Big Talk

日本人は一人ひとりが「まずは自衛」の意識を持つべきだVol.368[2022年3月号]

ジャーナリスト 葛城奈海
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APAグループ代表 元谷外志雄

著書『戦うことは「悪」ですか サムライが消えた武士道の国で、いま私たちがなすべきこと』(扶桑社)で第四回アパ日本再興大賞を獲得した葛城奈海氏。俳優活動、自然保護活動から予備自衛官となり、日本の様々な問題を解決すべく行動する葛城氏に、今の日本に根本的に欠けていること、私たちは何をなすべきなのかをお聞きしました。

葛城 奈海氏
1970年東京都生まれ。ジャーナリスト・俳優。東京大学農学部卒業後、自然環境問題・安全保障問題に取り組み、森づくり、米づくり、漁業活動等の現場体験をもとにメッセージを発信。TBSラジオ『ちょっと森林のはなし』森の案内人(2008年~2011年)。2011年から尖閣諸島海域に漁船で15回渡り、現場の実態をレポート。防衛省オピニオンリーダー。予備3等陸曹。北朝鮮向け短波放送「しおかぜ」でアナウンスを担当。日本文化チャンネル桜『FrontJapan桜』レギュラー出演中。産経新聞『直球&曲球』連載中。共著に『国防女子が行く』(ビジネス社)、『大東亜戦争失われた真実』(ハート出版)、解説書に『[復刻版]初等科國語[中学校版]』(ハート出版)がある。

酷い尖閣諸島の現状
日本は事なかれ主義の権化

元谷 今日はビッグトークへの登場、ありがとうございます。改めて、アパ日本再興大賞受賞、おめでとうございます。

葛城 ありがとうございます。今年日本で一番ラッキーな女だと思っています。また賞金が一千万円と大変高額で。私のSNSの投稿で受賞を知った友人が「気を失った」と書き込みをしていました。

元谷 ぜひ次の本の執筆のリサーチ費用に使ってください。宿の方は副賞の「全国ホテル巡り招待券」を使ってもらって。同じホテルに連泊はできませんが、一年間有効ですから。過去の受賞者で三百泊、利用した人がいます。

葛城 十分に活用させていただきます。

元谷 「発想は移動距離に比例する」というのは私の座右の銘の一つです。いろいろなところを見るのが大事で、実際に行ってみないとわからないことが多いですね。

葛城 それは「現地に行って体感する」という、私の取材ポリシーと全く同じです。

元谷 私の場合、好奇心の赴くまま日本中、世界中を訪問したことが、言論活動に大いに役立っています。まず読者にもわかるよう、葛城さんの経歴を教えてもらえますか。

葛城 今は取材したことを書いたり喋ったり番組を作ったりする、ジャーナリスト活動がメインです。元々は自然環境問題をライフワークにしながらも、NHK出身の演出家・和田勉さんのドラマスクールで一年間学び、俳優活動をしていました。役者だけでは食えないので、副業としてモーターショーのナレーション等もしていたのですが、その一つとして防衛省の市ヶ谷台ツアーの案内人の仕事もするようになりました。二〇〇〇年に防衛省が六本木から市ヶ谷に移転、新しい庁舎や東京裁判、三島事件の舞台となった市ヶ谷記念館等の案内を一般女性が行っていると聞いたからです。元々戦後教育でアンチ自衛隊だったのですが、自然保護活動を通じて日本という国を守ることの重要性に目覚めていました。案内人であれば、国を守る自衛隊と国民の懸け橋になれると思ったのです。

元谷 それは素晴らしいことです。

葛城 ただ、だんだん与えられた原稿を話すだけでは満足できなくなってきて。丁度その頃、それまで元自衛官しかなれなかった予備自衛官制度に加え、「予備自衛官補」という一般人に門戸が開かれた制度が誕生したのです。これは一般枠の場合、三年以内に五十日間の訓練を受ければ、予備自衛官になれるというものです。私は早速その一期生として、二〇〇二年の夏に横須賀市の武山駐屯地で五十日の訓練を開始、二〇〇四年に予備自衛官補に任官されました。

元谷 訓練は厳しくなかったですか。

葛城 私は学生時代から合気道をやっていましたから意外に訓練は大丈夫で、逆にもう少し厳しくしてください! と思っていました。自衛隊も初めての一般人だったので、ちょっと遠慮をしていたのだと思います。ただ初めて持つ小銃は重かったですね。四㎏ぐらいありますから。これを持って戦闘訓練を行い、射撃もします。持ちながらの匍匐前進が大変で、銃がコントロールできずに太腿に当たるのです。鏡でみると、無数の水玉の痣が腿にできていました。それでもとても楽しかったです。

元谷 尖閣諸島にも行っていますね。

葛城 はい、尖閣諸島の海域まで十五回行きました。あの海域は日本の戦後の捻れの象徴のような場所です。海上保安庁の巡視船は、日本人である漁師や一般人は尖閣諸島の一海里以内に入れないようにしています。近づくと、巡視船からボートが下りてきて、私達の進行を妨害するのです。その内側では、中国の公船が魚釣島のすぐ近くを遊弋しています。日本の領海なのですから、中国の公船を追い出して日本人は自由に行き来できるようにするのが普通なのに、逆なのです。これを見て、今の日本は事なかれ主義の権化の国だと思いました。

元谷 そんな対応をしていれば、いずれ中国に取られてしまう。竹島の二の舞になりかねないです。

葛城 二〇一二年に民主党政権から第二次安倍政権になって、少しはましになるかと思ったら、逆に石垣島の港から出港させてもらえなくなりました。尖閣諸島の実効支配の度合いは、年々中国の方が強くなっているのが実態です。日本政府が主張通りに尖閣諸島が日本の領土だと言うのなら、日本の漁師が安心して堂々漁ができる環境を整えるべきなのですが、全くそうなっていないのです。

元谷 陸続きの国同士の場合、軍隊や国境警備隊が国境を越えたら、攻撃されてもやむを得ないでしょう。領海の場合は無害通航権がありますから、侵犯するだけではすぐには攻撃できないのですが、それでも徘徊するのは無害通航の範囲を越えています。日本はもっと領海をきちんと守るべきです。

葛城 その通りです。例えばインドネシアではスシ海洋水産大臣が指揮を執って、違法操業をした外国漁船は全て拿捕、返還請求を無視して約五百隻を沖合で爆破して沈めています。インドネシアを舐めるなよと態度で示しているのです。人口がわずか一万八千人のパラオ共和国も二〇一二年、違法操業の中国漁船に威嚇射撃をして一名を射殺、他の乗組員二十五人を全員逮捕・起訴しているのです。こんな小さな国でもできることが、なぜ日本にできないのか。情けない。こういった問題意識から『戦うことは「悪」ですか』を書かせていただきました。

元谷 正にアパ日本再興大賞にふさわしい素晴らしい内容の本で、審査委員も全くの異論なく葛城さんの本に大賞が決まりました。

学ぶ場のない「皇統」
意味を伝えて
世論を健全化

葛城 ひとつお聞きしたかったことが。「真の近現代史観」懸賞論文が第十四回で、アパ日本再興大賞が第四回とお聞きしています。論文だけではなく、なぜ本にまで賞を与えることにされたのですか。

元谷 メディアが左傾化していることもあって、良い内容の本が出版されているのに、意外と知られていないことが多く、読まれないままになっていると思ったからです。多くの人に読む機会を与え、それらの人々が本当はどうなのかを知れば、皆保守になるはずです。この受賞を多くの人が知り、本を読む人が増えれば、物事を改めて考える人が増えて、より多くの人が保守に目覚めるはずです。

葛城 もうひとつ、再興大賞の賞金が懸賞論文の二倍なのはなぜでしょうか。

元谷 それだけの価値がある賞だと示すために、思い切った金額にしてみました。こういった賞の賞金としては、最高額だと思います。

葛城 本当に身に余る光栄です。

元谷 第三回「真の近現代史観」懸賞論文で最優秀藤誠志賞を受賞した佐波優子さんが、今回の葛城さんの本の推薦人でした。彼女も予備自衛官ですね。

葛城 令和元年十月に「皇統(父系男系)を守る国民連合の会」を立ち上げ、私が会長を務めているのですが、佐波さんにも呼びかけ人になっていただいています。また「三姉妹燦DAY」というYouTube動画を毎週配信しているのですが、私が長女、佐波さんが次女、歌手のsayaさんが三女という設定で、いろいろとお話をしています。

元谷 一緒に様々な活動をしているのですね。

葛城 はい。この「皇統(父系男系)を守る国民連合の会」ですが、女性週刊誌やテレビのワイドショー等で、例えば愛子様を天皇に…といった目に余る報道が多いことに危機感を抱いて作ったものです。私は「男系の皇統を潰してしまおう」という確信犯が背後に潜んでいると考えています。多くの人々がちゃんと学んでいないので、女性天皇と女系天皇の違いさえわからないのです。わからないままに男女平等がいいことだと思いこんで、女性が天皇になれないのはおかしいと。皇統の意味を多くの人に理解していただき、世論を健全化したいと考えています。

元谷 メディアや教育が左傾化している今の日本には、皇統についてちゃんと学べる場がないのです。今上天皇まで百二十六代続く伝統は非常に貴重であり、大事に引き継ぐべきです。他国と比較するのもどうかとは思いますが、世界でここまで長く続く王室は、他にはありません。

葛城 仰る通りで、私も『戦うことは「悪」ですか』の中で、一章を費やして皇統問題を書かせていただきました。アパ日本再興大賞をいただくことで、私の声がより多くの人に届く環境を作っていただいて、本当にありがたいと思っています。

元谷 私も多くの人に訴える言論活動を長きに亘って続けてきました。この月刊Apple Townは三十一年間、毎月一度も休まずに、私が編集長として続けてきたものです。アパホテルの全客室に置いていることもあって、毎月十万部を発行しています。本で十万部ですとベストセラーでしょう。

葛城 超ベストセラーです。

元谷 アパホテルに五万円分宿泊すると五千円がキャッシュバックされる会員システムがあることから、累積会員数が二千万人に達していて、常連客も多いのです。そういったお客様が、事業で成功していることもあって私のエッセイを読んで共感してくれる。そういった活動を続けてきました。

税金を払わないことは
事業者倫理に悖る

葛城 十二月七日の受賞記念パーティーの来賓スピーチで心に残ったのは、ホテル社長が社員を家族のように思っているという言葉でした。これだけ大きな規模の会社になっても、その思いを維持してらっしゃるのですね。

元谷 創業から今年で五十年ですが、一人のリストラもしていません。社員は約五千人ですが、取引業者まで含めると、物凄い数の人々が関わって事業を進めています。アパホテルが生み出す経済効果は非常に大きいのです。私は企業が果たすべき責務の三点として、需要の創造、雇用の創出、納税の義務を挙げています。これらを私は着実に果たしてきましたし、だからこそ、言論活動において耳を貸してくれる人々が増えてきたのだと考えています。

葛城 私は日本を、天皇陛下を家長とする一つの家のような国だと考えています。そして代表や、出光佐三氏のようなかつての偉大な経営者は、会社を運営することによって社会貢献を行ってきたと思うのです。「傍を楽にする」が目的なのですね。しかし近年は起業や働くことの意味を取り違え、自分が今儲かればいいという発想の人が増えたように思えます。

元谷 お金を儲けても社会貢献がなければ、落ちているお金を拾ったのと変わりません。需要、雇用、納税の義務を果たしながら拡大再生産をするのが、事業家の務めなのです。税金を払わないことを自慢する経営者もいるのですが、その会社は必ず道路等、税金を使って維持されている社会のインフラを使って事業を行っているはずです。それなのに税金を払わないというのは、事業家倫理に悖ることだと思います。

葛城 代表が愛国心に目覚めたきっかけは何だったのでしょうか。

元谷 社会の矛盾に最初に気づいたのは、父の病気がきっかけでした。父は結核を十年患い、私が中学二年生の時に亡くなりました。元々は元谷木工製作所という工場を経営する事業家で、病気になる前は百人ぐらいの従業員がいて、戦争中は軍需工場として船の舵輪を、戦後は桐箱や桐箪笥を作っていました。しかし父が病に倒れたため、工場を閉めて貸家・貸間業で食い繋ぐことになったのです。収入は少なく、父の医療費が嵩むにも拘らず、資産があるために生活保護を受けることはできません。資産を切り売りして、医療費を捻出するしかないのです。好きで病気になったのではないのに、これはおかしいと思いました。当時からイギリスは国民皆保険で医療費が無料でした。それを知った小学生の私は、同様の医療保険制度を日本にも導入すべきだと考えたのです。少し左寄りだったのですね。その後大人になり世界の国々を旅するようになると、国内では批判の対象となる日本という国が、海外では尊敬の対象となっていることを知りました。また他の国々と比べても、日本ほど素晴らしい国はないと気づいたのです。やはり世界を広く見ることが大事ですね。海外に行くようになったことで、愛国心が芽生えました。

葛城 国によって、祖国のために戦って亡くなられた方への敬意の表し方は若干異なりますが、基本先人達の霊を弔う精神は変わりません。しかし日本は異常です。英霊に尊崇の念を表すために靖国神社に参拝することが、軍国主義の表明として批判されるのです。

元谷 先の大戦に対する評価が、決定的に間違っているのです。日本が戦っていなかったら、西欧列強の植民地は未だに開放されていなかったし、人種平等の世界にはなっていなかったでしょう。独立国が誕生し植民地が無くなったのは、結果は敗北したとはいえ、日本が立ち上がって戦ったことが大きなきっかけになっています。このことをもっと大きく評価して、先の大戦の肯定的な面も見るべきなのです。海に守られてきた日本ですが、元寇の時も幕末の時も他国に占領されないように、武士を中心とした人々が国を守ってきました。先の大戦後には残念ながらアメリカに占領されましたが…。しかし今の日本人には、自分の国は自分で守るという、独立自衛の意識が無さ過ぎるのです。アメリカに守ってもらおうなどと思ってはいけない。

葛城 それが一番歯がゆいのです。日米安保があるから安心ということはありません。基本は独立自衛の国家であるべきで、足らない部分を補うために日米安保条約があり、これらが抑止力となって戦争を防ぐべきなのです。

小刀を持たせない教育が
日本人を弱くしていく

元谷 そもそも生物界はすべからく弱肉強食です。人間が生物界の頂点に立てたのは、火や道具を使うことで勝ち残ることができたからでしょう。負ければ、絶滅種になっていたはずです。日本も生き残ることを第一に考えるべきなのです。

葛城 私は狩猟をするので、代表の言葉は実感として理解できます。

元谷 私もクレー射撃から入って、免許を取って狩猟をやっていたことがあります。警察による銃の管理の検査のうるささに閉口して、何年か前からやらなくなりましたが。

葛城 そうでしたか! 私は全国の森林を取材していた時に、鹿の増えすぎで林業の方が悲鳴を上げているのを知り、林政審議会にも働きかけたのですが行動もしようということで、四年前に狩猟免許と銃砲所持許可を取得したのです。先日も東京の檜原村で巻き狩りをしてきました。

元谷 アメリカでは自分の身を自分で守る権利が保証されていますから、多くの家庭が銃器を保有しています。江戸時代も武士は皆、刀を持っていました。

葛城 日本人は今、安全を人頼みにし過ぎなのでしょう。もちろん警察や自衛隊は日本人の安全を守ろうとしてくれますが、自分で守る意識を失うと、個人の危機管理能力が無くなってしまうのです。

元谷 「まずは自衛」というのは、どこの国でも会社でも個人でも当てはまるのではないでしょうか。私は従兄弟の影響で、十代の頃から合法的に銃に親しんできましたが、銃砲所持に関しては年々厳しくなってきたように感じます。

葛城 自衛隊では新隊員でもライフルを撃つのですが、狩猟の世界では十年以上の散弾銃所持の経歴がないと、ライフルを所持することができません。また、銃と弾を別々のロッカーに保管しなければなりませんし、そのロッカーもそれごと盗難に合わないように固定されていなければなりません。私の住む新宿区は歌舞伎町があるために日本で一番、銃砲所持に対して管理が厳しいと言われています。担当の警察官に、あなたが十年後に犯罪を犯したら、私もクビになりますと言われました。

元谷 武装はともかく、五十年も事業を行っていると様々な事件に遭遇します。それらについてもまずはしっかり自衛策を講じておいて、対応する必要があります。そうすることでアパグループは、これまで一度も不当な勢力の圧力に屈して、金銭を提供するなどを行ったことはありません。どんな組織でも、「上同士」ほど話が通じるものです。常に私は相手のトップと話をつけてきました。

葛城 そういう話はお聞きしていて、とても気持ちがいいですね。

元谷 ラスベガスでも射撃場で銃を撃つことがあるのですが、拳銃から自動小銃まで、様々な銃を試すことができます。こういう経験があれば、拳銃は三十メートル離れるともう当たらなくなることが、実感値としてわかります。よく映画でライフルと拳銃の撃ち合いのシーンがありますが、数百メートルの射程距離を持つライフルに拳銃で対抗するのは、無理です。

葛城 そういう実感というのは大事です。銃どころか日本の学校では、安全確保という名目で、子供達に肥後守のような小刀を持たせないようになりました。私にはどんどん日本人が生物として弱くなっていく教育にしか思えません。最近ナイフで人を刺す事件が起こっています。日頃からナイフが身近にあれば、対処の仕方も身につけることができて、被害が小さくなるのでは…と思うのですが。

元谷 自分で自分を守るという教育を、日本でも行うべきですね。

葛城 それが国の独立自衛にも繋がっていくと思います。

元谷 同感です。最後にいつも、「若い人に一言」をお聞きしています。

葛城 日本人には生まれつき、とても素敵な「大和魂」というDNAが備わっています。大和魂というと神風特攻隊のような「荒ぶる魂」をまず思い浮かべる方が多いのですが、本来は漢字の通り、「大きな和」を求める魂の意味です。ただその「和」は、いつもニコニコしてれば得られるものではなく、荒ぶる魂に裏打ちされて守られるものなのです。神道には和魂(にぎみたま)、荒魂(あらみたま)という言葉があります。和を守るための武が表裏一体になっているのが大和魂であり、それを代々受け継いでいるのが日本人なのです。若い人はここに気づいて、それを体現した生き方をして欲しいと思います。

元谷 大和魂を持って備える。備えあれば憂いなしということですね。今日はありがとうございました。

葛城 ありがとうございました。