日本を語るワインの会157

ワイン156二〇一六年十月六日、恒例「日本を語るワインの会」が代表自邸にて開催されました。二十一年の国会議員生活で二十八本の議員立法を成立させた衆議院議員の馳浩氏、この八月に日本に赴任したばかりのトーゴ共和国大使館臨時代理大使のアフォニョン・クアク・セダミヌ氏、アメリカ大使館農産物貿易事務所(ATO)所長のレイチェル・ネルソン氏、航空自衛隊で宇宙飛行士の油井亀美也氏と同期だった有限会社デルタエージェント代表取締役の武島正実氏、Ph・D・の学位を持ち僧職でもありながら数々の通翻訳業務も行ってきたマルチプレイヤー、在日ルーマニア商工会議所会頭の酒生文弥氏をお迎えし、最近のニュースをはじめとした国際色豊かな話題で盛り上がりました。
アメリカのTPP議会承認は
まだ十分可能性がある
 十一月八日にいよいよアメリカ大統領選挙の投票と開票が行われる。日本時間で大勢がわかるのは、九日になるだろうか。最初のテレビ討論会ではクリントン氏が優勢だったが、副大統領の討論会ではトランプ氏側の候補であるペンス氏が一歩抜きん出ていた。二回目のテレビ討論会は、直前にトランプ氏の猥褻発言録音の暴露があって、討論にもならない最低の泥仕合で終わった。この大統領選挙が日本にとって刺激的なのは、トランプ氏が日本の核武装を認める発言をしていることだ。こういう候補が出てきたことが、日本覚醒のきっかけになればいいのだが。正式に共和党の大統領候補に決まったところで、もっと大統領らしい路線に主張を変更すると思われていたトランプ氏だが、それもなくジリ貧になった。クリントン氏は習近平、トランプ氏はプーチンとの結びつきが強い。アメリカ国民がどちらを選ぶのか。日本にとってはトランプ氏が勝利して、アメリカ、ロシアによる中国包囲網を形成出来る方がいいのかもしれない。またトランプ氏が勝利した場合、多くのアメリカ人が母国を捨てて逃亡、カナダのホテルが繁盛するのでは…というジョークも出てきている。州単位でどちらの陣営かが選挙人を総取りするシステムなので、全国レベルでの支持率は、実はあまり当てにならない。リアルに予想するのであれば、やはり選挙人を多く抑えているクリントン氏が有利だろう。
 TPPに関して両候補とも反対を表明している。一月まで任期があるオバマ大統領がぎりぎりまで粘って議会の承認を受ければ、クリントン氏もヒラリー氏もそれを受け継ぐだろう。日本の保守派にも反対の多いTPPだが、これは中国につくかアメリカにつくかの問題として、プラグマティックに考えるべき。日米安保を結ぶ日本は当然アメリカにつくべくTPPに参加すべきだ。しかも実際、日米両国の経済にとってTPPは有益だ。オバマ大統領の最後の頑張りに期待するが、それが駄目でも望みはある。就任後に考えの変わる大統領候補はこれまでも沢山いたからだ。
 昔は油臭かったカリフォルニア米は、今では日本米と同じぐらい美味しくなった。安く売れるのであれば、日本に輸入すればいいのではないか。アメリカでもウニが穫れるが、昔は誰も食べなかった。しかし寿司店が増えるに従って、多くの人が食べるようになった。食のグローバル化はまだまだ進む。農作物を含めた貿易はもっと盛んになってもいいのではないか。魚介類は栄養面では申し分ないが、食物連鎖の結果どれも微量の水銀を含んでいる。普通の人は特に注意する必要はないが、妊婦は気をつけた方が良いと農林水産省が注意を喚起している。例えばクロマグロは、妊婦は一週間に八〇グラムまでで、食べ過ぎない方がいいという。

豊洲は築地より遥かに安全
小池知事の騒動収拾が鍵
 豊洲新市場を巡る騒ぎが収まらない。東京都の情報公開方法に問題があったことは確かだが、豊洲の安全性に対してメディアが過度の不安を煽っている。そこまで安全性に拘るのであれば、今の築地市場はどうなのか。老朽化も激しく、ネズミも大量に棲んでいる。豊洲と同じ検査を築地で行ったら、その数値の酷さに人々はパニックを起こすだろう。豊洲の地下水で、環境基準値をわずかに越えたものがあるとメディアが騒いでいるが、この環境基準値は飲み水に対するものだ。豊洲の地下水は飲用はもちろん、清掃用にも使われることはない。メディアはそのことをしっかりと報道するべきだし、国民も過度な煽りに振り回されないようにしなければならない。
 この問題を取り上げた小池東京都知事の拳の振り下ろしどころはどこか。過去にまで遡って関係した市場長を生贄として処分して、環境アセスメントで安全のお墨付きを得た上で、移転を行うことになるのではないか。早く決着をつけないと、東京オリンピックに差し障りが出る。メディアをここまで賑わせた小池知事の手腕は見事だが、どう収めるかが問題だ。上手くやれば、都知事再選も見えてくる。しかしメディアの掌返しもある。用心して事を進めるべきだろう。

防衛装備協定の締結は
中国への牽制になる

 有限会社デルタエージェントが手掛けるのは防衛装備品の輸出だ。二〇一四年に日本政府は武器輸出三原則を転換して、防衛装備移転三原則を決定、厳格な審査は必要だが武器の輸出入が認められるようになっている。この武器輸出の前提となる防衛装備品協定を日本はオーストラリア、フランス、インド、フィリピンと締結しており、マレーシア、インドネシア、タイとも協定締結の交渉を行っている。特にアジアでの協定締結は、拡大政策をとる中国への牽制となる。交渉の進展に期待したい。
 六月に元空将の織田邦男氏がネットに発表した中国戦闘機が自衛隊スクランブル機に攻撃動作を仕掛けたという事件は、日本の防衛の最前線はそこまで緊張しているのかと、世間に大きな衝撃を与えた。現状での自衛隊の武器使用基準は警察官のそれに準拠しており、まず向こうからの攻撃を受けないことには、こちらから攻撃できない。いくら立派な武器を揃えても、これでは戦えない。自衛隊を真っ当に日本を守ることができる組織とするためにも、早急に憲法を改正して武器使用基準を改めなければならない。今年の夏の参院選で改憲勢力が三分の二の議席を獲得した今がチャンスだ。まず前文など明らかに誰もがおかしいと思う部分の改憲を発議して国民投票で改正を達成し、次に本格的な改憲に取り掛かるべきだ。そのためにも、安倍首相の任期を二期六年から三期九年へと延長しなければならない。憲法は人が作るものである以上、改正も人によって行われるべき。リーダーはなぜ改正を行う必要があるのかを、国民にしっかりと説明する必要がある。
 ルーマニアには「オイナ」という伝統的な球技がある。バットやボールの大きさなどが野球そっくりだが、攻守ともに得点できたり一チームが十一人だったりと野球と異なる点も多い。イギリスのクリケットと同じく野球やポロのルーツと言われるこの競技をルーマニア王室は大切にしてきていて、一八九九年から体育の授業の必須競技にもなっている。ぜひオリンピック種目に入れたいと、似た競技である野球が盛んな日本にも、ルーマニア・オイナ連盟の総裁が訪れたりと活動を熱心に展開している。
 ホテルの客室の照明は薄暗いのが伝統になっている。ホテルのベッドは寝るだけではなく、荷物のパッキングに使ったり、地図を広げたりといろんな用途に使うものだが、海外のホテルでは客室が暗すぎて不便なことが多かった。暗い仕様の部屋を明るくすることはできないが、明るい仕様の部屋を暗くすることはできる。アパホテルが新都市型ホテルとして提案したのは、従来の照明に加えてシーリングライトを備えた、世界初の「明るい客室」だ。アパホテル〈巣鴨駅前〉で試験的に導入したところ、他の客室よりも千円価格を高くしても売れた。明るい客室がこれからのトレンドになるかもしれない。

連日満室の〈広島駅前大橋〉
大型ホテルの計画が続々と
 広島市は道が広く都市計画が行き届いた大都市だ。オバマ大統領が五月に訪問し、九月に広島東洋カープが二十五年ぶりに優勝、街が湧きに湧いている広島市に、十月六日、中四国最大級の七百二十七室を擁するアパホテル〈広島駅前大橋〉がオープンした。広島駅から徒歩四分、球場までも歩いて行くことができる。オバマ大統領の訪問以降、広島への外国人観光客は増加している。代表はオバマ大統領が二〇〇九年にノーベル平和賞を受賞した時に、大統領在任中に広島訪問を実現させることを確信して、この〈広島駅前大橋〉の計画をスタートさせた。予想は見事的中して観光客が増える中、〈広島駅前大橋〉はオープンからほぼ毎日満室が続く状態だ。十一月五日にはカープの優勝パレードも予定されていて、さらに多くの人々が宿泊することが見込まれる。アパホテルは国内では年内にあと十一のホテルがオープン、今大東京では二〇一九年のラグビーワールドカップを目指して、タワーを含む二十七のホテルを設計・建設中だ。これらはアパホテル&リゾート〈両国駅タワー〉の約一千百室をはじめ、大型ホテルばかりだ。また九月に取得した北米の四十ホテルも現在順次改装中で、改装済みの部屋には五十五インチのテレビやウォシュレットを全室に導入する予定だ。これだけの拡大を続けていて、人材の確保は十分かと聞かれることが多いが、今年の新卒採用も約二百名の内定が決定している。アパグループの成長が知られるようになって、今年も東大大学院など非常に優秀な学生の応募があった。また北米ホテル買収の影響か英語が得意な学生が多く、内定者の四割が英会話に堪能。中にはTOEICで満点を獲得した英語通訳ができるレベルの学生もいる。
 当社は今、迎賓館を建築中である。アパホテルとFC契約や提携を望んでいる海外のホテルオーナーらをそこでもてなす予定だ。海外ではビジネスの関係でも、相手の住んでいる家を見て、そのレベルを判断することが多い。日本では通常、大企業であってもサラリーマン社長であれば家は狭い。しかし世界の金持ちが住んでいる家は、想像を絶する広さだ。私の友人のシアトルにある、敷地が約二千坪ある邸宅は門を入ってしばらく車で走ってようやく本宅に到着する広さだ。家の裏には桟橋があり、大型のクルーザー二隻が停泊していて、そのクルーザーの六部屋にも訪問客は宿泊することができる。日本円で五百万円の手付金前払いで払って手に入れたという、ガルウィングのドアが特徴的で自動運転も可能な電気自動車、テスラ・モデルXも保有していた。ビジネスは世界標準で考える時代になっている。