日本を語るワインの会199

ワイン199二〇一九年十二月十三日、代表邸で恒例「日本を語るワインの会」が行われました。この十二月に最新刊『私が日本に住み続ける一五の理由』(星雲社)を上梓した米国カリフォルニア州弁護士のケント・ギルバート氏、阿羅健一氏との共著『対談・吉田茂という反省』(自由社)が第二回アパ日本再興大賞優秀賞を獲得した、新しい歴史教科書をつくる会顧問の杉原誠四郎氏、百田尚樹氏のベストセラー『日本国紀』(幻冬舎)の編集を担当、他のメディアでも論客として活躍するジャーナリストの有本香氏を迎え、日米を中心とした国際関係と日本の進むべき道について、議論を交わしました。
改憲を達成するまでは
安倍首相に引退はない
 トランプ大統領は就任して最初の二年は共和党をまとめることができなかったが、今はできるようになった。支持率も四〇%を固く維持している。イギリスの総選挙ではボリス・ジョンソン首相の保守党がサッチャー元首相以来の圧勝で議席の過半数を確保した。ようやくイギリスのEUからの離脱に目処が立ちそうであり、今後は貿易協定の行方が関心事になるだろう。冷戦終結で色々な国が色々な自己主張を行うようになり、意見が分かれることが多い。アメリカはNATO加盟国に対してGDPの二%を軍事費に充てることを要求、現在九カ国がこれを達成している。同様にアメリカは在日米軍の駐留費の日本負担、いわゆる「思いやり予算」を四・五倍に増額することを求めたと報じられている。これは東アジアの安定のために日本が軍事力を増強しないのであれば、せめて金を出せということなのだろう。であれば日本は潔く憲法改正をして、独立自衛の国になるべきだ。
 安倍首相の自民党総裁四選は、本人の意志に関わらず周囲がその状況を固めつつある。安倍首相はイギリスのジョンソン首相とも相性がよく、話していても楽しいとのことだ。安倍首相に今後やって欲しいことは、北方領土返還、北朝鮮拉致問題の解決、憲法改正、スパイ防止法成立の四つだ。この重要な課題に取り組めるのは安倍首相しかおらず、これらを解決するまで、首相引退はない。
 北方領土に関する交渉がこれまでは上品すぎた。お願いをしている場合ではない。ソ連は北朝鮮よりも遥かに多い約六十万人にも及ぶ日本人を抑留して、シベリアに送ったのだ。このことに対する補償を計算すれば、数兆円に上るだろう。これを一九五五年からのソ連との交渉の最初から強く主張していれば、事態は変わった。が、そんな度胸のある政治家はいなかった。また日頃相手国と接触している外交官がこのことを言い続けるべきだったが、日本人はそれができない。北方領土返還のための長期的な戦略も立てられない。
日ロとも強い政権の今が
北方領土返還のチャンス
 ウラジオストク等、ロシアの極東地域には今中国人、韓国人、北朝鮮人が溢れている。街はヨーロッパ風で美しいが、道路に突然穴が空いていたりとインフラの維持ができていない。良いホテルと言えばロッテホテルしかなく、一応五つ星だがこれはロシア基準で、基本的なサービスが全然なっていない。中国人や韓国人が様々な商売を行う一方、北朝鮮人は土木工事に従事している人ばかりだ。彼らの賃金の八割は北朝鮮国家に行き、手取りは残り二割だと言われている。
 北方領土交渉は、今となってはこのロシアの極東地域の開発への日本の協力が「カード」。これを駆使して駆け引きを行うべきだが、日本の外務官僚は駆け引きをする能力がない。仕方なく首相官邸が極東地域に進出しようとする日本企業を押し留めて、領土問題が解決するまでは出て行くなと、この経済協力カードを有効に使おうとしている。 北朝鮮の拉致問題については、トランプ大統領にある程度任せる必要があるかもしれない。しかし日米が同等のパートナーになるためには、やはり憲法改正が必要だ。また、トランプ大統領と安倍首相の組み合わせでないと、憲法改正は不可能だ。トランプ大統領が再選すれば任期は二〇二四年となるが、四選を認めて安倍首相の任期も二〇二四年に伸ばし、国民運動も盛り上げて、任期終了までにまずは自衛隊の憲法への明記、その後九条二項削除の、二度改憲を行うのだ。安倍首相は二〇二一年に任期が終わったら「第二の人生」と言っているようだが、安倍氏にはそんなものはない。
駐留費増額要求はブラフ
米軍の日本撤退はない
 批判の多いトランプ大統領だが、やるべきことはきちんとやっている。景気も維持し、株価も上昇している。また海外に派遣している軍隊の費用アップはある意味当たり前だ。なぜなら、この軍事力はアメリカしか販売できない商品だからだ。特別な商品の対価に高い金額を求めることは当然であり、払えなければ撤退することもある。しかし事実上の米中冷戦状態の今、アメリカの前線基地は日本であり沖縄だ。ここを完全に退いてグアムに移ることは、アメリカが中国に世界覇権を譲ることになる。駐留費の増額等いろいろ言ってくるが、自身の理由によってアメリカが日本から撤退することは絶対にあり得ない。
 ではなぜアメリカ軍は一九九二年にフィリピンから撤退したか。一つは一九八六年にマルコス大統領が失脚、アキノ大統領が誕生するという混乱の中、反米軍プロパガンダが今の沖縄同様に凄まじかったからだ。この政治的な理由に加え、一九九一年にピナトゥボ山が噴火して火山灰がフィリピンに降り積もったことも大きい。ジェットエンジンが火山灰を吸い込んでは駄目になるので、空軍基地を持続させることが物理的に不可能な状況だった。アメリカ軍撤退は危険だ。チベットはインドのイギリス軍が来てもらっていれば、ウイグルはソ連の兵士に残ってもらっていれば、今のような悲劇は避けられたはずだ。
 米中貿易戦争が中国に与えたプレッシャーは想像以上だった。中国は実際、かなり経済的にがたがたになっていて、さらにアフリカ豚コレラによって一説には豚が一億頭減少したとも言われている。習近平主席の対応もおかしく、経済対策が機能していない。香港のデモも収まらない。いろんなものがまさにハリボテだったのだろう。アメリカは中国の実態を知らなかったが、日本はこれまで精一杯中国を助けてきたのに、いろいろと裏切られた経験がある。しかし今は、トランプ大統領とアメリカは中国の実態を理解している。それは安倍首相がトランプ大統領に教えたからだ。大統領選挙中は日本と中国をごっちゃにして批判していたトランプ大統領だが、当選直後に安倍首相が会って話をしていったことで、どんどん理解を深めていったのだ。
政治家の決断で
オスプレイの配備・運用を
 香港での中国政府の対応を知った台湾は、「一国二制度」と言われても、絶対に中国に併合されることは望まないだろう。実際支持率を大幅に下げていて、二〇二〇年一月の総統選での再選は不可能と思われていた民進党の蔡英文総統だが、香港のデモによって支持率が復活した。これに合わせ蔡総統は最高司令官として軍の視察を断行した。この辺りは日本の政治家とは異なり、行動がリアルでセンスが良い。日本で自衛隊のオスプレイが配備・運用されていないのは、日本の政治家の決断力のなさであり、自衛隊のオスプレイの訓練を行ったアメリカ軍は怒っている。特にオスプレイが危ない機体ではないことは、統計上も明らかだ。
 政治家の世襲にも意味がある。一代で政治のノウハウを身につけるのは難しいし、常に選挙の心配をしなければならない。二代目三代目であれば、幼少期から政治の空気を体感でき、さらに地盤があるために選挙に割く力を本来の仕事に持ってくることができる。そういう意味でも小泉進次郎氏には期待が集まっていたが、環境大臣に就任直後の福島訪問と前任の原田義昭氏の発言に対する謝罪で、中身のなさを露呈した。今はCOP25に行っている。日本の石炭火力発電は優秀であり、他の国と温室効果ガスを排出する量が桁違いに違う。小泉環境大臣がCOP25で石炭火力発電への対応について明確にしなかったことが批判されているが、本来は世界中で日本の石炭火力発電の技術を使うべきであり、小泉大臣はそう伝えるべきだった。さらに日本は安定した電源として、原子力発電を増やすべきだ。
 テレビの影響力は昔は絶大だったが、今でもかなりのものだ。しかし多くが左翼にジャックされている。「桜を見る会」に関する報道の中で、安倍首相とジャパンライフとの関係が取り沙汰されていたが、メディアの幹部や元幹部が多数ジャパンライフの宣伝に登場していたことが明らかになり、すっかりこの報道は影を潜めた。そもそも二〇〇七年まではテレビも新聞もジャパンライフから多額の費用をもらってCMや広告をやっていたのだ。
 保守は喧嘩の種を見つけてよく分裂を繰り返す。左翼は労働組合をバックにしているので資金があり、金持ち喧嘩せずという感じだ。それに比べて保守は思想的だが些細な相違で喧嘩をしている。つまらないことだ。
 ホテル社長が二〇一七年十二月に出した著書『強運 ピンチをチャンスに変える実践法』(SBクリエイティブ)は十三万部のべストセラーになった。運は待っているものではなく、戦って勝ち取るもの。そうしていれば、運は転がってくる。