Essay

世界覇権を目指す中国に緊密な日米同盟で対抗する

藤 誠志

百年がかりで世界覇権壮大な中国の野望

  産経ニュースのサイトに掲載されている「あめりかノート」というコラムがある。二〇一五年二月十五日には産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏が書いた「中国『一〇〇年のマラソン』戦略」というタイトルのコラムが掲載されていた。「『日本の首相の靖国参拝は中国への再度の侵略への精神的国家総動員のためなのだ』『日本の宇宙ロケット打ち上げはすべて弾道ミサイル開発のため、プルトニウム保有は核兵器製造のためだ』」「米国の中国軍事戦略研究では第一級の権威とされるマイケル・ピルズベリー氏が二月三日のワシントンでの討論会で、現在の中国指導部内では、日本について以上のような断言が堂々となされていることを指摘した。中国側の明確な記録にも残るこうした独断に日本側は正面から論争を挑み、正すべきだと同氏は提言するのだった」「一九七〇年代のニクソン政権から現オバマ政権まで一貫して国防総省の中国軍事動向を調べる要職にあったピルズベリー氏は最新の自著『一〇〇年のマラソン=米国と交代してグローバル超大国になろうとする中国の秘密戦略』を紹介し、議論する集いでそんな発言をした」「この書の内容は衝撃的である。もう四〇年以上も中国の対外戦略を研究してきた同氏が、中国は『平和的台頭』や『中国の夢』という偽装めいたスローガンの陰で、実は建国から一〇〇周年の二〇四九年を目標に経済、政治、軍事の各面で米国を完全に追い抜く超大国となり、自国の価値観や思想に基づく国際秩序と覇権を確立しようとしている、と総括するのだ」「ピルズベリー氏によると、中国はその世界覇権への野望の主要手段として『現在の日本は戦前の軍国主義の復活を真剣に意図する危険な存在だ』とする『日本悪魔化』工作を実行してきた。アジア諸国と日本国内をも対象とするこの反日工作は、日本が米国の主要同盟国として安保と経済の大きな柱である現状を突き崩すことを目的にするという。冒頭の中国の日本糾弾もその路線に含まれるわけである」という。

日中戦争の発端はコミンテルンの謀略戦にある

 一九三七年七月に勃発した日中戦争の発端はコミンテルンの謀略であり一九二八年六月の張作霖爆殺事件を関東軍の河本大作大佐が行ったように見せかけて日本に恨みを持たせた息子の張学良によって蒋介石をおびきよせ、蒋介石を監禁した西安事件を機に第二次国共合作をさせたことにある。これは一九三五年七月二十五日から八月二十日にかけてモスクワで開催された第七回コミンテルン世界大会の方針に基づいたもので
あって、Wikipediaのコミンテルンの項によると、
この大会の決議には、「第二に共産主義化の攻撃目標を主として日本、ドイツ、ポーランドに選定し、この国々の打倒にはイギリス、フランス、アメリカの資本主義国とも提携して個々を撃破する戦略を用いること、第三に日本を中心とする共産主義化のために中国を重用することが記されている」という。このコミンテルンの決議を受けて、中国共産党は政権奪取後、日本の共産化工作を開始する。その実態が分かる文書が、中央学院大学の故・西内雅教授が一九七二年に偶然入手した中国共産党の秘密文書「日本開放第二期工作要綱」だ。この文書は「恐るべき中国の対日陰謀工作」と題して、日本語版をApple Town二〇一〇年十月号に、英語版を二〇一〇年十一月号に紹介しており、詳細はホームページの日本語版、英語版で読むことができるから、ここでは主要な部分のみ紹介しておく。

中国の最終的な狙いは天皇処刑と日本の共和国化

 この文書で基本戦略として掲げられているのは、「我が党は日本解放の当面の基本戦略は、日本が現在保有している国力の全てを、我が党の支配下に置き、我が党の世界解放戦に奉仕せしめることにある」であり、解放工作組の任務として次の三段階を想定している。
イ 我が国との国交正常化(第一期工作の目標)
ロ 民主連合政府の形成(第二期工作の目標)
ハ 日本人民民主共和国の樹立―天皇を戦犯の首魁として処刑(第三期工作の目標)
 イに関しては、この文書が発見された一九七二年に日本の田中角栄首相と中国の周恩来首相とが調印した日中共同声明によって達成された。この文書はロの「第二期工作」に関するものだが、この項目も二〇〇九年の民主党政権の誕生によって一旦は達成されたというべきだろう。そして最も恐るべきは、天皇の処刑などと記されているハの第三期工作だ。任務達成の手段としては、以下のように書かれている。「本工作組の任務は、工作員が個別に対象者に接触して、所定の言動を、その対象者に行わしめることによって達成される。即ち、工作者は最終行動者ではなく、隠れた使嗾者、見えざる指揮者であらねばならない。以下に示す要領は、全て対象者になさしめる言動の原則を示すものである。本工作の成否は、終始、秘密を保持しうるかどうかに懸かっている。よって、工作員全員の日本入国身分の偽装、並びに工作上の秘密保持方法については、別途に細則を以て指示する」。さらに具体的な行動要領として、「群衆掌握の心理戦」「マスコミ工作」「政党工作」「極右極左団体工作」「在日華僑工作」に章を分けて、詳細に指示をしている。
 要綱の最後には統轄事項として、人員や経費などが以下のように指示されている。「本工作員の組員は、組長以下約二千名を以て組織する。大使館開設と同時に八百名、乃至一千名を派遣し、以後、漸増する。組長以下全員の公的身分は『大使館員』『新華社社員』『各紙特派員』『中国銀行員』『各種国営企業代表又は派遣員』『教員』の身分で赴任する。組員は、その公的身分の如何に拘らず、全て本工作組長のみの指揮を受け、工作組の工作に専従する。組員は、一部の責任者、及び特殊工作を行う者の他、全員『第四八党校』日本部の出身中より選抜する」「本工作での必要経費は、全て中国銀行東京支店より支出される。中国銀行は、日本国内で華僑及び日本商社より吸収する資金中、銀行業務の維持に必要なる額を除き、残余は全額、本工作の為に支出する。華僑預金は、日本人民民主共和国成立後は、全額没収するものであるから、将来において預金者に返還することを考慮に入れておく必要はない。本工作組長は、常に中国銀行東京支店、党支部書記と密接に連絡し、資金運用の円滑を図らねばならない」という戦慄すべき内容だった。

アメリカの原爆投下の呪縛を解き憲法を改正し真の日米同盟を

 つまり一九三五年の第七回コミンテルンの方針で日本を共産化することを決めた中国共産党は、「百年のマラソン」と呼ばれる長期計画で、建国から百年となる二〇四九年には「アメリカを超える超大国となる」という世界の覇権を目指し、またその一環として、三期に亘る工作によって日本を社会主義の共和国に変える計画を立てていたのだ。このような長期の世界戦略を練っている中国の真の姿をしっかりと把握して対処していかないと、彼らの思う壺となるだろう。南シナ海において中国は岩礁を埋め立て人工島にし、滑走路など軍事施設にして、そこから十二海里の領海を主張している。この蛮行に対抗して、ようやくオバマ大統領は重い腰を上げ、「航行の自由作戦」によってイージス駆逐艦「ラッセン」を派遣、中国が主張する「領海」内を航行させた。船舶には通常、無害通航権があり、どの国の領海であれ「無害」であれば、国際法でどんな種類の船舶も航行することが認められている。アメリカは南シナ海の中国の領海を認めていないので、わざと今回無害通航権は主張していないのだ。そして中国はこの「ラッセン」の行動を「違法行為」だと非難している。オバマ政権は七年目にして初めて、中国に力で対応したことになる。
 二〇一三年の演説でオバマ大統領が「アメリカは世界の警察官ではない」と明言してから、世界は混乱し始めた。ロシアはクリミアを併合、ISがイラク・シリアに跋扈し、フランスなどでテロを頻発させ始めた。そして中国は、南シナ海では人工島の建設、東シナ海では尖閣諸島付近の領海侵犯、そして小笠原諸島付近でのサンゴ礁密漁などやりたい放題だ。きちんと反撃をしないと、どこまでも中国の思うがままになってしまう。必要なことは、日米同盟をかつての日英同盟のような双務的な「真の同盟」に切り替えることだ。そのために第一に必要なのは憲法改正である。そしてアメリカの原爆投下の呪縛を日本が解いてあげることだ。
 日本は戦争終結の意思をバチカンや国府軍、ソ連にその唯一の要件が国体護持にあることを伝えていて、ポツダム宣言にも一度記載したのにアメリカがこれを除いて日本に伝えたのは、まさに完成直前の原爆を使用する前に日本が降伏してくることがないように、天皇を人質にとって戦争を継続させるためであり、原爆を完成させ、広島・長崎に無警告で投下したのは、第二次世界大戦後の世界覇権を目指し、世界赤化のための戦争に雪崩れ込むのを防ぐためにソ連を牽制すべく、原爆を投下し、熱戦を冷戦に変えるためだった。これはアメリカにとっては国益のためにやむを得ない行動と言えなくはないが、また人道に対する罪であるのも確かだ。この呪縛に囚われて、アメリカは自らの正義を主張するためには、日本を貶めなければならず、中国が主張する南京三十万人虐殺説や韓国が主張する二十万人強制連行性奴隷説などを否定してこなかった。

アメリカの次期大統領にはマルコ・ルビオ共和党上院議員が適任だ

 核廃絶を訴えてノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領だが、これまで何の成果も挙げていない。日本が熱戦を冷戦に変えたという原爆投下の必要性を認めてあげれば、オバマ大統領は何らかの核廃絶への足跡を残すために、来年、広島の平和式典に出席して、原爆投下を謝罪するのではないだろうか。そうなれば日米関係が今以上に緊密なものとなる。中国、北朝鮮、ロシアと核保有国がひしめく東アジア地域における力のバランスを保つため、NATO四カ国(ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ)がアメリカと今でも締結しているニュークリア・シェアリングシステムを、アメリカが日本にも認めてくれる可能性が高まってきている。これは平時共同管理している核兵器を、有事には加盟国にレンタルし、その使用指揮権を与えるというものだ。日本は憲法を改正して、真の独立国家にならなくてはならない。アメリカの次期大統領にはマルコ・ルビオ共和党上院議員が適任だ。日本は周りを中国や北朝鮮・ロシアといった親日的とは言えない核保有国に囲まれている。世界で最も核攻撃による被害国となる可能性が高い国は日本である。「二度あることは三度ある」との例え話にあるように三度目の核による被害国は日本だろう、と私の海外の友人が冗談のように話していたが、私にはこれは冗談とは受け取れなかった。それを防ぐためにも日本は非核三原則を廃止して、ニュークリア・シェアリングシステムをアメリカと締結するべきだ。そして撤退するアメリカ、膨張する中国の間で変化している東アジアの力のバランスを保つ必要がある。
 日本解放第二期工作要綱に書かれているような工作は、今でも日本で行われている。これを肝に命じて、膨張する中国を押し留めなければならない。そのためにも強固な日米関係が必要であり、次期アメリカ大統領には日本に対して理解のある共和党から、しっかりと力を持ち行使できる人が就任することが、日本の利益に適っている。私は中国が設定した尖閣諸島付近の防空識別圏について、いち早く中国を非難する決議案を議会に提案、可決させたマルコ・ルビオ共和党上院議員が最も適任だと考えている。
 日本人はGHQによって洗脳されたが、アメリカ人も様々な力によって洗脳されている。先の大戦時、アメリカのルーズベルト政権には二百人ものソ連・コミンテルンのスパイがいたことが、戦後、ソ連とスパイとの暗号通信を解読したベノナプロジェクトによって判明している。そのスパイの一人である財務次官補ハリー・デクスター・ホワイトは、日本に対する最後通牒とも言えるハル・ノートの原案を作成した。これによって日本は開戦やむなしと考えるに至り、真珠湾攻撃を敢行する。下院議員だったハミルトン・フィッシュは真珠湾攻撃への怒りから、それまでの反戦からの態度を一変し、対日戦を容認する演説をした。しかし戦後、ハル・ノートの存在を知り、その演説を強く恥じる。ルーズベルト大統領は、ハル・ノートの存在を議会にも一般国民にも一切知らせていなかったのだ。フィッシュはこれらのことから、ルーズベルトを許すことができないと自著に記している。ハル・ノートを提示された日本はすぐにこの内容を世界に公表すべきであった。そうすれば、反戦機運の強いアメリカ国民も日米開戦に反対したであろう。
 ソ連とコミンテルンが抱いた世界赤化の大きな戦略は、ソ連崩壊後は中国に引き継がれた。それは毛沢東が抱いていた世界覇権を握るための百年計画と合体して、世界中で巧みに着々と進められている。

胡錦濤主席に対する公開質問状
 史実を世界に発信する会の茂木弘道氏の著書『戦争を仕掛けた中国になぜ謝らなければならないのだ!―「日中戦争」は中国が起こした―』を引用する。
 そもそも南京で大虐殺があったという論拠は最近の研究によって根本的に否定されつつあります。以下重要な5つのポイントについて閣下のご見解を伺いたく、謹んでご質問申し上げます。
一、故毛沢東党主席は生涯にただの一度も、「南京虐殺」ということに言及されませんでした。毛先生が南京戦に触れているのは、南京戦の半年後に延安で講義され、そして『持久戦論』としてまとめられた本の中で「日本軍は、包囲は多いが殲滅が少ない」という批判のみです。30万市民虐殺などといういわば世紀のホロコーストとも言うべき事件が本当に起こったとすれば、毛先生が一言もこれに触れないというのは、極めて不自然で不可解なことと思います。閣下はこの事実について、どのようにお考えになられますか?
二、南京戦直前の1937年11月に、国共合作下の国民党は中央宣伝部に国際宣伝処を設置しました。国際宣伝処の極秘文書『中央宣伝部国際宣伝処工作概要』によりますと、南京戦を挟む1937年12月1日から38年10月24日までの間に、国際宣伝処は漢口において300回の記者会見を行い、参加した外国人記者・外国公館職員は平均35名と記録されています。しかし、この300回の記者会見において、ただの一度として「南京で市民虐殺があった」「捕虜の不法殺害があった」と述べていないという事実について閣下はどのようにお考えになられますか。もし本当に大虐殺が行なわれたとしたら、極めて不自然で不可解なことではないでしょうか?
三、南京安全区に集中した南京市民の面倒を見た国際委員会の活動記録が『Documents of the Nanking Safety Zone』として、国民政府国際問題研究所の監修により、1939年に上海の英国系出版社から刊行されています。それによりますと、南京の人口は日本軍占領直前20万人、その後ずっと20万人、占領1ヵ月後の1月には25万人と記録されています。この記録からすると30万虐殺など、到底ありえないとしか考えられませんが、閣下はいかがお考えでしょうか?
四、さらに『Documents of the Nanking Safety Zone』には、日本軍の非行として訴えられたものが詳細に列記されておりますが、殺人はあわせて26件、しかも目撃されたものは1件のみです。その1件は合法殺害と注記されています。この記録と30万虐殺という貴国の主張とは、到底両立し得ないと考えますが、閣下はいかが思われますか?
五、南京虐殺の「証拠」であるとする写真が南京の屠殺記念館を始め、多くの展示館、書籍などに掲載されています。しかし、その後の科学的な研究(『南京事件の「証拠写真」を検証する』〈東中野他・草思社〉など)によって、ただの1点も南京虐殺を証明する写真は存在しないことが明らかとなっております。もし、虐殺を証明する写真が存在としているのでしたら、是非ご提示いただきたいと思います。そのうえで検証させていただきたいと思います。」以上述べました5つの点は南京で大虐殺があったなどということを根本的に否定しているものとわれわれは考えざるを得ません。上記5つの点につきまして、閣下のご見解を承ることができれば幸いです。この問題は多くの日中国民の関心事と考えますので、公開質問状として提出させていただきます。

 質問に対する回答を求めたが、未だにその回答がないとのことである。
 国共内戦に勝利して中華人民共和国を作ったのは毛沢東だが、彼は南京虐殺には一切言及していないし、一九六九年に作られた地図には、尖閣諸島は日本領だと明記されているのだ。この地図は自民党の原田義昭議員が発見して、国会質問で公表、今は外務省がホームページで世界に発信している。日本はアメリカとの同盟を強化し、憲法改正により自立した国家となって、中国の百年掛かりの野望を挫かなければならない。このことは実は中国も望んでいることである。本当は何れの国の軍人も国民も戦争を望んでいない。しかしそこに力の空白域を作ると、誘惑に駆られる人が出てくるのである。だから「力の均衡状態」を作れば、相互抑止力が働き、戦争を防ぐことが出来るのである。それが東アジアの平和への日本の貢献に他ならない。

2015年11月26日(木)12時00分校了