日本を語るワインの会170

ワイン170二〇一七年七月五日、恒例「日本を語るワインの会」が代表自邸にて開催されました。議員在職四十年、現職国会議員では三番目に長い在職期間を誇り、第六十四代衆議院副議長などの重職を歴任し、現在、自民党外交・経済連携本部長を務める衆議院議員の衛藤征士郎氏、カリブ海に浮かぶ英国連邦の一員、ジャマイカの在日ジャマイカ大使館特命全権大使、クレメント・フィリップ・リカルド・アリコック氏、福島原発事故の所謂『除染』などで生じた放射性物質含有土壌などの世界中の全ての核廃棄物を低線量率放射線療法に活用して莫大な国家財産とし、我が国を世界一豊かな平和的首席国として復活させるべきであると提言した(一財)稻 恭宏博士 記念 低線量率放射線医科学研究開発機構 理事長の稻恭宏博士、日本人で初めて、代表作である切手のコラージュ「平和の象徴」がニューヨークの国連本部の永久保存作品に選ばれたジャパン・アート・ジャム合同会社代表の古賀賢治氏をお迎えし、原発事故や憲法改正から国際情勢までを大いに語り合いました。
カリブ海のジャマイカは
気候と食に恵まれた国
 秋田県とほぼ同じ大きさの国土を持つジャマイカの人口は約二百七十万人。首都はキングストン。西半球でアメリカ合衆国、カナダに次いで三番目に大きい英語を公用語とする国だ。一年を通じての平均気温は約二六℃、一月の平均気温が約二三℃で一番低く、最も暑い時期でも平均気温は約二九℃だ。ニューヨークから直行便に乗って三時間半で、モンテゴ・ベイにあるシー・ドナルド・サングスタ国際空港に到着する。ウサイン・ボルトを産んだスポーツ王国でもあり、レゲエに代表される音楽が盛んな国でもある。もう一つの特徴はホスピタリティの高さであり、国際的な旅行に関する賞をいくつも獲得している。リゾートエリアが充実していて、家族での滞在にもぴったりだ。民主主義国としてもジャマイカは成熟しており、投票の自由、国民の主権意識、言論の自由がしっかりと確保されている。特産品のコーヒー豆は、その約七割を日本に輸出している。コーヒー豆のブランドとして、日本人に一番知られているのは「ブルーマウンテン」だろう。これは標高二、二五六メートルのブルーマウンテン山を最高峰とするブルーマウンテン山脈の標高約八〇〇〜約一、二〇〇メートルの限られた地域で収穫されるコーヒー豆のみが名乗ることができる。名物料理のジャークチキンは、バーベキューチキンをスモークしたもの。また、アキーというフルーツは、黄色い果肉を塩茹でして、塩漬けの魚と炒めてスクランブルエッグのように見える料理にして食べる。これも絶品だ。

福島は、ICRPの勧告を守りつつも、
避難地域をゼロにできた
 福島第一原発の事故後、避難指示の対象地域に残された牛豚鶏やペットの犬猫などまで、当時の民主党(現・民進党)・国民新党連立政権は、毒薬で皆殺しにした。この暴挙もメディアは報道していない。旧ソ連のチェルノブイリ原発事故の時ですら、一頭の乳牛も肉牛も殺されていない。肉牛は、出荷の約二カ月前から、安価で放射性セシウムを高い効率で吸着する青色顔料のプルシアンブルーを飼料に混ぜて食べさせ、放射性セシウムを体外に排出させた上で、一頭残らず食用にした。乳牛から搾った牛乳も、捨てずにチーズなどの乳製品にした。熟成している間にどんどん放射性物質は自然に放射性崩壊して無くなっていくからだ。小麦も、アルコールにして出荷した。しかし、民主党政権は、福島の牛乳を全て廃棄させ、福島の乳牛も肉牛も皆殺しにし、福島などの米、野菜、果物、魚介類などの全ての農水産物を大量に廃棄させた。そのために、多くの農家、漁業者などが、自らの命を断った。学生時代から反原発・反核・反日運動をしていた人間達が、民主党政権では、首相や官房長官、各大臣などになった。そして、福島の原発事故をチャンスとばかりに、放射線、放射能、放射性物質に関する非科学恐怖を煽りに煽りまくったのだ。
 東芝は、アメリカのウェスティングハウス社を買収した際、「世界の原発のリーディングカンパニーになる」と宣言した。これが虎の尾を踏むことになり、東芝は破綻へと向かったのではないか。元々、原発はアメリカの技術であり、一企業を買収しただけでリーディングカンパニーになるというのは、おこがましい。次世代型原発を開発するベンチャー企業に投資している兆万長者のビル・ゲイツ氏は、アメリカでは、政府に技術の精査・審査を行う役人が少ないために、承認までに長年を要する状況に嫌気がさし、中国に多額の投資をしている。現状のままでは、十年後くらいには、日本やアメリカをはじめとする世界の国々は、元は日本とアメリカの最先端技術・設計であった次世代型原発の粗悪な模倣品を、中国から高値で買わされることになる。こんなに悔しい、本末転倒の悲劇はない。今であれば、まだ日本は、世界一の核技術を保有している。日本は、直ちに、この世界トップの技術を活かした次世代型原発の開発に取り組まなくてはならない。日本は、この他にも多数の素晴らしい技術を保有しているのだが、それを安価でアメリカに提供し、この技術を使った高価な兵器も買わされている。
 年間の自然放射線量が日本の数倍から数百倍であるブラジルのガラパリやイランのラムサール、中国の広東省、インドのケララ州などの高自然放射線地域が世界には沢山あるが、どの地域も、健康長寿のための保養地として有名である。これを考えても、どんなに自然界レベルの極低線量率の放射線でも、放射線であれば人体に悪影響しか与えないというLNT仮説は完全に間違いである。その誤りを前提とした民主党政権の対応とメディアの報道によって、日本人は莫大な損害を長年被り続けている。原発を停止することで、その電力を補う火力発電のための化石燃料の輸入が莫大に増え、その額は年間約四兆円にも及んでいる。福島第一原発の敷地のタンクに保管されている所謂『高濃度汚染水』とメディアが呼ぶものは、欧米などの基準であれば飲食用に使えるものなのだ。日本の飲料水の放射能規制値は一キログラム当たり一〇ベクレルだが、アメリカでは同一、二〇〇ベクレル、EU(欧州連合)では同一、〇〇〇ベクレルだ。この日本の放射能規制値は、極めて馬鹿げた非科学規制値以外の何物でもない。
 民主党政権は、所謂『除染』の基準を、自然放射線以下の年間一ミリシーベルトまで下げるなど、不勉強を遥かに通り越して、文字通り、狂気の非科学売国政治の連続であった。避難指示の基準も同じだ。ICRP(国際放射線防護委員会)の勧告では、原発事故後などの公衆被曝レベルは、年間二〇〜一〇〇ミリシーベルトの幅の中で決定すれば良いことになっている。民主党政権は、この幅の中で最も厳しい年間二〇ミリシーベルトを採用した。そのために、福島県には、広大な強制避難(強制移住)対象地域が生じてしまった。この基準を、この幅の中間の年間六〇ミリシーベルトにするだけで、避難対象地域など全くなかったのだ。緊急で避難をさせられたために、病院に入院して点滴をしていたお年寄りがそれを外され、満席のバスの通路に座らされ、全く危険ではなかった自然界レベルの極低線量率放射線、極低レベル放射能の場所を迂回させられ、六時間以上、バスに揺られ続けたために、その座ったままの姿で亡くなっていた。民主党政権による狂気の非科学売国政治が、実に多くの福島県民の命を奪ったのである。

チャンスを逃さないために、
改憲は現実的に進めるべき
 二〇〇一年、衛藤征士郎氏が外務副大臣の時に、元台湾総統の李登輝氏に対してビザを発給、李氏は来日して心臓病の治療を行った。それまでは中国を慮ってビザを出しておらず、この時も河野洋平外務大臣は大反対。しかし衛藤氏は譲らず、判断を首相官邸にまで持ち込んだ。森喜朗首相や福田康夫官房長官は話し合いで解決してくれというので、なんとか押し切って、李登輝氏にビザを発給したという。李登輝氏は日本人以上に日本を愛する素晴らしい人。その人を助けた功績は大きい。
 かつては速記者養成所から自動車整備場まで、衆議院と参議院で一つずつ存在した。今でも法制局は衆議院と参議院、そして内閣と三つもあり、非常に非効率的だ。そこで二〇〇三年に衆議院と参議院を対等に統合した一院制の国会を目指す議員連盟が誕生、自民党の衆議院議員の八十五%が参加した。一院制になれば審議時間は倍になり、国会運営のスピードも倍になり、国民の国会に対する信頼性が高まり、かつ投票率も上がるだろうというのが、この統合の目論見だ。この議連が二〇一〇年に取りまとめた「衆参対等統合一院制国会創設案」には、一院制の議会では衆参合わせた定員から三割削減して、五百人の国会にすることが盛り込まれた。二〇一二年には戦後初めての改憲案として、憲法第四十二条の改正案を国会に提出したが、国会法が妨げになり凍結されてしまった。
 五月の安倍首相の発言から、憲法第九条を巡る改正論議が盛んになってきている。戦力を保持せず交戦権を持たないという九条二項をそのまま残して三項を追加するのは、必ず禍根を残す。現行憲法では自衛隊が合憲だ、違憲だと、複数の解釈の可能性から国論が分断されてしまっている。改正するのであれば、国論の統合をもたらす明確な条文が必要だ。二項も改正して、自衛のための戦力と交戦権は持つと明記するか、国連加盟国が保持している集団的及び個別的な自衛権を行使できるとするかしなければならない。まず自民党で憲法改正案を作成した上で、公明党など他の党との協議に入るのが筋だろう。
 とはいえ、九条二項を改正すると主張すれば、加憲しか認めないとする公明党は、絶対に改憲案に乗ってこない。今回の改憲を、まず憲法を改正することが可能であることを示すためのものだとするのであれば、現実的な選択として、とにかく公明党が賛成できるような改憲案を作成すべきだという考え方もある。三項追加の場合でも、自衛隊が警察権でしか動かせないのであれば意味がない。戦力であり、交戦権を持つことの明記は必要だろう。そうしなければ、作戦中に人を殺した自衛隊員が、通常の法廷で殺人罪に問われることになってしまう。軍法会議を開くことができるように、自衛隊を戦力と定めると同時に、憲法第七十六条の特別裁判所の禁止条文を改正する必要もある。
 実際問題としては、都議会議員選挙の自民党の大敗北で、憲法改正に暗雲が立ち込めている。本来保守であるはずの小池百合子東京都知事が率いる都民ファーストの会は、生活者ネットワークと政策協定を結ぶなど、節操がなさ過ぎる。はっきりしたのは、自公連立によって自民党の足腰が弱ってしまい、公明党抜きでは選挙に勝てなくなってしまったことだ。憲法改正にもこのことは大きく響いてくる。また安倍首相を支えてきた真の保守が、九条二項を変えずに三項を加えることを懸念している。しかしまず優先すべきは、アメリカが不当に日本に押し付けた憲法を改正する道筋をつけることだろう。最初は多くの人が賛同する項目のみを変え、二度目は本格的な改正をするという二段階憲法改正の考えで、現実的な選択をしていくべきではないか。今の絶好の改憲タイミングを逃すと、あと五十年は改憲できない。

目先の計算ではなく、
大局観を持った政治を
 一六〇三年に徳川家康が征夷大将軍になってから、一八六八年に明治が始まるまでの二百六十五年間の江戸時代は、一切戦争がない平和な時代だった。これは紀元前二十七年から紀元百八十年まで二百七年続いたパックス・ロマーナよりも長い、世界史でも類を見ない時代だ。こんな長い平和を維持する仕組みを考えた日本人の知恵は、素晴らしいものだ。そして、江戸時代は伊藤若冲をはじめ、多くのアーティストが活躍した時代でもあった。これらの江戸のアートをデジタルミュージアムとして子供達に見せるプロジェクトを、古賀賢治氏が今進めている。アートの価値は非常に大きい。新国立競技場の建設では、費用の問題でザハ・ハディド氏の案が白紙撤回されたが、彼女のデザインのアート的な価値は途方もないものであり、今建設中のものとは全く比較にならない。これからの日本の飛躍の鍵は東京オリンピックの成功にあり、将来に亘って得られる経済効果は百兆円とも言われることを考えれば、国立競技場が三千億円でも五千億円でも高くはない投資なはずだ。細かい目先の計算ばかりをしているのではなく、大局観を持って事業の未来を見る必要がある。