日本を語るワインの会217

ワイン217恒例「日本を語るワインの会」が代表邸で行われました。農学博士で大学で教鞭も執っていたボスニア・ヘルツェゴビナ大使館特命全権大使のシニシャ・ベリャン氏、元ボクシングWBAライトフライ級チャンピオンで勇者の会代表の渡嘉敷勝男氏、アメリカで六年間、証券トレーダーとして働いた経験を持つオフィス・ファウンテン代表の山中泉氏、アトランタオリンピックのレスリング・グレコローマンスタイル五七㎏級で入賞を果たした陸上自衛隊一等陸尉の西見健吉氏をお招きし、ワールドワイドな政治・経済から芸能界に至るまで、話に花が咲きました。
アメリカの左派は極左化し
反アメリカ運動を展開
 ボスニア・ヘルツェゴビナは旧ユーゴスラビアの国で、人口は約三百三十万人、首都はサラエボだ。言葉も宗教も異なるボシュニャク系(イスラム教)、セルビア系(セルビア正教)、クロアチア系(カトリック)の三民族から構成されており、一九九二年からのボスニア・ヘルツェゴビナ紛争時には、この三つの陣営が内戦を繰り広げた。一九九五年のデイトン和平合意で戦闘は終結し、ボシュニャク系とクロアチア系の「ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦」とセルビア系の「スルプスカ共和国」の二つの主体からなる国となった。それぞれの主体には大統領や政府が置かれている。三つの主要民族の代表者からなる大統領評議会のメンバーが、八カ月毎にこの評議会の議長を務め、その議長が国家元首となっている。
 旧陸軍中野学校の「情報戦教育」を今に引き継ぐのは、陸上自衛隊の小平学校の情報教育部と富士駐屯地の情報学校だ。安倍首相が情報教育の再強化を指示したために、小平に加えて富士が作られることになり、両校とも今も充実を図っている。
 山中泉氏がこの二月に上梓した『「アメリカ」の終わり“忘れられたアメリカ人”のこころの声を聞け』(方丈社)は、アマゾンの日米安全保障分野で一位になる等、非常に良く売れている。二〇二〇年のアメリカ大統領選挙では、トランプ前大統領は七千五百万票と、歴代のどの大統領より多い票を集めたのに落選した。日本のメディアはなぜあんな馬鹿な大統領が票を集めたのか不思議、アメリカ人は…というトーンだが、実際にトランプ氏に投票した人が「ごく普通のアメリカ人」であることを報じない。この山中氏の本には、トランプ支持者のリアル等、日本では報道されないアメリカの真実の姿が描かれており、それがベストセラーとなっている理由だ。日本のメディアを信じてしまうと、一〇〇%反トランプになるが、それは真実の一部だ。かなり情報操作が行われていると考えるべき。アメリカのメディアは左派が多いが、大学も特にアイビーリーグ等は左派の教授が多い。左派が一概に悪いというわけではないが、今特に目立つのは極左による反アメリカ運動だ。例えばブラック・ライブズ・マター運動は表面的には人種差別反対運動だが、アメリカ建国の父らの銅像を引き倒そうとする等、アメリカの歴史を否定する運動になってきている。アメリカの保守からすると、これらの運動はとても許容できるものではない。またトランプ氏のような政治家出身ではないビジネスマンが、政界のトップに立てるというのもアメリカならではだ。日本では絶対にあり得ないことだろう。
コロナに関する米世論の
潮目が変わりつつある
 イチロー氏がアメリカの一般の人には知られていないと言うと、「そんなこと、あるわけない」と怒る日本人が多い。しかしアメリカ大リーグは基本ローカルスポーツで、試合も地元チームのものしかテレビで放送されていない。巨人戦が全国で放送されている日本とは違うのだ。だからシアトルの人々はイチロー氏を知っているが、アメリカの他の地域でイチロー氏を知っているのは、野球マニアだけだ。しかし大谷翔平氏は別格。ベーブ・ルース以来の二刀流で、今シーズンはホームランを量産、足も早くしかもハンサムで笑うと可愛くて華がある。世界に誇れる日本の宝だと言えるだろう。
 ブランディングは思い切って展開する必要がある。トヨタ自動車が高級車ブランド「レクサス」をアメリカで展開する時には、従来のディーラー網を使わず、全く新しいレクサスブランドのディーラー網を立ち上げて、あたかも全く別のメーカーであるかのように販売を行って成功した。一つ上級なカスタマーを狙うためには、知れ渡っているブランドを捨てて新たなブランドを築くことも、成功のためには必要だ。
 ワクチン接種が進むことで、落ち着きを取り戻しつつあるアメリカだが、コロナウイルスに関する世論の潮目が、六月から変わりつつある。アメリカの感染症対策のトップに立つファウチ氏は、トランプ前大統領との確執もあって、特にメディアや左派からは聖人のように扱われてきた。しかし複数のメディアが情報公開法によって、昨年初めからのファウチ氏の数千通に及ぶ電子メールを入手。その内容の分析等によって、ファウチ氏が議会での証言で否定したアメリカ国立衛生研究所から武漢ウイルス研究所への補助金が、実際には支払われていたことが判明。またこの補助金を仲介したニューヨークの非営利団体から、武漢の研究所からのウイルス漏洩説を否定したファウチ氏に対して、「勇敢だ」と賞賛するメールが送られていることも報じられている。ファウチ氏がこれまで嘘ばかり言っていたのではないかという疑惑なのだが、これがFOXのような保守系メディアだけではなく、CNN等左派系メディアでも報道されている。バイデン大統領が追加調査を指示したように、今またコロナウイルスの発祥は武漢ウイルス研究所ではないかという疑いが強まっている。確かに「中国起源」を理由に街中で東洋系の人々への暴行が蔓延ったのは、あってはならないことだ。民主党が中国起源は人種差別主義的だと批判したのも、一理あるだろう。しかし今、トランプ元大統領が主張していた武漢発祥が真実かもしれない可能性が高まってきている。本当だとすれば、あまりにも酷い世界への仕打ちだと言えるだろう。
公園暮らしの生活から
大使になったゾマホン
 一九八八年にプロボクサーのライセンスを獲得した片岡鶴太郎氏を指導したのは、渡嘉敷勝男氏だ。番組の関係で知り合って片岡氏に教えることになったという。それをまた番組出演で親しくしていたビートたけし氏がやっかみ、しばらく一緒に教えていたが、たけし氏は二カ月ほどでリタイア。続けた片岡氏が、結局プロライセンスを獲得したという。
 一時期、テレビタレントとして活躍したゾマホン・ルフィン氏は西アフリカのベナン出身だ。飲食店で出会ったテレビ関係者にスカウトされて、特番「たけし×世界バトルⅡ ここがヘンだよ日本人」に出演したことから、タレントになった。最初はツッコミ過ぎの言動でビートたけし氏に嫌われたが、一緒に食事をした際に、ゾマホン氏は日本に来た経緯を詳しく語った。貧しい国の貧しい家庭で育ったが勉強は好きで、学んで日本語を含む六カ国をマスター。貧しいベナンをなんとかするために、先進国である日本で学びたいという思いから、自費で留学、アルバイトに明け暮れて、公園で生活する時もあった。しかも工場のバイトで、眠気から人差し指を切断してしまう不幸にも見舞われる。この話を聞いてゾマホン氏を気に入ったたけし氏は、彼をマネージャーにしてさらに支援を約束した。水に困っているベナンに井戸を掘りたいというたけし氏の依頼を受けて、渡嘉敷氏は後援会と相談して、一千五百万円を寄付。これによって、井戸が十本掘れたという。ゾマホン氏はその後、二〇一二年に駐日ベナン大使館の特命全権大使となり、二〇一六年までその任にあった。公園で生活していた人が大使になる。良い志の人には運が回ってくるのだ。
 日本で多くの外国人が活躍しているが、一時期タレント活動もしていて、今は軍事評論家として活躍しているのが、マックス・フォン・シュラー小林氏だ。日本在住四十七年になるシュラー氏は、元々岩国に駐留していたアメリカ海兵隊員だ。特に日米の対中国軍備に詳しく、海上自衛隊の潜水艦を高く評価していて、もっと建造数を増やすべきだと主張している。
信念を持った経営者に
消費者は好意的に応える
 一九八六年、ビートたけし氏が起こした「フライデー襲撃事件」は記者の度を越えた取材が原因だが、その記者はそれまで何度も好意的な記事を書くなど、元々たけし氏と非常に親しい関係だった。接近することによって、何らかの特ダネを狙っていたのかもしれない。マスメディアは利用できる時もあるが、持ち上げる時は持ち上げておいて、一斉に落として攻撃してくるから怖い。一九九六年のアトランタオリンピックでメダルを期待された水泳の千葉すず選手は、メダルには全く手が届かず、その後の「オリンピックは楽しむつもりで出場した」という発言をメディアに徹底的に叩かれた。いい時はいい顔をしながら粗探しをしていて、一旦攻撃対象になればそのネタを一斉にぶつけてくるのがメディアだ。しかもそれらは全て、お金のためなのだ。
 二〇一七年に起きたアパ書籍事件では、アパホテルの部屋に置いてある本が南京大虐殺を否定しているとネットで炎上、中国政府からの名指しの批判に対して、正々堂々とお互いの主張を交えようと提案した代表に、中国政府は何も答えなかった。政府の指示で中国本土からのアパホテルの予約ができなくなったが、その代わり多くの日本人が応援宿泊と称してアパホテルを利用、逆に最高売上を更新し続けることになった。これと同様の事件が昨年アメリカであった。二〇二〇年七月、スペイン系食品大手のゴヤフーズの社長がホワイトハウスに招かれ、「われわれはトランプ大統領のような指導者を持つことができ、大変恵まれている」とスピーチした。これにネット等で反トランプ派が反発、ゴヤフードの商品に対するボイコット運動を呼びかけるハッシュタグも登場した。しかし社長は「オバマ大統領時代にも私は政府に協力、大統領を賞賛した。同じことをしてなぜ責められるのか」と反論、ゴヤフーズの売上は逆に増加し、株価も上がった。日本でもアメリカでも、信念を持った経営者に対して、消費者は必ず好意的に応えるものなのだ。