参議院議員 和田 政宗
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APAグループ代表 元谷外志雄
1974年東京都生まれ。1997年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。NHKに入局しアナウンサー職に。2013年宮城県選挙区において、参議院議員初当選。2019年の選挙でも当選し、現在2期目。自民党の広報副本部長、青年局次長を務める。
視聴者を誤誘導する
元谷 本日はビッグトークへの登場、ありがとうございます。Apple Town二〇一八年十一月号の社会時評エッセイで、和田さんが雑誌「月刊WiLL」に連載しているコラムの一部を私が引用したことが、お知り合いになるきっかけでした。党内でも政策通として知られる和田さんは、私とも考え方が非常に近いことがわかり、その後ワインの会にも来てもらい、勝兵塾での講演もお願いしました。ならば次は…と今日来てもらった次第です。
和田 お招き、ありがとうございます。
元谷 元々はNHKにいたのですね。
和田 はい、NHKのアナウンサーでした。スタジオに籠もってニュースを読むだけの方もいるのですが、私は「足腰の強いジャーナリスト」を目指していましたから、外に取材に行って自らニュースを書く仕事のやり方をしていました。自分で一時間番組を作ったこともあります。
元谷 NHKは何年勤めたのですか。
和田 十六年です。
元谷 結構長くいましたね。
和田 はい。NHKには右から左まで思想的に様々な人間がいます。今は「ニュースウォッチ9」を観てもわかるように左の勢力が強くなっていて、ひどい状況です。何が良くないか。事実をありのままに伝えるのが報道の基本ですが、キャスターが不十分なコメントで事実を飛躍させ、視聴者を誤誘導するのです。
元谷 ニュースの最後に付けるコメントですね。公正中立を謳うNHKなのに、キャスターの主張が印象に残ってしまいます。
和田 アメリカの三大ネットワークのメインのニュースでは、キャスターはほとんどコメントしません。リポーターやコメンテイターに質問をすることで、情報に厚みを出していくのです。また、キャスターが総責任者として番組の編集権を持っているのもアメリカのニュースの特徴です。キャスターがコメントを言うのは、例えば出来が悪いレポートVTRを補足するという意味で捉えられていて、このコメントを連発することは自らの総責任者としての能力のなさを示すことになります。アメリカのキャスターのコメントの重みを示す、有名なエピソードがあります。CBSの著名なニュースキャスターだったウォルター・クロンカイトは、一九六八年自ら取材を行ったベトナム戦争のリポートの最後、個人的な意見としてベトナムと終戦交渉を始めるべきだと告げます。それまで自分の意見をほとんど番組で語ったことがなかったクロンカイトのこのコメントで世論は大きく動き、アメリカ軍はベトナムから撤退していくのです。キャスターとはこうあるべき。日本のキャスターのコメントは久米宏氏から始まって、筑紫哲也氏に引き継がれたものですが、これは本来のジャーナリズムからはあり得ないことなのです。
元谷 マスメディアの「偏向」も常に指摘されています。日本での民主党政権誕生の背景には、メディアの誘導があったのではないでしょうか。
和田 私もそう思います。気を付けなければならないのは、今でも一部電波メディアは放送法を守らず、一定の方向に視聴者を引っ張ろうとしていることです。しかし優秀な国民はメディアが偏っていると思ったら、インターネットで調べたり、YouTubeの番組を観たりしています。従来はテレビや新聞が全て正しいと多くの国民が思い込んでいましたが、今はそんなことはありません。良い方向に進んでいると思います。
元谷 それもあってか、先の参議院選挙では、和田さんを含む勝兵塾推薦の十二名全員が当選しました。一昨年の衆議院選挙では推薦四十八名中四十七名が当選しました。これらは勝兵塾による快挙だと考えています。
和田 素晴らしい成果です。
元谷 和田さんは一期目からしっかり主張を行って、自民党を良い方向に導いていると私は高く評価しています。それが再選に繋がったのでしょう。
和田 ありがとうございます。
元谷 前職のこともあって、党の中では広報副本部長を務めているとか。
和田 はい。例えば先の衆議院選挙では、党のCMの総監督としてシナリオを全部書いて、登場する安倍首相の演出も行いました。
元谷 多才ですね。
最新鋭の原発の新設も
元谷 そもそも国会議員になろうと思ったのは、何がきっかけだったのでしょうか。
和田 私は東京生まれですが、名前の「政宗」は父親が伊達政宗公から名付けたものです。それもあって、NHK時代何度も希望を出して、ようやく仙台放送局に赴任することができました。そして東日本大震災が起こったのです。当時は民主党政権でしたが、被災地に政治の力が全く届いていなかった。お世話になった方が何人も亡くなり、助かった方もとても苦しんでいる。そんな尋常ではない姿を見て、自らの力でなんとかしたいと立候補を決めたのです。
元谷 東日本大震災による福島第一原発の事故には、対応の拙さがありました。多くの人を不安に陥れたのは、一号機、三号機、四号機と続けざまに発生した原発建屋の水素爆発だったと思うのですが、あれも防ぐことができたはず。建屋に水素が充満して爆発したのですから、水素が爆発限界に達する前に、例えば自衛隊にお願いしてヘリコプターから銃撃するなどして建屋の天井に穴を開ければ、空気より軽い水素はそこから逃げていったでしょう。放射能の拡散を恐れてためらったのかもしれませんが、結果的には爆発によってより多くの放射能を飛散させることになってしまいました。また放射線被曝線量が年間二〇ミリシーベルトという低すぎる基準によって強制避難が行われ、福島原発での死者は津波による死者二人とその他二人などで放射能による死者はいなかったにもかかわらず、福島県だけで約二千人もの震災関連死が出てしまっています。急いで避難する必要はないのに、年配の方や病院の重篤な患者まで強制避難させ、移動中に亡くなるなど、痛ましい例も多いです。これは民主党政権の政策判断のミスでしょう。
和田 地震と津波で約二万人もの方の命が奪われただけではなく、震災関連死で亡くなられた方は被災地全体で約三千八百人にも及びます。これは国民の命を第一に考えなければならないはずの政治の力が届いていないということ。福島第一原発の事故時には、すぐに最悪の事態を想定して動く必要がありました。速やかに原子炉に海水を注入していれば、メルトダウンを防ぐことができたはずです。原発がその後使いものにならなくなることを恐れて海水注入を躊躇したとの話がありますが、最悪を考えれば国家・国民を守ることが最優先であり、海水注入しかなかった。これが即断できなかったことが、民主党政権の大きな欠点です。今の安倍政権であれば即座に最悪を想定した判断ができるでしょう。だから私は現政権を全力で支えているのです。
元谷 さらにメディアと民主党政権はその後法律に基づかず、全国の原発を停止してしまいました、これによって火力発電に頼らざるを得なくなり、年間四兆円もの石油代が余分に掛かるようになりました。原発事故直後には、在日大使館が情報源という怪情報が多数流れ、多くの人が東京から名古屋、大阪へと「脱出」していきました。私は、これは日本の原発を止めたい海外の勢力の謀略戦だったのではないかと睨んでいます。そんな時でも政府が測定値を基にきちんと安全だと宣言していれば、パニックにはならなかった。これらいろいろな民主党政権の失敗を、自民党政権は教訓として生かしていくべきだと思います。
和田 そうですね。また、私は安全性が確認された原発は再稼働すべきだと考えています。
元谷 私も同感ですし、もっと再稼働のピッチを上げないと。
和田 その通りです。さらに日本の原子力技術維持のためにも、耐用年数を超えた原発を廃炉にするとともに、何基を新設するのかを真剣に考えなくてはなりません。
元谷 十分に安全性が担保されている小型原子炉が開発されたという話も聞いています。
和田 はい。原発はエネルギー安全保障政策という広い視野で考えるもの。将来的なエネルギー源については様々な技術革新もありますから、その中で原発をどう活用するかを柔軟に考えていくべきだと思います。
元谷 同感です。
和田 今後の津波対策でも、最悪の事態を想定するべきです。今、三陸海岸ではあらゆる海岸に高さ十五メートルの防潮堤の建設が行われています。しかし例えば十八メートルの津波がきたら一溜まりもありません。私は防潮堤よりも避難道路の充実を行うべきだと考えています。地震発生から十〜十五分で海や川よりもできるだけ遠くに、そして高台へと向かえる道を整備するのです。
元谷 防潮堤は確かに津波対策として十分ではないし、海の景色が見えなくなり、住む価値が薄れるという欠点もあります。また避難道路も津波到来の速度が早ければ意味をなさない。私は震災直後から防災マンションの建設を提唱しています。六階建てで屋上が地上から十八〜二十メートルになるマンションを、津波の引き潮でも倒壊しないように海岸線に対して直角に建設するのです。これを一定の間隔で建て、非常階段を外側につけて誰もが屋上に上れるようにすれば、津波を目視してから逃げても助かる人が大勢いるでしょう。またマンションであれば防波堤より低コストで建設でき、それを賃貸にするか販売するかで、使用収益を得ることも可能です。
和田 なるほど、それはいいアイデアです。
元谷 そう言ってくれる人が多いのですが、まだ実際に防災マンションが建設されたという話を聞いたことはありません。防潮堤建設は膨大な需要の創出であり、ゼネコンや土建業者には有り難い話ですが、費用対効果が悪すぎます。
和田 代表は経営者としてコスト感覚もしっかりお持ちだし、経済の仕組みもわかっています。官僚や政治家にも、もっとそんな感覚や知識を持つ人間を増やした上で、防災を考えていかなければならないでしょう。
来年の改憲を狙っている
元谷 私は先の参院選にあたって、選挙の結果参議院での改憲賛成議員の三分の二割れの可能性が高い、だから選挙前に改憲の発議を行い、また衆議院も解散してダブル選挙で三分の二割れを防ぐべきだと主張しました。しかし安倍首相は衆参同時選挙ではなく、参議院のみの選挙を選択しました。なぜか、安倍首相は衆参共に改憲の発議をしても、今の世論調査の結果では国民投票で過半数の支持が得られないと考えたからであり、任期満了による参議院だけの選挙とし、憲法改正支持議員が三分の二を割り込んでも、野党の協力を得て与野党で発議することで、国民投票の過半数の支持を得たいと考えたのではないかと思う。そのためにも、最初の改憲は、九条二項には触れずに憲法に自衛隊を明記するだけとするでしょう。発議に必要な三分の二の議員ですが、選挙の結果、自公に維新を加えても足りません。どうしても国民民主党など野党との協調が必要となります。安倍首相はこの与野党協調路線での改憲発議を狙っているのではないでしょうか。そうすることで、次のステップである国民投票での改憲賛成票を積み増しすることが可能です。また発議から六カ月以内に国民投票となりますが、これに衆議院選挙を合わせてくることも考えられます。
和田 先の参議院選挙について言えば、まず安倍首相は改憲勢力で三分の二の議席が確保できる可能性が高いと判断、単独の選挙にしたと思います。選挙序盤の新聞各紙や通信社の調査でも、かなりの議席が見込めることが伝えられていましたから。しかし実際には投票率が下がったり、逆アナウンス効果があったりして、議席数が目減りしました。こうなると代表が仰るように、改憲に賛成の野党議員を巻き込む必要があります。特に国民民主党には改憲議論に後ろ向きではない、「論憲」を行ってきた旧民社党系の議員もいますから。あとは議員の気概です。代表に引用していただいた文章にも書いた通り、改憲案の国会への提出は憲法審査会からの提出の他に、衆議院では百人、参議院では五十人の議員の賛同があれば可能なのです。改憲案が提出されれば、本会議や憲法審査会で議論することになり、野党ももう逃げることができません。
元谷 ただ改憲は一回では足りません。誰もが反対しない自衛隊を、憲法に明記するだけではなく、九条二項を削除して自衛隊を攻撃力を持ち軍事法廷も備えた他の国と同じ軍隊にする必要があるのです。だからどうしても二段階の改憲になります。二〇二一年の安倍首相の任期終了までに二回の改憲は無理です。後継者候補の筆頭は自民党政調会長の岸田文雄氏ですが、先の参院選の広島選挙区では岸田氏が応援した現職の溝手顕正氏が落選、菅官房長官らが推した河井あんり氏が当選しました。岸田氏のダメージは大きい。この敗北で岸田氏が総裁への意欲を失えば、安倍首相の四期目の総裁就任を望む声が高まってくるのではないでしょうか。四期で二〇二四年までの任期となれば、再選が確実視されているアメリカのトランプ大統領と任期が揃います。
和田 そうですね。
元谷 アメリカ大統領にとっては、再選が全てです。ルーズベルト大統領も再選できなかった前任のフーバー大統領のようにはなるまいと考え、世界大恐慌から脱出すべく膨大な需要を創出するために、選挙時の公約に反するヨーロッパ参戦を自らの再選のために企てます。イギリスとフランスはナチス・ドイツに対抗する十分な軍事力もないのにポーランドの独立保障をしていたのですが、これは裏でルーズベルト大統領からの支援を約束されていたから。ルーズベルト大統領は日独伊三国同盟を利用することを考え、日本を刺激して暴発させ、日米戦争を理由にヨーロッパ参戦を行い、再選も果たしたのです。そこまでやるのがアメリカ大統領ですから、トランプ大統領の行動も理解できることが多い。また、日本が攻撃された場合は、アメリカは第三次世界大戦覚悟で反撃しなければなりませんが、逆にアメリカが攻撃された場合に日本にできるのは「ソニーのテレビで見ているだけ」と、トランプ大統領が日米安保に不満を示すのも当然です。やはり平等に互恵の安保条約にすべき。この二人が首脳でいる間に憲法を二度改正、日米安保も互恵のものに変えて、日本は自らの国を自らの力で守る国になるべきです。
欧州諸国も熱望
和田 日本が独立自衛の国になるべきというのは全く賛成です。そのためにも、安倍首相が四期目を務めることが、日本にとっても国民にとっても一番良いことだと思っています。安倍首相とトランプ大統領になって、日米関係が戦後初めて首脳間で対等になっているのです。安倍首相はトランプ大統領が最も信頼している首脳ですから。またヨーロッパの外交官からも、最近四選待望論が出ています。安倍首相がいなくなったら、トランプ大統領と話ができる首脳がいなくなる。和田も首相に近いようだから、進言するなり党内で運動を興すなり、安倍四選を是非実現して欲しいというのです。それだけ安倍首相の重要性が、世界では高まっているのです。
元谷 実際トランプ大統領は、事あるごとに安倍首相に電話して意見を聞いています。アメリカの対中政策は二〇一八年に大きく転換しました。推測ですが、この背後に安倍首相のアドバイスがあったのではないでしょうか。当初トランプ大統領は習近平主席に非常に融和的で、親中反日のキッシンジャー元国務長官を顧問にしていました。しかし今、トランプ大統領は、キッシンジャー氏から距離を置いています。これまでの実績も既に素晴らしいのですが、安倍首相はさらに世界にとって大きなことを成し遂げる人物ではないでしょうか。
和田 安倍首相は国連加盟国の大多数と首脳会談を行っており、その累計回数は約七百回となっています。首脳会談数と相手国数は日本の憲政史上最多で、これだけでも教科書に載るような成果です。またこの結果、世界中の首脳からの信頼を得ており、正確な情報が入るようになっています。それを場合によってはトランプ大統領に伝えているのです。代表同様、安倍首相はさらに大事を成す人です。私もこの政権を懸命に支え、日本を国民が誇りも持つことができる平和な国家にするために、不断の憲法改正に向けて尽力していきたいと考えています。
元谷 頑張ってください。最後にいつも「若い人に一言」をお聞きしています。
和田 先日の参院選でも、特に若い人の投票率が高くなかったことが伝えられています。そんな中でも、今のままじゃいけない、変えなければと行動を始めている若い人も出てきています。私ももう四十代半ばですから、そういった若い人の行動をサポートしていく年代になったと自認しています。日本は悠久の歴史を持つ素晴らしい国ですが、私達団塊ジュニア世代は「日本は酷いことをした国」ということを日教組の教育で学びました。最初は私もそれを信じたのですが、次第にそうではないことがわかり、今は保守政治家として活動を行っています。今の若い人は同じような偏向教育を受けても、それが正しくないということが肌感覚でわかる人が多いようです。そんな彼らと一緒に、この国を守り愛し発展させていきたい。二千六百七十九年続く皇室をしっかりお守りしつつ、世界に誇る日本を築いていきたいですね。
元谷 若い人ほど保守が増えていると言われていますが、和田さんも言っていたように、その背景にはインターネットがあると思います。巨大メディアが世論を牛耳ることがなくなり、テレビを見る人がどんどん減って、ネットでバランスの良い情報を手に入れる機会が増えてきました。ネットに馴染みが深い若い人を中心に、教科書や従来の報道に疑問を持ち真実を知る人が増えたことで保守思想が広がり、自民党の安定政権に繋がっています。ただ私の意見としては、自民党よりももっと右に位置して砕氷船のような役割を果たす勢力があれば、さらに自民党は安泰になります。かつては和田さんも所属した次世代の党や日本のこころを大切にする党がその役割を果たしていたと思うのですが。和田さんが若い人と一緒にネットを駆使して砕氷船のような存在になり、自民党を良い方向に導くことを私は期待しています。そして安倍首相の四選を実現して、日米関係を充実させて膨張する中国に対抗するのです。香港でデモが続き、今後の展開が非常に不安です。日本がいつの間にか中国の日本自治区にならないためにも、共に頑張りましょう。今日はありがとうございました。
和田 ありがとうございました。
対談日 2019年8月7日