Big Talk

日本の真実を英語で世界に発信していく

明星大学教育学部 教授 高橋史朗
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APAグループ代表 元谷外志雄

教育学者として「親学」を提唱する一方、歴史学者として日本政府がユネスコに提出した南京大虐殺の世界記憶遺産登録に対する意見書を作成した明星大学教授の高橋史朗氏。英米の大学を巡り、日本占領時代の一次資料を収集して真実を解明しようとしている氏に、占領計画の緻密さ、情報プロパガンダ戦の重要さをお聞きしました。
高橋 史朗氏

1950年兵庫県生まれ。1973年早稲田大学第一文学部を卒業、1978年早稲田大学人文学研究科教育学修士を取得。1981〜82年にはアメリカ・スタンフォード大学フーバー研究所で客員研究員を務め、1984年から明星大学に在籍、現在に至る。著書に「日本が二度と立ち上がれないようにアメリカが占領期に行ったこと」(致知出版社)、「日本文化と感性教育」「検証戦後教育」(モラロジー研究所)などがある。

GHQの占領政策は長年の日本人研究の「成果」

元谷 今日はビッグトークにご登場いただき、ありがとうございました。先日の勝兵塾の講演は大変素晴らしかったです。

高橋 ありがとうございます。今日はよろしくお願いいたします。

元谷 講演内容は、先の大戦直後、占領軍は日本人の性格を徹底的に研究し、WGIP(ウォーギルトインフォメーションプログラム)を実行したということでした。七十年経過した今も、日本人はこの後遺症で苦しんでいます。

高橋 そうです。また勝兵塾では、ユネスコの世界記憶遺産に南京大虐殺の登録が決定した経緯もお話ししました。これは日本外交の大失態です。次は従軍慰安婦で、二〇一六年三月に中国をはじめとした国が共同申請を行い、二年後には登録が決定する可能性があります。いずれも情報プロバガンダ戦です。戦後の日本にとってこの情報プロバガンダ戦の始まりは、アメリカ軍による占領政策であり、WGIPです。この源流を探るため、三十五年前に私はアメリカに三年間留学し、ワシントンの国立公文書館やメリーランド大学のプランゲコレクションなどから、GHQの資料を段ボール10箱分筆写しました。プランゲというのは、「トラ! トラ! トラ!」の原作を書いた歴史学者です。文芸評論家の江藤淳もこのコレクションの研究をしました。

元谷 膨大な量の一次資料を集めたのですね。

高橋 はい。私の名前の史朗は、父が歴史を明らかにする人間になれと名付けたものですから。約二百五十万頁の占領文書を調査しました。これでGHQの政策はわかったのですが、アメリカのプロパガンダ作戦の全てを取り仕切っていたOWI(戦時情報局)や特務機関だったOSS(戦略諜報局)の方針は資料がまだ三十五年前には公開されておらず、わかりませんでした。原点回帰ということで、三年前から私はアメリカでの資料発掘を再開し、大学の休みに渡米して、年間一万キロほど車で走って、全米の大学に保管されている占領文書を調べています。

元谷 一万キロは凄いですね。

高橋 いろいろなことがさらにわかってきました。GHQ内の組織に民間情報教育局というものがあり、ここの幹部はOWI出身の対日心理文化戦略の専門家でした。つまり彼等は日本人に対して何を行えば戦意とプライドを失うかを研究してきた人々であり、彼等の下でWGIPは構想されました。驚いたのは、一九四二年時点で、すでに占領計画が立案されていたということです。後に民間情報教育局の幹部としてWGIPの陣頭指揮を執るブラッドフォード・スミスは、OWIに所属していた一九四二年に、「日本精神」「日本―美と獣―」という二つの論文を書いています。この論文の中で彼は古事記の国生み神話をひき、イザナギノミコトが我が子カグツチノカミの首を斬って殺したという部分が、南京大虐殺を予言していたというのです。美を求めながらも、残虐行為を行うと、彼は日本人の矛盾した二面性を指摘しています。この指摘はルース・ベネディクトの「菊と刀」にも共通しています。そしてスミスもベネディクトも、日本の伝統的な国民精神は軍国主義だと言うのです。

元谷 日米開戦直後に占領計画を考えていたということは、さもありなんという印象です。日露戦争で日本が勝利した直後にアメリカはオレンジ計画を立案し、日本を仮想敵国とした戦略を練っていました。これは桂首相がアメリカのユダヤ人鉄道王・ハリマンと交わした南満州鉄道の共同経営の約束を、外務大臣の小村寿太郎が大反対したことによりひっくり返したことが原因です。これで日本はユダヤ人を敵に回してしまいました。そしてアメリカは着々と仮想敵国・日本の研究を行い、その膨大な積み重ねの成果として占領政策を立案したということですね。急に思い立って作成した占領政策では、あれほどまでの成功を収めることはなかったでしょう。

高橋 その通りです。アメリカは日米戦争時、対日文化戦略に、ハーバードやコロンビアをはじめとした一流大学から、九百人もの学者を動員しています。そして一九四四年の十二月十六、十七日にニューヨークで太平洋問題調査会の日本人性格構造分析会議が行われ、文化人類学者や精神分析学者、心理学者など三十人の専門家が集まりました。この会議で日本人の性格は、幼稚で未熟で侵略的だというレッテル貼りが行われたのです。マッカーサーが日本人の精神年齢が十二歳と言ったのは、この影響が大です。またもう一つアメリカの日本占領計画に大きな影響を与えたのは、イギリスの社会人類学者ジェフリー・ゴーラーが一九四二年に出した「日本人の性格構造とプロパガンダ」という論文です。ゴーラーやルース・ベネディクト、そしてジェンダフリーの教祖とも言える文化人類学者のマーガレット・ミードらが、WGIPのキーパーソンなのです。これらのことは、私が二〇一四年に出版した「日本が二度と立ち上がれないようにアメリカが占領期に行ったこと」という本に詳しく書かれています。

広島・長崎への原爆投下はアメリカのソ連への牽制

元谷 高橋さんは一次資料を読み解くことによって根拠のある推論を行なっているのが素晴らしい。私は日米戦争はある意味で宗教戦争だったのではと考えています。フィリピンのようにすぐにキリスト教化することなく、天皇制や島国故に培われた独自文化によって、キリスト教を受け入れないでいた日本を、宗教国家・アメリカはなんとかして変えようとしたのではないでしょうか。

高橋 キリスト教化を目指していた事を立証する史料もあります。フランスでのユネスコの国際会議でも「文明間の対立ではなく、文明への無知が紛争を招く」という決議が採択されました。未だに日本文明に対する無知が国際社会には広がっています。ブラッドフォード・スミスは日本精神の核は武士道、神道、皇道と分析し、バーンズ国務長官の言葉にある通り、「日本精神は軍国主義に根づいている」というレッテル貼りをアメリカは行い、日本人の精神的武装解除を行ったのです。これが今にまで影響を及ぼしています。

元谷 日本精神を批判する日本人を育成することで、日本人同士が貶め合うように仕向けるのが、アメリカの占領政策でした。外部から見れば、これほどリスクの少ないことはないですから。第一次世界大戦に敗れても立ち上がったドイツのように、日本が復活することをアメリカは恐れたのです。だからWGIPやプレスコード、公職追放や日教組など、あらゆることを巧妙に実行して、反日日本人を増やすことに成功しました。

高橋 おっしゃる通りで、GHQは日本の内的自己崩壊を目指しました。WGIPの実践的原型は中国にあり、軍国主義者対人民という架空の対立図式を作った中国共産党の八路軍が日本兵に行った洗脳教育でした。この教育で、筋金入りの国士まで、約九割の捕虜が転向したと言います。それは何故か。八路軍は日本人捕虜を「同志」と呼び、優しく扱い、お金もあげました。そして一緒に連携して日本の軍国主義者を倒そうと呼びかけたのです。これを土台としてWGIPを立案したGHQは、占領政策に一番協力的な日本人は共産主義者だと考えていました。歴史学研究会という共産主義者の研究グループに、「真相はこうだ」とは別の「日本人民の歴史」というラジオ番組を計画させていたぐらいです。朝鮮戦争の勃発でアメリカの方針が日本を反共の盾とすることになったために、その番組は陽の目を見ませんでした。

元谷 GHQの占領政策とコミンテルンの歴史観と東京裁判史観が一体化していたのですね。

高橋 正にその通りです。日教組も羽仁五郎と占領軍が密談を重ねて作ったものです。

元谷 先の大戦時に連合国は、独ソ戦を戦うソ連に対して武器はもちろん工場など生産設備まで支援して、この国を軍事的なモンスターにしてしまいました。このままでは戦後、ソ連は戦勝の勢いで、ヨーロッパはおろか地続きの地を全て共産化してしまうのでは…というのが、アメリカの恐怖だったのです。そこで議会機密費で密かに原子爆弾の開発を開始、ドイツには使用しないということでドイツ人の亡命科学者の協力を得ます。当時すでに日本はソ連や国府軍、バチカンを通じて戦争終結の道を探っていましたが、国体護持、すなわち天皇制の維持だけは絶対に譲れない条件でした。アメリカはこの日本の動きを知りつつ、原爆完成までの時間を稼ぐために、わざと日本の国体護持の件を曖昧にし、最初は天皇制の維持を盛り込んでいたポツダム宣言からも、これを削除させたのです。そこまでしてアメリカが原爆を日本に投下したかった理由は、ポスト第二次世界大戦で世界覇権を握ることと、ソ連を牽制して第三次世界大戦を冷戦に変えることでした。

高橋 その通りです。

元谷 しかし原爆投下を正当化するためには、日本は悪い国でそれをいい国アメリカが原爆投下でいい国に変えたというストーリーが必要でした。だから東京裁判史観やWGIPで日本国民に罪悪感を植え付けたのです。

アメリカの歴史教科書では真珠湾攻撃はテロ扱いに

高橋 アメリカに行くと、できるだけアメリカで学んでいる日本人の高校生と話をするようにしています。ロサンゼルスの高校生と話したのですが、学校では日本がなかなか降伏しないから、戦争を終結するために原爆を投下した、そうしなければもっと多くの人々が亡くなったと教えるのです。彼は勇気を振り絞って、戦闘要員ではない一般の婦女子まで殺傷していいのかと尋ねたのですが、教師は戦争では一般人を殺してもいいと答えたそうです。しかし原爆投下の真相は代表の仰るようにソ連の牽制であり、日本人は単なるメッセージの配達人に過ぎなかったのです。

元谷 その通りです。

高橋 アメリカのマグロウヒルという出版社の歴史教科書には、慰安婦は天皇からの贈り物、南京大虐殺の犠牲者は四十万人と書かれています。アメリカにいる日本人の高校生は、ずっと下を向いたままこんな教科書による歴史の授業を受けているのです。

元谷 日本だけではなくアメリカの教科書もそんなに酷いのですか。中国や韓国なら、なおさらでしょう。子供時代に学んだことは、心に浸透します。まず日本から国民が誇りを持つことができる教育に切り替えないと。

高橋 全く同感です。

元谷 日米戦の直接の発端となったハルノートですが、日本に渡された当時、アメリカでは国民はおろか議会も知らなかった。そのことを共和党の下院議員だったハミルトン・フィッシュが後に自分の本に書いています。ハルノートが公表されていたら、厭戦気分のアメリカ世論は戦争反対に傾き、日米開戦は回避できたかもしれません。

高橋 それも情報戦での日本の敗北です。世界記憶遺産の話に繋がります。今回の南京大虐殺の登録は、情報収集と対応の遅れが原因です。中国がユネスコに積極的に働きかける一方、日本は圧力を掛けたと言われないように、紳士的に対応していたのです。またユネスコ事務局は否定していますが、ユネスコ側が中国に従軍慰安婦の共同申請を奨励したと、中国外務省の副報道局長が記者会見で明らかにしています。こういうことを把握していないのも、日本側の失態です。

元谷 南京事件に関して、二〇一〇年の北岡伸一氏が座長を務めた日中共同歴史研究で、中国側の犠牲者三十万人という説に迎合して、「二〇万人を上限として、四万人、二万人などさまざまな推計がなされている」としたのは、全くの誤り。きっぱり虐殺はなかったと主張すべきだったのです。また日本の教科書にも自由社のもの以外には、全て南京で虐殺があったと記載しています。すっかり内堀から外堀まで埋められて、今に至ります。

高橋 外務省ホームページの歴史問題Q&Aには南京大虐殺に関して「被害者の具体的な人数については諸説あり、政府としてどれが正しい数かを認定することは困難」としていますが、事実に踏み込んだ反論はしていません。

元谷 戦争ですから軍人や便衣兵は殺したかも知れませんが、女性や子供など民間人は一切殺していないと書くべきです。むしろ中国兵が服などを奪うために民間の中国人を殺したりとか、督戦隊が逃げる中国兵を殺したりというケースが多かったはずです。

高橋 「南京事件」はありましたが「南京大虐殺」を立証する史料はないのです。

アパホテルの展開によって真実をアメリカ人に伝える

元谷 最近私は、これらの日本に対する誤った歴史認識の払拭のために、アメリカのユダヤ系のマーケティング会社を成功報酬で雇えと言っています。二〇一五年十一月、アメリカ初のアパホテル、〈ウッドブリッジ〉オープンの記者会見にマーケティング会社を使いましたが、数多くのメディアが集まり、中には四大ネットワークの一社も入っていました。やはり非常に優秀です。またユダヤ系だと、全世界的なネットワークも活用できるでしょう。

高橋 それはいいアイディアです。日本人は外国人へのアピールが下手です。

元谷 アメリカで発信すると日本で報道するのです。その逆はありませんが。マーケティング会社に成功報酬を、例えば従軍慰安婦強制連行性奴隷説や南京大虐殺を完全否定すれば二十億や三十億円支払っても、日本の予算規模からすれば大したことはありません。

高橋 日本人のアメリカへの影響力も低下しています。カリフォルニア大学サンディエゴ校の留学生は昔は日本人が圧倒的に多かったのですが、今は日本人が百人に対して、韓国人が千人、中国人が二千人です。これは憂慮すべきことです。まず日本は国家戦略として、海外向けの情報発信を首相直属で担当大臣と専従スタッフを置いて行うべきなのです。そうしないと、南京登録のようなことが、今後も次々と起こるでしょう。

元谷 孫子の代まで貶められて、金銭では償えないほどの損害です。情報発信組織と同時に、日本と日本人に誇りを持てるような教育も行わないと。今は海外で中国人や韓国人に責められて、ごめんなさいとしか言えない。日本が世界第二位の経済大国だった時には、日本人には誇りがあり、中国も韓国も日本を非難しませんでした。冷戦の終結に伴って、アメリカがソ連の次に仮想敵国としたのは、冷戦漁夫の利で経済発展を遂げた日本でした。以来日本経済は低迷を続けています。これに対応しなければならないはずなのですが、日本では戦後敗戦利得者と偏差値エリートが結託した東大法学部出身の官界、法曹界、メディア業界の人々の「ステルス複合体」と呼ばれるネットワークが、アメリカと結びついて日本を牛耳っています。これをひっくり返す必要がありますね。

高橋 従軍慰安婦について、国連人権理事会から日本政府に対して質問状が来ていて、これに対して日本政府は見解を返し、人権理事会の最終見解が来年三月に発表されます。河野談話を出す際に行われた日本政府の調査資料が全五巻で出版されています。その中には軍の強制連行を示す証拠は一行もありません。日本は従軍慰安婦二十万人の強制連行や性奴隷ということが、まるっきり嘘であるという歴史的事実を実証的、客観的に英語で説明すべきです。これをこれまで避けてきた。一方中国政府は、上海師範大学の先生が出版した中国人慰安婦に関する本に、一千三百二十万円の助成を行っています。中国が国を挙げての歴史戦を挑んでいるのは明らかでしょう。日本も英語による情報発信を強化すべきです。

元谷 英語での発信は重要です。アパホテル〈ウッドブリッジ〉にも各部屋にこのApple Townを置いているのですが、そのために記事の英訳を増やしました。今後アメリカでアパホテルが増えていけば、私の主張がアメリカにも浸透していくことになると思います。また今回の「真の近現代史観」懸賞論文では、ケント・ギルバートさんが最優秀藤誠志賞、ロバート・D・エルドリッヂさんが佳作と二名のアメリカ国籍の人が入賞しました。

高橋 そういう外国籍の方からの発信も大切ですね。

元谷 その通りです。今安倍政権は一億総活躍社会を目指すとする中で、GDP六百兆円を掲げています。現在より百兆円増えるわけですが、防衛費を一%枠で考えると、一兆円予算が増えることになります。その分は情報戦対策に充てるべきです。現状では予算が少なすぎます。また反日日本人ばかり出演するメディアや、新事実が判明しても定説を変えない歴史学会も改革すべきでしょう。

高橋 若者が意見を表明できる場も増やすべきです。韓国にはVANK(バンク)という団体があり、韓国国内に十万人、その他海外の多くの若い韓国人が参加していて、正しい韓国の姿を世界に伝える活動を政府と連携して行っています。彼らの成果の一例としては、「日本海」を「東海」と地図に書く国が一気に十倍になりました。こういう運動を日本でも起こしたいですね。

元谷 「真の近現代史観」懸賞論文でも最優秀賞に学生部門を設けていますが、応募は多くはありません。日本ではまだ国益を主張するだけで「右翼」と看做される風潮があり、意見を表明することを自粛する人も多いのでしょう。国益の追求は国民として当然のことです。これも教育とメディアの問題ではないでしょうか。

高橋 日本の若者を目覚めさせるのは、海外で暮らす日本人の若者と話をさせることです。先ほどお話したように、歴史の授業で反論できず、ずっと下を向いて屈辱に耐えている高校生がいることを、まずは知ることから始めるべきでしょう。

元谷 私も同感です。最後にいつも「若い人に一言」をお聞きしているのですが。

高橋 日本は今、名誉を傷つけられ、国際的に誤解されたままになっています。日本の真実を世界に発信できる若者になって欲しいですね。歴史的真実ほど人を説得できるものはありません。私が一次資料の発掘に全力を挙げているのもそのためです。若者から大人まで、日本の真実を堂々と発信することが日本人に求められていることだと思います。

元谷 本当のことを知れば皆保守になると私は考えています。知らないからいつまでも自虐史観なのです。日本人が真実を知り、それを世界に発信していくうねりを作っていきたいですね。今日はありがとうございました。