日本を語るワインの会184

ワイン184二〇一八年九月十二日、代表邸で恒例「日本を語るワインの会」が行われました。安倍首相の古くからの朋友として今は内閣総理大臣補佐官を務める参議院議員の衛藤晟一氏、舌鋒鋭い国会での質問にファンも多い参議院議員の西田昌司氏、ジャーナリスト活動の傍ら慶應義塾大学で学生として学ぶ戦後問題ジャーナリストの佐波優子氏をお迎えし、消費税を巡る今後の経済政策などを熱く語り合いました。
朝日新聞は戦中まで親日
戦後の発禁処分で反日に
 第二次世界大戦は避けることはできなかったのか。大戦の直前、ソ連はドイツと独ソ不可侵条約を結ぶなど、どっちの味方になるかわからない状態だった。しかし独ソ戦が開始されると、イギリスのチャーチル首相はヒトラーを抑えるために、一九四一年七月迷わずスターリンと英ソ軍事同盟を締結する。一方アメリカのルーズベルト大統領が、国民の反対を押し切ってドイツの攻撃にさらされているイギリスを助けるためにヨーロッパの戦争に裏口から参入を図るべく、日・独・伊三国軍事同盟を締結した日本を挑発して暴発させたのは間違いない。当時の日本の政治家が、なぜアメリカの術中に上手く嵌ってしまったのか考える必要がある。保守には先の大戦は否定されるものではなく、日本やアジアにとって人種差別撤廃と植民地解放の有意義な戦いだったと主張する人もいるが、犠牲者の数や戦後の占領を考えると、現実的には日米開戦は不味い選択だったとの考え方もある。
 日本は日露戦争に辛勝したが、日清戦争勝利により得た戦後賠償金と比べて、樺太の南部の割譲を受けるものの戦争賠償金がないなどと新聞が不満を煽ったために、日比谷焼打事件などの国民の暴動が発生した。この影響でアメリカが提案した南満州鉄道の日米共同経営案が実現せず、日本はアメリカを敵に回すことになった。一方ロシアはロシア革命により世界最初の共産党政権国家、ソビエト社会主義連邦共和国となり、そのソ連は世界革命を目指し世界各国にコミンテルンの支部をつくり共産党を支援、資本主義国同士を争わせてその隙に共産党政権を成立させる戦略をとり、主たるターゲットをドイツと日本に置いたのだった。
 毎日新聞は反共だったから、一九三一年の満州事変を擁護した。ソ連の圧力に政治が対応しきれないために、石原莞爾ら関東軍が独自行動を行い、満州国を建国したものだからだ。朝日新聞は一九三七年の支那事変を擁護する。朝日新聞のスタンスは元々反米がメインで、共産主義に近く、反日ではなく親日だった。「鬼畜米英」を朝日新聞がはっきり主張したのもそのためだ。戦後もそのスタンスは変わらず、朝日新聞は一九四五年九月に「原爆使用は国際法違反」という鳩山一郎の談話を掲載、これで四十八時間の発行停止処分を受け、さらにその直後にプレスコード(新聞編集綱領)が導入されたこともあって、親日から反日に衣替えしてしまう。今の朝日新聞は反日反米だ。

先の大戦を侵略とするのは
東京裁判史観の影響
 保守という考え方がここまで一般的に広がったのは、亡くなった西部邁氏の業績だ。同様に保守思想を広め、第一回から「真の近現代史観」懸賞論文制度の審査委員長を務めた渡部昇一氏も昨年亡くなった。「真の近現代史観」懸賞論文なので審査委員に本職の歴史学者がいたほうが良いと、今年から東大文学部国史学科卒業の伊藤隆氏が審査委員に加わった。二〇一五年の安倍首相の戦後七十年談話のベースとなるべく、北岡伸一氏が座長代理としてまとめた二一世紀構想懇談会の報告書に「侵略」の文字があることを、東京裁判史観だと伊藤氏は痛烈に批判。北岡氏が日本側座長となってまとめ、二〇一〇年に発表された日中歴史共同研究報告書でも「侵略」という言葉を使っており、伊藤氏は中国側の学者もどきの政治家に、北岡氏が取り込まれた結果だと指摘している。
 二〇一六年の安倍首相のハワイ訪問をきっかけとして、ビジターセンターの入口に書かれていた文言が変わった。それまではジャップが不意打ちをしてきて卑怯という話だったが、今は一九三〇年代の世界大恐慌で各国がブロック経済に走り、アメリカも日本をブロックから締め出した。その結果、日本は真珠湾攻撃でアメリカに向かってきたと、極めて冷静な記述になっている。これこそ、日米和解の証だろう。
 アメリカのルーズベルト大統領は、暗号解読などで真珠湾攻撃が行われることを知っていて、航空母艦など重要な艦船を避難させる一方で、現地のアメリカ海軍太平洋艦隊司令長官キンメル提督には一切知らせなかった。謎が多いのは戦艦アリゾナの沈没だ。元々日曜日だというのに、アリゾナには定員以上の将兵が集められていて、真珠湾攻撃での戦死者二三四五名の内、半数をこえる一一七七名がアリゾナ一艦で戦死している。弾薬庫が誘爆して沈んだことになっているが、大爆発したのが爆撃を受けてから六分後と遅過ぎる。これまでもアメリカは「リメンバー・アラモ」や「リメンバー・メイン」などと、攻撃されたことに対する復讐だと国民の戦争気運を煽ってきた。真珠湾でも「リメンバー・パールハーバー」とすべく、わざと犠牲者を拡大させたとの見方もある。イギリスのチャーチル首相も、ドイツのエニグマ暗号の解読を知られたくないために、コベントリーの爆撃を「事前に察知しながら何もしなかった」との説もある。戦争とは非情なものだ。

トランプ大統領は
真の敵は中国だと理解した
 歴史について様々な議論ができるようになったのは、インターネットが発達したおかげだろう。ネットが存在しない時には、大新聞社がテレビやラジオなどの放送メディアを抑え、世論すら牛耳っていた。それが今では、マスメディア以外のルートから様々な情報を入手することができるし、世界に向けて発信をすることもできる。トランプ大統領があれだけいろいろなことを言い、既存メディアと戦うことができるのも、ツイッターを使っているからだ。日本の政治家でもツイッターを使っている人が多くなっているが、一回の投稿の文字数が少ないので浅い話しかできない。使うには配慮が必要だ。トランプ大統領は、今年になって真の敵は中国だと理解したようだ。オバマ大統領に続いてあのままアメリカで民主党政権が続いていたら、日本は早晩中国の自治区になっていただろう。日本にとって今の共和党政権は意味がある。
 第一次政権と第二次政権では、安倍首相は顔つきから何から何まで、生まれ変わったと思われるぐらい変わった。先進国の首脳の中で在任期間がドイツのメルケル首相に次いで二番目となり、安倍首相はもはや世界のトップリーダーと言ってもよい。アメリカのトランプ大統領に厳しい言葉を投げ掛け続けられて、メルケル首相の評判が最近芳しくない。警戒していないと、トランプ大統領は、次は日本叩きを始めるかもしれない。貿易問題を中心に米中関係が緊張感を増しているだけに、日本も慎重な行動が求められる。
 二〇〇七年、中川昭一氏を会長に、「真・保守政策研究会」が発足した。二〇〇九年に自民党が下野、その直後中川氏が急死すると、彼の憲法と教育を変えたいという思いを引き継げるのは「真・保守政策研究会」メンバーの安倍晋三氏だという中川氏本人の遺志もあり、また自民党が政権奪回するためには保守固めが必要、中核には安倍氏が適任だということになり、安倍氏が会長に就任して機を待つことになった。政権奪還まで十年を覚悟していた自民党だったが、チャンスは三年後に訪れた。
 きっかけは二〇一二年六月の消費税絡みの三党合意だ。その時の野田佳彦首相と前の菅直人首相の二人共財務大臣経験者で、その時に財務省は自民党では消費税増税はできなかったが、民主党政権で行えば歴史に名を残せる。そのためには財務省は必死で首相と民主党政権を守るというものだった。そこで菅氏が首相時代に小沢一郎の大反発にも拘らず、消費税増税を言い出した。それを引き継いだ野田首相に、自民党の財務省の有力OB議員が「よくぞ消費税を取り上げた」とすり寄り、公明党も含んだ消費税増税協力で民主党政権を取り込むことに成功、結局衆議院解散、総選挙に持ち込み、政権交代を成し遂げた。しかし三党合意が未だに影響して財政再建・プライマリーバランス重視で、アベノミクスの足を引っ張っている。民主党が消滅した今、三党合意を反故にしてもいいのではないか。

財政出動を増やさなければ
一般の給与も増えない
 菅氏、野田氏が財務省に諭されて消費税増税を決めたことを安倍首相はわかっていた。だから安倍政権誕生時に、経済再生なしの財政再建はないと、消費税増税のロジックとは異なることを主張。財務省との激しい闘いの結果、金融緩和政策を実行、円高デフレに終わりを告げ、経済成長軌道を築くことができた。政権交代時の名目GDP約四九〇兆円が、今や約五五〇兆円になっており、二〇二五年までに六〇〇兆円に持っていく予定だ。経済成長がプライマリーバランスに好影響を与え、社会保障や年金を安定させている。
 しかし金利をここまで下げても信用創造が増えない。このままではバブルの崩壊同様、銀行が地方から倒産していく。だから財政出動して民間が借りやすい状況を作った上で、金利を上げていかなければならない。ところが財務省がプライマリーバランスを盾に、財政出動を阻んでいる。これを変えなければ、庶民の給与が上昇して経済が回ることがない。民主党政権は消費税の引上げ分の八割を国債償還分に回すと言っていたが、それではその分だけ需要が落ちるだけ。消費税増税延期によって、財務省は八割を五割にすると言ってきたが、本来ゼロにすべきだ。むしろ増税分は財政出動に回して、経済安定に貢献するべきだ。
 中小企業の給与が上がらない現状を鑑みると、少子化の問題は法人税の増税分を原資とした、児童手当の増額で解消すべき。必要な予算は二兆数千億円だ。これを賄うために法人税を増税すればよい。株価が下がる懸念を指摘する人もいるが、将来の人口減による労働力不足解消と市場縮小を防ぐ意味を考えれば、批判は少ないだろう。これを消費税増税時にセットでやると言えば、消費税を上げても選挙で負けないであろう。