石井 苗子氏
1954年東京生まれ。高校卒業後、アメリカ・ワシントン州立大学へ留学、帰国後上智大学に編入、卒業。日米漁業交渉団の同時通訳、テレビキャスター、女優として活躍。43歳で聖路加看護大学に入学して卒業、2008年東京大学大学院にて保健学博士号を取得。2011年からスタートした東日本大震災被災住民支援プロジェクト「きぼうときずな」に参加。2016年の参議院選挙において、日本維新の会の比例代表の候補として初当選。日本維新の会女性局長、東京維新の会代表代行も務める。
きちんと責任を果たせる
元谷 今日はビッグトークへのご登場、ありがとうございます。昨日の勝兵塾での講演もありがとうございました。
石井 こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。勝兵塾には駐日大使が二人もいらっしゃっていて、大変驚きました。
元谷 勝兵塾は国会議員が多いですが、駐日大使もよくいらっしゃいます。私自身が国際派で、これまで世界八十二カ国を巡っています。このビッグトークでも多くの駐日大使と対談をして、お国の概要やお勧めの観光スポット等をこのApple Townに掲載して、読者に様々な国のことを伝えるようにしています。
石井 そうですか。勝兵塾には、これから毎月参加するようにしますね。
元谷 勝兵塾は今年十周年を迎えました。国政選挙で勝兵塾が推薦した候補者は、ほとんどの方が当選されるのです。私は常々、勝兵塾から総理を出すと言ってきたのですが、今回の自民党総裁選では講師特待生の高市早苗さんが候補になりました。もちろん私は高市さんを応援しています。一歩ずつ、目標に近づいている感じですね。
石井 一九九〇年、アメリカから戻ったばかりの高市さんと一緒に、フジテレビの朝の情報番組のキャスターを務めたことがあります。その時から高市さんは将来首相になるって仰っていて。私は聞いてびっくりしたのですが、実現に着々と近づかれています。
元谷 昔からそういう目標を持っている人だったのですね。
石井 次の首相は伊藤博文から数えて、百代目となります。国会議事堂の中央広間には、板垣退助、大隈重信、伊藤博文の三人の銅像があるのですが、四つ目の台座が空いているのです。この理由には、誰の銅像を立てるかが決められなかったという説と、「政治は未完」という意味があるという説があります。ここに第百代の初の女性総理の銅像をと、私などは妄想してしまうのですが。
元谷 いや、そのチャンスはあります。
石井 実現すれば素晴らしいことだと思います。私はポジション論者で、女性にもポジションを与えれば、きちんと責任を持った仕事ができると考えています。権限をしっかり与えて。ただ、何かあっても守ってくれる男性がいると考えているようでは駄目です。
元谷 石井さんは首相を目指さないのでしょうか。
石井 私は政治の世界ではまだ五年生で新米なのです。首相になるよりも、天国からのお迎えの方が早い気がしますね。高市さんは六十歳になったばかりですから、まだお若いです。
元谷 石井さんは高市さんと同じぐらいかと思っていたのですが…。
石井 私は残念ながら若く見えるのです。これは単なる個体差だと思います。まさか自分が政治の世界に入るとは思っていなかったので、今の自分の境遇はびっくりですね。昨日の勝兵塾でもお話したのですが、若い時には同時通訳をやっていましたから。聞いたらすぐに翻訳して話すという訓練を積んでいたのです。その次に、一九八八年からTBSが深夜に始めた「CBSドキュメント」というテレビ番組で、ニュースキャスターを六年ぐらいやりました。CBSはアメリカの三大ネットワークの一つで、ここで放送していた「六〇ミニッツ」というドキュメンタリー番組の日本語版を流していたのです。
元谷 それはとても良い勉強になったのではないですか。
石井 はい。CBSといえばアメリカのメディア大手なのですが、それまで日本でドキュメンタリーを流すことがなかったのです。真夜中の番組にしては、視聴率が良かったですね。
元谷 いろいろな顔をお持ちですね。
石井 二〇一六年に参議院議員になったのですが、国会ではモリカケ問題ばかりをやっていました。そして二〇一九年からは「桜を見る会」問題です。二〇二〇年の二月頃までやっていました。
元谷 桜を見る会には、私も何度か招待していただき、参加したことがあります。国会ではこの問題を年明けまで引きずっていたのですね。
危機管理の議論をやるべき
石井 そしていよいよ新型コロナ対策です。最初は武漢熱と呼ばれていたのですが、いつの間にかCOVID‐19と呼ばれるようになっていました。
元谷 中国が自国の地名で呼ばれたくないと、強く主張したからでしょう。
石井 そうですね。また、世界保健機関(WHO)がパンデミックだという認識を示すのが三月に入ってからで、それまでは国会でも「あれは中国の話だから」とか「まだ対策はいいだろう」という雰囲気だったのです。それが三月からころっと変わって、水際から何から緊急に対策をしなければならなくなりました。
元谷 中国が発生源だというのは間違いのないことで、問題はどうしてこのウイルスが、人間界に広がったのかということです。コウモリ等野生動物から市場を通して広がったという説もありますが、武漢ウイルス研究所から流出したという説もあります。私は後者の方が、可能性が高いと考えています。
石井 研究所にあったウイルスが、間違って外部に漏れてしまったと。
元谷 私は武漢ウイルス研究所では生物兵器を開発していて、それに誤って感染した人が外部に出てしまったことで、ウイルスが広まったと考えています。いろいろな大量破壊兵器の中でも一番怖いのは生物兵器です。核兵器も化学兵器も被害場所は限定的ですが、ウイルスのような生物兵器の場合は、今回のように瞬く間に世界中に拡散されていくのです。
石井 このCOVID‐19はまだ未完成で、もっと強力な殺傷力のあるウイルス開発の過程のものが流出して、パンデミックになったという説もありますね。いずれにせよ、それらを証明する証拠は今のところはありません。
元谷 中国は情報をひた隠しにしています。WHOが中国と合同で今年の一~二月に行った合同調査も不十分で、肝心なものはほとんど調べず終いでした。そこで五月にアメリカのバイデン大統領は、このウイルスの起源についての追加調査を情報機関に要請しました。八月二十七日に結果の概要が出ていますが、証拠不足のために明確な結論が出せずにいます。
石井 WHOのテドロス事務局長が中国寄りという話もあり、それが理由でパンデミック宣言も遅れたと言われていますが…。
元谷 私がこのウイルスが人工のものだと考える理由は、白人とアジア人との感染率や死亡率の違いです。欧米に比べて、中国、台湾、韓国、日本等は、感染者数も死亡者数も人口比で一桁以上少ないのです。アメリカの死者数はあと少しで七十万人に達します。アメリカの戦争で最も多い死者数は、南北戦争の六十~八十五万人です。それに匹敵する数の死者が出てしまっているのです。
石井 確かに欧米とアジアでは、無視できない違いが出ています。私は東京大学の大学院で保健学、英語で言えばパブリックヘルスを学んで、博士号を取りました。そこで学んだことの一つに、多くの人間に被害を与えるテロのターゲットはまず通信網、そして水や空気なのです。
元谷 だからウイルスなのです。これだけの差が人種によってあることを考えると、このウイルスはやはり意図的に作られたと考えるしかないのではと思うのです。致死率がもっと高ければ、さらに悲惨なことになったのではないでしょうか。
石井 いろいろ検証が必要だと思います。自然発生にせよ、人工的なウイルスが漏れたにせよ、感染者が出てしまった後、どう対応するかが保健学のテリトリーです。池に石を落とした時の波紋のように、どんどん感染は広がっていくのですが、それをどうやって止めるのか。日本はこれがあまり得意ではなかったと思います。SF映画でも、例えば「コンテイジョン」のようにパンデミックを描いたものが新型コロナ前に沢山作られていましたが、本当にこんなことが起こるとは、想像もしていませんでした。
元谷 世界での死者は約四百七十万人で、第二次世界大戦の軍人と民間人を合わせた死者の五千万~八千万人、第一次世界大戦の三千七百万人よりは遥かに少ないですが、それでも凄い人数です。今後の再発に備え、世界的な対応プランが求められるでしょう。
石井 世界もそうですが、まず日本です。そもそも日本では、平時の時に危機管理システムを議論することすらやってきませんでした。これは国政を預かる国会議員としては、その職責を軽んじているとしか言いようがありません。未来のために、まず議論を始めていかないと。
元谷 同感です。日本は少ないとはいえ、一万七千人もの人が亡くなっており、このことに対する危機感が薄く、自然に収束していくのを待っているようにも思います。ひょっとしたら大量破壊兵器かもしれないし、もっと致死率の高いウイルスかもしれなかったのです。今後に向けて、憲法改正も含めた危機管理の議論をするべきです。
政治家の重要な役割だ
石井 しかし、今回のワクチンは幸運でした。ファイザーやモデルナのmRNAワクチンはCOVID‐19用に新しく作ったのではなく、前から開発していたものが偶然このウイルスに効果があることが発見されたのです。だからこれだけの短時間で実用化することができました。私は、やはり神様は人間の味方なのだと思いましたね。
元谷 逆に兵器だと考えれば、ウイルス開発と同時に、それに対するワクチンも開発していたはずです。だから中国はいち早く自国産のワクチンを世界に先立って接種を進め、死者はたったの四千六百人に抑えています。そのワクチンを使って、世界中でワクチン外交も展開しています。
石井 ファイザーやモデルナは、ウイルス開発には関係ないでしょうが…。中国への疑惑としては、最初にCOVID‐19について警告した武漢の医師が、自らも感染して亡くなっていますよね。
元谷 告発する人は、普通は用心しているので、自らが感染して亡くなる可能性は低いはずです。彼の死は、とても不自然です。
石井 殺人説もありますね。もし代表が仰るようにCOVID‐19が生物兵器だとしたら、今の状況は戦争です。こんな従来にはない、誰が悪いのか特定できないような戦いがこれからは展開される可能性があるのです。アメリカの疾病対策センター(CDC)もそうですが、細菌やウイルスのパンデミックが起こると、パブリックヘルスのドクター達は、ずらりと長いテーブルを囲んで会議をします。そこには軍人も同席します。国の存亡を賭けた戦いに臨む姿勢なのです。そういう体制を日本は準備していません。航空機や戦車だけではない、こういった国防政策が今後さらに求められるでしょう。
元谷 確かに。
石井 危機管理システムが必要ですし、そのための緊急事態条項も必要なのです。日本には医学博士は沢山いるのですが、保健学博士が少ないのです。従来は重要性が低いと思われていたからですが、この新型コロナで人々の意識がかなり変わったと思います。多くの人の保健所のイメージも変わり、どれぐらい生活に密着した組織なのかが理解されたのではないでしょうか。とにかくウイルスも立派な兵器だという認識を、国土と財産と人命と国政を預かる政治家が持つべきです。
元谷 今回のCOVID‐19は、幸い致死率が低かったから良かったですが、これが十倍、百倍となったら、日本はパニックになったでしょう。ただ致死率が高い場合は、感染者が死んでしまって移動ができないために、感染の広がりは抑えられると思うのですが。
石井 代表の仰る通りで、すぐに重篤になって死に至るウイルスの感染は拡大しないのです。そういった特性を利用して、ピンポイントで多くの人を殺傷する生物兵器を作ることも可能なのです。議論のためにも、ウイルスや軍事に明るい政治家をもっと増やしていく必要があると思います。
元谷 そういう知識を持った国会議員が、国民のレベルでわかるように話していくことが大事ですね。教育で国民の軍事に対する知識レベルを上げていくことも、必要かもしれません。
石井 大学で難しいことを学んだ人が、難しい話をするのは普通なのです。これをわかりやすく話すことができるのが、政治家に必要な資質でしょう。
元谷 理解しているからこそ、わかりやすく話すことができるということもあるでしょう。
石井 また、知識をひけらかしているばかりでも駄目なのです。恐怖を煽ることばかりでも駄目。人を怯えさせるばかりではなく、希望を見せることも政治家の役割なのです。
元谷 テレビでは、同じ人が同じことばかりを言って、恐怖を煽っています。もっといろいろな見解を聞きたいと思うのですが、それであればインターネットを見るしかないのです。
石井 テレビは変わっていって欲しいですね。ワイドショーは、ワイド=広いという名前がついているのに、いつも同じ人が出てきて、他の出演者がその人に同調するのです。テレビ番組は、いろいろなところからいろいろなボールが出てきてこそ、面白くなるはずです。
元谷 全く同感です。
コストと時間を考慮すべき
石井 科学が進んでくると、ウイルスのような生物兵器に加え、台風といった気象兵器も登場するのではないでしょうか。
元谷 既に気象をコントロールした実例があります。二〇〇八年の北京オリンピックの開会式の時には、薬品の散布とミサイルで人工消雨に成功したと言われています。人工降雨も中国で研究が進んでいるそうですが、雲の中にヨウ化銀を散布すると、この「核」に水分がくっつき、地上に落下して雨になるというものです。
石井 そういったことは実例があるのですね。今、地球温暖化で気候が変化してきていますから、この対策に気象コントロールが使えれば良いのですが。
元谷 そうですね。昔訪れたカナダの氷河を三十年ぶりに訪れたことがあるのですが、かつては氷河に覆われていた場所が、行けども行けども土がむき出しになっているのです。
石井 それは自然現象なのでしょうか。
元谷 温暖化の影響だとは言えるのでしょうが、人為的とまでは言い難いでしょう。
石井 人間が都市生活中心となってきて、CO2等の温室効果ガスが増えたから、地球の温度が上がってきているというロジックですね。
元谷 そもそも地球は温暖と寒冷を繰り返しています。今の温暖化がそれなのか、それとも温室効果ガスの影響なのか、私はまだはっきりしていないと思います。アパグループ発祥の地の金沢も、昔は毎年降っていた雪が最近はすっかり降らなくなりました。ただ、昔生えていた木が枯れたものや生物の死骸が途方も無い年月を掛けて、石炭になったり石油になったりしています。それを人間はたったの数百年間で使い切ろうとしているのです。これは問題だと思います。
石井 人間の便利な生活のために、地球の財産を取り崩してきたとも言えるでしょう。代替エネルギーを含めて、今後のエネルギーをどうやって生み出していくのかの議論が必要です。
元谷 私は小型の核融合炉を多くの場所に建設して、電気を地産地消にするのが良いと考えています。
石井 東日本大震災被災住民を医療面で支援するプロジェクトに十年従事してきましたが、やはり原発を建てたことが良くなかったという議論が多いのです。では、代替エネルギーに転換するのに、どれぐらいの時間と予算が掛かるのか。地熱発電所五十基で、原発一基分の発電量なのですが、そんなに作ることが可能なのか。考えていくことは沢山あります。
元谷 日本人は暗記中心の教育を受けているために、ディベートが苦手なのです。経験のないことを考える想像力を鍛えたところで、学校では点数が取れないのです。人間の能力の測り方の研究が、まだ十分ではないと思います。
石井 私も全く同感です。人間の脳の中ほど、未知に溢れている空間はありません。その測定方法も、かなり開発する余地があるでしょう。人間に関しては、まだまだ希望も期待もあると思っています。
元谷 答えが一つしかない教育も問題です。世の中には答えがいくつもあることや、答えがないこともあるのです。そんな問題を受験で出題すれば、批判の嵐となるでしょうが。
石井 答えではなく、そこに至る考え方を評価して、合格にするという考え方が一般的ではないからでしょう。人間というのは二百年生きる可能性があるそうですが、歳を経ていく過程で、その可能性が萎んでいくそうです。歳をとったから駄目だという考えがおかしくて、人間は何歳からでも生まれ変わることができるのです。それをインスパイアするような、刺激のある社会に日本はなるべきです。この観点から見ると、アパホテルは常に新しいものを取り入れて成長しています。これは代表の発想が常に若々しいからですね。
元谷 ありがとうございます。今日はいろいろいいお話をお聞きできました。最後にいつも「若い人に一言」をお聞きしています。
石井 私がいつも言っているのは、人生はできる時にできることをできる人がやるものだと。若い人は、今できることを探して、今しかできないのであれば今やればいいのです。その気持ちを持ち続ける。やれることは何かを追求する。それが人生だと思います。
元谷 それは素敵な言葉ですね。今日はありがとうございました。
石井 ありがとうございました。