に進学して高坂ゼミに入った。高坂教授は非常にユニークな先生で、四月の最初の授業で「阪神タイガースが優勝したら、全員単位をあげる」と宣言する。すると前原氏が三回生の一九八五年に本当に阪神が優勝。高坂教授は約束通り、試験の答案用紙に「阪神タイガース優勝万歳」と書いた学生全員に単位を出した。
元谷家のエピソード満載の
『誰も知らない帝王学』
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 五月十日に発売された元谷拓専務の三冊目の著書『誰も知らない帝王学〜能ある鷹は爪を出せ〜』が好評だ。アパグループ創業者元谷外志雄から学んだ生きる知恵、成功の秘訣など、著書『誰も知らない帝王学』には有名財界人の他にも、元谷家の秘密の日常のエピソードが綴られている。