日本を語るワインの会198

ワイン198二〇一九年十月二十五日、代表邸で恒例「日本を語るワインの会」が行われました。剣道五段、空手五段の元警察キャリア、プルデンシャル・ホールディング・オブ・ジャパン株式会社顧問の鶴谷明憲氏、銀行の法務畑でイトマン事件等様々な案件を担当してきた株式会社三井住友銀行専務執行役員の松浦公男氏、検察官からキャリアをスタート、公安調査庁のナンバーツーも務めた銀座公証役場公証人の杉山治樹氏、建設省から国土交通省と全国各地のエリアで道路等に関する行政を手掛けた株式会社NIPPO専務執行役員の三浦真紀氏、大蔵省から財務省、東京国税局長も務めた株式会社農林中金総合研究所エグゼクティブアドバイザーの藤田博一氏をお招きし、観光から酒造まで多彩な話題で盛り上がりました。
今となっては虚しい
「コンクリートから人へ」
 前環境大臣であり、昨年まで「真の近現代史観」懸賞論文とアパ日本再興大賞の審査委員を務めていた衆議院議員の原田義昭氏は、二〇一五年、衆議院予算委員会で、尖閣諸島が日本領となっている中国の公的機関が一九六九年に作成した地図を示して、日本の主張を裏付ける新たな証拠とした。また原田氏は環境大臣として最後に、大量に保管されている福島第一原発の「処理水」について、「思い切って放出して、希釈する他に選択肢はない」という勇気ある発言をした。これらの処理水は放射性物質除去装置であるALPSを通したものであり、残っている放射性物質はトリチウムだけである。世界中の原発が海にトリチウム水を放出していて何の問題も起こっていないのだが、福島第一原発だけが多くの反対からそれができずにいる。この状況に風穴を開けるべく、原田氏は後任の大臣のためにこの発言を行った。しかし跡を継いだ小泉進次郎環境大臣は、「発言は前大臣の個人的な所感ではあるが、福島の漁業者に不安を与えてしまい、後任の大臣としてまず、お詫びしたい」とせっかく原田氏が敷いたレールをぶち壊した。小泉氏はまだ若く経験が浅いにせよ、これは極めて無責任な行動だ。
 そもそも最初に原発事故の処理にあたった民主党政権の対応がおかしかった。除染の基準が一ミリシーベルトというのも厳しすぎた。「コンクリートから人へ」をキャッチフレーズに公共事業費を削減、群馬県の八ッ場ダム建設を一時中止したのも民主党政権だ。今年台風十九号が関東を襲った際も、試験湛水中の八ッ場ダムが水を蓄えることができたことで、下流での洪水が防げたと言われている。民主党政権関係者は、今再び「コンクリートから人へ」と言うことができるのか。また民主党は二〇〇九年の選挙でガソリンの暫定税率廃止をマニュフェストに掲げたが、政権を獲得しても結局暫定税率は無くならなかった。民主党政権の罪は大きい。小選挙区制は日本を二大政党制にするために導入されたものだが、あんな酷い政権が登場するのであればと、二度と政権交代は起こらない可能性が高い。近年台風による豪雨等自然災害が多い。炭酸ガス排出による地球温暖化で気候サイクルが変わったとの主張もあるが、はっきりとは確定していない。今後も十分な対策と警戒が必要だ。
東京から徐々に無くなる
石原慎太郎の影響
 四国も観光に力を入れており、現在約九十三万泊の外国人旅行者の年間宿泊数を百万泊にすることが当面の目標だ。お遍路さんの八十八箇所巡りにちなんで八十八の観光名所をピックアップしてプロモーションに努めているが、簡単には成果は出ていない。そんな中でも瀬戸内海の島々で三年に一度開催される瀬戸内国際芸術祭は非常に好評で、欧米からも観客を集めている。四国の問題はキャッシュレス化だ。クレジットカードが使える店が少なく、駅の自動改札化もまだまだ。インフラ整備が求められている。
 東京オリンピックのマラソンと競歩の会場を札幌に移すことに決まりそうだ。小池都知事が皮肉を言う気持ちもわかるが、アスリートの立場に立って競技を成立させようとするのであれば、これはやむを得ないのではないか。気温三十二度、湿度七四%でマラソンを行ったドーハでの世界陸上が酷すぎた。東京の八月上旬の平均気温は約二十五度だが、札幌はそれよりも約四度低い。東京では道路の遮熱舗装が進められていたが、それも今ストップしている。
 石原慎太郎氏が知事時代の二〇〇〇年、東京都は資金量が五兆円以上の銀行のみを対象に外形標準課税を徴収する条例を制定した。これに対して、対象となる約二十行が東京都を相手にこの条例の無効を求める訴訟を起こした。一審、二審とこの条例を違法とする銀行側の訴えが認められ、最高裁では銀行が条例に基づき納付した税金の一部を都が返還すること等で和解、実質的には銀行側の勝利となった。石原慎太郎氏は金融に明るくない。選挙公約から都が一千億円を出資して発足した新銀行東京も経営に行き詰まり、結局他行と合併してきらぼし銀行となっている。石原慎太郎肝いりで命名された「首都大学東京」も、二〇二〇年四月に元の「東京都立大学」に戻ることが決定している。
長年思想的連帯の要だった
月刊Apple Town
 国税庁は税金について担当するのはもちろんだが、酒類に関する行政も担当する役所だ。長年規制ばかりと批判されてきたが、近年は酒類業界の育成にも力を入れている。二〇一八年から適用を開始した「日本ワイン」表記もその具体的な施策の一つだ。古くからワインを生産する国では原料であるブドウの出所が品質を知るための重要な要素となっているが、日本では原料が日本のブドウなのか、輸入濃縮果汁なのか輸入ワインなのかがわかりにくかった。新しい表記制度では日本で製造された「国内製造ワイン」と輸入された「輸入ワイン」を明確に区別。さらに国内製造ワインの中で、国内で収穫されたブドウのみを原料としたものを「日本ワイン」と表示することになった。また日本ワインの場合は、特定産地のブドウを八五%以上使用した場合、その産地名をワインに表示することができる。今、温暖化によって旧来からのワイン生産地・山梨県だけではなく、北海道まで広くワインが作られるようになり、品質も向上している。またワインだけではなく、日本酒の酒質の向上も著しい。地域振興の一つとして、酒類の重要性は今後も増すばかりだろう。
 アパグループの事業が成功したのは、この月刊Apple Townによって、多くの人々との思想的連帯感を保つことができたからだ。創刊は一九九一年のバブル崩壊時。この時危機感を抱いた代表が、社員、取引業者、お客様との結束が必要と考えて発行を始めた。アパグループ内では代表の社会時評エッセイの感想文を募集していて、代表が選ぶ優秀作品には賞金も贈られる。この思想的連帯による活動は二〇〇八年に「真の近現代史観」懸賞論文に拡大。初代審査委員長の故渡部昇一氏には、会ったこともなかったが代表がずっと月刊Apple Townを送り続け、渡部氏は必ず毎回礼状をくださった。懸賞論文を創設する際に初めて代表が会い審査委員長をお願いすると、渡部氏はその場で快諾された。このことが今の保守の盛り上がりに繋がっている。
宿泊単価が高いのは
東京・大阪・福岡
 アパホテルには年間二千三百万人が宿泊、ホテルの増加に伴ってその数は年々増加している。二〇一七年に代表の著作が南京大虐殺を否定していることから勃発した書籍事件の後、中国ではアパホテルの予約ができなくなり、中国本土からの予約は無くなった。しかしこれは団体客が無くなったということであり、個人旅行で日本に来てからホテルの予約をする中国人富裕層は、今でもアパホテルに宿泊している。アパホテルでは中国人が減少した穴を、欧米人が埋めている。アジア人より欧米人の方が滞在日数が長く、客単価も高い。アパグループの昨年の利益は三百六十二億円で、今年もこれに近い利益を見込んでいる。現在五十箇所以上のホテルを設計・建築中で、これらのホテルは利益は出さないが経費が掛かる。そんな状況下でもこの利益額だ。博多駅前には今、八つのホテルの建設が同時に進んでいる。高い宿泊単価が確保できるのは、東京の他は大阪・難波と福岡だ。
 日本の高級ホテルが外国人向けに安い宿泊料金を出してきている。これは、宿泊は安くするが、ホテル内のレストランの飲食やショッピングで、トータルでお金を使ってもらおうという戦略だ。外国人旅行者の関西での宿泊は当然大阪がダントツ。神戸が思ったほど伸びていない。奈良は全く駄目だ。特に奈良は夜に遊ぶ場所がないのが問題だ。土地の購入が済み、奈良県初のアパホテルの誕生ももうすぐだ。
 アパホテルで稼働率が一〇〇%を超えるホテルがあるのは、ホテル社長のアイデアで宿泊の他に日帰りプランをはじめたからだ。子供を学校に送った後、喫茶店でお茶をする主婦のニーズを取り込むべく、お風呂と部屋の利用の割安プランを作ったところ、口コミで広がって人気になった。主婦の他にも買い物客や大学の先生、受験生等も利用している。今年九月にオープンしたアパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉であれば、露天風呂付きの大浴場でのんびりと、湯上がりにはホテル内のブルワリーレストランで、ここで醸造した「アパ社長ビール」を楽しむことができる。
 二〇〇五年に外資系企業との入札合戦に勝って購入した旧幕張プリンスホテルであるアパホテル&リゾート〈東京ベイ幕張〉は、購入当初の一〇〇一室から二回の増室を経て、現在二〇〇七室になっている。稼働率は九〇%以上をキープ、当然収支は黒字だ。その成功の一番のポイントは、シングルルームのツインルーム化で、部屋単価を上げて客単価を下げたことにある。
 現在公開中の吉永小百合、天海祐希主演の映画「最高の人生の見つけ方」は、幕張のアパホテルの外観が使われていたり、天海祐希の演じる役がホテルの社長だったりということもあり、アパホテルが全面的に応援している。ホテル社長の「とても素晴らしく感動する映画でした。この映画をご覧になった方には、人生のどの一瞬を切り裂いても悔いのないそんな人生を歩んでいただきたいです。アパホテルは『最高の人生の見つけ方』を応援しています♪」というコメントが、映画ホームページに掲載されている。