Big Talk

日本の「復興する力」は素晴らしいVol.361[2021年8月号]

ハイチ共和国大使館 特命全権大使 オノラ・エルフモノド
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アパグループ代表 元谷外志雄

フランス革命直後に独立、ラテンアメリカで最初の独立国であり、世界初の黒人による共和国でもあるカリブ海の国・ハイチ共和国。日本で博士号を取得したハイチ共和国大使館特命全権大使のオノラ・エルフモノド氏に、ハイチの歴史や文化、産業、そして今後目指していく国の在り方等について、お聞きした。

オノラ・エルフモノド氏

ハイチの応用経済計画技術センター(CTPEA)を修了。フランス領のアンティユ・ガイアナ大学で経済学研究の修士号を取得、神戸大学大学院経済学研究科で経済学の博士課程、カナダのトロント大学大学院公共政策ガバナンス学研究科で公共政策学を学ぶ。2017年?2019年には、ハイチ大統領の上級経済顧問を務めた。在日ハイチ共和国大使館では2012年?2015年経済領事担当コンサルタント、2019年5月?2020年6月公使、2020年6月?9月臨時代理大使を歴任。2020年10月より現職。

カリブ海に位置する
フランス語の国・ハイチ

元谷 本日はビッグトークにご登場いただき、ありがとうございます。多くの日本人は、ハイチ共和国のことを知りません。いろいろと教えていただければと思い、お招きしました。私はバミューダ諸島やキューバには行ったことがあります。なので、ハイチがカリブ海の国だというのは、知っています。

エルフモノド お招きいただきありがとうございます。代表が仰るようにハイチはカリブ海の国で、キューバの東隣にあります。イスパニョーラ島の西側がハイチ、東側はドミニカ共和国になっています。今日はハイチについていろいろ話ができるということで、喜んで参りました。私の使命は、ハイチと日本の関係を深めていくことですので。

元谷 エルフモノドさんは、いつ大使として着任されたのですか。

エルフモノド 昨年の十月七日です。ただ、着任の前から日本とは関わりがありました。私が初めて日本に来たのは二〇〇八年です。この時は学生で、神戸大学で経済学の博士号を取得するために来たのです。

元谷 日本に来るまでは、どこで学ばれていたのでしょうか。

エルフモノド まずハイチの大学で経済学と統計学の学士号を取り、マルティニークのアンティユ・ガイアナ大学の法経学部で経済政策研究の修士号を取得しました。そして日本で博士号を取ったのです。

元谷 博士論文のテーマは何だったのですか。

エルフモノド マクロ経済学の観点で、ハイチの経済と為替について論文を書きました。学んだ後、本国の外務省に入り、在日ハイチ大使館で一等書記官として働き始めました。日本に住んだことで、ハイチと日本を結びつける仕事がしたいと思うようになったからです。ハイチ外務省には日本の専門家がいなかったので、私が優先的に入省することができました。在日大使館での勤務の後、二〇一六年にはカナダに行ってトロント大学大学院の公共政策ガバナンス学研究科で、自身の公共政策に対する専門性を磨きました。二〇一七年にハイチに戻って大統領の経済顧問となり、二〇一九年五月に公使として再来日し、二〇二〇年六月に臨時代理大使に就任、昨年十月に大使になりました。私の外交官としての経験が、ハイチと日本の間に存在する外交関係について幅広い理解を与えてくれました。ハイチと日本の二国間協力の戦略的ポイントについて全面的に理解できるようになりましたが、それは主に教育、リスクおよび災害管理、そして農業といった分野に及びます。率直に言って、私は現在の職務には適任者だと私自身で考えます。日本との外交関係を扱う経験を何年もしたことで、本国のジョヴネル・モイーズ大統領およびクロード・ジョゼフ臨時首相兼外相の期待に応える能力が自分自身にあると考えています。文化的・政治的・経済的な交流を通じて、ハイチの外交が成長と経済発展のための強力な梃子になっていると思います。

元谷 エルフモノドさんはまだ非常に若いですよね。今おいくつですか。

エルフモノド 三十七歳です。

元谷 そんなに若くして大使になられるということは、非常に優秀だと認められているのですね。素晴らしいことです。まずハイチの基本的な情報を教えていただけますか。

エルフモノド わかりました。面積は北海道の三分の一程度、人口は約千百万人、首都はポルトープランスになります。公用語はフランス語とハイチ・クレオール語です。宗教はカトリックを中心としたキリスト教が広く信仰されている他に、地元の宗教であるブードゥー教の習慣を多くの人が守っています。

元谷 ハイチ人は、日本にどれ位いるのでしょうか。

エルフモノド 六十人ぐらいでしょうか。国外のハイチ人の多くは、まず近くのアメリカ、そしてフランス、カナダにいます。

元谷 カナダはフランス語圏がありますからね。

エルフモノド その通りです。フランス語圏のケベック州のモントリオールに、大きなハイチ人のコミュニティがあります。しかし私は、ハイチ人があまりいない国に行きたかった。日本には古い歴史と素晴らしい文化があります。そこから、何らかのインスピレーションが得られないかと思い、日本で学ぶことを選んだのです。実際のところ、アジアのほとんどすべての国を探訪しましたが、特に日本を含めたアジアが、ハイチにとってチャンスがある地域になりえると思っています。また、アジアの国々と協力関係を築くために戦略的かつ効率的な計画を策定することがハイチにとって最大の利益になります。日本とのパートナーシップの可能性についてはいくつかの形を、この国での私の経験から考えてみました。例えば、リスクおよび災害管理における日本の経験を活用し、ハイチの開発計画に組み込むことが可能です。加えて、ハイチは海洋漁業の分野で日本とのパートナーシップを構築することも可能です。これは一般的な漁業調査の開拓に留まらず、訓練や管理、そして漁業部門の再整備等、技術的側面において特に関係を築くことができるでしょう。海洋漁業の分野でのこの協力は専門的かつ技術的な提携を含むべきで、専門的訓練と科学的調査を促進し、そして最後には、ハイチがターゲットとする地域における活動範囲の開拓に必要となる物質的な資源を利用可能なものにするのです。

元谷 日本人としてとても嬉しいです。

ぜひ見習いたい
戦争や災害から復興する力

エルフモノド 神戸大学の博士課程で学んでいた二〇一〇年に、もう一つ日本に滞在したい理由ができました。三十万人以上の犠牲者が出たハイチ地震です。首都ポルトープランスは壊滅状態となり、私の友人も何人か亡くなりました。ここからハイチは復興しなければなりません。そこで、第二次世界大戦で壊滅状態になったにも拘らず、その後飛躍的な経済発展を遂げた日本の「復興する力」を学びたいと思ったのです。

元谷 ハイチも日本と同様に、環太平洋火山帯に入っているので、大きな地震が起こったのでしょう。その翌年の二〇一一年に、日本は東日本大震災に見舞われています。復興力も凄いですが、日本の耐震技術も優秀で、ハイチ地震や東日本大震災レベルの震度六でも、最新の建物は倒壊しません。ハイチ地震の時の被害の大きさは、鉄筋が入っていない建物も多かったからと聞いています。

エルフモノド その通りです。今、ハイチ政府も建築物の耐震性能の向上を目指して、様々な施策を行っています。その一環として、日本から耐震設計や耐震性能の高い建築資材等を学ぼうとしています。日本の技術はもちろん魅力的なのですが、私はさらに素晴らしいのは日本人の精神性だと思っています。普通の日本人が、皆誇りを持っていて、未来へのビジョンを描いているのです。また、自然災害があっても立ち直ろうという不屈の復興精神もあります。私はハイチの人々も同様の精神を持つようになって、国の発展に貢献して欲しいと考えています。

元谷 地震はまた必ず起こると思いますよ。

エルフモノド 私もそう思います。さらに日本から学びたいのは、地震等災害時の行動です。ハイチ地震の時には人々が訓練を受けていなかったために、通りにいた人が建物に戻ってしまって、その建物の倒壊によって亡くなったケースがありました。地震の際に何を行わなければならないのかを、わかっていない人が多いのです。

元谷 地震時の訓練が必要ですね。

エルフモノド そう思います。

元谷 日本の場合、そういった訓練をしっかりやっていたのですが、東日本大震災の際にはちょっとした油断や判断ミスで、津波に飲み込まれた方がいらっしゃいました。とにかく徹底した訓練が重要です。また震災後、日本では建築基準法が厳しくなっていて、市街地の建物は耐震構造をしっかり持っているものしか認められません。こういった法整備も非常に重要になると思います。

エルフモノド はい。エンジニア等専門家を日本に派遣して、いろいろな事をハイチに移植できるよう、進めているところです。

元谷 少しハイチの歴史のことを教えて欲しいのですが。元々はフランスの植民地だったのですね。

エルフモノド 一四九二年にコロンブスがイスパニョーラ島を発見した後しばらくは、島全体がスペインの植民地でした。十七世紀にフランスが島の西側を占領、これが今のハイチ領になっています。

元谷 ラテンアメリカ初の独立国家と聞いたことがあるのですが。

エルフモノド はい、そうです。ラテンアメリカで最初の独立国であり、南北アメリカ大陸ではアメリカ合衆国に次ぐ二番目の独立国であり、世界初の黒人による共和国でもあります。一七八九年のフランス革命直後の一七九一年に、混血の自由黒人であるムラートと奴隷黒人が蜂起し、様々な展開を経て一八〇四年に独立を宣言しました。黒人奴隷が自由を得た最初の成功例であり、私はその国家の成り立ちをとても誇りに思っています。また、これからこの歴史に見合う、より良い国家にしていかなければならないと考えています。

元谷 ハイチで外貨を稼ぐ産業というと、何になるのでしょうか。

エルフモノド 農業です。植民地時代から続く農作物として有名なのは、コーヒーでしょう。かつては世界のコーヒー供給量の半分がハイチ産でした。

元谷 そんなに凄い時代があったのですね。コーヒーは高地で収穫されるものの方が、品質が高いと言われていますね。

エルフモノド ハイチでも山岳地帯でコーヒーが栽培されています。私は世界一のコーヒーだと思っていますよ。ただ今は、農作物としてはコーヒーよりもカカオやマンゴーの生産量が多くなっています。

元谷 ハイチには山が多いのですか。

エルフモノド はい。そもそもハイチという国名は、「山がちな国」という意味の先住民族の単語に由来するのです。

元谷 それだと風光明媚な場所が多いでしょう。

エルフモノド その通りです。ハイチは今、ユネスコによる世界ジオパークの認定を検討しています。そこで昨年十二月、二〇〇九年に世界ジオパークに認定された新潟県の糸魚川ジオパークを視察してきました。糸魚川の山の多い風景が、ハイチと非常に良く似ていましたね。

元谷 プレートの境界ということが、ハイチと糸魚川の共通点ですから、地形や風景も似てくるのでしょう。

エルフモノド 糸魚川ジオパークの観光面での取り組みも、非常に参考になりました。ハイチの観光は、今はリゾートが中心になっているので…。

世界遺産やマリンリゾート
古い洋館が残る町が見もの

元谷 観光でハイチを訪れる場合、どこに行けばいいでしょうか。お勧めのスポットを教えていただけますか。

エルフモノド まず一番にお勧めしたいのは、ハイチ唯一の世界遺産である「国立歴史公園‐シタデル、サン・スーシ、ラミエ」です。標高九七〇メートルの山の山頂に作られた巨大なシタデル・ラフェリエール要塞は、西半球の石の砦としては最大のものです。一八〇四年に独立した後、旧宗主国のフランスの侵攻に備えて、一八〇五年から十二年の歳月をかけて完成しました。当時にはもう、そういう技術をハイチ人は持っていたのです。建物も凄いですが、ここからの眺めがまた最高で、天気が良ければ隣のキューバまで見渡すことができます。要塞から十キロ離れた場所にあるのが、一八一三年に完成したサン・スーシ宮殿です。今は廃墟となっていますが、それでも残った部分から当時の壮麗さが想像できる場所になっています。

元谷 それは是非行ってみたいですね。

エルフモノド 最寄りの都市であるカパイシャンまで、ポルトープランスから飛行機で行くのがいいと思います。この街の近くには、ラバディというカリブ海でも最高級のリゾートもあります。

元谷 海がきれいですよね。バミューダに行った時にダイビングをしたのですが、サンゴ礁がとてもきれいでした。魚もたくさんいますし。モーターボートによるトローリングで、シイラ釣りもしました。

エルフモノド はい、カリブ海では様々なマリン・アクティビティが楽しめると思います。もう一つ、お勧めの町は、ポルトープランスの南にあるジャクメルという港町です。かつて、コーヒーの輸出で大いに賑わった面影があり、古い町並みが今も残る場所です。アメリカのニューオリンズや、日本の京都のような場所と言えばイメージが湧くでしょうか。ジャクメルでは毎年二月にカーニバルが行われ、パレードや音楽、ダンスで賑わいます。パレードの参加者は張り子の仮面や民族衣装等で仮装するのですが、それが非常に芸術的だと評価されています。

元谷 いつも暑い印象があるのですが、そうなのでしょうか。

エルフモノド 年間を通じて暑いですが、夏は日本の方が蒸し暑いですね。訪れるのであれば、十一~三月の乾季の方が過ごしやすいと思います。

元谷 日本からの直行便はまだ就航していませんね。

エルフモノド はい、ありません。ポルトープランスとアメリカとの路線は、ニューヨーク、マイアミ、アトランタ便になります。日本からであれば、ニューヨークトランジットが便利ではないでしょうか。

元谷 そうですね。コロナが終焉すれば、すぐに考えてみたいと思います。ところで、もう日本滞在も長いエルフモノドさんですから、かなり全国各地に行かれているのではないでしょうか。

エルフモノド はい、都道府県でいえば、三十ぐらい訪れています。お城が好きなので、いろいろと巡っていますね。

元谷 広島や長崎は行きましたか。

エルフモノド はい。どちらの原爆の資料館にも行っています。あんな悲劇が二度と起こらないことを強く願うと同時に、あれだけのダメージを受けた日本が、その後復興して世界的な経済大国になったことは素晴らしいと思いました。

元谷 江戸時代の封建国家から明治維新で近代国家に生まれ変わった日本は、わずかな期間に急速に国力を蓄え、日清・日露と二つの戦争で勝利を収めました。その後の先の大戦には原爆の投下もあって敗れましたが、しっかりと復興しました。江戸時代から藩校や寺子屋があり、明治時代には近代的な形に整えられましたが、日本には基本教育の伝統があり一般的な国民の質が高いのです。

エルフモノド 教育は今、ハイチ政府が一番力を入れていることの一つです。協力してくれている日本企業が、ハイチで新しい学校を建設しています。私は、もっと多くのハイチ人が日本で学んで、科学や文化、日本人の考え方をハイチに持ち帰って欲しいと思っていて、奨学金制度等を検討しています。

自国と他国の文化を学んで
若者は世界に貢献すべき

元谷 ハイチの教育制度はどうなっているのでしょうか。

エルフモノド 日本と同じく、中学校までが義務教育です。学校では基本的にフランス語で授業が行われます。大学への進学率はまだまだ低いです。公立大学の受け入れ可能な学生数がまだ少なく、それもあって入試の倍率が非常に高くなっています。私立大学もあるのですが、授業料が非常に高いです。

元谷 英語を話す人も多いのでしょうか。

エルフモノド アメリカが近いですから、英語を話すことができる人も多いです。

元谷 ほとんどの人がフランス語とハイチ・クレオール語ができて、さらにエルフモノドさんのように英語が話せる人もいるということですね。

エルフモノド 三カ国語ができる人は、ハイチでも仕事で非常に良いポジションに就けると思います。またカリブ海の国々の中でも、フランス語を話すのはハイチだけなのです。これを利用して、フランスを中心とした海外の企業のオフィスを多数誘致しています。

元谷 歴史的経緯からすると、中米から南米はスペイン語やポルトガル語の国が多いでしょう。

エルフモノド 隣のドミニカはスペイン語の国ですので、ハイチでスペイン語を話す人も比較的多いです。もう一つ、ハイチの利点は人口の六五%が四〇歳以下ということです。

元谷 エルフモノドさんも若いですが、国自体が若かったのですね。

エルフモノド はい。ですから学習意欲も高く、一生懸命働きます。まずはハイチの文化を良く学び、さらに世界の国々がどのように発展していったのかを学ぶ必要があると思っています。先進国からの学びで、ハイチを発展させていかなければならないのです。

元谷 そんな若い国を司る政治システムはどうなっていますか。

エルフモノド 今の政治システムは旧宗主国であるフランスを真似ています。国家元首は任期五年の大統領で、行政の長である首相は議会の与党議員の中から選出され、大統領が任命します。議会は上院と下院の二院制です。一時期混乱した政治ですが、今はもうすっかり安定しています。今年、大統領選挙と国会議員の選挙があります。また同時に新しい憲法制定のための国民投票も行われます。今回の国民投票では首相職を廃止して、大統領職と副大統領職を残す新しい憲法を制定しようとしています。理由は首相が変わりやすく、政治が不安定になるからです。

元谷 なるほど。軍隊は保有していますか。

エルフモノド 軍隊は一九九五年に解体されて存在しません。ハイチ国家警察が治安と国境の維持を担っています。

元谷 警察軍という形ですね。

エルフモノド はい。強力な軍事力を特に必要としないぐらい、外交的にはどの国とも非常に仲良くやっています。ハイチの人々は伝統的にキューバのフィデル・カストロ議長が好きだったのですが、一九九六年に正式にキューバとは国交を回復して、以来多くの医師を派遣してくれる等、非常に良好な関係を維持しています。日本との関係も良いです。二〇一二年にはハイチのミシェル・マルテリー大統領が初めて日本を訪問し、新しいビジョンを表明しました。現職のモイーズ大統領も、日本人は正直で信頼に足り、その国が作る製品の品質も最高という認識で、特に日本からの投資を歓迎しています。経済関係を中心に日本とハイチの関係がより深まり、その結果ハイチが発展していくことを私は望んでいます。しかし、アジアはかつてハイチの外交において重要視されなかった地域の一つで、恐らくそれは、地理的に遠いことと、ハイチ人の居住者数が少なかったことに起因します。しかし現在では、ハイチはアジアを非常に重要視しています。日本の技術および産業の発展と共にアジアのいくつかの国の経済拡大が、経済的・政治的そして技術的な多面的挑戦をアジアで生み出していると、私は強く確信しています。技術的な協力プロジェクト、専門家やボランティアの派遣、そして開発へのファイナンスを通じて、ハイチの再建の過程において、ハイチ政府を支援する取り組みを継続および強化していただけるよう、日本政府の決意と準備が確固たるものになる手助けができればと願っています。

元谷 本当にそうですね。

エルフモノド 東京オリンピックにも十三名のハイチ人選手が参加する予定です。私はこの夏の東京オリンピックを心待ちにしています。ハイチの選手はボクシング、空手、柔道、陸上そしてウェイトリフティングに出場予定しています。昨年、愛知県の幸田町が東京オリンピック・パラリンピックにおけるハイチのホストタウンに選ばれた点も、非常に重要なことです。愛知を選んだ理由は、発音がハイチに似ていたからです。オリンピックは友情や尊敬、卓越といった価値観を浮き彫りにします。競技では多様性の尊重、環境の尊重、そして他者の尊重に重きが置かれます。さらに、日本の文化である「おもてなし」の精神が、オリンピックを通じて世界的な概念になることを願っています。

元谷 ハイチ選手団のオリンピックでの活躍も、期待しています。最後にいつも「若い人に一言」をお聞きしているのですが。

エルフモノド 日本は素晴らしい国です。私にとっては単なる一つの国というだけではなく、本当に特別な国なのです。ここでいろいろなことを学びましたが、私は日本が祖国・ハイチを助けてくれると確信しています。日本の若い人はオープンマインドと好奇心で、ぜひ他の文化を学んで欲しいですね。それを通じて、また自分自身の国の文化の価値を再確認して欲しいと思います。

元谷 その通りですね。ただ最近の日本の若者は、自分の国に対する自信と誇りを失ってしまっています。これを回復する活動を、私は事業と同時に行っています。

エルフモノド それはぜひ継続してください。日本の若者が自国のことを愛して、さらに他の国のことを知れば、もっと世界に貢献できます。ハイチも若い国ですから、その力で世界に貢献していこうと思っています。

元谷 期待しています。今日はいろいろと有意義なお話をありがとうございました。

エルフモノド この素晴らしい対談の締め括りとして、もう一言を言わせてください。国家にとって最も大事な富は自然や物質的なものではなく、人間であることを日本は私に教えてくれました。豊富な天然資源を持つことよりも、人知こそが国家にとって最も重要な富であると思えます。つまり、国民が国家にとって最も大事な富であるということです。確かな精神性や夢に基づき、そして市民としての責任により、人間だけが自ら公正な社会を、人々がそこに住みたいと願う社会を生み出せるのです。また、国家は死なないということも日本は私に教えてくれました。そこに住む人間や歴史が価値を失ったり、ゆっくり消滅していったり、または退化することはあるかもしれません。その意味では、公的資金をうまく運用し、良い社会保障のルールや幸福をもたらす公衆および環境の構造、良い経済プロジェクト、そして相当な発展を確実なものにする合理的な政治目標といったことを強化することは、国民の選択なのです。それはすべて、国家の国民である人間自身にかかっています。人間がすべてをコントロールする国家のリーダーであり、ゆえに、すべてのことは人間の周りや身近な環境を巡っています。私の愛する祖国であるハイチもいつの日にかまた、不死鳥のように灰の中から蘇ることができるという事実に対する私の疑念を、日本は完全に払拭してくれました。私にとって日本は単なる国以上の存在であることを、私は大声で力強く何度も繰り返し発言するでしょう。日本は私のインスピレーションの源泉であり、人生の学び舎なのです。日本が発展を成し遂げたように、私の祖国もそうなるよう手助けをする私の決心は、より強くなりました。ありがとうございました!