日本を語るワインの会157

ワイン156二〇一六年六月一日、恒例「日本を語るワインの会」が代表自邸にて開催されました。新聞社の弁護士ランキングの税務部門で一位を獲得した鳥飼総合法律事務所代表弁護士の鳥飼重和氏、父親がウクライナ人、母親がポーランド人で国籍はロシアの在日ロシア人会会長のユーリー・ブーラフ氏、新世代のバッテリー事業を展開するPower Japan Plus Inc. 創設者・社長の仁科浩明氏、セガ・エンタープライゼス時代には北米市場の責任者として、年間純利益六百五十億円を達成した山元学校学長の山元雅信氏、政治から宗教まで幅広く造詣が深い在日本ルーマニア商工会議所会頭の酒生文弥氏をお招きし、ビジネスから世界情勢まで、様々な話題に花が咲きました。
様々な配慮が感じられた
オバマ大統領の広島訪問
 政治家になる前から反戦や反核の運動を行っていたオバマ大統領は、核廃絶でノーベル平和賞を受賞するも、このままだと何の成果も上げないまま任期切れとなり悔いを残すと考えて、広島を訪問したのだろう。これで歴史には名前を残すことになったが、ぜひ大統領引退後もまた来ますと言って欲しかった。「アメリカは最早世界の警察官ではない」発言で世界中を混乱させたオバマ大統領だが、この広島訪問とキューバとの国交回復が彼のレガシーになった。スピーチは「七一年前の明るく晴れ渡った朝、空から死神が舞い降り、世界は一変しました」から始まる非常に詩的なものだったが、主語が明確ではないところに、様々な配慮が感じられる。また実際にスピーチが行われた場では、全く通訳がなかったので、目の前で聞いていた日本人で意味が理解できなかった人が多かった。こういう場で通訳がないのは非常識なのだが、どうやらアメリカ側の意図で、通訳なしでスピーチが行われたようだ。元々広島は日本国内で唯一、アジア人以上に欧米人観光客が訪れる場所だ。今後さらに外国人観光客が増えることになるだろう。
 二〇一四年六月にフランスでノルマンディー上陸作戦の七十周年記念式典が行われたが、この時会場の巨大スクリーンに日本への原爆投下のモノクロ映像も流された。これに対してオバマ大統領をはじめとする各国首脳は拍手をしていたのだが、ロシアのプーチン大統領は十字を切っていた。哀悼を示していたとも思えるが、あの原爆によってソ連の世界赤化の野望が挫けたことを考えての十字だったかもしれない。日本に原爆が投下されてからわずか四年でソ連は核実験を成功させた。こんな短時間での開発が可能だったのは、核を使用できない兵器にするために、アメリカの科学者がソ連に情報をリークしたからだ。朝鮮戦争で核兵器の使用が検討されたことを考えても、もしソ連が核兵器を手に入れていなかったなら、アメリカはもっと核兵器を使用したに違いない。

日露戦争での日本の勝利が
白人中心の世界を破壊した
 ロシア人はヨーロッパ人かアジア人かという議論がある。人種的には白人だが、その行動様式はアジア的だというのだ。それだからか、ロシア人の多くが日本とのより深い友好関係を望んでいる。アメリカは日本とロシアの接近を警戒している。北方領土の四島返還論を煽っているのは、日ロが二島返還で妥結することを避けたいアメリカだ。ロシアとのパイプが太かった森喜朗元首相だが、それは彼の父親の森茂喜氏からの流れだ。森茂喜氏は石川県根上町の町長選挙に九期に亘って当選、全国町村会の副会長も務めた。ソ連との交流にも尽力し、死後遺言で遺骨の一部がロシアのシェレホフ市(根上町の姉妹都市)に送られ墓が作られた。プーチン大統領が墓参したこともある。こんな父を持つ森喜朗氏だからこそロシアと親しかったのだが、そのために首相になって約一年でアメリカによってその座から引きずり降ろされた。これは中国に接近した田中角栄氏と同じケースだ。安倍首相も第一次政権時に「戦後レジームからの脱却」と、アメリカの支配から逃れることを宣言したために逆鱗に触れ、一年で辞任に追い込まれた。第二次政権での安倍首相は以前とは別人で、極めて現実的に行動している。プーチン大統領と会い、伊勢志摩サミットを成功させ、オバマ大統領の広島訪問を実現させるなど、安倍政権の外交は絶好調だ。日本の首相の権限を強化するために、現在の議院内閣制ではなく首相公選制に変えるべきだという主張もあるが、公選だと例えば横山ノック氏が大阪府知事に、青島幸男氏が東京都知事になったように、相応しくない人物が当選する可能性がある。議員内閣制による首相選びの方が、リスクは少ないのではないか。また日本には長期的な政府が必要だ。アメリカでも二期八年、中国なら十年、プーチン大統領は通算二十年政権の座を握っている。メドベージェフもまだ若い。
 二十世紀の前半まで、世界は白人のものだった。それを変えたのが、日露戦争における日本の勝利だ。日本海海戦ではバルチック艦隊を全滅させ、奉天の会戦でも陸軍国・ロシアを相手に大善戦だった。アメリカが和平調停の仲介を買って出たのは、白人が有色人種にあからさまに負け続けるのは良くないと考えたからだ。しかしこの戦争から世界の植民地は開放へと向かった。もし日本がロシアに勝利していなければ、ひょっとしたら未だに世界は植民地の残る白人天国だったかもしれない。その後、第一次世界大戦後の国際連盟委員会で日本は連盟規約に人種差別撤廃を盛り込むことを提案するが、アメリカのウィルソン大統領の不公平な議事によって否決された。原爆投下も、もしこれが日本ではなく白人国への投下であれば、事前警告ぐらいは行っていただろう。

爆発の心配がなく長寿命
開発進む次世代バッテリー

 アメリカ大統領選挙だが、ヒラリー・クリントン氏の当選が日々危うくなってきている。FBIが捜査を行っている私的メールで公務のやり取りを行っていた機密漏洩疑惑だけではなく、莫大な裏資金の疑惑も出ている。またサンダース氏との民主党の大統領候補争いも、党大会までもつれ込む情勢であり、サンダース氏の支持者はクリントン氏が候補になった場合、トランプ氏に投票するのではという見方もある。トランプ現象は世界中で変わりつつある社会を示す一事例だ。アメリカ第一主義のトランプ氏と同様の動きは、ドイツやオーストリア、イギリスなどでは極右政党の躍進という形で現れている。トルコからの移民が多いドイツや旧植民地からの移民の多いフランスなど、移民によって社会が不安定になっている。少子化が進む日本でも移民を受け入れるべきという議論があるが、安易な容認は危険だ。少子化による生産力不足はAI化、機械化で、需要不足は観光客の増加で補えばよいのではないか。
 蓄電池として多く使われているリチウムイオン電池だが、寿命が短いのと爆発が起きるという問題がある。枕の下に入れた携帯電話が爆発するなどで死亡事故も起きているのだが、携帯電話キャリアの影響力であまりメディアでは報道されていない。ベンチャー企業Power Japan Plusと九州大学が共同で開発しているディアルカーボンバッテリーは寿命が長く、爆発の心配もない。次世代のバッテリーとして、大いに期待できる。

与野党の考えを見越して
逃げ切りを図る舛添氏
 日本弁護士連合会など弁護士会はなぜ左翼なのか。日本国憲法を文章に忠実に解釈すれば、自衛隊も違憲になるなど、左翼的な考え方になるのはやむを得ない。なぜなら憲法に込められているのは、アメリカの占領政策だからだ。これを改正できるかどうかは、国民の意志次第。国会議員の三分の二の賛成で発議はできたとしても、国民投票で過半数の賛成を得ることは、今の情勢では無理だ。改憲に反対する「九条の会」も全国的な拡大を見せている。弁護士になると弁護士会には強制加入だ。その予算を使って弁護士会が左翼的な主張を繰り返すのは、いかがなものか。予算の使用方法が民主的ではないという批判もされている。弁護士自治という考えから、弁護士会の活動は国家権力の制約を受けない。日弁連会長は投票によって決まるが、基本、東京の三つの弁護士会と大阪弁護士会の四つの出身者の持ち回りになっている。
 司法試験に合格した司法修習生は、最高裁の下で裁判手続をマスターすることが求められる。しかし裁判は問題解決の最後の手段だ。法律家の思考能力は、戦わずして勝つための戦略立案に使われるべき。法律問題については通常決まった考え方があり、それに具体的事実を当てはめると結論がでる。しかし勝つためには、まず結論を決め、そのための法的解釈はどうするか、証拠は何を出すかを考えていくべき。こうして戦略を組み立て、行政機関や裁判所に堂々と出せる主張を完成させることができれば、勝負は既についている。最近最高裁で争われた租税回避事案としては、IBM事件がある。日本IBMは自社株の購入による「益金不算入制度」と「連結納税制度」によって黒字と赤字を相殺、法人税負担を軽減したのだが、それに対して東京国税庁が租税回避として一千二百億円の追徴課税処分を行ったもの。日本IBM側がこれを不服として、裁判になっていた。株の譲渡は連結納税制度が出来る前に終了しているので、国税側には勝ち目はなく、結局日本IBMの勝訴。一千二百億円を取り戻すだけではなく、数百億円の還付加算金も手に入れた。しかし実は日本IBMは、連結納税制度の検討が行われているという情報をちゃんと得ていて、株の譲渡を行っていた。これが戦略だ。
 舛添東京都知事の政治資金流用疑惑だが、法律的には多分問題がない。しかし名声には大きく傷がつく不味い対応を繰り返している。元検事の弁護士二人という「第三者」に調査を依頼しているというが、自分で金を払って依頼した人間を「第三者」とは言わないだろう。舛添氏は、与党も野党もこのタイミングで都知事選をやりたくないのを見越して、逃げ切りを狙っている。この舛添疑惑のネタ元がどこなのかが不明だ。一説によると、甘利前経済財政大臣の起訴問題のカモフラージュで情報がリークされたという話もある。裁判官が公正中立というは全く間違った見方で、彼らは偏見の塊だ。自分の出したい判決が先に決まっていて、それに合うように弁護士を呼びつけて足りない証拠を出すよう指示をすることもある。和解の提案なども無下に断るのではなく真摯に検討したフリをしないと、判決でとんでもないしっぺ返しを食らうことがある。裁判官も所詮人間なのだ。