日本を語るワインの会231

ワイン231恒例「日本を語るワインの会」が代表邸で行われました。第四次安倍内閣で文部科学大臣を務めた衆議院議員の柴山昌彦氏、東京大学の大学院で博士号を取得後東芝で原発事業に従事していた衆議院議員の空本誠喜氏、二〇一八年の第一回アパ日本再興大賞を受賞した評論家の江崎道朗氏、日本経済新聞社で地方をくまなく巡った日本戦略情報研究所長の林文隆氏をお招きし、日本の安全保障戦略、エネルギー戦略について、熱い議論を交わしました。
沸騰水型軽水炉の再稼働も
粛々と進めていくべきだ
 江崎道朗氏は、評論家の前に石原慎太郎氏の秘書や平沼赳夫氏の秘書を務めており、二〇〇九年に保守系議員連盟・創生「日本」の会長に安倍晋三氏が就任した時の事務局も務めていた。柴山昌彦氏も参加したこの創生「日本」だが、長年の休眠状態から活動再開かというタイミングでの、今回の安倍氏の訃報だった。
 空本誠喜氏は、二〇一一年の東日本大震災の時は民主党の衆議院議員だった。原発のスペシャリストとして官邸に詰め、恩師でもあった内閣府原子力委員会委員長の近藤駿介氏と供に原発の緊急事態対応に取り組み、毎日官邸の細野豪志氏や福山哲郎氏にやるべきことリストを提出していた。当時から低レベル汚染水の海への放出は、トリチウムは残留するけれども薄めて行えと提言していた。今、日本では電力危機が叫ばれているが、安全には極力配慮しながら、再稼働を進めていくべき。これまで再稼働を果たしたのは、全て三菱重工が建設した加圧水型軽水炉(PWR)であり、沸騰水型軽水炉(BWR)はまだこれからだ。東北電力の女川原発二号機や東京電力の柏崎刈羽原発の六号機、七号機がその先鞭をつけることになると思われる。核融合はまだ百年先の技術だ。個別要素の技術開発が行われているが、全体としては当面実用化は難しい。
 国や地方自治体がハザードマップを作成する等、通常であれば災害等のリスクは大っぴらに語られて、人々の注意を促すことができる。しかし原発については、その反対運動の絡みから「絶対安全」が神話のように流布しており、政治的な理由でリスクを語ることができなくなっていた。東京電力が原発担当役員に技術がわからない人をあて続けたのも、具体的な安全性を話さなくても良かったからだ。東京電力のガバナンスの問題が福島の原発事故の原因の一つであろうし、現在の事態を招いた要因だろう。
温泉やマグネシウムは
将来有望なエネルギー源だ
 林文隆氏が全国を巡って、今後日本のエネルギー源として有望だと考えているのは、温泉だ。多くの温泉では源泉が高温のため、加水を行うなどで温度を下げているが、これはすなわちエネルギーを無駄にしていることだ。温泉バイナリー発電という仕組みでは、比較的低温のお湯で沸点の低いアンモニアなどの媒体を沸騰させて、その蒸気でタービンを回して発電を行う。元の温泉水は温度が下がって戻ってくるので、それを入浴用に使用する等で温泉資源を無駄にすることはない。既存の温泉を利用するのであれば、新たな熱源を探して採掘するコストも掛からない。日本には温泉地が約三千三百カ所あるといわれているが、これらを使って発電すれば、日本の必要とされる電力の十二%を賄うことができる。神戸製鋼所が温泉でも使用できるバイナリー発電機を製造しており、その価格は一基二千万円だ。
 では地方ではこの電力を使って何をするべきか。かつては工業団地への誘致を盛んに行ったが、思うように工場は地方にやってこなかった。有望なのは植物工場で野菜を栽培することだ。植物工場の分野の第一人者である千葉大学の丸尾達氏に意見を聞いたところ、温泉バイナリ発電が可能で、七階建ての植物工場が建設できるなら、野菜を毎日出荷することが可能だという。栃木県では海水の代わりに塩分のある温泉水を使ったフグの養殖に成功、実際に出荷が開始されている。養殖を行っている場所は、廃校になった小学校の体育館だ。このように地方にはまだまだ使える資源があるのだが、無いのは「知恵」だ。東京等都会に出て成功している地方出身者の知見を故郷に使えるようにする、何らかの仕組みを考えるべきではないか。
 もう一つ有望なエネルギー源として、東京工業大学の矢部孝教授が提唱しているのが、マグネシウム燃料電池だ。これは、負極においたマグネシウムを塩水等で溶かすことで電気を発生させることができるもの。マグネシウムは海水から豊富に採取することができるため低コストで供給が可能、また化学反応後に生成される水酸化マグネシウムは、太陽光を当てることでマグネシウムに戻るという性質があり、資源の再利用も可能だ。例えば、沖縄の返還された米軍基地の滑走路をマグネシウム工場にするだけで、膨大な量のエネルギー源が手に入ることになる。
 日本を取り巻く安全保障環境は近年激変している。その中でもエネルギー源が重要性を持っているのは明らかだ。また経済面での安全保障もしっかりと考えなければならない。例えば中国の個人や法人が日本の土地を買い漁っているのを、無制限に認めていいのか。今北海道の土地がかなり中国資本に購入されている。北海道は土地が広々と存在し、火山も温泉も多い。温泉バイナリー発電を名目に法律を制定、中国人から土地を取り上げてはどうか。また近年問題となっているのは、自衛隊の幹部と結婚している中国人の存在だ。世界には軍人の国際結婚に制限をかけている国もあるが、まず現状を把握するためにも一度徹底的に調べ上げ、公表してはどうだろうか。また日本の学校なのに、学生の大半が中国人という学校がある。教育の自由の観点から、このような学校に制限を加えるのは難しい。孔子学院は、中国政府が世界各国の大学と連携して開設する中国語や中国文化の教育機関だ。世界で最も孔子学院が多いのは最大で百二十校にも及んだアメリカだが、近年閉鎖が相次いでいる。アメリカ政府は孔子学院を安全保障上の脅威と見做していて、スパイ活動の疑いもあると、大学に閉鎖の圧力を掛けている。また明らかに人民解放軍や情報機関に関わっている中国人には、ビザを発給しない方針も打ち出している。
 日本には十万人以上の中国からの留学生がいるが、学習・研究の一環として様々な産業の機密の知的財産に関わっている。これは本当に問題がないのか。学問の自由と国家レベルでの情報管理を上手く整理していかないと、将来大変なことになる。アメリカでも共同研究の中でどう機密を保持していくかが議論になっている。
安倍氏も望んでいた
積極財政を進めるべき
 食料の安全保障も重要だ。日本の食料自給率を維持するためには、米作農家を守らなければならず、多くの国民が米を食べる政策が必要だ。地方が活性化するには、工場があって田んぼがあって、兼業農家が成立することが絶対的に必要だ。ドイツの小麦は不味い。だから小麦は輸入に頼ることにして、国内ではじゃがいもの生産に集中した。日本も米がある。小麦アレルギーの子供もいるのだから、パンも輸入の小麦粉ではなく、米粉で焼けばいい。実際学校給食等で米粉パンが出されているが、非常に美味しい。
 安倍元首相は財政問題に詳しく、自民党が昨年十一月に政務調査会に設置した財政政策検討本部の最高顧問も務めていた。安倍氏や高市早苗氏は積極財政派だが、岸田文雄首相や麻生太郎氏はプライマリーバランスを重視する財務省に同調する財政健全派だ。しかし麻生氏は財政には詳しくなく、税務省に吹き込まれた通りのスタンスを維持しているのではないか。この状況を変えるには、まずは官僚が弱い権威にすがるべき。例えばノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ教授に講演してもらって、質問ありますかとやる。官僚は質問などできないはずだ。
 コロナ禍の下、リモートワークが増加しているが、在宅勤務者向けにインターネットの使用料金をもっと下げれば、多くの人が安心して家を地方に構えるようになるのではないか。
 アメリカはレールガンの開発を中止したが、日本はまだ開発を継続している。電磁力で砲弾を高速発射するレールガンは、例えば東京から名古屋上空のドローンを撃墜できるともいわれている。様々な理由でアメリカは開発を放棄したわけだが、日本にはリニアモーターカーの技術もあり、まだ断念するには及ばない。国を挙げて開発を推進していくべきだ。
子供を大人扱いする
アパ式教育法が凄い
 グループ専務は、八月十日ABEMAテレビで放送になった千原ジュニアと佐々木久美が司会を務める「二分五十九秒」という番組に出演、「子供ではなく大人を育てる! アパホテル式教育法」というタイトルでプレゼンテーションを行った。会長はグループ専務を育てるにあたって子供扱いをしなかった。だから夕食の時間も大人に合わせて夜の九〜十時。泣いても同情されずに他の人に迷惑だから止めろと言われる。さらに定期試験の勉強をしていると、夜家に帰ってきた会長から「勉強ばかりしていると、勉強バカになるぞ!」と連れ出され、購入したばかりの土地を視察。そこで容積率と建ぺい率とかを尋ねられ、何部屋のホテルができるか考えろと言われた。これは目先の勉強等にかまけず、もっと広い視野を持てということだとグループ専務は今、理解している。会長は中学時代に父親を病で失ったが、そのことを早く大人になるチャンスを得たと評価している。だから自分の子供達にも早く大人にするための教育を行ったのだろう。
 学校では記憶力を問われる教育がメインだが、実社会では問題解決力やディベート力が問われる。単に記憶だけでは身につかないし、社会で通用しない。柴山昌彦氏は大学卒業後住友不動産に就職して、宅地建物取引士資格試験を受けた。しかしそれまで大学で民法をしっかり学んでいたので、比較的容易に試験に合格することができた。
※Apple Town2022年9月号の「日本を語るワインの会」において、「日本語教育を受けていた台湾人等三十万人を虐殺した(二・二八事件)」と記述いたしましたが、二・二八事件の犠牲者の数は、正しくは三万人でした。ここに訂正して、お詫びいたします。