日本を語るワインの会190

ワイン190二〇一九年三月十六日、代表邸で恒例「日本を語るワインの会」が行われました。二〇二三年に池袋国際キャンパスをオープンさせる予定の東京国際大学の理事長・総長の倉田信靖氏、東京大学工学部を卒業後、自らを鍛えるために自衛官となった元陸上自衛隊 東部方面総監の渡部悦和氏、警察庁出身で危機管理の専門家である議員立法支援センター代表の宮﨑貞行氏、数々のアパホテルのデザインを担当、三月十九日オープンのアパホテルプライド〈国会議事堂前〉のデザインも担当した株式会社辻本デザイン事務所代表取締役の辻本達廣様をお迎えし、日本の安全保障体制について等、盛んな議論を交わしました。
装備の最新化を進め
自衛隊を世界最高の軍隊に
 人手不足の影響は自衛隊にも及び、応募者集めに苦労している。三月に行われた偕行社のシンポジウムでは、国際政治学者の三浦瑠麗氏が人気アニメのキャラクターを起用した自衛官募集ポスターを批判。あのような図柄のポスターで自衛隊に入る人はいないという主張はもっともだ。また三浦氏は安全保障と防衛力に関する懇談会のメンバーだったが、陸海空でいうと陸上自衛隊のプレゼンテーションの文章が長すぎるという苦言も呈した。短くインパクトを持つプレゼンが、今のトレンドだろう。
 現代の軍隊では兵器の性能が軍隊の能力に直結する。その点、自衛隊には課題が多い。例えば陸上自衛隊の隊員の装備には、予算不足を理由に未だに防弾チョッキが入っていない。これがあれば、隊員が安全に活動できる範囲は格段に広がる。イラクに派遣された自衛隊は防弾チョッキの必要性を痛感した。敵は首を狙ってくる。そこを守る防弾チョッキを急遽手配したという。
 旧日本軍時代には、ゼロ戦に防弾のための鉄板がないとか、弾丸が当たった場合の炎上を防ぐゴムマットが燃料タンクに付けられていない等、人命を軽視した装備がまかり通っていた。今の自衛隊にも、この人命軽視の精神論が残っているのではないか。早くここから脱却しなければ進歩はない。応募が少ないというが、改革を断行して過去の体制から脱し、人命を第一に考えているということを徹底的にアピールして、応募を増やす手もあるだろう。アメリカ軍では兵隊が敵に捕まったら、いかなる犠牲を払ってでも救助し、遺体も必ず回収する。しかし日本は先の大戦の遺骨収集すら、まだ終了していない。まずこれに決着をつける必要があるだろう。
 自衛隊の中で最も強いのは海上自衛隊で、その中でも世界最強と言われているのが潜水艦部隊だ。その最大の特徴は水深七百メートルの深深度でも活動ができること。他の国では原子力潜水艦で六百メートル、通常艦なら三百メートルの水深でしか行動できない。さらに日本の潜水艦は、他国が持っていない深深度魚雷と深深度機雷を装備している。深深度からこれらの兵器で攻撃されて、防御できる潜水艦はどの国にも存在しない。だから日本は、制海権は維持できるだろう。問題は制空権。中国空軍は第五世代戦闘機の配備を急ピッチで進めているからだ。自衛隊がF‐三五を大量に導入するには、それなりの理由がある。制海権と制空権はなんとしても、守り抜かなければならない。また陸上自衛隊の兵器の最新化も遅れている。人数は少なくても装備は世界最高という軍隊を自衛隊は目指すべきだ。
顔認証等最新技術を使って
国民監視を強める中国
 
日本はかつて大家族国家だったのに、先の大戦後アメリカ占領軍の分断政策によって核家族化が進み、今や個家族化してしまっている。それに伴って孤独死も多い。四人家族が父親は単身赴任、子供は偏差値順で東京や京都の大学に進学して、四つに分かれて暮らすことも。これではいくら給料をもらっても足りない。地方の大学の魅力を上げ、子供達が地元に通うようにするべき。また、盆踊りなど地域の繋がりを強める行事も減っている。
 スティーブ・バノン氏はトランプ大統領を誕生させた選挙で、勝利の方程式を自ら編み出した。ポリティカル・コレクトネスにこだわって広い層から指示を得るのではなく、特に彼を指示する二〇%の人々に焦点を当てて、徹底的にキャンペーンを行ったのだ。トランプ大統領の就任前、真っ先に彼に会った首脳は安倍首相だったが、それをアレンジしたのも親日家であるバノン氏だった。新米中冷戦下では、アメリカにとって同盟国である日本の存在が益々重要になってくるというのが、バノン氏の意見だ。
 トランプ大統領は再選して、二〇二四年いっぱいの任期となるはずだ。三月中旬に自民党の二階幹事長が、安倍首相の自民党総裁四選の可能性について言及したが、これは十分にあり得る。そうなればトランプ大統領と任期が揃うからだ。そして二〇二四年までの五年間で、安倍首相とトランプ大統領が平和のために世界の構造を変える。例えば、中国は分裂して民主化するべきだ。習近平主席に対してこれまで九回もの暗殺未遂があったほど、内政状態は一触即発の事態だ。それもあって中国共産党は一党独裁の中央集権体制維持のために、新疆ウイグル自治区で百万人もの人々を収容所に拘束して「再教育」を行っている。また顔認証システム等、最先端の技術を使って人々の管理を行っている。習近平主席は二期十年の主席の任期を撤廃した際に長老と相当争っている。そのために業績を上げる必要に迫られ、手柄を焦っているのではないか。現状では、中国に対するトランプ大統領の先制パンチが効いているように思える。
ホテルは「体験型ビジネス」
時代の変化に応じた戦略を
 東京国際大学は今、サンシャインシティ隣接の造幣局跡地に二十二階建ての池袋国際キャンパスを計画していて、二〇二三年五月に完成、九月の開校を予定している。現在の川越キャンパスの七千人の学生の半分、三千五百人がこのキャンパスに。内二千人は英語圏からを中心とした留学生になる。二千人のためには約百カ国から学生を集める必要があるが、現在既に七十カ国から集まっている。東京国際大学は「THE世界大学ランキング 日本版」の国際性で常に十位以内にランキング。少子化が進む日本の中で、いかに世界に売り込み、いかに世界から学生を集めるかが日本の大学の課題となっている。知名度アップも非常に重要だ。東京国際大学の陸上部は創部八年で三回箱根駅伝に出場していて、大学の名前を全国に知らしめることに貢献している。
 ダーウィンの言葉に最も強いものや賢いものが生き残るのではなく、最も変化に対応できるものが生き残るという言葉があるという。ビジネスにおいても常識が今どんどん変化しており、いつまでも現在の常識に拘泥していると、確実に負け組となる。ホテルビジネスでも、インターネットの普及によって予約形態は激変。しかし人がどこかを訪れるためにホテルを利用するという形は変わらない。この「体験型ビジネス」というぶれない軸を中心に、時代に合ったリピーター戦略を展開、進化していくというのがアパホテルの今後の戦略だ。
 三月十九日にアパホテルプライド〈国会議事堂前〉がオープンした。この場所は、竹下登元首相の事務所があった永田町TBRビルが立っていた歴史的にも重要なところ。赤坂に本社を持つアパグループとしては絶対に負けられないと入札に臨み、最初から大きな金額を提示して見事に落札。建築費も他のホテル以上に掛け、とにかく品質にこだわって完成させたホテルだ。この〈国会議事堂前〉の他、ホテルのみの建物として日本最高層のアパホテル&リゾート〈東京ベイ幕張〉や九月にオープンする日本最大級のアパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉は、アパのブランドアップのためのホテルであり、収益率は低い。しかしこれらのホテルによってアパの知名度とブランドが向上することによって、アパホテル全体の売上、利益の上昇が見込める。ブランドアップ戦略は非常に重要だ。
単なる夢はいらない
具体的な目標を持て
 アパホテルは東京を中心に国内メインで展開している。建設中のものが全てオープンすれば、東京のアパホテルは七十一に。ここまで増やすと他のホテルチェーンは追随できない。特に東京ではアパホテルはドミナント戦略を採用、ホテルの横にホテルを建設することは稼働率向上効果の他にも人材育成手面でのメリットがある。アパホテルでは早ければ入社四〜五年の社員がなる支配人を、ホテルが集中しているエリアでは近隣に必ずいるベテラン支配人がサポート、若い支配人でも大きく成長することができる。田岡信夫が提唱、一九七〇年代に一世を風靡した「ランチェスター戦略」を代表は実践、「局所優勢」を徹底することでビジネスを成功させてきた。事業はゲームではなく戦争だ。致命傷を負わずに勝ち抜くことが求められる。
 アパホテル会員は一千五百万人を越えている。これらの顧客のニーズに応え、全国どこへ行ってもアパホテルのポイントを貯めることができるように、地方でのフランチャイズホテルの拡充に努めている。しかしアパホテルは、首都圏を中心にホテルの所有に強いこだわりがある。日本では所有することで発生する減価償却を利益と損益通算するのが、最も効率的だからだ。従って資産を増やすべく、今のような低金利の時に借金を増やすことができない経営者は駄目だ。
 近年土地の入札に点数方式が採用されている場合があり、総合評価という名目で最も高い値を付けても落札できない場合もある。再開発の企画コンペの場合には、模型やビデオ、パースの製作などで、プレゼンテーションの準備だけで数千万円の費用が掛かる。近年金融機関はコンペに参加するというだけで、融資枠を拡大してくれる。ただそれは優良融資先に対してだけだ。金利が低い今の環境下では、金融機関は少しでも危険な要素のある企業には融資を行わないが、優良だと判断した企業には集中して融資を行う。企業の側が金融機関のコンペを行い、最も条件の良いところから融資を受けるという動きも出ている。
 ホテル社長の講演が各業界で大人気だ。開口一番「夢はいらない」と始めると、聴衆は度肝を抜かれるという。必要なのはいつまでに達成するという具体的な目標であって、できればいいなという希望を、いつまでもいじくっていてもしょうがないという意味だ。同様な辛口の講演の方が概ね聴衆の評判が良いようだ。