日本を語るワインの会150

ワイン150二〇一五年十一月十一日、恒例「日本を語るワインの会」が代表自邸にて開催されました。夏冬合わせて七回オリンピックに出場した参議院議員の橋本聖子氏、第四回「真の近現代史観」懸賞論文で最優秀藤誠志賞を獲得した札幌医科大学教授の高田純氏、ドイツをはじめ世界各地で外交官として活躍してきた外務省参与の鹿取克章氏と夫人の恵津子氏、カリブ海の島国・ドミニカ共和国大使館の公使参事官のエルネスト・トーレス・ぺレイラ氏と夫人のアレクサンドラ・ヴァローヴァ・ポーレス氏、世界一の乗降客数を誇る新宿駅を有する新宿区長の吉住健一氏、人材紹介、研修、医療サービスなど様々なビジネスを展開し自身も医師免許を持つ株式会社DYM代表取締役の水谷佑毅氏をお迎えし、政治から経済まで、グローバルな話題で盛り上がりました。
スポーツと観光と医療を組み合わせた施設を日本に
 橋本聖子氏は、スピードスケートで冬季大会に四回、自転車競技で夏季大会に三回と合計七回オリンピックに出場している。これは世界最多なのだが、ジャンプの葛西紀明選手が七回で並んでいる。陸上競技におけるロシアのドーピング事件が発覚、国単位でのオリンピックの出場停止まで検討される事態に発展している。国ぐるみでドーピングを行っていたとするならば、それは社会主義体制からずっと行われていたのではないだろうか。薬物に関しては尿検査で調べるが、昔は他人の健全な検体を差し替えるという不正が行われていた。しかし今は採尿の瞬間まで立会人が入るので、他人の検体を提出することは無理だ。しかし検査をすり抜ける薬など、新しい抜け道が次々と開発されている。橋本氏は国会議員になって二十年。義理のお兄さんや所属していた会社の社長が国会議員だった関係で、選手の時から、現役を引退したら議員になったらと言われていた。実際世界のアスリートを見ても、メダリストが国会議員になっているケースが非常に多い。
 ヨーロッパのリゾートエリアのホテルやペンションは、医療機関をきちんと完備しているところが多い。リゾートに長期滞在して、スポーツと観光と医療の組み合わせで、楽しみながら健康を回復するのだ。このようなプログラムに日本でもスポーツ界からアプローチ、東京大会オリンピックも活用して、健康産業の創出を図らなければならない。
 ドミニカはカリブ海に浮かぶ美しい島国だ。人口は一千万人を少し超えたところ。四十五万平方キロメートルにそれだけの人々が暮らしているので、人口密度は比較的高い。一四九二年、新大陸にやってきたスペイン人が最初に上陸したのは、この島だった。言葉はスペイン語だが、文化はスペインと元々のドミニカの文化、そしてアフリカが入り混じったダイナミックなものだ。住んでいる人々も見た目からして様々だ。
 アメリカ大統領選挙の共和党の候補者争いだが、日本でもようやくフロリダ州選出の上院議員、マルコ・ルビオ氏が注目されるようになってきた。代表は以前からルビオ氏が日本にとっては一番良い大統領候補だと主張していた。まだ四十四歳と若いが議論に強く、中国にも強硬で、尖閣諸島の防空識別圏に反対して、批判決議案を上院に共同提出して可決させている。政策能力もディベート能力もある。ただWASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)ではない。過去WASPではなかったアメリカ大統領は、カトリックのケネディと黒人のオバマしかいない。カトリックのルビオ氏は、ケネディと同じイメージで打ち出せば、勝てるのではないか。

専門家活用で防げた福島原発事故の風評被害
 高田純氏が第四回「真の近現代史観」懸賞論文で最優秀賞を獲得した論文のタイトルは「福島は広島にもチェルノブイリにもならなかった〜東日本現地調査から見えた真実と福島復興の道筋」。この賞によって、福島に対するいわれのない恐れが緩和されるかと思いきや、自虐の壁は厚かった。チェルノブイリでは核分裂が暴走して原子炉が爆発、三十人が放射線の被曝によってすぐに死亡したが、福島第一原発ではベントが遅れたために、建屋が水素爆発したのであり、飛散した放射能の量も全く異なる。日本の核不信の根底にあるのが、一九五四年の第五福竜丸事件だ。アメリカ軍の水爆実験により被曝、船員の多くが肝機能障害となり内一人が死亡するのだが、彼らは実は放射線の影響によって肝機能障害になったのではない。売血の輸血により肝炎ウィルスが入った血を輸血されて、肝機能障害を発症したのだ。当時多くの日本人が同様の被害を受けていた。また実験が行われたビキニ環礁付近の住民はもっと多くの被曝を受けたはずだが、肝機能障害は一例も報告されていない。メディアは被曝と船員の肝機能障害を結びつけて大々的に報じたのだが、高田氏による第五福竜丸事件の真相発表後も訂正記事を出していない。だから日本人の放射能アレルギーが依然として治らないのだ。メディアにも行政、政治にも必要なのは、科学的な理解を基礎として報道や行動を起こす事だ。科学を無視した報道を防ぐため、ウォッチングを続ける第三者機関を創設するべきだ。
一九九九年の東海村JCO臨界事故の時の文科大臣は元東大総長で原子力が専門の物理学者である有馬朗人氏だった。事故直後に全国の原子力の専門家に文科省から連絡がきて、多くの学者が東海村を訪れて現地を徹底的に調査した。東海村の人々も学者から多くの科学的な知見に基づく見解を知ることができたので、風評被害は一切発生しなかった。福島第一原発事故では、菅直人首相は逆に二〇キロ圏内から科学者を追い払ってしまった。安倍首相であれば、きちんと専門家を入れて対応していただろう。

超一流進学校に採用された自虐史観に満ちた教科書

 勉強不足の人ほど教師の教えることに疑問を持たず、教師に合わせた回答ばかりをするようになる。入試を考えれば、非サイエンス科目は疑問を持ってくると、良い成績が取れない。基本となる教科書だが、中学校の歴史教科書としては、南京事件を記載しなかったただ一社、自由社のものが一番良い。今年の採択において、自由社は伸び悩んだが、同じく保守系である育鵬社の教科書の採択は、いずれも私の地元であり、親交のある市長がいる金沢市、小松市、加賀市などの市で採用された。まず育鵬社、そして自由社というステップが必要なのかもしれない。一方新しく登場した学び舎の歴史教科書は、従軍慰安婦の強制連行など捏造を記載した自虐史観に満ちた教科書だが、筑波大学附属駒場中学校や麻布中学校など、東大に多くに合格者を出す超一流校に採用された。これは由々しき事態だ。
 この九月にオープンしたアパホテル〈新宿 歌舞伎町タワー〉のある旧新宿コマ劇場のエリアだが、中央の噴水のあった場所を現在公園として整備中で、二〇一六年四月に完成する予定だ。この新しい公園の周囲の再開発が進んでいて、ホテルや映画館などが立ち並ぶ明るい街へと変貌しようとしている。毎日三百数十万人が乗り降りする新宿駅は、一日の平均乗降客数世界一と言われている。これまで新宿では西口側にホテルが集中していたが、東口側にもでき始めた。ホテルは集中している方が、利用客もわかりやすく、ホテル側にとってもメリットが多い。アパホテルも〈東新宿 歌舞伎町〉の近くにまた別の土地を購入、そちらもホテルを建設する予定で近々起工式を行い、これで合わせて新宿地区で六ホテル二一五七室となる。また福島にも三百五十室のアパホテルの建設・発注を行った。このホテルは外断熱の方法で造られる予定だ。外壁に断熱効果を持たせることで、内壁に断熱材を入れる必要がなくなり、壁が薄くなった分、スペースを有効に利用することができる。

鉄道や高速道路、ホテルは非常事態こそ業務を続けよ
 非常事態にこそ社会的インフラやホテルなど宿泊業は、業務を継続しなければならない。東日本大震災の時、仙台では停電や断水が発生、多くのホテルが休業したが、アパホテルは代表の指令で、当初は一階・二階を宿泊予約者や近隣の人たちの避難場所として無料で収容し、ホテルにあるシーツや食べ物、飲み物などをあるだけ提供した。その後は、電気も点かないしお湯もでないということを伝えた上で、それでも宿泊したいという場合には、個人で泊まるボランティアの人には無料で、他の人にも格安の宿泊料金で部屋を提供した。避難者や研究者、国境なき医師団など医療関係者は、緊急事態には雨露が凌げる宿が欲しいという人が必ずいる。他のホテルの全てが休業している中、そういう人々のために、お客様に平時のような対応ができないことを伝えた上で、地域で唯一アパホテルは営業し続けた。東日本大震災時には、首都高などの高速道路や鉄道も全てストップ、多くの帰宅困難者を出すという大混乱の要因となった。高速でも鉄道でも、まず試験車を低速で走らせて、ある程度の安全が確認できるのであれば、利用可能にすべきだ。確率が非常に低いリスクを恐れるのではなく、圧倒的に大きい人々のニーズに応える判断をインフラ事業者は行わなければならない。地震時大きな問題になるのがエレベーターの安全確認だ。エレベーターが早急に復旧しないことには、高層の住人は移動や避難もままならない。安全監視カメラやロボットで確認するなど、早急な安全確認技術の開発が求められている。
 地震は必ず再び日本を襲う。東京で大地震が発生したとしても、倒壊する建物の下敷きや火災で死亡するケースは今の建物の構造上減るために、関東大震災よりは被害者はかなり少なくなるだろう。今のマンションは地震に強い。怖いのは家具の下敷きになることで、ワイヤーや留め具など、家具の転倒対策が重要だ。最新の免震マンションだと揺れを緩和する効果で、室内のものが壊れるなどの被害を最小限に抑えることができる。
 インターネットのサービスを利用、住居用のマンションなどを宿泊施設として有料で貸し出す「民泊」が様々な議論を呼んでいる。ホテルや旅館の業界団体からは「民泊」反対の強い意見が出される一方、旅館業法の特例として民泊を一定の条件で認める民泊条例を大阪府は可決、東京でも大田区が制定を目指している。問題となっているのは、マンションだと毎日異なる人が宿泊するという不安、大きな話し声などの騒音、ゴミの出し方がルールに沿っていないなど。日本でもこの後数年はかなり普及する可能性があるが、基本的にはホテルはホテル、マンションはマンションで、機能や作りからして違う。何か事件があればどうなるのか。民泊の需要は、一時期の現象であり、どんどん拡大していくことはないだろう。東京オリンピックを迎えるにあたってホテルがまだ足りないという人がいるが、数多く建設しても、オリンピックが終われば余ってしまう。ホテルは一回建設すれば三十年も四十年もその場所にあるのだ。海外でのオリンピックでも、開催都市のホテルは開催期間前後を含めて二ヶ月程度は当然満室なので、多くの人が少し離れた近隣都市のホテルに宿泊している。東京に宿泊できない人は、千葉でも神奈川でも埼玉でも宿泊できれば良いのではないだろうか。