恒例「日本を語るワインの会」が会長邸で行われました。日本同様観光立国を進めるチュニジア共和国大使館の特命全権大使モハメッド・エルーミ氏、松下政経塾の入塾審査も担当した麗澤大学特別教授の髙橋史朗氏、僧侶でもあり英語で仏教の本を執筆中の在日本ルーマニア商工会議所会頭の酒生文弥氏をお迎えし、LGBT理解増進法など今の日本で論争となっているテーマについて、語り合いました。
LGBT理解増進法については
慎重に議論を深めるべきだ
慎重に議論を深めるべきだ
髙橋史朗氏は東京、大阪、埼玉、福岡の四カ所で十年以上「師範塾」を主宰しているが、この塾の大阪での二期生だったのが、今カリスマ体育教師として評判の原田隆史氏だ。飛田新地を校区に持つ大阪市立松虫中学校に赴任、劣悪な環境にいる生徒に対して、訪問指導などで荒れた状況を正し、陸上部の顧問となって七年間で十三回の日本一を達成した。様々な教育を実践する中で原田氏が開発した「自立型人間育成教育=原田メソッド」は、大谷翔平選手が所属した花巻東高校の野球部の佐々木洋監督も指導に取り入れ、大谷選手も実践。大谷選手は光村図書出版の小学五年生の道徳の教科書に四ページで取り上げられているが、そこにも大谷選手による原田メソッドの曼荼羅のような図(OW六四)が掲載されている。大谷選手は今でも原田メソッドを守り、日記をつけ続けているそうだ。
自民党のLGBT理解増進法に関する会議では大激論が続いている。岸田首相や自民党執行部は法案の今国会での通過を目指しているようだが、もし通過すれば教育現場は混乱するだろう。メディアはG七の国々は同様の法律を持っている、日本は遅れていると散々喧伝しているが、実際に法律となっているのはカナダだけで、他の国々では法律にはなっていない。むしろアメリカでもイギリスでもLGBT教育に関しては、大きな対立が生じている。日本でも安易に決めてはいけない問題なのだ。
アメリカではLGBTに融和的な民主党と厳しい態度を見せる共和党が完全に対立している。「T」が意味するトランスジェンダーについて、子供は自分の性自認について親に言う必要がないという立場と言わなければならないという主張がぶつかっているのだ。前者の根拠は子供の権利であり、後者の根拠は親には子供を養育する義務があり、心身ともに健康を管理するためには性自認を知っておく必要があるというものだ。アメリカではこの問題に関して、親が学校を訴える事態になっている。イギリスも大混乱だ。LGBTに関する性教育を行うようになって十年で、十八歳以下の子供で性転換を行った人数が、七十七人から三千人以上に増えた。これは良いことなのだろうか。LGBTの当事者達も主張しているが、日本では彼らに対する差別は顕著にはなっておらず、むしろ海外から日本に来たLGBTの人々がその差別のなさに驚くぐらいだ。そんな中でわざわざ差別を禁じる法律を作ることは、逆差別の意識を刺激したりして、逆に不和を招くことになりかねない。日本国憲法は十四条で「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と定めており、これで十分ではないだろうか。
ドイツの社会学者のガブリエル・クビー氏が書いた『グローバル性革命‐自由の名によって自由を破壊する』という本は、日本語には訳されてはいないが素晴らしい本だ。この本では世界中で展開されている性規範や性道徳を撤廃しようとしている性革命を、「自由に対する誤った幻想」として鋭く批判している。日本社会では家族が基礎となっており、この家族を大切にする価値観を持つ人が多い。しかし性革命では家庭は男が女を支配するための抑圧構造だとして、家族の共同体を解体しようとする。子供達の早期性交を助長する「包括的性教育」に対してクビーは、「性規範の緩和は、文化的腐敗につながる」「性規範の緩和は子供たちに最高の環境である家族を破壊する」等の問題点を指摘している。日本にもこのグローバル性革命や包括的性教育が浸透しつつある。これらには、しっかりと抵抗していかなければならない。
自民党のLGBT理解増進法に関する会議では大激論が続いている。岸田首相や自民党執行部は法案の今国会での通過を目指しているようだが、もし通過すれば教育現場は混乱するだろう。メディアはG七の国々は同様の法律を持っている、日本は遅れていると散々喧伝しているが、実際に法律となっているのはカナダだけで、他の国々では法律にはなっていない。むしろアメリカでもイギリスでもLGBT教育に関しては、大きな対立が生じている。日本でも安易に決めてはいけない問題なのだ。
アメリカではLGBTに融和的な民主党と厳しい態度を見せる共和党が完全に対立している。「T」が意味するトランスジェンダーについて、子供は自分の性自認について親に言う必要がないという立場と言わなければならないという主張がぶつかっているのだ。前者の根拠は子供の権利であり、後者の根拠は親には子供を養育する義務があり、心身ともに健康を管理するためには性自認を知っておく必要があるというものだ。アメリカではこの問題に関して、親が学校を訴える事態になっている。イギリスも大混乱だ。LGBTに関する性教育を行うようになって十年で、十八歳以下の子供で性転換を行った人数が、七十七人から三千人以上に増えた。これは良いことなのだろうか。LGBTの当事者達も主張しているが、日本では彼らに対する差別は顕著にはなっておらず、むしろ海外から日本に来たLGBTの人々がその差別のなさに驚くぐらいだ。そんな中でわざわざ差別を禁じる法律を作ることは、逆差別の意識を刺激したりして、逆に不和を招くことになりかねない。日本国憲法は十四条で「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と定めており、これで十分ではないだろうか。
ドイツの社会学者のガブリエル・クビー氏が書いた『グローバル性革命‐自由の名によって自由を破壊する』という本は、日本語には訳されてはいないが素晴らしい本だ。この本では世界中で展開されている性規範や性道徳を撤廃しようとしている性革命を、「自由に対する誤った幻想」として鋭く批判している。日本社会では家族が基礎となっており、この家族を大切にする価値観を持つ人が多い。しかし性革命では家庭は男が女を支配するための抑圧構造だとして、家族の共同体を解体しようとする。子供達の早期性交を助長する「包括的性教育」に対してクビーは、「性規範の緩和は、文化的腐敗につながる」「性規範の緩和は子供たちに最高の環境である家族を破壊する」等の問題点を指摘している。日本にもこのグローバル性革命や包括的性教育が浸透しつつある。これらには、しっかりと抵抗していかなければならない。
アンチ反日に多くの人が
大きく変わる韓国の情勢
大きく変わる韓国の情勢
髙橋氏は、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会会長の西岡力氏と福井県立大学教授の島田洋一氏と共に三月に韓国に行き視察等を行ったが、大きな変化を感じたという。ソウルの日本大使館前で行われる慰安婦問題を追求し続ける「水曜集会」よりも、アンチ反日の集会の方が三倍の人数が集まった。そこで西岡氏が韓国語で演説をしたところ、拍手喝采となった。この視察旅行では、韓国で大ベストセラーとなった『反日種族主義』の編著者であるソウル大学の元教授の李栄薫氏とも議論を行った。ユネスコの世界記憶遺産への慰安婦の登録に関して、韓国・中国の資料と日本の資料がぶつかっている。慰安婦は二十万人もいないし、強制連行も嘘だ。韓国の学生からも、正しい資料に基づく日本との共同研究を求める声が上がっている。韓国の大学では日本寄りの主張は裁判沙汰になるというリスクがあるが、日本に住んだ経験があり、日本人への信頼感が強い尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の時代に、ぜひ学問の世界での日韓連携を深めるべきだ。
国際的な発信が求められる
日本的ウェルビーイング
日本的ウェルビーイング
日本は発信力を強化する必要がある。日本語で本を書いても伝わる範囲が狭いが、英語で書けば遥かに多くの人に主張が伝わる。髙橋氏もイギリスの出版社と、アメリカが終戦後の日本で行ったウォー・ギルド・インフォメーション・プログラムについてのわかりやすい英語の本を作る打ち合わせを行っている。明確な資料を基に、正しい歴史を世界に伝える必要がある。
問題は日本の中に反日日本人がいて、日本を貶めていることだ。発展途上国に政府開発援助(ODA)を行ったりと、日本は世界に貢献している。何よりも日本が世界に貢献したのは、最終的に負けたにせよ、日本が先の大戦で西欧列強と戦い、彼らの帝国主義的植民地政策を壊滅に追いやったことだ。日本が戦っていなければ、世界はまだキリスト教国である西欧列強に支配されたままだったかもしれない。正しかったことは、しっかり主張していかなければならない。しかし、世界価値観調査の最新版(二〇一七〜二〇二〇)の「国のために戦いますか」という質問に対して、「はい」と答えた日本人は一三・二%で、世界七十九カ国中の最低だった。国民の意識も大きく変えていかなければならない。
世界幸福度報告書の二〇二三年版の国別の幸福度ランキングで、日本の順位は百三十七カ国中四十七位となった。これはG七で最下位だ。しかし心身に加え社会的に幸せな状態を示すウェルビーイングの定義は、日本と西欧では異なるだろう。日本人は皆が幸せではないと自分も幸せになれないという、協調性や調和、バランスを重視するものだ。対して西欧は、個人的な幸せを求める。この幸せの尺度の違いを調査に反映しないと、結果がおかしくなってくるだろう。G七首脳会談に先だって、五月十二日からG七教育大臣会合が富山と金沢で開催され、二年後には大阪万博も行われるが、こういった国際的なチャンスで日本的なウェルビーイングをもっと発信するべきだ。日本的なウェルビーイングについては、国連から推されて「SDGs文化推進委員長」に就任している石清水八幡宮の権宮司・田中朋清氏が、京都大学と共同研究を行っている。さらに国際的な発信について、活動を深めていく予定だ。
チュニジア人の幸福感は日本で言えば関西人に近く、おせっかいに近いぐらいに他人の幸福も意識する地中海気質だ。今のグローバリズムが進む世界では、お互いの文化から学び合うことが大切だ。エルーミ大使の夫人は、カナダのオンタリオの大学で多文化共生の在り方を研究して修士号を得ている。マルチカルチャーの研究では、カナダは先進国だ。
問題は日本の中に反日日本人がいて、日本を貶めていることだ。発展途上国に政府開発援助(ODA)を行ったりと、日本は世界に貢献している。何よりも日本が世界に貢献したのは、最終的に負けたにせよ、日本が先の大戦で西欧列強と戦い、彼らの帝国主義的植民地政策を壊滅に追いやったことだ。日本が戦っていなければ、世界はまだキリスト教国である西欧列強に支配されたままだったかもしれない。正しかったことは、しっかり主張していかなければならない。しかし、世界価値観調査の最新版(二〇一七〜二〇二〇)の「国のために戦いますか」という質問に対して、「はい」と答えた日本人は一三・二%で、世界七十九カ国中の最低だった。国民の意識も大きく変えていかなければならない。
世界幸福度報告書の二〇二三年版の国別の幸福度ランキングで、日本の順位は百三十七カ国中四十七位となった。これはG七で最下位だ。しかし心身に加え社会的に幸せな状態を示すウェルビーイングの定義は、日本と西欧では異なるだろう。日本人は皆が幸せではないと自分も幸せになれないという、協調性や調和、バランスを重視するものだ。対して西欧は、個人的な幸せを求める。この幸せの尺度の違いを調査に反映しないと、結果がおかしくなってくるだろう。G七首脳会談に先だって、五月十二日からG七教育大臣会合が富山と金沢で開催され、二年後には大阪万博も行われるが、こういった国際的なチャンスで日本的なウェルビーイングをもっと発信するべきだ。日本的なウェルビーイングについては、国連から推されて「SDGs文化推進委員長」に就任している石清水八幡宮の権宮司・田中朋清氏が、京都大学と共同研究を行っている。さらに国際的な発信について、活動を深めていく予定だ。
チュニジア人の幸福感は日本で言えば関西人に近く、おせっかいに近いぐらいに他人の幸福も意識する地中海気質だ。今のグローバリズムが進む世界では、お互いの文化から学び合うことが大切だ。エルーミ大使の夫人は、カナダのオンタリオの大学で多文化共生の在り方を研究して修士号を得ている。マルチカルチャーの研究では、カナダは先進国だ。
人的資源が豊富なことが
日本とチュニジアの共通点
日本とチュニジアの共通点
駐日大使で心から日本が良い国だという人は多い。多くの国の外交官にとって、駐日大使を務めることは出世コースになっている。だから駐日大使は基本各国のエリートだ。アフリカの国で日本に侵略されたり、独立を脅かされたりした国は存在しない。どの国も日本との連帯を求めている。二〇二二年八月に行われた第八回のアフリカ開発会議(TICAD八)は、チュニジアがホスト国だった。岸田首相は多くのリーダーと協議を重ね、アフリカの様々な問題にコミットメントすると表明した。チュニジアではODAの枠内で四十のプロジェクトが達成される等、日本は途上国支援で、まだまだその強さを発揮している。
チュニジアから日本に留学している学生は約五十人で、皆日本の文科省の奨学金で来ている。かつての宗主国であるフランスに行く選択肢もある中で日本を選んだチュニジア人は、成功している人が多い。例えば、和歌山大学で副学長を務めるマグレビ・ナビル氏は大阪大学で経済学の博士号を取得したチュニジア人だ。会津大学でコンピュータサイエンスを教えるベン・アブダラ・アブデラゼク氏もチュニジア人で、電気通信大学で博士号を取得している。日本とチュニジアは共通点が多い。国旗の色が赤と白というのも同じだが、天然資源が少なく人材が大切というのも共通の特徴だ。
チュニジア共和国の初代大統領、ハビーブ・ブルギーバは、国の西欧化を目指し、女性の地位向上に努めた人だ。イスラム教国の習慣だった一夫多妻制を非合法化して離婚を合法化、さらに女性の妊娠中絶の権利も認めた。イスラム教国の中でもチュニジアの雰囲気が他と異なるのは、このブルギーバ大統領からの影響が大きい。そんなチュニジアも少子化の傾向がある。理由は経済的な困難と生活様式の変化だ。かつては街ぐるみで子供を育てたが、今は夫婦で育てなければならない。
ホテル社長が営業が三度の飯よりも好きということを反映して、支配人やシェフをはじめとしたアパホテルのスタッフも、地域に積極的に営業して屋形船とのタイアップ等、ヒット企画を生み出している。これがアパホテルの強さの源泉の一つだ。
チュニジアから日本に留学している学生は約五十人で、皆日本の文科省の奨学金で来ている。かつての宗主国であるフランスに行く選択肢もある中で日本を選んだチュニジア人は、成功している人が多い。例えば、和歌山大学で副学長を務めるマグレビ・ナビル氏は大阪大学で経済学の博士号を取得したチュニジア人だ。会津大学でコンピュータサイエンスを教えるベン・アブダラ・アブデラゼク氏もチュニジア人で、電気通信大学で博士号を取得している。日本とチュニジアは共通点が多い。国旗の色が赤と白というのも同じだが、天然資源が少なく人材が大切というのも共通の特徴だ。
チュニジア共和国の初代大統領、ハビーブ・ブルギーバは、国の西欧化を目指し、女性の地位向上に努めた人だ。イスラム教国の習慣だった一夫多妻制を非合法化して離婚を合法化、さらに女性の妊娠中絶の権利も認めた。イスラム教国の中でもチュニジアの雰囲気が他と異なるのは、このブルギーバ大統領からの影響が大きい。そんなチュニジアも少子化の傾向がある。理由は経済的な困難と生活様式の変化だ。かつては街ぐるみで子供を育てたが、今は夫婦で育てなければならない。
ホテル社長が営業が三度の飯よりも好きということを反映して、支配人やシェフをはじめとしたアパホテルのスタッフも、地域に積極的に営業して屋形船とのタイアップ等、ヒット企画を生み出している。これがアパホテルの強さの源泉の一つだ。