Big Talk

憲法を改正しないと戦後は終わらないVol.337[2019年8月号]

衆議院議員 櫻田義孝
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APAグループ代表 元谷外志雄

大工として働きながら二部で大学を卒業、自ら立ち上げた建設会社を成長させる一方、市会議員、県会議員を経て衆議院議員、そして大臣にまで上り詰めた衆議院議員の櫻田義孝氏。衆議院議員として通算七回の当選を数え政治経験の豊富な氏に、憲法改正の意義や日本を再び結束した国にする道筋等をお聞きしました。

櫻田 義孝氏

1949年千葉県柏市生まれ。高校卒業後大工の仕事をしながら明治大学商学部商学科の二部を卒業。1976年桜田建設を創立。1987年初当選の柏市議会議員、1995年初当選の千葉県議会議員を経て、1996年衆議院議員に初当選、これまで通算七回の当選を数える。2018年10月国務大臣(東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当)に就任。2019年4月国務大臣を辞任。

選挙区の最多記録を破る
七回の衆院選当選

元谷 本日はビッグトークへのご登場、ありがとうございます。

櫻田 よろしくお願いいたします。

元谷 いろいろとメディアで取り上げられて、日本の国会議員の中でも、かなり有名になってしまったと思います。しかし櫻田さんは私と同じく叩き上げで、国会議員になってからも非常に頑張ってきた方です。これからは偏差値が高いとか学歴があるというだけではNGの時代です。地元選挙区でも人気のある櫻田さんのことを、読者に少しでも知ってもらいたいと思い、今日はお招きしました。

櫻田 ありがとうございます。

元谷 櫻田さんはこれまで何回当選しているのでしょうか。

櫻田 七回です。

元谷 それだけ当選するのは並大抵のことではありません。

櫻田 私の選挙区ではこれまで四回の当選が最高だったのですが、私がその記録を破りました。選挙区の柏市は、毎年人口の八%が入れ替わる街です。地盤をきっちり守るだけでは駄目で、常に新しく来る人を視野に入れなければならない選挙区です。

元谷 そんな中で七回の当選というのは櫻田さんが仕事の実績を残し、またしっかりと政策をアピールしていて、それらが評価されているからでしょう。

櫻田 そうなるように、常に努力をしています。私よりは代表の方が、日本のために遥かに素晴らしい活動をされています。

国家の情報戦略強化のため
宇宙とサイバーに人材を

元谷 日本は武士道精神が強すぎたために卑怯なことができず、先の大戦に負けたのです。情報謀略戦に弱いというのも、その流れでしょう。日本の海軍と外交の暗号はアメリカに解読されていました。

櫻田 過去の歴史を見てくると、日本には情報戦略が足りなかったことが良くわかります。

元谷 この状況は今も変わりません。兵士同士が戦火を交えることは少なくなり、ドローン戦やサイバー戦、情報戦などが主流になりつつあります。日本もこれらに備えなければならないでしょう。

櫻田 他国は宇宙とサイバーに多くの人材と金を注ぎ込んで研究をしています。

元谷 北朝鮮もサイバー軍に数千人の要員を充てていると言われています。

櫻田 私はサイバーセキュリティ担当大臣として、昨年十二月にサイバーセキュリティ基本法の改正案を国会で成立させました。大臣は、残念ながら志半ばで辞めることになりましたが。

元谷 しかし櫻田さんは人気があります。先日のアパのパーティーの講演で小川榮太郎さんもフォローしていましたが、議論を呼んだ発言は、少子化を改善するための素直な思いを語っただけだと思いますよ。

櫻田 どうも私は思ったことを表現する際に言葉足らずなところがあって、意図するところが伝わらないことが多く、申し訳なく思っています。

元谷 一般的に政治家には正直ではない人が多い中で、櫻田さんは真っ正直に政治に取り組んでいると思います。最近はメディアが揚げ足取りのようなことばかり。昔はもっと大らかだったのですが。

櫻田 メディアとは紳士的な関係を築きたいというのが、私の希望です。

元谷 メディアは政治家の発言に突っ込みどころがないか、ずっとウォッチングしているのです。そして少しでも脇が甘い発言があると、報道されます。トランプ大統領も常に発言を批判されていますが、全部跳ね返していますね。

櫻田 万人に理解を頂けるように発言することは非常に難しいことです。

元谷 田中角栄もいろいろと批判を受け、突っ込みどころも多かったですが、それを乗り越えて今太閤と呼ばれる存在になりました。昔の政治家には豪胆な人がいましたが、今は小粒になってきました。

櫻田 国会議員は元官僚や二世議員が多く、私の様に市会議員をやって県会議員をやって、国会議員という人があまりいないのです。また私は誰かの後継者という立場でもないので、気兼ねせず自由に活動しています。

元谷 それもあって、多くの人から支持されているのでしょう。メディアについてもう一つ問題なのは、報道のトーンが一色に染まることです。本来なら、新聞や放送局によっては他と異なる報道があってもいいはずです。あまりにもどこも同じことを報じるので、多くの人が疑いもなくその価値観に染まってしまうのです。

櫻田 私も全く同感です。多様な考えを持つ人がもっと多く論壇に登場するといいのですが。

ホテルは文化
アパは街の文化の担い手

元谷 私も櫻田さん以上に言いたいことを言って、やりたいことをやって、それでも事業は大成功です。

櫻田 日本のホテル業界は欧米から競争力がないと言われた分野です。そのホテル事業でここまで伸び、海外進出まで果たしているアパは、本当に素晴らしい。

元谷 国内のアパホテルでは、欧米からの旅行者が増えています。三月にオープンしたアパホテルプライド〈国会議事堂前〉ですが、最も多い外国人はアメリカ人で、次がヨーロッパ人です。

櫻田 なるほど。それにしても新規ホテル建設の勢いが凄いですね。私の持論はホテル=文化。ホテルは街の文化を形作る重要な担い手だと思います。

元谷 自社やフランチャイズの新築でホテルを増やしているのは、特に需要の大きい東京、大阪、京都、福岡です。需要の少ない地域に進出すると既存のホテルを圧迫してしまいます。とはいえ、アパホテルには累積会員が千五百万人いますから、全国津々浦々にアパのポイントが付くホテルが欲しいというニーズもあるのです。ですから地方はパートナー契約やフランチャイズ契約、または買収などでアパのポイントが付くホテルを増やしています。福岡は一〜三月の三カ月間で、新築六棟の用地を取得、フランチャイズの新築二棟の合計八棟の設計・建築を同時に始めました。福岡の訪日外国人旅行者は狙い目で、もの凄い需要があります。宿泊単価も東京並になっています。台湾、韓国等アジア諸国に近く、福岡経由で東京に向かう旅行者も多くなっているようです。

櫻田 福岡のような街は例外ですが、多くの地方都市が疲弊しています。

元谷 どんどん東京などに人は集まりますが、地方の人口は減る一方です。まず偏差値教育が問題です。地元の大学に行かず、偏差値の少しでも高い大学を求めて東京や京都に進学する。四人家族で子供は進学、父親は単身赴任で、四人ともバラバラに暮らしていれば、どれだけ収入があっても豊かな生活は望めません。そして東京の大学に行った子供はそこで就職、地方に帰って来ないのです。

櫻田 偏差値の話ですが、国会議員の出身校で多いのは、やはり東京大学です。しかし自民党の東大卒の首相は宮澤喜一先生までで、その後はずっと私立大学の卒業者なのです。

元谷 大学入試は十八歳時の記憶力を測るものです。その時から能力が伸びていく人もいれば、大学入学が最高値で、出し殻のように記憶力が減っていく人もいるでしょう。櫻田さんはどんどん経験を積み重ねて能力を高め、大臣にまでなったのですから、立派です。田中角栄を彷彿させます。

櫻田 ありがとうございます。引き続き国家の為に頑張ります。

大家族制の復活で
世代間で知恵を伝承する

元谷 いろいろな経験と知識の蓄えが必要な時にスパークして出てくるのです。私の成功の要因の第一は、小学校五・六年生の頃から新聞が趣味だったことです。新聞を読んでいてわからない言葉を「現代用語の基礎知識」で調べ、最後には現代用語の基礎知識を最初から終わりまで読破しました。そうして得た知識を、その後の経験で肉付けしていったのです。

櫻田 なるほど。

元谷 私が小学生の時に父が入院。家父長制の考えの家でしたから、父がいなければ長男の私が家長だと、父がよくやっていた姿を真似て、食事の時に脇に置いた新聞を読み出したのが最初でしたね。私は大家族制の復活をずっと提唱しています。

櫻田 自分の親や祖父母から学ぶことは多いですからね。

元谷 その通りです。今は核家族化が進行、今や三世帯に一世帯が一人暮らし世帯の「個家族」になってしまっています。孤独死も増えています。櫻田さんの言う通り、親から子、子から孫への知恵の伝承ができるように、三世代同居だと固定資産税を三分の一にするなど、税制によって大家族に誘導すべきです。そうすれば孤独死も無くなり、諸経費が安く豊かな生活ができるようになり、子供の保育や高齢者の介護も家族内で賄えるようになって社会の負担が減ります。元々は大陸から離れた島国だった日本は、人々が仲良く暮らす温かみのある国だったのです。しかし交通手段が豊富になりインターネットの整備によって世界中と繋がって、多くの人がやってきて情報が行き交う国へと変貌しつつあります。そんな中でも古くからの日本人の結束を維持できるよう、税制などでアシストしていく。櫻田さんは経験を生かして、そういった法案をどんどん提案して通していって欲しいですね。

櫻田 日本の文化は家族が基本にあります。家族の絆を中心に日本人の結束を守るべく活動したいと思います。

元谷 最近は保守の思想が復活しつつありますが、そうなった転換点は二〇〇八年に私が懸賞論文を創設し、その第一回の最優秀賞を獲得した論文を巡って、メディアの総バッシングがあったからです。あの事件で多くの国民が覚醒し、安倍政権の再登板に繋がりました。誇れる祖国日本再興する運動は、ここがスタートになっています。

櫻田 戦後社会からの本格的な脱却には、どうしても憲法改正が必要です。

元谷 まず改憲議員が三分の二を占めている参院選前に、なんとしても憲法改正の発議を行うべきです。その上で改憲の信を問う衆参同時選挙に持っていくべきでしょう。

櫻田 憲法改正は初めてのことですから、まずは安倍首相の言う通り、九条に自衛隊を明記することから始めるべきでしょう。

元谷 そうです。中国が南シナ海の岩礁埋め立てなど海洋進出を本格化している中、アメリカは東アジアから徐々に撤退しようとしています。この地域の力のバランスの維持のためには、日本が強くなる必要があります。

櫻田 現代の日本にとって自衛隊の存在は極めて重要です。

元谷 日本人が求めているのは他国を攻める支配する平和ではなく、属国化する支配される平和でもない、バランス・オブ・パワーによる平和です。この実現のために、日本は憲法を改正して自衛隊を明記して、戦争抑止力を高める必要があります。

櫻田 アメリカとの日米同盟をどう進化させていくかは、重要な課題だと思います。

元谷 課題は山積です。櫻田さんには得意の分野で活躍してもらい、また大臣になって欲しいですね。最後にいつも「若い人に一言」を聞いているのですが。

櫻田 まずは努力をすること。努力に勝る天才はありません。私は山本周五郎の小説が好きなのですが、その中に「他人にとって平凡な人生でも、その人自身にとっては波乱に満ちた人生である」というような一節があって。人の目を気にせず、全身全力の努力が自らの進化に繋がるのだと思います。

元谷 「人生波乱万丈大変を楽しむ男の気概」というのが、私の言葉です。努力して様々な困難に直面してもそれを楽しまなくては。今日は本当にありがとうございました。

櫻田 ありがとうございました。

対談日 2019年6月7日