日本を語るワインの会191

ワイン191二〇一九年四月十日、代表邸で恒例「日本を語るワインの会」が行われました。来日して六年になる駐日リベリア共和国大使館臨時代理大使のザコレ・G・コンゴ氏、自民党総裁外交特別補佐として安倍首相の首脳外交を支える衆議院議員の河井克行氏、克行氏の妻であり次の参議院議員選挙で自民党からの公認が予定されている広島県議会議員の河井あんり氏、新しい歴史教科書をつくる会の理事も務めるノンフィクション作家の河添恵子氏をお招きし、外交や国内政治等に関して、白熱した議論を交わしました。

世界覇権を目指した中国は
最後の段階で失敗した
 中国はサイバー空間での覇権獲得に力を入れ、中国人民解放軍そのものであるファーウェイが次世代移動通信システムである五Gで世界を席巻しようとしたが、アメリカのトランプ大統領がそれを阻止した。かつて中国の鄧小平主席は、韜光養晦という「才能を隠して力を中に蓄える」という外交・安保方針をとった。今の習近平主席はこれをかなぐり捨て、「中国の夢」や「一〇〇年目標」と、その野心と覇権主義を露わにした。しかし五Gなどを戦略的に活用して、あと一、二年でアメリカを凌駕して世界覇権を獲得できるというところで、アメリカからの横槍で全ての目論見が崩壊した。主席の二期十年の任期を撤廃して周帝国を作ろうとしていた習近平は焦りすぎて、一番大事な最後の数年で失敗したのだ。
 先のアメリカ大統領であるオバマの八年は、世界にとって「失われた八年」だ。その間に中国が強国となり、北朝鮮が核武装化、今の東アジアの不安定化を招いた。オバマ政権下に河井克行氏はワシントンへ行き、ホワイトハウスやNSC(国家安全保障会議)において、南シナ海で中国が拡張主義をとり人工島を建設、習近平主席の「軍事化しない」という言葉は行動とは違うと訴えたが、アメリカ政府の高官は耳を貸さなかった。航行の自由作戦もほとんど実施しなかった。南シナ海や東シナ海を通るシーレーンが生命線の日本にとって、台湾とフィリピンの存在は重要だ。中国が南シナ海のサンゴ礁を埋め立ててコンクリートで固め、滑走路やミサイル基地にしているのは、危険な拡張主義の表れだし、重大な自然破壊だ。しかし沖縄の辺野古での基地建設をジュゴンの生息地を破壊するなど環境保護の理由から反対する人々は、この中国の暴挙について何も言わない。
 今重要なのは台湾を中国から守ることだ。台湾が中国に押さえられ、台湾海峡が中国の内海になると、日本への影響も大きい。日本の安全保障や東アジアの平和にとって台湾の独立は非常に重要だ。トランプ政権は台湾との関係を深めており、日本も追随するべきだ。台湾では来年一月に次の総統選挙が行われるが、現在の与党・民進党内では現総統の蔡英文氏への支持が落ちてきており、代わりに前行政院長(首相)の頼清徳氏の支持が上昇している。また無所属だが、元外科医という異色のキャリアを持つ現台北市長の柯文哲氏も、「今日総統選挙があれば彼が勝つ」と言われるほどの人気の高さだ。今後も総統選の行方から目が離せない。
安倍首相の強みは
常に挑戦し改革することだ
 
十数年前であれば外交・安全保障問題は国会議員にとって票にならず、地元の国政報告会でも話題にならなかったが、今は違う。人々の意識が、外交や防衛問題に向かうようになっている。それは多分に安倍政権の成果だろう。今や安倍首相の存在は世界にとっても非常に重要だ。アメリカ・ファーストを標榜するトランプ大統領とちゃんと付き合えるのは、安倍首相だけ。イギリスはブレグジットの実現で苦しみ、フランスはデモが多発してマクロン政権の支持率が低下、EUの女王・ドイツのメルケル首相も党首を下りて二〇二一年の引退を表明、イタリアのコンテ政権はフランスとの最悪の関係になるなど、自由主義陣営の国々が不安定化している。この中で安定感のある長期政権を保っているのは、日本の安倍首相だけだからだ。
 安倍首相には二つの顔がある。外交・安全保障については強い日本を志向するナショナリストであり、経済面ではグローバリストだ。外国人材の受け入れ拡大などは安倍政権下でないと、保守派が賛同してくれなかっただろう。TPPの推進もグローバリストとしての政策だ。さらに安倍首相はリアリストでもある。そして長期政権であるのに決して守りに入らず、常に挑戦して改革する。どんなに反対や反発があっても、国のために必要であれば戦うという覚悟ができている。日本が生き残るには、自民党党則を変えて安倍首相を四選するしかない。世界のリーダーの任期から考えても、十二年間首相の座にいることは決して長くはない。トランプ大統領も間違いなく再選して、二〇二四年まで任期を務めるだろう。安倍首相も四選して同じく二〇二四年まで任期を伸ばし、その間に憲法改正を二回行う。まず今年の参院選の前に自衛隊を明記する憲法改正の発議を行い、一大国民運動を起こして国民投票でこれを実現する。さらに二回目として憲法第九条第二項を廃止して、自衛隊を真っ当な国軍とする。中国が勢力を拡大、北朝鮮が核武装をする中で、将来に亘る日本の安全を確保することのできる憲法にするなど、独立自衛の国家にふさわしい憲法に改正することが急務だ。
女性大統領の下で
復興が進んだリベリア
 インターネットの動画で主張を行う番組が数多く作られているが、この影響の出方が面白い。日本国内では他の番組の中に埋没して影響力が少ないが、世界各地の日本人が観ていたりする。そこで出演者に、世界各地の日本人団体から講演の依頼が来る。中国の脅威について語る河添恵子氏にも、数多くの講演依頼が世界から来ている。
 リベリア共和国は奴隷解放が行われたアメリカからアフリカに戻った黒人達によって、一八四七年独立した国だ。初代大統領はジョセフ・ジェンキンス・ロバーツ。国旗はアメリカの星条旗と似たデザインだが星は一つだ。十一本の紅白の縞は、リベリア独立宣言に署名した十一人を意味する。一九八九年からの断続的な内戦に苦しんだが、国連の介入により和平が進み、二〇〇六年にはアフリカ初の民選女性大統領であるサーリーフ大統領が誕生、彼女のリーダーシップの下、復興政策が推進された。サーリーフ大統領はその平和構築、女性の地位向上への貢献などが認められ、他のアフリカ人女性二人とともに、二〇一一年にノーベル平和賞を受賞している。二〇一八年に就任したジョージ・ウェア大統領は、リベリア代表を務め、ACミランなどでも活躍した元プロサッカー選手だ。
 JAXA(宇宙航空研究開発機構)の前身であるNASDA(宇宙開発事業団)は、JAMSTEC(海洋研究開発機構)とともに文部科学省管轄の特殊法人だったが、NASDAの方が格上だとされていて、JAMSTECは虐げられていた。今、日本のロケット打ち上げは安定しているが、十数年前にはNASDAのロケット打ち上げが失敗続きだったことがあり、海に落ちたロケットを回収に向かうのがJAMSTECの仕事だった。広い海原の中からロケットを探すのは困難な仕事だが、JAMSTECは世界でも有数の海中探索技術を使って常にこれに成功、うなだれるNASDA関係者を前に大喜びをして、日頃の鬱憤を晴らしていたという。
ホテル事業でのリスクは
パンデミック(感染症の大拡大)と戦争勃発だ
 二〇一六年五月、現職のアメリカ大統領として初めて、オバマ大統領が広島を訪問した。代表はこれを予見していて、その三年前から広島駅前に、中四国最大級のアパホテル〈広島駅前大橋〉(七二七室)の建設計画を進めていた。二〇〇九年のプラハでの演説で核なき世界を語り、ノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領だが、結局は何もできないだろうと代表は考えて、オバマ大統領のできることは現職大統領として広島を初めて訪問することになるだろうと予測し、任期中に必ず広島を訪問する、そしてその後、欧米を中心に広島の観光客が拡大すると読んでホテル建設を決めたのだが、実際その通りになった。この広島訪問にあたって、アメリカ側は生卵をぶつけるなど市民の反発があるのではと、非常に心配した。実際蓋を開けてみると、沿道にはアメリカ国旗を振る市民がずらりと並んだ。元々アメリカに移民する人が多かったこともあってか、日本の中ではアメリカ人の観光客が多数訪れていた広島だが、オバマ大統領の訪問後はこれがさらに増えた。また改修工事を行っていた広島平和記念資料館が、今年四月に大きくなってリニューアルオープンすることもあって、益々訪日外国人旅行者が広島を訪れるようになるだろう。
 アパホテルの宿泊客に占める訪日外国旅行者の割合は全国平均では二五%だが、東京では五〇%を越えて、七〇%に迫る勢いだ。三月十九日にオープンしたアパホテルプライド〈国会議事堂前〉は特に顕著だが、外国人で一番多いのはアメリカからの旅行者であり、次がヨーロッパから。書籍問題で激減した中国本土からの客の穴をすっかり埋めており、客単価も欧米客の方が高い。台湾からの旅行者も堅調であり、タイからも伸びている。今後も多くの東南アジアの国の中間所得層が豊かになって海外旅行に手が届くようになり、その多くが日本を訪れるようになるだろう。代表は歴史も文化もあって、公共交通機関が発達して時間に正確で、四季が美しく食べ物も美味しい日本には、数千万人単位で海外から観光客が来てもおかしくないといち早く予見した。その通りに、二〇〇〇年には約五百万人だった訪日外国人旅行者が、二〇一八年には三千万人を突破した。二〇三〇年の日本政府の目標は六千万人だ。今後も増え続ける観光客ニーズにも対応できるよう、アパホテルは現在五十四ホテル、一万九千室を建築設計中だ。これだけで三千五百億もの総事業費になる。
 ホテル事業に対するリスクとして災害はさほど重要ではない。一つのエリアが被災しても、日本中にある他のホテルでカバーできるからだ。深刻なリスクとなるのはパンデミックとアジア地域で起こる大戦争だろう。二〇〇二年に発生したSARSの大流行のようなケースでは移動が禁止されるために、ホテルには大きな打撃となる。戦争に関しても日本から起こすことはあり得ないが、巻き込まれることはある。巻き込まれないためには軍事力を整備して備えておくことが一番だが、日本には軍事力を持つと戦争になると、世界のどこにもないロジックを声高に主張する愚かな人が多い。