衆議院議員 小田原潔
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APAグループ代表 元谷外志雄
1964年生まれ。1987年東京大学経済学部を卒業、富士銀行に入行。1996年に外資系投資銀行に転職、モルガン・スタンレー証券のマネージングディレクターなど数社で活躍。2010年野党だった自民党公認で参議院議員選挙に出馬するも落選、2012年の衆議院議員選挙にて自民党公認で初当選。現在三期目。2016年8月から外務大臣政務官も務めた。
今なお日本人に大きく影響
元谷 本日はビッグトークへの登場、ありがとうございます。小田原さんには勝兵塾で何度か講演をしてもらっていますが、立派な保守思想を持っていて、私の考えとの共通点が非常に多いこともあって、今日お招きしました。よろしくお願いします。
小田原 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
元谷 小田原さんは先日の勝兵塾の講演で、お父様の話をしていましたね。
小田原 私の父は十歳で満州から引き上げてきたのですが、途中で八歳と一歳半の妹を亡くすなど大変な苦労をしました。日本に戻ってきたものの、当時の満州からの引揚者は赤貧ですよ。そんな中、父は創設されて二年目の防衛大学校と一般の大学の両方に合格していたのですが、祖父が一般大学だと「成績優秀で貧しい学生はアカになる」と父を説得、結局防衛大学校に入学することにしました。その後自衛官となった父は、最後は陸上自衛隊東部方面総監まで務めて退官しました。自衛隊ですから転勤も多く、私は小学校を四回転校しました。そして子供ながら、自衛隊が国や人々から大事にされていないとも感じていました。戦後、日本は経済的には確かに豊かになったかもしれませんが、自分の国を自分で守るという意志のない、真っ当ではない国になってしまいました。私が人生で成し遂げたいことはまず憲法改正、そして北方領土返還、さらに自分の意志で国を守る、そんな日本人の精神が隅々にまで行き渡るような真っ当な国に日本を変えることです。仮に私の人生でできなくても、続く若い世代がバトンを引き継いでくれるのが大事です。
元谷 全く同感です。
小田原 ただ北方領土の返還が人生の目的だと聞くと、「絶対に返って来ないよ」と言う人が非常に多いのです。しかし私は言いたい。私達は利用価値があるから返してくれと言っているのではなく、単に故郷だから返してくれと主張しているのです。この節を曲げれば、竹島や尖閣諸島も危うくなります。絶対に、返してもらうことを諦める日本人になってはいけないのです。
元谷 多くの人がそう考える理由は、先の戦争に負けたからです。負ける戦争はしてはいけない。日本も勝てる戦略を描いて先の大戦に臨むべきだったのですが、海軍や外交用の暗号がアメリカに解読されたのを放置したまま、真珠湾攻撃を行ってしまったのです。結果、事前に攻撃を察知したアメリカのルーズベルト大統領は訓練と称して新鋭艦や空母を真珠湾から逃していたため、日本軍はこれらを沈めることはできませんでした。またこの攻撃は陸軍との共同作戦として、真珠湾の占領まで行うべきでした。そうすればドックも重油タンクも日本のものになったのです。多くの日系人が住むハワイですから、占領している間に島全体で日本との一体感を醸成する余地もあったのではないでしょうか。またパナマ運河を攻撃して、アメリカの東西の重要な流通ルートを破壊するべきでした。これだけのダメージを与えれば、日本に有利なアメリカとの停戦も可能だったかもしれません。圧倒的な経済力を持つ大国と長期戦をすれば、徐々にじり貧となって敗れるのは明らかでしょう。私は当時の海軍の山本五十六の考えが理解できないのです。
小田原 私は自民党が野党の時に衆議院議員選挙に出馬して、安倍総裁という親分と一緒に政権を奪還して、それを支えた人間です。ですから八月二十八日の辞任会見は玉音放送を聞くような思いでした。その時父から連絡があったのですが、子供の頃、山本五十六が戦死したと聞いた時の感覚と似ていると言っていました。
元谷 私はあの山本五十六の死は覚悟の上だったと思っています。護衛機が六機は少なすぎるでしょう。アメリカに詳しい彼は敗戦を予想していたのではないでしょうか。負けたら戦犯として処刑されますから、先に名誉の戦死をすることを選んだのでは。そもそも山本五十六は、負けるのでアメリカとは戦うべきではないとしっかりと主張すべきだったのです。それを「是非やれと言われれば、初め半年や一年の間は随分暴れてご覧に入れる。然しながら、二年三年となれば全く確信は持てぬ」と非常に中途半端な回答をしたために、陸軍に引きずられて日本は対米開戦を決意してしまうのです。とはいえ、戦争においては軍人ではなく政治家の役割が重要です。政治家の役割は戦争を起こさせないことであり、そのために必要なのはバランス・オブ・パワーの考え方です。軍備を持たないから戦争が起こらないのではなく、軍備があるから戦争が起こらないのです。日清戦争、日露戦争、そして第一次世界大戦で勝利した日本には当時驕りがあったために、戦争への道を突き進んでしまったのでしょう。再び過ちを犯さないよう、しっかりとした政治が求められています。
小田原 父が満州から逃げて帰る時、ソ連兵からの暴行を恐れて女性は皆坊主頭にして男性の振りをしたそうです。その時一緒に逃げていた女性が十歳の父に向かってこんなことを言いました。「大人になったら絶対に戦争をしてはいけないよ。でも万が一戦争に巻き込まれたら、絶対に負けちゃいけない」と。戦争に負けるということが如何に国民にとって屈辱的なことで、如何に国に後々まで禍根を残すのか。今、私達は身を持って痛感しているところです。
違反は戦後の
世界覇権のため
元谷 条約は破られるためにありますから、日ソ不可侵条約があるからといって、ソ連が侵攻してこないと考えるのは甘いでしょう。日本は武士道精神の国ですが、相手に武士道精神を期待するのは間違いです。東京裁判では日本を「人道に対する罪」で裁いていますが、原爆を白昼、予告なしで投下した国の「人道に対する罪」の方が当然重いはずです。
小田原 焼夷弾を効果的に使用して、意図的に十万人を焼き殺した東京大空襲も、同様に人道に対する罪に当たります。
元谷 そもそも戦時国際法であるハーグ陸戦条約とジュネーブ条約において、非戦闘員の殺傷、非軍事目標・無防備都市への攻撃は禁止されていたのですから、アメリカは堂々とこれに違反しているのです。しかしアメリカが違反した目的は日本に勝つためではなく、大戦後の世界覇権を握るためでした。対ドイツの戦闘に勝たせるべくアメリカが膨大な軍事援助を行ったソ連が、どんどん巨大な軍事的モンスターになってしまったのです。このままではソ連はユーラシア大陸からアフリカ大陸までを席巻してしまうという危機感を抱いたアメリカは、議会機密費を使って開発をしていた原爆を完成させ、実戦で使い、ソ連を威嚇することを決意するのです。また日本への原爆投下は一種の「人体実験」でもありました。アメリカは、事前には一切空襲を行わなかった広島と長崎に原爆を投下し、戦後建物や人への被害状況を綿密に調査したのです。
小田原 広島がウラン、長崎がプルトニウムと原爆のタイプを変えているのも、あれらの投下が実際の都市で行った「実験」であることを示しています。非常に腹立たしいことです。
元谷 とはいえ、この二発の原爆投下によって、ポスト第二次世界大戦として勃発する可能性があった米ソの第三次世界大戦という「熱戦」を、「冷戦」に変えることができたという見方もできるのです。今の世界ではインド・パキスタン・北朝鮮・イスラエル(推定)と、徐々に核保有国が増加しています。これには私も危機感を感じています。
小田原 核弾頭の数だけを考えれば、もう世界を何回も滅ぼすことができるくらいです。選挙活動で日本も核保有を検討すべきだと主張すれば、間違いなく落選するでしょう。しかし相手が怖がらない装備では軍事力にはならないし、軍事力の背景がなければ外交が成立しないのです。
元谷 確かに核には核で対抗するのが一番なのですが、日本が核兵器を保有するのは対外的にも、国会で非核三原則の決議をしている以上対内的にも政治的にも難しいでしょう。ですから私はアメリカとニュークリア・シェアリング協定を締結、アメリカから核をレンタルすることで力のバランスを図るべきだと主張しているのです。しかし今回の新型コロナウイルス騒動が示したのは、最も恐れるべき大量破壊兵器は核兵器ではなく感染症だったということでしょう。この半年で一気に世界に広まって、アメリカの十九万人をはじめとして世界中で九十万人が亡くなっています。一つこの新型コロナウイルスで特徴的なのは、欧米と、中国や韓国、日本や台湾等アジアでの人口百万人当たりの死者数が二桁異なることです。アメリカの人口百万人当たりの死者数は五百八十四人ですが、中国ではたったの三人です。武漢のウイルス研究所で生物兵器として開発されていたウイルスが漏れた可能性も指摘されていますが、白人には過酷な症状を与える人工的なウイルスなのかもしれません。だから最初からこのウイルスに対抗する手段も同時に開発していた中国には被害が少ないのだ…という説には説得力があります。
小田原 なるほど、そうかもしれません。
被害を大きくしている
元谷 問題は来年の東京オリンピックを開催できるかどうかでしょう。日本は第二波が収まりつつありますが、欧米から南米、そしてアフリカ、インドへと感染者は広がっています。世界からの選手や観光客の日本への入国をどれだけ認められるかが、大きな議論になるでしょう。ワクチンや特効薬ができればまた情勢は変わるでしょうが、通常ワクチンは一年で開発できるものではありません。私は五〇%以上の確率で、東京オリンピックは中止または縮小開催だと考えています。また世界経済も停滞を余儀なくされています。人と情報とお金はセットであって、人の行き来が止まっても他が動くということはありません。今年は四千万人が目標だった訪日外国人旅行者が今のところ約一万人と激減、国内の観光旅行を控える人も多く、ビジネスもテレビ会議等で不要不急の出張を避けるようになっています。アパホテルの顧客シェアは約三割がインバウンド、二割が国内観光、五割がビジネスですが、いずれもが非常に大きなダメージを受けています。アパグループは過去三年間で毎年三百五十億円を超える利益を計上、合わせて一千億円以上の利益を上げていてまだ蓄えがありますが、今年、来年の決算がかなり厳しくなることは覚悟しています。
小田原 東京都では八月には毎日三百名以上の感染者が出ていました。これは千五百万人の人口から考えれば、五万人に一人が感染するという計算になります。その一人のために、残りの四万九千九百九十九人に外食するな、外出するな、旅行に行くなを守らせるのが正しいのか。高齢や基礎疾患のある方が感染を極度に恐れるのはわかります。これらの方の感染は極力防ぐ体制をとって、それ以外の方は自由に出掛けてくださいという世の中に戻すことが、何よりも急務だと考えています。
元谷 その通りです。また私は実際の新型コロナウイルスによる感染よりも、メディアによるコロナ報道によって莫大な被害が生じていると感じています。毎日感染者数を報じて大騒ぎをしていますが、それに意味はありません。それよりも新型コロナによる死者数だけではなく、激減したといわれているインフルエンザや風邪、通常の肺炎等他の病気による死者数も並べて出してはどうでしょうか。そうすれば、特に新型コロナウイルスだけを恐れる必要がないことがわかり、世の中が落ち着くと思うのです。
小田原 よいアイデアだと思います。私もテレビの情報番組には問題があると思います。電子顕微鏡の写真に色をつけ、不気味な効果音と共に画面に出し、ただ怖い怖いとだけ司会者が言い、コメンテーターのタレントが大きく頷くという…。これのどこに、国民に役立つ情報があるのか。恐怖心を煽ってCMまでチャンネルを変えさせないようにしている番組が余りにも多いのです。真実を伝えるという本来の番組の在り方を再認識して欲しいと思います。
元谷 人間はすべからく菌やウイルスと共存しているのですから、特定のウイルスだけを過度に報道するのはバランスが悪い。不安を煽る報道ばかりになっていて、国民が過剰に心配しています。
小田原 その結果、他都府県ナンバーの車に嫌がらせをするとか、帰省した人に嫌味を言うとか、必要のないいざこざを生み出しています。
元谷 メディアがもっと冷静になるべきでしょう。またメディアをチェックする外部機関も必要なのではないでしょうか。私達が広告やCMを出す時には必ずメディア側のチェックが入ります。しかしメディアの報道番組や記事は外部のチェックを受けることはありません。社会主義国のように政府や党による言論統制になってはいけませんが、民間から構成員を募る等ルールをきちんと決めたチェック機関が、自由民主主義国家らしく正しいニュースを伝えるようメディアに働きかけることは、あっても良いと思います。商業メディアは売上を上げる必要があり、それには視聴率や販売部数を上げなければならないのは理解しますが、そのためによくお金を稼ぐ人の不幸や不安、やっかみ僻みの報道ばかりになるのはやはり問題です。
小田原 そんなメディアに触れ続ける国民は弱体化していきます。日本国民でありながら日本嫌いになる人が出てくるという、見過ごせない弊害があるのです。慰安婦問題についても、日本のメディアは日本に責任があるという報道ばかりです。
元谷 もっと冷静に慰安婦問題は考える必要があるでしょう。
報道をチェックすべきだ
小田原 私は外務大臣政務官のアジア担当でした。日本でも韓国でもない国に設置された慰安婦像があり、地主さんに真実を伝えて撤去してもらったのです。そのような中、ウォール・ストリート・ジャーナルに投稿記事を書きました。歴史問題には触れずに、北朝鮮がミサイルを発射する中、日本と韓国は一緒に北の横暴を抑止する運命にある隣人なのだから、一方的に日本の悪口を言っても何の得にもならないという内容でした。それから三年経ちましたが、残念ながら何も変わっていません。
元谷 僻み根性というか、韓国人の考え方に問題があるのではないでしょうか。だから韓国には真の英雄がいないのです。安重根が英雄に祭り上げられていますが、彼は伊藤博文を暗殺したテロリストであり、しかも併合に反対だった伊藤を消すことで、ある意味韓国併合を推進した人物です。なぜ彼が英雄になるのか、私には理解できません。やはり半島国家として中国、ロシア、日本、アメリカ等常に周辺の強国の顔色を見なくてはいけなかったことが、韓国人のメンタリティーに影響を及ぼしているのでしょう。
小田原 日本人も含め様々な国の女性がいろいろな理由で慰安婦になりました。その境遇に同情を禁じえない方もいらっしゃいますが、全ての責任を日本人だけに負わせるのは、やはり史実に反すると思うのです。
元谷 また日本のみを糾弾し、自国の闇に触れない姿勢もおかしい。韓国軍がベトナム戦争に出兵した際、地元の女性を暴行してライダイハンと呼ばれる混血児が二万人も生まれているのです。また各地で民間人の虐殺を行い、その様子が壁画として残っている村もあります。私も実際に現地を訪れて見てきました。
小田原 ビンアン慰霊廟ですね。私も行きました。
元谷 自国のこんなにも重大な戦争犯罪行為にはほっかむりをして、日本のことだけ史実を捻じ曲げて責め続けている韓国と対話をするのは、やはり非常に難しいでしょう。
小田原 ただ隣国同士ですから、引っ越すこともできないわけで…。
元谷 考えてみると、これは日本が弱くなったからなのです。戦後の経済成長で日本が世界第二位の経済大国になった時には、中国も韓国も皆なびいてきました。しかし中国に二位の座を譲り渡してから、アジア諸国からの日本批判が激しくなったのです。中国はウイグル・チベット・モンゴル等の少数民族の国民を犠牲にして、八千万人の共産党員の一部のわずか一千万人ほどが豊かさを満喫しているとんでもない国です。そして日本の左翼とメディアが中国や韓国に迎合して、日本批判を行っているのです。正に日本人の敵は日本人ということでしょう。
小田原 安保法制や特定秘密保護法の議論が盛んだった時に安倍首相が街頭で演説をすると、必ず「安倍辞めろ!」と言う人が出てきます。いつも同じ顔ぶれで、せいぜい二百人程度なのですが、テレビの報道ではあたかも多くの人がその主張をしているように写すのです。どう見ても千人もいない集会でも主催者は五万人集まったと無茶な発表をするのですが、メディアはそれを鵜呑みにして報道します。報道機関の在り方としてどうかと思いますね。
元谷 やはり間違った報道を規制するなんらかの手段は必要でしょう。これからも様々な政治的な課題が生まれるでしょうが、頑張ってクリアしていってもらいたいです。最後にいつも「若い人に一言」をお願いしています。
小田原 私は日本の将来を非常に楽観視しています。その理由は自民党の部会や私主催の政策勉強会で、数多くの非常に面白い若手起業家と会っているからです。私もビジネスに関わって三十五年になりますが、今ほど起業家の数も質も充実している時代はありません。また、かつてのように株式を上場して早くお金持ちになりたいというよりも、自分が思いついた価値を社会に提供したいという思いが強い人が多いのです。例えば宇宙ゴミを回収する事業だったり、お役所の書類様式をスマホを使って自動的に全国で統一する事業だったり、様々なアイデアを確かな思いで実現しようとしている企業が数多くあります。こんな民間の瑞々しい発想の起業家が日本社会に価値を与え、雇用を作り、日本人に夢と希望を与えるのです。この積み重ねが、日本の成長戦略になるのではないでしょうか。若い皆さんはそんな起業家に倣って、就職できないとか学歴がないこと等忘れて、やりたいことに情熱を懸けて、大いに人生を楽しんで欲しいと思います。
元谷 ヒーローを称賛するムードを作って、成功者に学ぶことが常識になれば、日本は活気ある社会になりますね。それに向けて一緒に頑張りましょう。
小田原 はい、頑張りましょう。
対談日:2020年9月4日