他を圧倒する強者の戦略へ
二〇一七年十二月一日より三泊五日の日程で、本年度秋季勝兵塾・ACC・FC・PH・社員合同海外研修旅行として総勢八十二人が参加した「ハワイ・オアフ島 真珠湾視察五日間の旅」に行ってきた。私は成田空港での結団式において、月額家賃百六十万円の高級賃貸邸宅のTHE CONOE〈三田 綱町〉や一億五千八百万円の高級分譲邸宅THE CONOE〈一番町〉などの住宅事業を紹介する、十二月七日付けの日本経済新聞全国版一ページ広告と、十二月二十七日付けで、現在、建設・設計中のタワー型ホテル六棟を含む、四十棟一万五千百三十六室のホテル計画について発表し、アパグループの二〇一七年の大躍進を参加者に伝えた。また今年一月に起こった書籍問題において、中国政府からの書籍撤去強要に毅然と対処したことなど、事業活動以上に言論活動にも力を入れてきたとし、「今回も戦跡を巡る旅として、先の日米戦争の発火点ともいえる真珠湾を訪ねた。この戦争はどうして始まったのかという視点で、様々な学びを得て欲しい」と参加者に研修目的を述べた。
ハワイ到着後は、まずワイキキビーチからすぐ近くのアメリカ陸軍博物館を訪れた。そこには南京を攻略した時の日本軍の南京入城の写真があり、日本の中国進出が戦争の始まりとなったと書いてあったが、そこには南京での「ジェノサイド」とか「大虐殺」とかいった言葉は一切なかった。
夜はホノルル市内のレストランでウェルカムパーティーを催した。その席で私は、「アパグループは今年十一月決算見込みでも、ホテル業界最強の経常利益率三〇%強で、増収増益を達成できる見込みである」と発表するとともに、「過去のデータではオリンピック開催国はいずれも開催後景気が落ち込むが、アパグループは二〇二〇年以降にオーバーホテル現象が起こり業績が落ち込むことも想定済みである。アパが最も重視するのは『誇り』であり、ゲストには誇りを持って泊まっていただき、スタッフは誇りを持っておもてなしをする『ゲストとスタッフは対等である』という『新都市型ホテル』の理念に基づき、矮小地や変形地・地上げ失敗地などでホテル展開をしてきた。これまではランチェスター戦略でいう差別化戦略という『弱者の戦略』から、これからは他社を圧倒する規模で大型ホテルなどを建設してマーケットを制する『強者の戦略』へと舵を切る」と現状認識と共に、今後の方針を話した。
二日目はホノルルのプレミアムホテルである、ハイアット・セントリック・ワイキキビーチやトランプ・インターナショナル、リッツ・カールトンなどを視察した後、パンチボウルと呼ばれる国立太平洋記念墓地を訪れた。ここには第一次、第二次の二つの世界大戦から朝鮮戦争、ベトナム戦争にかけて戦死した三万七千人以上の兵士が眠っている。その後、宿泊しているシェラトン・ワイキキ・ホテルのプライベートビーチで海水浴を楽しむ等、リゾート気分を味わった。三日目に向かったのは、真珠湾にある太平洋航空博物館だ。アメリカ軍で実際に使用された様々な軍用機が展示されている中、私は爆撃機B‐二五の展示プレートを読んで衝撃を受けた。
二十五万人殺害の文字
そのプレートには、一九四二年四月十八日にこのB‐二五(アメリカ陸軍爆撃機)による東京初空襲となった、関東沖千二百キロの位置で空母ホーネットから発艦した「ドゥーリットル空襲」のことが記されていた。ドゥーリットル中佐率いるB‐二五、十六機は東京、横須賀海軍工廠、横浜、名古屋、神戸、大阪などを空襲した。日本側の被害は死者八十七名(プレートでは五十名と表記)で、国際法上禁止されている非戦闘員に対する攻撃を故意に行なった機もあり、葛飾区の水元国民学校では生徒が機銃掃射により死亡した。十六機は日本軍の反撃によって撃墜されることなく空襲を終え、一機がソ連のウラジオストクに着陸、四機が日本軍の支配地域である中国の海岸沿いに不時着、残り十一機は内陸側で搭乗員全員がパラシュートで脱出した。脱出中に三人が死亡、八人が日本軍の捕虜となり、内三人が都市の無差別爆撃と非戦闘員に対する機銃掃射は戦時国際法違反であるとして、捕虜ではなく戦争犯罪人として、日本軍による軍法会議で死刑判決を受けて処刑され、一人が抑留中に病死したが、残りの六四人の特別攻撃隊員を中国住民や民兵らによって日本軍の捜索から匿われたり脱出支援されたりしたが、そのことで「約二十五万人がアメリカ軍パイロットを助けたという理由で日本軍に殺される。」とあり、推奨される書籍として『東京上空三十秒』 テッド・ローソン著、『ドゥーリットル急襲爆撃』 キャロル・グリンズ…とあったのだが、そんな話は聞いたことがない。
私は、この作戦に参加したテッド・ローソン中尉らが作戦について書き、一九四三年に出版した本『東京上空三十秒』をすぐに調べてみたが、問題の展示プレートに書いてある「約二十五万人がアメリカ軍パイロットを助けたという理由で日本軍に殺される。」等の記述は本編にもなく、テッド・ローソンの妻が書いた前書き部分をインターネットで見つけることができて早速読んでみたが、中国に関する記述は二箇所だけだった。一箇所目は、著者のテッド・ローソンは作戦参加後アメリカに帰国した時に、中国人が自らを危険に晒しながらテッド・ローソンら作戦に参加したアメリカ人パイロットを守ろうとしたことを書き残したがっていたこと、二箇所目は、アメリカ人を助けた中国人や宣教師に対する報復を恐れ、ドゥーリットル空襲に関するニュースは一年後まで公表されなかったという記述があったが、どこにも中国人二十五万人殺害とは書かれていない。この『東京上空三十秒』は一九四四年にアメリカで映画化されているが、そこにも二十五万人殺害は描かれていない。そもそも何を根拠に、ドゥーリットル空襲後に二十五万人の中国人が殺害されたとしているのかが、まるでわからない。
二〇一七年一月にアパホテルの客室に置いてある私の著書で南京大虐殺が否定されていることが物議を醸したが、「事実に基づいて本書籍の記載内容の誤りをご指摘いただけるのであれば、参考にさせていただきたいと考えています。」というアパの声明に対して回答をしなかった中国政府は、南京大虐殺という歴史カードを失った。穿った見方をすれば、このドゥーリットル空襲後の中国人虐殺は、中国が将来新たな歴史カードとするために張った伏線ではないだろうか。私は常々三千億円の予算と三千人の職員を擁する情報省を設立し、国内外での事実に反する報道や、意図的に日本を貶める展示や発言には素早く訂正を求めるべきだと主張している。この主旨からも、外務省は早急に太平洋航空博物館のこの記述の根拠を問い質し、速やかに事実に基づかない記述を展示プレートからの削除を求めるべきだろう。
私は、帰国後すぐに友人を通じて元外務事務次官にドゥーリットル爆撃機B‐二五前の展示プレートの写真を安倍総理に届けてもらうとともに友人の秋葉賢也代議士に外務省とホノルルの日本総領事館に撤去・訂正の要請をするように依頼した。すると、ホノルルの総領事館は、二年前からその事を知っていて、訂正を求めたのにまだそのままになっているのだと言っていたとのことだが、抗議は訂正されるまでしなければならない。一応抗議し、訂正の要請をしただけではだめで、訂正されるまで事実に基づかない捏造の表記のあるプレートの撤去を要求し続けるべきである。
子供の数を増やすこと
ハワイから日本に戻り、文藝春秋の二〇一七年一二月号を読んでいると、特集「今そこにある戦争」内の記事として、「米軍攻撃の鍵を握るのは日本だ」というタイトルで、ジャーナリストの池上彰氏とアメリカ戦略国際問題研究所上級顧問のエドワード・ルトワック氏が対談をしていた。世界的な戦略の専門家であるエドワード・ルトワック氏は二〇一四年十月に「日本を語るワインの会」に参加し、私とも議論を交わしたのだが、事情があってApple Town誌面上ではルトワック氏が参加したことは掲載できなかった。
今回の池上氏との対談の終盤でルトワック氏は「(日本の)戦略を根本から考えると、少子化対策こそ、今後、国としての勝利の道につながると確信します」「スウェーデン、フランス、イスラエルは、少子化対策の先進国、要するに『若い国』」と言っている。これと同じことを三年前のワインの会でも発言していて、私の大家族制の復活の意見と総合してApple Townの二〇一四年十二月号に以下のようにまとめた。「日本が最も優先的に実行しなければならない国家戦略は、子供の数を増やすことだ。人口減少を防ぐために移民をという人もいるが、移民政策はどの国も失敗している。子供を増やすためには大家族制の復活が一番だ。税制によって二世帯、三世帯同居できる大規模住宅の建設へと誘導するのだ。大家族になれば、個家族化して、孤独死することもない。家族の相互扶助によって、社会負担を軽減することができる。日本の高齢者はお金を持っている。大きな家を作ることを推奨すれば、個人金融資産一千四百兆円が動き出す。そしてさらに、子供も産み育てやすくなる。大家族制度復活のためには、家督相続も復活させるべきだ。長子が全てを相続する代わりに、親の面倒を見るのだ。もう一つの子供増加策は、フランスやスウェーデン、イスラエルが行っているように、子供に関する費用は全て無料にすることだ。これは社会が子供を育てるという考え方に基づく。」
さらに今回の対談では、ルトワック氏は北朝鮮問題に対する日本の対応として、かなり現実的かつ鋭い意見を述べている。「最悪のシナリオは、北朝鮮を核保有国として認め、金正恩がいつでも日本と韓国を脅せるようになるのを容認してしまうことですから、いま必要なのは、『北朝鮮の脅威(核・ミサイル施設)の除去』です。『北朝鮮に対する全面戦争』ではない」という考えは、ここ数カ月私が提言している限定公開空爆と全く同じ発想だ。さらにルトワック氏は、リスクを恐れかつトランプ大統領を信頼していないアメリカ軍はこのままでは何もしない、また中国は北朝鮮の核開発を阻止するための外交手段を使い切っていると看破する。これに加えて「ソウルの脆弱性」という大問題がある。ルトワック氏は、一九七〇年代にアメリカから韓国へ派遣された顧問団の一人だったが、その時に提案した政府機能のソウルから南への移転、企業のソウルから南への移転、全ビルの防空シェルター装備などの提言を韓国は全く実行してこなかったと言う。ルトワック氏の結論はこれだ。「日本は、米国も中国も頼れません。韓国もあまりに無責任。ですから日本は自ら動くほかない」「北朝鮮の核・ミサイル施設を攻撃する能力を日本が自ら備えるのです」
これに対して池上氏は当然「専守防衛」を持ち出すのだが、それに対して「『核ミサイルという北の脅威を除去する先制攻撃』は『攻撃』ではなく『防衛』です。日本は『防衛として核とミサイルの開発関連施設を先制攻撃するか、金正恩に服従して生きるか』という岐路に立たされているのです」とルトワック氏は明快に言い切る。さらに日本の核武装論に対しては、分別のない北朝鮮には核抑止の考えは通じないと断じる。では具体的にどうすればいいのか。ルトワック氏は、自衛隊機に「敵地攻撃能力」を持たせることを、政府が粛々と手続きとして進めれば、「そういうシグナルを送るだけで、中国側のリアクションが起こり、『日本にはやらせたくない』となる。米国は『日本は本気だ。それなら同盟国の俺たちがやるよ』と動くようになる」と言う。
日本を追い詰める
ここでルトワック氏が警告しているのは、北朝鮮に対抗するには国としてのまとまりが必要であって、敵基地攻撃能力について国論を二分するような事態を招いてはいけないということだ。「部品の購入だけで、一つのシグナルとなる。国論を二分するのではなく、目立たないようにして、『本気だ』とワシントンと北京の専門家だけが分かるような形でメッセージを送るのです」とルトワック氏は言う。例えばF‐一五を対地用に改造して、通常爆弾を精密誘導型に替えることができるJDAMというキットを装着可能にする。そしてJDAMを「研究のため」と称して購入するだけで、アメリカと中国へのメッセージになるというのだ。
少子化対策を本格的に行って「『若い日本』をつくるのは長期的に取り組むべき課題ですが、『北の核ミサイル』という眼前の脅威を除去するには、今が最後のチャンス。一刻の猶予も許されません」というルトワック氏の結論に私も賛成だ。危機打開のためには、密接にトランプ大統領のアメリカとも連携し、自衛隊も敵基地攻撃能力を保有して、あらゆる手段を講じてでも金正恩の無謀な核兵器と弾道ミサイルの開発を阻止し、廃棄を迫らなければならない。そうしなければ、核とミサイルを保有した北朝鮮は韓国を併合し、日本の脇腹に突きつける刃の形で八千万人の人口を擁する反日国家・朝鮮連邦国家が誕生する可能性が高い。この国は戦前戦後の賠償、慰安婦、徴用工の賠償など、捏造の歴史に基づき、日本に無理難題の要求を突きつけ続けるはずだ。さらに朝鮮連邦国家はいずれ中国の属国となって、中国の尖兵として日本に圧力を掛け続け、内モンゴル自治区や新疆ウイグル自治区やチベット自治区のように、日本は中国の「日本自治区」へと追いつめられるだろう。そして太平洋をハワイの以西と以東に米中で二分割して支配しようとアメリカに不遜な提案をした、中国の習近平の思惑が現実のものとなる。今回の北朝鮮危機は日本存亡の危機なのだ。自ら解決する意志を日本はしっかりと諸外国に示さなければならない。このルトワック氏の提言を我が国政府は重く受け止めなくてはならない。
2017年12月11日(月)11時00分校了