日本を語るワインの会216

ワイン216恒例「日本を語るワインの会」が代表邸で行われました。下関市長を四期連続で務め現在、経済産業副大臣・参議院議員の江島潔氏、虫ケア用品の市場シェアの半分を持つアース製薬株式会社取締役会長の大塚達也氏、父の築いた出版社に新たな価値を加え続けている株式会社経済界代表取締役社長の佐藤有美氏をお迎えし、新型コロナから政治経済まで、熱い議論を交わしました。
新型コロナの影響は様々
チャンスを掴む企業も登場
 新型コロナウイルスの感染拡大の報道には、もううんざりだ。PCR検査で陽性となった人やコロナで亡くなった人の数を毎日伝えるのであれば、同時にインフルエンザや風邪にかかった人の数や死亡者も伝えればどうか。新型コロナウイルス対策を行っているからか、この冬は季節性のインフルエンザの流行はなかった。風邪をひいている人も少ないという。
新型コロナウイルスの影響がプラスにもマイナスにもなって、いろいろなところに出ている。アース製薬は業績がアップした。人々が巣篭もりで、家で生活する時間が長ければ長いほど、家庭用品はよく売れる。ライフスタイルが変わり、ネット通販や食品スーパーが売上を伸ばす一方、総合スーパーやコンビニ、そしてホテル等の観光関連業界は厳しい状況だ。しかし厳しい業態の中でもチャンスを掴む企業は登場してきている。江島氏は、コロナ禍で疲弊した日本経済を立て直すことが、経済産業副大臣の自身の最大の使命と考え全力で取り組んでいる。
 日本の新型コロナワクチンの接種率が、世界の中でも非常に低いと問題になっている。その原因は、厚生労働省の慎重な薬事承認や製造拠点が日本にないことだろう。日本人の体に合うであろう日本製のワクチンが、この秋から冬にかけて承認されるので、慌てずにそれを待てばいいという人もいる。今、世界中で接種されているワクチンは、治験が少なくてリスクが高いという説もある。世界で一番ワクチン接種が進んでいるのは、イスラエルだ。その速さの理由は、リスクをほとんど無視して、国民を試験台にしてもいいから接種させてくれという国家の意志があるからだ。日本では真似できない。
 四月十三日、福島第一原発から出た処理水の海洋放出を政府が承認した。前の環境大臣の原田義昭氏は、海洋放出を容認するべきだという発言をしっかりとしていたが、それがようやく、実現しようとしている。処理水の放出が始まれば、風評被害との戦いが始まる。処理水は科学的には全く安全で何ら健康被害を起こさないことを、様々なチャンネルを通じて国民に伝えていかなければならない。処理水の処分は、福島第一原発の廃炉を進め、福島の復興を成し遂げるためには、避けて通れない課題だ。江島氏も、原子力災害現地対策本部長として、風評の影響を懸念する方々を始めとして現場の声を的確に把握し、産業や生業の復興に取り組んできた方々の努力を無にすることのないよう、風評の影響を払拭し、地元の理解を得るべく東奔西走している。
日本ではメディアを
批判的に見る人が少ない
 一九六四年の前回大会では、戦後復興の成果を世界に見せるという意気込みもあって、あれだけ盛り上がった東京オリンピックだが、今年の盛り上がりは今ひとつだ。かなりの人が東京オリンピックの開催に反対しているようだが、その理由が理解できない。日本人の中には、強い反日の思想を持つ人々がマグマのように蠢いている。彼らは日本人を貶めることが正義だと思っているのだ。そんな人々の声を聞いて、東京オリンピックが中止になるということなど、決してあってはならない。
 早稲田大学でメディア論を教えていた筑紫哲也氏は、メディアの報道を批判的に見る「メディア・リテラシー」の教育が、欧米に比べて日本では遅れていると学生に教えていた。だからメディアが独り歩きをして、独善的になってしまっていると。筑紫氏がそのようなことを教えていたとは、少し意外だ。しかし実際にメディアは第四の権力者として振る舞い、しかもそれを律する機関が何もない。新聞で与党の政策に賛同する記事が出るのは、読売新聞と産経新聞ぐらいだ。朝日新聞はあくまでも反政府を貫き、東京新聞の論調はもう論外だ。日本で読むに値するのは日本経済新聞だけだという人もいる。朝日新聞も毎日新聞、東京新聞も、識者を引っ張り出して、なんとか自分達の主張を正当化しようとした記事ばかりを掲載している。国民が欲しいのは客観的な事実であって、そのように意図を持って書かれた記事ではない。とにかく新聞にせよテレビのニュース番組や情報番組にせよ、記者やキャスター、コメンテーターに政権批判をすれば格好がつくという空気が蔓延している。もういい加減に、これを改めるべきだ。
 安倍晋三氏が内閣官房副長官時代、「安倍晋三を総理にする会」が作られた。代表が副会長を務めたこの会では様々な企業の経営者が集まり、ランチを食べながら政治に関する質疑応答を行った。そしてその後、見事に安倍氏は首相に就任したが、一年で持病の悪化で辞任。その後自民党が下野した時に再度安倍氏から佐藤氏に、支えてもらった経営者に恩返しがしたいと、会を再開したい旨電話があったという。再び集まるようになった会は、安倍氏が二度目の首相に就任するまで続いた。
一度辞任した後、この「二度目」までの期間に亘って支援してくれた人が、本当の支持者だと言えるだろう。
地方ではアパホテル誕生が
ステイタスになっている
 韓国の大統領は辞任後に自殺したり逮捕されたりするなど、まともに余生を送った人がいない。前の朴槿恵もその前の李明博も、今は監獄の中だ。現職の文在寅大統領の支持率も低下、与党・共に民主党も最近の選挙で連敗している。文大統領の任期は来年までであり、次の大統領が保守でもリベラルでも、前任者同様、スキャンダルで収監の可能性が高いのではないか。
 佐藤氏が小学生の時、父親の佐藤正忠氏が衆議院選挙に立候補するため、東京から秋田に転居した。東京から来たというだけで、いじめにあった。物を隠したり、上履きに画鋲を入れたりと、子供のいじめは陰湿だ。石原慎太郎や中曽根康弘を応援に呼んで、派手に行った選挙活動だったが落選、しかも直後大量の選挙違反者を出し、佐藤正忠氏自身も逮捕された。一家は逃げるように東京に帰ったという。
 江島潔氏の父親の江島淳氏は、東大を出て国鉄に入り、後に外務省に出向してサンフランシスコ総領事館領事を務めた。当時の在外公館は各省庁からの出向者の集まりであり、国鉄は運輸省と同格であった。しかし東大卒でも国鉄に入ると、最初は切符切りや蒸気機関車の運転手等、あらゆる職種を経験させられたそうだ。国鉄の分割民営化の時には、淳氏はすでに参議院議員に転向しており、民営化には賛成だが分割には反対だった。反対の論陣も虚しく、結局分割で決着したという。
 四月七日、アパホテルをアジトにしていた特殊詐欺グループの容疑者逮捕に協力したということで、ホテル社長が警視庁新宿署から感謝状を贈呈された。この様子はテレビ各局のニュースとなり、全国で放送された。
 東京のアパホテルはほとんどが新築だが、地方では既存のホテルを購入したものが多い。その場合は必ず代表が現地で物件を見て、判断を下す。その場で決断し、箸袋の裏などに一筆を書いて、購入の意志の証にすることもあった。地方都市では今や、アパホテルがあることがステイタスになってきている。
創業五十周年記念の
キャンペーンが大当たり
 全二千三百十一室と日本最大規模のアパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉の広さは、まるで街のようだ。コンビニも、それぞれ大きなものが二軒入っていたり、クラフトビール醸造所併設レストランがあったり、大浴場も本当に広い。四階のキリンレモンプールは、夏季は泳ぐことができ、それ以外の期間はプールサイドテラスで寛ぐことができる。四月二十二日に開業した日本初の都市型循環式ロープウェイ「YOKOHAMA AIR CABIN」も、ホテルの真横に見ることができる。横浜はこれまで日帰りの観光地と見られてきて、宿泊施設のキャパが少なかった。これを変えるべく、大型のアパホテルを建設した。ここに一日四千人が宿泊することで、中華街等周辺地域への人の集まりがぐっと多くなっている。
 二〇二〇年のコロナ禍の下でアパホテルが打った手は、「コロナに負けるなキャンペーン」として、アパ公式サイト、アパアプリから予約すれば一泊二千五百円で宿泊できるというものだった。目的はライバルホテルの常連客を奪うこと。このキャンペーンは大きな反響を呼び、アパアプリのダウンロードが飛躍的に伸びた。続く創業五十周年記念キャンペーンの第一弾は、アパ社長カレーの無料配布、第二弾は公式サイト&アプリからの予約で三千九百円のサンキュープライスでの宿泊可能、そして二月から始まった第三弾は、客室のビデオサービス(通常千円)が無料になるというものだ。この反響も凄まじく、アパホテルの稼働率は一気にアップしている。他のホテルへの刺激にもなっていて、同様のサービスを検討しているホテルチェーンもあるようだ。理由なくこのようなサービスを行うのは奇異に映るが、五十周年という名目があれば、何をやっても許される。インバウンド需要がゼロの今、とにかく国内客を獲得するために、アパホテルも採算ラインぎりぎりの運営を求められている。
 アパホテルの約三〇%の経常利益率は、おそらくこの業界では世界一だ。通常は利益率一〇%以上なら、良いホテルと言えるだろう。二〇一九年十一月期決算では約三百五十億円だったアパグループの利益は、二〇二〇年十一月決算では十億円にまで減少したが、創業から続けている黒字はキープした。今年(二〇二一年)の利益は百億円、来年は三百五十億円を復活させ、大阪万博が開催される二〇二五年には、利益を五百億円にまで持っていく予定だ。拡大に合わせて社員の増強も図っていて、一昨年には四百四十九人、昨年と今年は約二百人の新卒が入社している。アパホテルはチェックイン・アウトに自動化が進んでいて、一つのホテルに対して必要な人員は減少しているので、少ない採用でも対応できる見込みだ。