衆議院議員 佐々木紀
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APAグループ代表 元谷外志雄
1974年石川県能美市生まれ。東北大学法学部を卒業後、企業に勤務する一方、小松青年会議所理事長、日本青年会議所石川ブロック協議会会長などを歴任。2012年衆議院議員選挙で初当選。現在3期目。
北陸新幹線全線開業に期待
元谷 今日はビッグトークへの登場、ありがとうございます。佐々木さんは私の故郷である小松市を地盤とする衆議院議員で、さらに小松高校の私の後輩ですから、是非一度お呼びしたかったのです。
佐々木 お招き、ありがとうございます。今日はよろしくお願いいたします。
元谷 今、どのような役職に就いているのですか。
佐々木 自由民主党の青年局長を務めています。青年局は、四十五歳以下の国会議員や全国の地方議員などからなる若手のチームです。私は四十九代目の局長になるのですが、これはかつて安倍首相も麻生副総理も務めたポストです。
元谷 首相への登竜門というところでしょうか。
佐々木 それはわかりませんが、若手でなければできないポジションですから、精一杯頑張って務めています。
元谷 佐々木さんは今何期目でしょうか。
佐々木 三期目です。二〇一二年の自民党が政権を奪還した選挙で、森喜朗先生の地盤を引き継ぐ形で立候補し、初当選することができました。それからもう七年になります。
元谷 青年局長を皮切りにどんどん役職を歴任して、森さんのように首相になって欲しいですね。小松市からまた首相がでれば、私も大変嬉しいですから。佐々木さんは元々根上町(今の能美市)の出身です。松井秀喜さんと根上中学校で同級生だったとか。
佐々木 はい、二年一組で同じクラスでした。松井さんは非常に友達付き合いの良い人で、今でもメールで連絡すると、きちんと返事をくれるのです。
元谷 私は松井秀喜さんのお父さんの松井昌雄さんと親交があり、勝兵塾で講演もしてもらいました。石川県から素晴らしい人材が輩出されているのですが、その中でも今政界で私が一番期待しているのが佐々木さんです。今石川県での一番の話題は、北陸新幹線の今後です。金沢から敦賀までは二〇二三年春に開業することは決定しているのですが、その先はどうなるのでしょうか。
佐々木 敦賀の先は、福井県の小浜を経由して京都、そして新大阪に繋がります。京都と新大阪の間には、JR学研都市線の松井山手駅付近に新しい新幹線駅ができる予定です。
元谷 新大阪まで開業するのは、いつ頃になる予定でしょうか。
佐々木 財源の確保が必要なこともあり、時期の議論はこれからになっています。整備新幹線についてはこの先は、二〇三〇年までに北海道新幹線の札幌延伸というのが決定していて、二〇三〇年までは新幹線予算は使い切っています。したがって財務省は二〇三〇年以降の着工と言っていますが、今私達が目指しているのは、二〇二三年三月の北陸新幹線金沢〜敦賀開業から、切れ目なく敦賀~新大阪の工事に着工することです。そこから概ね十五年で新大阪まで繋ぐというのが、現在の見込みになります。
元谷 それでは時間の掛かりすぎではないでしょうか。日本中で地震のリスクが高まっている今、東京と大阪を結ぶ幹線が東海道のみというのは非常に危険です。バイパスとしての北陸新幹線の価値も非常に大きいでしょう。また鉄道は「繋がる」ことによって今より遥かに大きな投資効果が見込めます。今後数年で新大阪まで繋げることがベストだと思うのですが。
佐々木 仰る通りなのですが、建設予定地は住宅密集地ですし、京都あたりは掘れば必ずなんらかの遺跡があります。また環境アセスメントという手続きもあります。環境アセスだけでも四年はかかるともいわれています。十分な配慮が必要になるのです。
元谷 京都や大阪の線路を通すのは、ほとんど地下になるのでしょうか。
佐々木 はい、その通りです。「東名阪の大都市圏の地下四十メートル以深の『大深度地下』は、土地所有者への補償なしに公共利用を可能とする」という「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」に基づいて、工事を行うことになると思います。
元谷 森喜朗さんが首相だった時に可決された法律ですね。都市部において、これまで立ち退きができないとか、補償に費用が掛かりすぎるなどの理由で行うことができなかった公共事業を可能にする法律を活用するのはいいのですが、それでも時間が掛かり過ぎています。石川県は従来、関西圏や中京圏と結びつきが深かったのですが、新幹線のおかげで移動時間が短くなった東京圏との結びつきが急速に強くなっています。早く北陸新幹線を新大阪に繋がないと、東京に引き寄せられすぎてバランスを失う可能性があると思います。
佐々木 私も同感です。ですから、まず早期に財源の目処をしっかりつけて、敦賀開業後切れ目なく敦賀以西の工事に着工できれば、その後は速やかに進んでいくと思います。
元谷 期待しています。小松市の近況はどうでしょうか。寂れる一方という感覚もあるのですが。
佐々木 二〇一八年四月にそれまでの短大と看護学校が統合して、四年制の公立小松大学が誕生、今は若者がJR小松駅前をたむろするようになっています。また駅東には世界のコマツが本社機能の一部を創業地の小松市に移転し研修センターを設けたことから交流人口も増えています。
元谷 若い人が増えると賑わい感が違いますね。
佐々木 昔は栄えた商店街も以前はすっかり人が少なかったのですが、最近は若い人やサラリーマンがアーケード下を歩いている光景をよく見ます。
元谷 小松市には小松空港があり、北陸の空の玄関口となっています。ここから金沢や福井へのバスなどの二次交通網が充実すれば、もっと観光にも便利になると思うのですが。空港自体を拡張して便数を増やすことも必要でしょう。
佐々木 その通りです。バスについては小松に工場を持つバスメーカー、ジェイ・バス株式会社があるので自動運転バスの社会実装も可能かと思います。空港に関しては、インバウンドニーズが高まっているにも拘らず、定期便やチャーター便の増便が難しい状況です。小松空港は防衛省が管理している空港で、増便や拡張なども防衛省次第なのです。
元谷 最初からもっと滑走路を作っておけば。
佐々木 今とは異なり、当時は地方空港にそれほどのニーズがなかったのでしょう。小松空港にはこれまでもソウル、上海、台北便が飛び、今年の春からは香港便も就航しました。今後はタイやシンガポールとの便が就航する可能性が高いでしょう。滑走路だけではなく、空港ターミナルビルも築五十年ですから、立て替えの検討も始めなければなりません。高速道路の空港インターの設置や商業施設の誘致など空港拡張の様々な議論を再開させる必要があると考えています。
元谷 今航空業界では、かつてのハブ空港に便を集約させるという考えから、ローカル空港とローカル空港を小型機で繋ぐという考えに変わりつつあります。問題は便数ですね。東京にいるとどこへ行くにも便数が多くて便利なのですが。
佐々木 私も地元へは九割方飛行機で戻ります。私が交通手段を選ぶ基準は早さです。北陸新幹線ですが、まず敦賀まで開業すれば特急との乗り継ぎで関西圏、中京圏との時間は短縮になります。
元谷 そうですね。あとは松井山手に駅ができることで学研都市線沿線には大きなメリットがあるでしょうが、南に位置する奈良県にはメリットがありません。奈良は交通が今ひとつ不便なためか、なかなか発展しないのです。ですから大阪にも京都にもあるアパホテルが、奈良には一つもないのです。
佐々木 確かに奈良にはホテルが少ないですね。
元谷 要望はあるのですが、需要が少ないのです。
佐々木 京都や大阪に近いので、宿泊はそちらでという人が多いのでしょう。
元谷 しかし奈良には、東大寺をはじめとして素晴らしい観光資源があります。なんらかの交通手段の新設によって、奈良に人がどんどん来るようになればいいと思います。
佐々木 リニア中央新幹線の駅を奈良に作ることを、奈良市を中心とした自治体がずっと要望しています。リニア中央新幹線は二〇二七年に品川〜名古屋が開業する予定で、最速で二〇三七年に品川〜新大阪の全線が開業する見込みです。北陸新幹線が敦賀開業から継ぎ目なく工事を続けられれば、二〇三八年頃に新大阪まで繋がることになるでしょう。新大阪側から見れば、リニア中央新幹線と北陸新幹線がほぼ同時に入ってくることになります。そうなれば、新大阪が一大ハブターミナルとなるでしょう。
元谷 とにかく一刻も早い北陸新幹線の全線開業を望んでいます。
ホテル需要は衰えない
佐々木 代表が着実に事業を拡大されている姿は、石川県民の誇りです。先日地元からのお客様を国会議事堂の議員食堂にご案内したのですが、そこからアパホテルプライド〈国会議事堂前〉が良く見えるのです。その方々が国会議事堂の周りにはホテルが少ないので、全国町村会館に泊まっていると言うので、思わず私は石川県出身の方がそこに見えるホテルを建てたのですよという話をしてしまいました。
元谷 あそこは竹下登元首相などが事務所を構えたTBRビルがあった場所です。赤坂はアパグループの東京本社があるところ。そこの、さらに国会議事堂の前の好立地に他のホテルが建つのは嬉しくないと、気合いを入れて高値で入札して落札、アパホテルプライド〈国会議事堂前〉を作りました。三月十九日に開業パーティーを行ったのですが、国会議員だけで七十名もの方々に参加していただきました。
佐々木 会議や宴会のスペースはあるのでしょうか。
元谷 会議室や宴会場はありません。ホテルのレストランでできる範囲のことは可能なのですが。その分部屋を増やして五百室にしました。隣にあるザ・キャピトルホテル東急は非常に立派なホテルなのですが、客室は半分の二百五十室しかありません。ホテルは本来宿泊で儲ける事業であって、宴会場やレストランが入ると、収益率は下がるのです。一般的な一流ホテルの利益率は五~六%なのですが、アパホテルはその数倍となります。これは私が新都市型ホテルという、新しいホテルのカテゴリーを生み出したから達成できたことです。アパホテルはスペースを売るホテルではなく、満足を売るホテルなのです。スイッチ類がベッドサイドに集約されていて、寝転んだまま全てを操作することができます。ベッドの下には大きい荷物の収納スペースが、壁に二つある吊り下げ収納用のフックは二〇㎏まで対応可能なので、リュックを掛けるのに便利です。部屋がコンパクトな分、炭酸ガスの排出量が一般のシティホテルの三分の一と環境に優しいことに加え、光熱費も安く抑えることができています。立地に拘って、駅から徒歩で三分以内に。これらのことが合わさって、高利益率で高稼働のホテルとなっています。現在東京だけでホテルの数は建築・設計中を含めれば七十二ホテルになります。
佐々木 凄いですね。
元谷 これから日本は観光大国化します。それだけホテルを建設して、東京オリンピックが終わったらどうするの? と聞く人が多いのですが、私はそもそもオリンピックのことなど計算に入れていません。わずか数カ月しか開催しないイベントのために、一旦建設すれば数十年に亘って運営・維持していくホテルに投資などできるわけがありません。日本政府の目標でも、訪日外国人旅行者数は二〇二〇年に四千万人、二〇三〇年に六千万人となっていて、日本は観光大国への道を進みます。オリンピックに関係なく、ホテルの需要は今後も増え続けると私は考えています。
佐々木 またオリンピックを開催することで、世界中が日本に注目します。競技だけではなく、文化なども世界に広く喧伝されることになるでしょう。もっともっと世界の人々の日本への関心が高まるのは間違いないと思いますね。
自衛隊を軍隊にすべき
元谷 参議院議員選挙が迫ってきました。先日来の統一地方選挙を見ていると、私は自民党の状況に非常に不安感が強くなっています。そんな中の参院選で、今改憲支持議員が三分の二を越えている状態を維持できるのか。その前に憲法改正の発議をする必要があるのではないか。あれだけ安倍首相が熱意を見せていた憲法改正の最近の動きはどうなのか、大変疑問に思っています。
佐々木 憲法改正の動きが止まったということは、全くありません。
元谷 いろいろ活動をしていることは聞いていますが、実際に改憲への動きは非常に鈍いです。こんなことでこの機を逃し、参院選で改憲議員の三分の二を失ったら、発議すらできなくなります。発議から国民投票までは六カ月ありますから、とにかく三分の二ある時に発議を行い、国民投票までの間に一大国民運動を起こして改憲を実現させるべきなのです。
佐々木 確かに昨年の総裁選では、安倍首相は改憲を全面に打ち出して選挙戦を戦いました。それによって改憲の機運が一気に高まったのも事実です。ただその後、秋の国会でこの改憲の機運に野党が激しく反発、全く動かなくなりました。年が明ければまた状況が変わるかと思っていたのですが、変わらないのです。
元谷 野党の支持を待っていては、改憲は難しいでしょう。この参院選で改憲議員の三分の二を失って発議ができなくなったら、改憲の見込みが全く立たなくなります。改正ではなく、憲法無効論を主張する人もいますが、施行から七十年経過した憲法を無効にすると言っても、国民の支持は到底得られないでしょう。なんとかこのタイミングで改憲の発議はできないものでしょうか。
佐々木 自民党では毎週のように憲法改正の議論を行っています。全ての政党や国民が理解できるよう、教育の充実など賛同を得られやすい項目から行うべきではという意見も出ています。
元谷 ただそもそも安倍首相が二年前に提言したのは、自衛隊を憲法の中に明記することであり、それに緊急事態条項や教育の充実などを加えた自民党の素案を見ても、どれもすでに多くの国民の理解を得られそうなものばかりです。しかしこれでは自衛隊が軍隊にならない。私は、一回目は今の素案の方向性で良いが、二回目が必要だと考えています。しかし安倍首相の任期の二〇二一年までは後二年。これでは二度の改憲は無理です。改憲のハードルが高いのは確かですが、ここで改憲を諦めたらどうなるのか。隣にはどんどん軍事力を増強、海軍力を高めて太平洋の覇権を狙う中国がいます。北朝鮮は韓国を併合して連邦朝鮮を築く勢いです。こうなれば、中国がこの連邦朝鮮を日本に突きつける刃として利用、日本を脅すことも考えられます。日米安保があるといっても、いざという時にアメリカ軍の若者を犠牲にして日本を守るということを、今のアメリカ国民は認めないでしょう。アメリカ軍が鉾で自衛隊が盾という考えでは、最早日米安保は機能しません。自衛隊が軍隊として行動できるようになり、自衛用兵器だけではなく、攻撃用の兵器も持ってはじめて日米安保で日本を守ることができるようになるのです。また同盟を確固たるものにするために、日米安保もかつての日英同盟のような双務的なものにしていく必要があるでしょう。
佐々木 仰ることは理解できます。
九十六条の改憲が必須
元谷 メディアは改憲について無視戦略をとっていて、一切報道を行っていません。このために多くの国民が危機感を感じていないのです。佐々木さんには青年局長として、再度党内の奮起を促して欲しいですね。そうでないと、日本はチベットや内モンゴルのように、中国の自治区になってしまう。台湾では来年総統選挙が行われますが、鴻海精密工業の郭台銘氏が国民党の総統候補の指名を目指すと発表しています。鴻海精密工業はiPhoneの製造で中国との関係が深いですから、彼が総統になればかなり中国に接近することになります。香港同様の一国二制度による併合も考えられ、そうなると台湾海峡が中国の内海になり、日本の将来に暗雲が垂れこめます。ここまでの危機感を野党と共有するのは難しいでしょう。ですから改憲は野党を押し切ってでもやるべき。また二度目の改憲を容易にするために、憲法第九十六条の三分の二の規定を過半数に変える改正も必要です。
佐々木 九十六条の議論は、かつてはありましたが、今は全くありません。
元谷 野党やメディアに批判されて萎んでしまったのでしょう。最低でも自衛隊明記と九十六条の改正です。これを参院選の前に発議するのです。現状維持では衰退が目に見えています。若者のため、未来の日本のために、是非佐々木さんに行動してもらいたいのです。
佐々木 代表の言葉に勇気をいただきました。これまでも青年局として憲法議論の促進を党執行部に申し入れたり、全国一斉街頭行動で訴えたりしてきています。これから他党の青年部局に働きかけ憲法議論を促進させたいです。
元谷 よろしくお願いします。これで佐々木さんも国会議員として名を挙げてもらえれば。何か他に今、考えていることはあるのでしょうか。
佐々木 実は今、他党所属の国会議員の自民党への入党が続いています。ただこれに対しては国会議員だけではなく、自民党員からも評判が悪いのです。
元谷 自民党を批判していた議員が入党してくるのですから、当然ですね。
佐々木 はい。参院選の前に何らかの楔を打っておかないと、今まで応援してくれていた人が「何だ」となります。何らかのルールを作ろうと今、党内で動いているところです。二階幹事長には少し睨まれていますが(笑)。
元谷 二階さんは少々癖のある方ですが、良く党内をまとめていると思います。
佐々木 素晴らしい人で政治手腕も凄いです。安倍首相の三選に果たした役割も大きいですし。
元谷 いち早く四選も言い出しましたし。
佐々木 あれはまだ少し早いと思いましたが(笑)。
元谷 これからも佐々木さんには大活躍してもらいたいですね。最後にいつも「若い人に一言」を聞いているのですが。
佐々木 もっと政治に関心を持って欲しいです。国を作っていくのは政治。私も若い世代の政治家ですので、一緒に国を作っていきたいですね。
元谷 関心が低いのは教育の問題でしょう。日本は悪い国だと教えられ、誇りを持てないでいれば、国を作ることにも関心が薄れますから。また佐々木さんの言う通り、若い人が関心を持てる政治を行っていく必要もあります。今日はありがとうございました。
佐々木 ありがとうございました。
対談日 2019年4月24日