衆議院議員 中山泰秀
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APAグループ代表 元谷外志雄
1970年大阪市北区生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。電通に勤務したのち、2003年衆議院議員に初当選。外務大臣政務官、外務副大臣を歴任。現在自民党治安・テロ対策調査会副会長。自民党大阪府連会長。
総選挙のタイミングだった
元谷 本日はビッグトークにご登場いただき、ありがとうございます。中山さんとは長いお付き合いなので、先日秘書にまだ対談をしていないと聞き、びっくりしてすぐにお声を掛けた次第です。
中山 光栄です。森喜朗元首相からご紹介頂いたのが初めてのご縁でした。元谷代表との忘れ得ぬ思い出は、特に京都駅のアパホテルオープニングの時、モニュメントに揮毫を書かせて頂きました。今も、「心」という文字がモニュメントに刻まれています。JAPANの真ん中、まさにアパのサービスにかける情熱であり、心です。ありがとうございます。
元谷 今日が国会の最終日で、安倍首相が消費税増税の二〇一九年十月までの再延期と、参議院選挙に合わせた衆議院選挙を行わないことを表明しました。私は消費税増税はともかく、衆参同時選挙は行うと考えていましたから、今回は予想が大外れです。中山さんは当事者ですから、選挙がなかった方が良かったのかもしれませんが。
中山 私も代表と同じ予想で、やる気満々だっただけに少し残念です。しかし参院選は行われます。選挙も集団的自衛権と同じで、他衛は自衛に通じますから、大阪府選挙区の自民党候補をトップ当選させるべく、全力を尽くすつもりです。安倍首相は清和会の総会に来られて、今回の衆院選を見送った理由を、前回の選挙からまだ一年半であること、そして四月に熊本県と大分県で大きな地震があり、今選挙によって衆議院全部と参議院の半分を同時に空白地帯にするわけにはいかないとおっしゃっていました。
元谷 それは表向きの理由でしょう。衆議院の解散に関しては本当のことを言う必要はありません。とぼけつつ最後には解散だと思っていたのですが…。私なら解散しますね。最新の世論調査では内閣支持率が五五%にも達しています。こんなチャンスは滅多にありません。憲法改正を目指す安倍政権にとって、今回の参院選は三分の二の改憲勢力を得るために非常に重要な選挙です。であれば、内閣支持率が高い今、衆参ともに大勝できる可能性が高いダブル選挙にするべきでしょう。また大勝すれば、そのご褒美として党綱領を改正して、総裁の任期を現行の二期六年から三期九年に延長することも可能です。中国なら十年、アメリカなら八年と、世界のトップリーダーはいずれも長期政権です。任期を延長して安倍首相にはぜひ東京オリンピックの開会式に出席して欲しいのですが…。また、消費税増税が延期された二〇一九年十月は、今のままでは安倍首相の任期後なのです。これも腑に落ちません。
中山 世の中、本音と建前の世界。代表がそう感じられるのも、無理はないと思います。もう一つは、消費税の延期と同時に、二十歳から十八歳へと選挙権年齢の引き下げが行われています。これは若い世代に真剣に、日本の将来について考えて貰いたいという意味が込められていると思います。人口減少、少子高齢化、それにまつわる年金や医療費に代表される社会保障問題、北東アジア周辺における、世界を見据えた国防、安全保障問題など、将来世代にのし掛かってくる課題は山積しています。
元谷 世の中は今が変わり目です。アメリカ大統領選挙の共和党候補にトランプ氏がなろうとしているのも、偶然ではありません。かつては社会主義と対峙する政治体制として民主主義の立ち位置があったのですが、冷戦終結後はこれが揺らいでいます。そもそも民主主義が絶対的に良い政治システムかというと、そうではありません。例えばロシアのプーチン大統領は、自らを皇帝とする帝国を築いているように見えます。中国も本来の社会主義とは程遠い単なる一党独裁の政治体制です。またドイツやフランス、オーストリアなどで極右勢力が多くの支持を集めるようになってきています。この大きな流れの根底にあるのは、自国第一主義です。トランプ氏は、明らかにアメリカ第一主義を全面に出すことで、多くの支持者を集めています。トランプ氏が大統領に就任する確率が高まっている今、日本はトランプ政権にどう対応するかを考えなければならないでしょう。
中山 衆議院の解散時期も仮に年内の場合、このアメリカの大統領選と関連して考えなければなりません。十一月の大統領選挙の前に解散するのか、後に解散するのかはある意味、重要な選択になると思います。世界に対し、安定した揺るぎのない同盟関係が日米関係であるということを、あらためて示していくことが重要です。
元谷 とはいえ、やはり一番重要なのは、内閣支持率ではないでしょうか。いざ解散しようと思っても、支持率が低ければ二の足を踏まざるを得ないでしょう。伊勢志摩サミット成功後の今が一番支持率が高いのです。また批判の多いアベノミクスも私から見れば上手く進んでいて、アパホテルも安倍政権になってから給与のベースアップを三回行っています。賃上げについても、安倍首相自ら労働組合の執行委員長のように動いていますよ(笑)。これだけ従来の政権が実行できなかった正しい政策を行って支持率の高い今、前回総選挙からまだ一年半だから解散すると議員が可哀想というのは、少し情けないですね。v
中山 「議員が可哀想」という理由ではないと思いますよ(笑)。私の周辺の議員仲間は皆、今回はダブル選になるだろうと、短い期間ではありますが、準備を怠らず、衆議院は常在戦場の気持ちで、武者震いをさせていました。他方で代表のご指摘通り、客観的にみると、日経平均連動型の内閣支持率になっているともとれます。株価が悪いよりも良いに越したことはありません。株価が上がって損をしたという人は、いないと思います。経済成長戦略を前進させるためにも、日本の信頼を取り戻すためにも、あらゆる改革に落ち着いて取り組んでいくことが大切だと思います。
政治にディールを持ち込む
中山 世の中が変わり目というのも同感なのですが、悲しいことに所得の格差が固定化してきているというのも事実だと思います。
元谷 私は格差の一因はITの発達にあると考えています。ITの発達によって通信のみならず、これまでのルールが変わったのです。価格.comのように一番安いモノ・店が一発でわかるサービスによって、勝つものがさらに勝ち、負けるものは負けるという、一強多弱を許す社会になってきています。本来これをケアするのが政治だと思うのですが、この是正に失敗しているのが現状です。貧しい人が多数で金持ちは少数、ノンエリートが多数でエリートは少数です。しかしどちらも選挙では一票。プアホワイトと呼ばれる人々をはじめとした、この多数を占める層の心を掴む作戦に出たのが、トランプ氏だったのです。
中山 そうですね。また、エリートビジネスマンであるトランプ氏が好むのはディール(商売上の取引)です。金正恩とも習近平とも話をしたいというのは、彼らとディールをしたいという意味ですし、日本が駐留費を全額負担しないと在日米軍を引き上げるというのも、ディール上での条件提示なのです。ですから、彼が大統領になった場合には、どういう条件を提示して相手にメリットを感じさせ、同時にこちらも「実」を取るかということが重要になってくると思います。
元谷 その通りです。しかし彼はしたたかでしぶといですよ。三回結婚して、四回破産して、大統領選も今回で三回目ですから。その経験から真っ当な方法では共和党の候補にはなれないと悟り、まず多数派である貧しいノンエリートにうける、奇をてらった発言を繰り返したのです。しかし正式に共和党の候補になった後は組織vs組織の戦いですから、共和党主流派の支持も得るために主張を修正し、副大統領候補には自分とは正反対の人、例えば若い女性で州知事など政治経験のある人物を立てるでしょう。共和党も副大統領候補に真っ当な人を望むでしょうね。そしてトランプ氏に、変な発言を続けるとケネディになるぞと脅すのです。ケネディ大統領はベトナム戦争の拡大に反対したために、それを望む産軍複合体から反発を受け、戦争拡大賛成のジョンソン副大統領にその座を譲るために暗殺された、との説があります。こういうこともあって、トランプ氏の発言も変わってくるでしょう。
中山 私もそう思います。しかし、もしトランプ大統領が現実になり、在日米軍の撤退の可能性が高まった場合には、日本での改憲の機運が高まるのではないでしょうか。
元谷 トランプはそう言いますが、在日米軍を撤退させることはあり得ない。それは太平洋を失うことを意味しますから。そもそも在日米軍の存在意義は、日本を守ることではなく、太平洋の覇権を握り続けることなのです。トランプ氏もこれを理解していながら、予備選挙に勝つためにわざと過激な発言をした節があります。日本と韓国の核武装容認発言もありましたが、これもあり得ません。日本の核武装に一貫して反対しているのがアメリカです。日韓の核保有を認めれば、世界中に核が拡散し偶発的な核戦争の可能性が飛躍的に高まってしまうからです。アメリカが認めるとすれば、コントロールをしっかりと保つことができ、NATO四カ国も加盟しているニュークリア・シェアリングの日本への適用でしょう。平時には日米共同で核兵器を管理し、有事にはその指揮権を与えるという、核の共有システムです。これなら核拡散を防ぎながら、核の攻撃に対する抑止力となります。
中山 ニュークリア・シェアリングの導入という元谷代表の斬新なアイディアは、研究していく価値があり、とても興味深く思います。もう一つソフトパワーの抑止力として私が考えているのは、被爆地・広島に国連のアジア太平洋本部を持ってくることです。広島市民球場の跡地に国連の施設を建設して、そこに世界中の外交官が集まる。マッカーサーが「日本はアジアのスイスとなるべき」と言ったとされていますが、中国の覇権拡大を阻止するためには、日本は親米なスイスになるべきであり、広島の国連本部がその一助となるでしょう。
元谷 多くの日本人が持つスイスのイメージと実際は大きく異なります。スイスは昔も今も国民皆兵の軍事国家です。小銃や弾薬などの兵器を各地域で備蓄している「武装」中立国なのです。平和憲法があるから平和という主張がまかり通る日本とは、大きく異なります。平和は理想によってではなく、力のバランスによって守られています。この点から考えても、太平洋の中国との二分割統治を容認するようなトランプ氏の発言は、極めてナンセンス。正式に候補になれば、口にしなくなるでしょう。
中山 北東アジア地域における、日本国の平和と安定、繁栄を考えると、そう願いたいと思います。中国はいつも「自分たち中国は脅威ではない」と言いますが、私たちから見ると、間違いなく脅威です。国際法を無視した、南シナ海で起きている環礁を埋め立てての人工島や滑走路建設、戦闘機やミサイル配備などが、いつ東シナ海で起こらないとも限らない。右肩上がりの軍事予算など、書いていたらきりがありません。隙あらば、そこに必ず入ってくる。国民の生命と財産を守るのはもちろんのこと、領土領海を守ることも、国民一人一人が意識しておかなければならないと思います。
日本も最先端にいる“AI”
元谷 国連を広島に持ってくることはいい考えだと思います。オバマ大統領の訪問によって、広島はこれまで以上に世界中に知られる都市になりましたし。私はオバマ訪問を一昨年から予想していて、広島に昨年から七二七室の大型ホテルを建設しています。今回その予想が当たりました。オバマ大統領は核廃絶を目指すプラハ演説でノーベル平和賞を受賞しましたが、その後は核セキュリティサミットを開催するも、目立った核廃絶への成果はありませんでした。しかし今回の訪問で、アメリカの現職大統領で初めて広島を訪れたという業績を打ち立てることができました。
中山 私もオバマ大統領は政治家として起承転結をつけたなと感じました。今、国際会議で重宝がられているのは、元イギリス首相のトニー・ブレアです。非常にスピーチが上手いですし、労働党でリベラルな印象ですから。オバマ大統領は、任期終了後、トニー・ブレアを凌駕する国際会議の人気者になるでしょう。スピーチは同様に上手で、初の黒人大統領、ノーベル平和賞受賞者で核廃絶論者と、条件が整いすぎるぐらい整っています。
元谷 しかしロシアのクリミア半島併合、ウクライナ内戦やISの跋扈、南シナ海での中国の環礁埋め立てての軍事基地化などの原因は、全てオバマ大統領の「アメリカは世界の警察官ではない」発言です。米中の軍事力の差は明らかなので、南シナ海も今アメリカが圧力を掛ければ中国は引き下がるはずなのに放置。滑走路など基地施設が整ってしまえば、もう手は出せません。
中山 太平洋戦争の五十年前にオレンジ計画という対日戦争計画を立案していたアメリカですから、今も「ウォープランチャイナ」を考えているはずです。中国はすでに第一列島線、第二列島線を突破していて、陸海の兵力が入り乱れる形で太平洋がリスクの海になりつつあります。こんな中、日本も自国のリスクをどのようにして最小限にするかを考える必要があります。
元谷 同感ですね。
中山 また、これからの世界でイニシアチブをとるのに最も重要なことは、人工知能(AI)の技術を独自開発し、手中に収めることです。日本には、昨年、世界的なスパコンランキングで一〜三位を独占した齊藤元章さんというAI研究者・スパコンのアーキテクチャーがいるので、この分野の発展のさせ方によって、まだ未来は明るいですが、お隣の中国も負けてはいません。今後、日本の約十倍の予算、一兆五千億円程の予算をかけて、急激に開発を進めてくるはずです。その目的は何か? もうお気付きのことだと思います。
元谷 やはり技術力ですよ。日本は多くの先端科学技術を保有しながらも、部品など技術を使って一部分だけを担当して、完成した商品を高く購入させられています。この構造はスマートフォンも戦闘機も変わりません。しかし今航空機の分野ではMRJ(三菱リージョナルジェット)の開発が最終段階を迎え、心神と呼ばれるステルス戦闘機の開発も進んでいます。中国を抑えこむためには、アメリカも日本のこういった技術力に頼らざるを得ないでしょう。実は切れ者であるトランプ氏は、本音のところではこの辺を理解しているのではないでしょうか。
中山 そんなスーパービジネスマンとディールするためには、日本のスーパービジネスマンである代表のような人を集めてチームを作る必要があるかもしれません。
元谷 そうですね。トランプ氏と対峙できる日本の政治家は安倍首相ぐらいでしょう。安保法制の整備や戦後七十年談話、伊勢志摩サミットなど様々な課題をクリアして、安倍首相は日を追う毎に強くなってきています。ロシアのプーチン大統領と対等に交渉できるのも、安倍首相だからです。
中山 アメリカも注目する日ロ外交は、慎重に進める必要があります。ロシアもしたたかですから、北方四島に関しても当面厳しい交渉が続くでしょう。
元谷 中国が本当に仲が悪いのは、長い国境線を共有するロシアです。中国包囲網にはロシアの協力が不可欠なのも確かです。実は四島返還を煽っているのはアメリカです。日本が四島に拘ることで、いつまでもロシアとの対決姿勢を続けることがその目的です。すでに軍事基地化している択捉島の返還は、事実上不可能でしょう。政治は妥協です。二島や二分の一など、どこかで妥協して平和条約を締結し、中国包囲網にロシアを引き込むべきです。
中山 全く同感です。実際、中国とロシアの間では、国境紛争のあった大ウスリースキー島とボリショイ島を分割することで決着がついています。
様々な変革が必要だ
元谷 陸で接する周辺諸国全てと戦争をしてきた中国の次の狙いは太平洋です。圧倒的に低コストの大量輸送が可能になる海運を確保しているシーレーンを、日本とアメリカは緊密な連携の下、中国から守らなければならないでしょう。そのためにも日本は憲法改正を行い、日米安保条約を片務条約から相互条約に変えて、変化する世界に対応しなければなりません。
中山 キューバとアメリカが国交を回復したことにより、唯一地球上で冷戦構造が色濃く残っているのは、朝鮮半島だけになりました。今後北朝鮮がどのようになるのかが、日本の命運を左右するように思えるのですが…。
元谷 北朝鮮は一種の緩衝エリアです。タイが最後まで植民地にならなかったのは、イギリスとフランスの緩衝地帯として、どちらの国も手を出さなかったからです。今の北朝鮮にしても、ロシア、中国、韓国のいずれの国に併合されても力のバランスが崩れるでしょう。北朝鮮国民には申し訳ないですが、現状のままが一番平和には貢献するように思えます。
中山 現実的にはその通りですね。まさに、アンバランスなバランスです。それにしても不幸なのは、独裁者のもとで怯えながら生活している、その国の国民です。拉致問題も含め、早期に解決を求めなければならない課題が山積しているのも現実です。
元谷 世の中は必ずしも理想通りにはなりません。あまりにも社会主義によって理想を追い求めた挙句にスターリンや毛沢東といった独裁者を作り出したことで何千万人もの犠牲者を出してしまったのが、ソ連や中国です。政治家はこのような歴史もしっかりと勉強するべきです。戦後七十一年経っても自主規制で守っているプレスコード(新聞編集綱領)からメディアは脱却しなければならないですし、歴史教科書も正しいものに変えるべきです。また国家として情報謀略戦を勝ち抜くために、三千人規模で予算三千億円の情報省を作るべきだと、私は常々話しているのですが…。
中山 私も自民党の「インテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクトチーム」一員として、情報戦略の重要性を痛感しています。また現在の五兆円規模の国防予算では、正直、日本国民の生命財産が守れない。周りの状況を考えると、増額する可能性を否定してはいけないし、隙を与えるような事があってはいけないと思います。
元谷 今はGDPの一%の防衛費が不文律ですから、一億総活躍でのGDP六百兆円の目標が達成されれば、六兆円になります。増えた一兆円をどう使うか。ミサイル防衛など防御兵器ばかりではなく、最先端技術を活用してレールガンやレーザー砲などの攻撃用兵器の開発を行うべきです。そして世代が古くなった武器は周辺諸国に輸出して、その資金で新しい兵器を開発するという循環を作るべきでしょう。
中山 仰る通りだと思います。また国の情報収集能力も向上させなければならないのですが、民主主義国家における秘密は、基本公開が原則です。これはある意味、国民と国家の契約です。収集のためには情報の公開も行わなければなりません。アメリカでは情報自由法で決められていますが、期限を決めて永久秘密を除く全ての国家情報を公開する原則があります。日本も類似の法律を作って、アメリカと同レベルの公開システムを整備するべき。そこで初めて情報収集が更に深化できると私は考えています。
元谷 情報といえば、先日中山さんが勝兵塾で行った講演で指摘していた、中国が砂漠に日本の軍事施設に似せたものを作り、ミサイル演習の標的にしていることが、グーグルマップの分析で判明したという話、非常に恐ろしいと思いました。東京大空襲の前に、アメリカが砂漠に木造建築物を作って、焼夷弾の投下演習を行ったのと同じです。
中山 これを知れば、平和安全法制の必要性も良くわかると思うのですが。このような情報収集は今後益々重要になるでしょう。
元谷 その通りです。さて、単独で行われる参院選、安倍首相は自民公明で改選議席の過半数である六十一議席を勝敗ラインに設定しました。しかし参院で改憲派が三分の二の議席を獲得するには、改憲に賛成する政党が七十八議席獲得する必要があります。かなり高いハードルです。
中山 民進党と共産党が手を組んで野党統一候補を出してきた一人区は、特に激戦が予想されます。
元谷 最近は共産党も天皇参加の式典に出席するようになりましたが、党の綱領やこれまでの主張を見れば、明らかに共産党は他とは異なる考えを持つ政党です。一時は政権を担った民進党がそんな政党と組むのは、従来からの支持層を失うのではないでしょうか。四月に行われた衆議院北海道五区の補欠選挙では、民進党と共産党のコラボが足し算になったというのですが、本当でしょうか。
中山 あれは北海道特有の政治風土があったからだと思います。
元谷 確かに元々左翼が強い土地柄ですね。中山さんの尽力により、自民党など改憲勢力が無事参議院の三分の二の議席を獲得することを、心から願っています。最後にいつも「若い人に一言」をお聞きしているのですが。
中山 国力量を計算できるレイ・クライン博士の方程式というものがあります。
計量認識された国力量=((基本指標 人口+領土)+経済力+軍事力)×(戦略目標+意思)
この式で重要なのは、戦略目標と意思です。どれだけ経済力や軍事力があっても、この二つが例えばゼロならば、計量認識された国力量はゼロになってしまいます。若い人にはぜひ、戦略目標とそれを遂行するという国家の意思、国民の意思を鍛えて頂きたいですね。
元谷 今日は非常に興味深いお話を聞けました。ありがとうございました。