和田 有一朗氏
1964年神戸市生まれ。早稲田大学卒業、神戸市外国語大学大学院修士課程(国際経済学専攻)を修了。衆議院議員秘書などを経て、神戸市会議員を2期、兵庫県議会議員を5期務める。2021年10月の衆議院議員選挙で初当選を果たした。
言論活動に信頼が集まる
元谷 本日はビッグトークへのご登場、ありがとうございます。この度は衆議院議員のご当選、おめでとうございます。
和田 ありがとうございます。
元谷 また、勝兵塾の関西支部長にも就任して頂きました。
和田 実は私が支部長の座を預からせていただくのは、二度目なのです。二〇一二年に勝兵塾の関西支部が発足したのですが、私は第一回から参加し、関西支部長をさせていただきました。二〇一四年に衆議院議員選挙に立候補して敗れた時に一旦支部長を退いたのですが、今回衆議院議員になることができましたので、支部長に復活させていただきました。
元谷 国会議員となれば、これまでの県会議員とは異なり、ぐっと活躍の場が広がると思います。しかも和田さんは県会議員の時から尖閣諸島の魚釣島に上陸するなど、一地方議員以上の活動をしていました。
和田 魚釣島に上陸したのは、勝兵塾関西支部が発足する直前のことです。「日本の領土を守るため行動する議員連盟」所属の議員ら約百五十人で尖閣諸島に向かい、私を含む十人が海に飛び込んで泳いで魚釣島に上陸しました。私は学生の時から、国民のため国家のために働く政治家を志望していましたから、その思いで行動したことです。
元谷 そういう思いの人が国会議員に当選したというのは、非常に頼もしいことです。
和田 ありがとうございます。ただ、長く政治活動をしていますと、やはり心が折れそうになる時があります。しかし勝兵塾で代表に教えを受け刺激を受けることで、座標軸を再確認し、自分のやっていることは間違いないのだと信念を新たにすることで、国会議員にまで辿り着くことができました。本当に感謝しております。
元谷 勝兵塾では私ももちろん話をしますが、講師の方を多数お呼びして、一人十分ずつ講演をしてもらっています。これは一人の話を長く聞いて、その人の考えを吹き込まれるよりも、多くの人の見解を聞いて、そこからいろいろ自分で考えて欲しいと思っているからです。ですから、その都度質問タイムも設けています。ただタイムキーパーは私ですから、あまり役に立たない話であれば三分で終わってもらいますし、いい話であれば二十分話してもらうこともあります。勝兵塾を始めて十年になりますが、東京、金沢、そして大阪と毎月三拠点での開催を、中断することなく続けています。
和田 その全てに代表が出席されているというのが、素晴らしいことだと思います。
元谷 私は事業活動と言論活動は車の両輪だと考えています。主張を行うだけの人よりも、事業で成果を出しながら物を言う人の方が、信頼性が担保される分、より多くの人が耳を傾けてくれるのではないかと。実際、この三拠点での十年の勝兵塾の活動の成果として、多くの人が覚醒したと思っています。
和田 確かに単なる評論家ではなく、アパホテルという日本一のホテルチェーンを築いた代表が仰る言葉には、信頼感と重みがあります。
元谷 私は起業して今年で丸五十年ですが、その間一度の赤字も出したことがなく、一千億円以上の税金を納めてきました。商売をやる上で、道路などのインフラを活用しているのですから、納税するのは当たり前のことだと私は思っています。また税金を払っていない人よりも、払っている人が言うことの方を、多くの人は信用するでしょう。
和田 その通りだと思います。
元谷 世の中には今日は左、明日は右という人もいますが、私はこの五十年間、考え方にブレはありません。自分の確固たる歴史観、国家観、世界観に基づいて主張を行っているからです。
和田 そのブレのなさ故に日本の言論界の中で特筆すべきポジションを築かれた代表の下、勝兵塾の関西支部長をさせていただけるのは、本当に名誉なことです。
元谷 しかし意志を貫くのはなかなか大変です。二〇一七年、アパホテルの客室に置かれている私の著作が南京大虐殺を否定しているとインターネットで炎上し、中国政府もアパホテルを名指しで批判しました。私はHPに声明を出し、日本には言論の自由があるから本を撤去することはしないが、南京大虐殺について根拠ある反論があるのなら、ぜひそれを聞かせて欲しいと中国に伝えたのです。中国政府から何の反論もありませんでしたが、中国の旅行代理店でのアパホテルの取り扱いが止まり、中国国内ではアパホテルがネット検索できなくなりました。天安門事件も中国ではネット検索できないのですが、それと同じ扱いです。このために、アパホテルの中国人の宿泊客は一気にゼロになりました。これは本を撤去するまで、営業に打撃を与えるという強迫行為に他なりません。幸いアパホテルは、そもそも海外からお客様の比率を抑えていましたし、欧米など他の国からのお客様が中国人観光客の穴を埋めたのと、日本国内のお客様が「応援宿泊」をしてくれたので、逆にアパホテルは過去最高の稼働率を記録しました。このように中国は、気に入らない言論を封殺しようとしてくるのです。
和田 しかしそういうピンチもチャンスに変えてしまうのが、さすが代表です。
日本人は軍事を
知るべき
元谷 事業活動と言論活動が車の両輪と言いましたが、どちらを大事にするかと聞かれれば、私は迷わず言論活動だと答えます。自分の考えを述べて何が悪いのか。この書籍問題で私は中国では要注意人物になっていると思いますから、将来中国が世界を支配するようになった暁には、とんでもない弾圧を受けるかもしれません。人口が日本の十倍ありながらも、かつては非常に貧しい国だった中国ですが、近年どんどん経済力を付けてそれを軍事力に変え、アメリカに追いつき追い越せと超軍事大国になりつつあります。そしてその軍事力で、今や陸から海に進出しようとしているのです。
和田 完全に海洋大国を志向しています。
元谷 中国は頻繁に太平洋をアメリカと二分する話を出してきますが、そうなると日本は中国の支配下ということになります。そんなことを勝手に言われるのは堪りません。日本政府が配慮すればするほど、中国は覇権獲得に近づいていくのです。また中国はアフリカやアジアを中心に、世界中の国に経済援助やワクチン提供を行うことで、「親中国」を増やしています。これに対抗して、日本が提唱した日米豪印のQUAD(クアッド)や英米豪のAUKUS(オーカス)という枠組みが作られていますが、さらに日本を中心にしたNATOのような集団防衛の枠組みをアジアに作って、中国に対する防波堤とすべきです。
和田 同感です。
元谷 中国は今やアメリカを直接攻撃できる大陸間弾道ミサイルを持ち、強襲揚陸艇の増強を続けることで台湾への上陸能力を日に日に増しています。十一月に安倍元首相が「台湾有事は日本有事」と発言したのが正に正鵠を射ており、台湾が危なくなれば尖閣諸島や沖縄が危なくなってきます。中国による台湾侵攻が現実にならないよう、日本は国際協調の下、中国に圧力を掛け続ける必要があるでしょう。中国はあらゆることを「親中」か「反中」で判断し、「反中」には厳しい制裁を課してきます。アパホテルへの制裁は空振りに終わりましたが。
和田 空振りに終わったのは、アパホテルの経営基盤の盤石さ故でしょう。コロナ禍の中でも、しっかりと存在感を出されています。
元谷 アパホテルの一番の強みは高い利益率です。通常のホテルであれば利益率は数%~一〇%台ですが、アパホテルの利益は新型コロナ前には三百億円と利益率が三〇%を超えていました。昨年の決算でも十億円の黒字を出し、今年は五十億円の黒字の予定です。来年には元の三百億円に戻るのではないでしょうか。そしてその先の五百億円の利益も視野に入れています。儲ける分、税金もしっかりと納め、その分言いたいことを言っています。
和田 アメリカでは高額納税者を潜水艦や施設等、軍の見学に招待するそうです。税金を多く納める人にはその使い途をチェックし、意見を述べる権利があるという意味なのでしょう。代表も同じ感覚を持ってらっしゃる。
元谷 私も招待されてF15戦闘機に乗ったり、観閲式や観艦式に参加したりしてきました。一般の日本人は軍事について疎過ぎます。日本を守るというのはどういう意味なのか、もっと軍事を学ばないと。このように軍事の知識の重要性を主張すると、日本では長らく右翼だの危険思想だの言われてきたのです。しかし世界の現実では、力の均衡によって平和が保たれており、一方が強くて一方が弱い場合に戦争が勃発しているのです。軍事大国化する中国に対しても、抑止力としての軍事力増強を怠ってはいけません。日本は中国よりは大幅に人口が少ないですが、最先端軍事技術を絶えず磨き、兵器の効率の向上を絶えず図り、相手よりも性能の良い兵器を絶えず開発している国にならないと。実際中国は第五世代戦闘機の殲‐20の配備を着々と進めており、海軍の艦船の数もアメリカを凌駕するようになってきました。唯一日本が中国を圧倒しているのは、一説には深度九百メートルまで潜航して攻撃を行うことができる、海上自衛隊の深深度潜水艦と深深度魚雷の存在です。これは世界一の技術だと思いますが、いつ追いつかれるか、油断はできません。
まずベトナムとの連携を
和田 海上自衛隊の潜水艦は、神戸にある川崎重工業と三菱重工業の工場・造船所で建造しています。ところが海上の遊覧船から見ると、建造中の潜水艦が見えてしまうのです。海外の工作員がいとも簡単に写真を撮って、本国に送って分析をすることができます。本来であれば、地方自治体が秘密保持意識を持ち、情報をガードしないと。また国民もそういう情報管理を支持する世論を形成すべきです。
元谷 あまりにもオープン過ぎるでしょう。軍事機密を隠すことは、どの国でも行っていることです。盗まれれば、すぐにそれを真似した兵器が生まれ、こちらが開発に掛けた膨大な時間やお金が無駄になるのです。
和田 また、世界最高水準の飛行艇であるUS‐2も、神戸にある新明和工業の甲南工場で作っています。ニュースキャスターの辛坊治郎氏が二〇一三年、ヨットでクジラに衝突して遭難した時に、海上自衛隊のUS‐2が荒天の中着水して救助したことで、この飛行艇は有名になりました。
元谷 波高三メートルの海に着水することが可能な飛行艇ですね。辛坊氏の救助の時も普通の飛行艇では着水できなかったでしょう。日本は昔から飛行艇作りには高い技術を持っています。
和田 その通りです。この甲南工場も戦前からの工場を今でも使っています。しかしこのUS‐2と同程度の性能を持つ飛行艇を、中国が作り始めたのです。どうも技術が盗まれているのではないかという疑いがあります。
元谷 そういった日本の重要な技術が流出しているとすれば、大変な問題です。国民の数では中国には到底勝てない日本は、技術開発によって質で勝負していかないと。一旦負けて支配下に入ってしまえば、理不尽な要求を飲まざるを得なくなります。
和田 私も同じ危機感を抱いています。この危機感を国民全員が共有、合理的に物事を見極める視点を持った世論が必要な時ではないでしょうか。
元谷 必要ですね。その世論の下、日本も軍事費の増強を図って対抗していく必要があります。また中国に対抗するアジアの枠組みですが、まずベトナムと連携するのがいいのではないでしょうか。この国はずっと中国と闘ってきました。一九七九年の中越戦争は、アメリカとの戦争を終えたベトナムが隣国のカンボジアに侵攻、中国の支援を受けていたポル・ポト政権を倒したことに対して、中国が「懲罰を与える」とベトナムに侵攻を開始したことで始まった戦争です。しかしベトナム軍は直前までの戦争で実戦経験が豊富、しかも旧南ベトナムに提供されたアメリカ製の武器が豊富にあり、圧倒的な物量の中国軍に対抗、結局中国軍の撤退によって戦争は終結しました。どちらも勝ったと主張している戦争ですが、結局は中国の敗北に終わったと見るべきでしょう。その後も中国との軍事的衝突に勝利してきたベトナムですから、手を組むに値する非常に頼もしい存在だと思います。
和田 私も同感です。ベトナムや台湾ともっと軍事的な行き来を緊密にするべきでしょう。また、代表の仰るように、日本も軍事技術の開発にも積極的に投資をしていかないと。
元谷 コスト度外視で性能を追求するのが軍事技術です。例えばインターネットのように、そこで開発された技術が民間に転用されて、広く使われることも頻繁にあります。ですから軍事技術の開発に力を入れれば、民間の技術力も高まるのです。
和田 また宇宙や航空の技術開発は莫大な資金を必要としますが、これらを日本は続けるべきでしょう。三菱スペースジェット(旧MRJ)の開発が凍結となっていますが、これはほぼ中止という意味です。とても残念です。
元谷 日本の航空機の開発には、アメリカの反対もあるのではないでしょうか。アメリカは自国製の高価な商品を日本に売りつけたいのです。
和田 だからこそ、独自の技術を磨かないといけないということですね。
元谷 その通りです。先の大戦時、アメリカはドイツや日本に先を越されないように、莫大な金額の機密費を使って極秘裏に原爆を開発しました。これを有効に使用しないまま終戦を迎えてしまえば、議会に開発自体を追求されると考えたルーズベルト大統領は、降伏の条件としての天皇の処遇を曖昧にすることで戦争を長引かせ、原爆開発の時間稼ぎを行ったのです。民主主義国であるアメリカにも、このようにちゃんと軍事機密を保持する仕組みがあるのです。
議席を伸ばした維新の会
和田 しかし日本では、海外の工作機関の影響もあるのでしょうか、とにかく政府や官僚は情報を公開しなければならないという雰囲気が築かれています。二〇一三年にすったもんだの末、ようやく特定秘密保護法が成立しましたが、まだ情報保護は不十分です。
元谷 仮にスパイ行為によって特定秘密保護法違反で捕まった場合でも、刑罰が非常に軽く済んでしまいます。特定秘密保護法は基本的には特定秘密を漏洩した公務員を罰する法律ですから、別途明確なスパイ防止法を制定すべきです。
和田 仰る通りです。政策の目的は情報をオープンにすることではなく、この日本を強くすることのはずですから。
元谷 日本の中にも、できるだけ日本の秘密を暴露したい反日日本人や反日メディアがあるのです。彼らに責められたくないから、政府や官庁が先に守るべき情報を発表してしまいます。
和田 国会議員の中にも、そういった主張をする人がいます。
元谷 民主主義国家は独裁国家よりも秘密が暴露されやすいのですから、とにかく法律の整備が重要です。他の民主主義国家はどの国もスパイ防止法を持っています。あと、民間レベルの技術の流出も防ぐ必要があるでしょう。
和田 他国に引き抜かれるケースが多いですね。
元谷 定年退職となった技術者が、高額の報酬で誘われて他の国に行くケースが多いようです。人に付随して、最高の技術が流出してしまう。定年だからと熟練技術者の野放しでいいのでしょうか。人権との兼ね合いもありますが、国益という観点から議論して、制限を考えるべきです。
和田 技術の継承は非常に重要です。最近は原子力関連の技術者が減ってきています。新しく核融合炉の技術も登場しているので、本来、日本も遅れを取らないようにしなければならないのですが。
元谷 これからは核融合の時代ですから、原子力の技術者も守って育てていかないと。先の大戦での敗戦から短時間で復興を成し遂げ、世界第二位の経済大国となったのは日本という国に優れた能力があったからです。議員の皆さんには勉強してもらって、この日本の能力を守り育てるべく、国益に沿った法律を作っていって欲しいと思います。
和田 はい、肝に銘じておきます。
元谷 今回の選挙、和田さんは日本維新の会からの出馬でしたが、最初からそうだったのですか。
和田 いいえ、私は途中無所属の時もありましたが、基本自民党で市会議員、県議会議員を務めていました。昨年日本維新の会に移って、今回の選挙となったのです。
元谷 衆議院議員の数を大きく増やした日本維新の会には、今後頑張って欲しいと期待しています。
和田 今までの反政権で反対ばかりの野党に多くの国民が辟易しており、足を引っ張るだけの政党ではないということで、今回議席数を伸ばすことができたのだと思います。自民党ができないことを補完する政党だという期待を真摯に受け止め、国会で責任を果たしていきたいと考えています。
元谷 ただ関西では圧倒的な強さを誇っていますが、その他の地域では今ひとつです。やはり日本の中心は東京ですから、ここでも頑張ってもらって。
和田 今回の選挙でこれまで議員がいなかった地域でも勝ちましたから、これから全国展開が加速すると思います。日本維新の会は空理空論を主張しない現実主義の政党です。そして大阪では知事、市長の連携で成果を出してきました。これは地に足の着いた経営をされてきた代表と共通することかなと、感じています。
元谷 実業家は結果を出さないと価値がありません。事業で連戦連勝だからこそ、私の言葉を聞きたい人が勝兵塾に集まってくるのです。最後にいつも「若い人に一言」をお聞きしています。
和田 本当の歴史を直視して、自分の考えを深めていって欲しいですね。
元谷 本当のことを知れば、皆保守になります。メディアが本当のことを報じているとは限りません。若い人はメディアの行間から真実を読み取る力を身に着けて欲しいですね。今日は興味深いお話をありがとうございました。
和田 ありがとうございました。