二〇一五年七月七日、恒例「日本を語るワインの会」が代表自邸にて開催されました。日本とインドのより強固なパートナーシップを推進しているインドセンター代表のヴィバウ・カント・ウパデアーエ氏、日本の情報発信戦略を検討する自民党の国際情報検討委員会の委員長を務める衆議院議員・予算委員会常任理事の原田義昭氏、月刊Apple Townに「永田町通信」のタイトルで長年コラムを連載する衆議院議員・自民党広報本部長の馳浩氏、国際的なジャーナリストの父を持ち日本で数々のビジネスを手掛ける株式会社アランコーポレーションCEOのウィットニー・リッチ氏、法人向けの様々な通信サービスを展開するグローバル・タンク株式会社法人営業部部長の坂本聡氏をお迎えし、日本を取り巻く世界情勢について、激論を交わしました。
アジアの覇権を狙う中国はインドに盛んにアプローチ
元々良好な関係を維持してきた日本とインドだが、さらなる人的な交流の仕組みを築くため、一九九六年にインドセンターが作られ、来年二十周年を迎える。日本とインドの関係は、EUの中核となっているドイツとフランスとの関係と似ている。アジアの趨勢は、日印両国関係が鍵になることは中国も良くわかっていて、インドに対して様々なアプローチを仕掛けている。例えば新幹線だ。中国はインドへの自国製新幹線導入のため、日本の新幹線がいかに性能で劣っているかというネガティブキャンペーンを展開している。日本はそんなキャンペーンを公式の外交ではもちろん、民間企業でもやらない。中国らしいやり口と言えばそうなのだが、インド人は騙されない。七月九日、ロシアのウファでBRICS首脳会議が開かれ、中国の思惑で共同宣言に「第二次世界大戦の結果を改ざんする試みは認めない」と日本を暗に牽制するような文言が盛り込まれた。インドは共同宣言にこの文言を入れることに反対した。歴史を振り返り非難をするスタンスを取るのであれば、インドはイギリスが行ったことを持ちださざるを得なくなるからだ。BRICSも各国の開発支援のための銀行を始動しようとしているが、参加各国の関係がまだ成熟していない以上、形だけを作っても上手く機能しないだろう。
この分野ではやはり中国が提唱するAIIB(アジアインフラ投資銀行)の動向がポイントだ。世界銀行、IMF、そしてADB(アジア開発銀行)に替わる機能を持とうとしている。インドは当初参加するつもりはなかったが、最終的には入って内部からコントロールすべきと考えを変え参加した。しかし中国が議決権の二五%で事実上の拒否権を持ち、本部も北京、初代総裁も中国人と国際機関としては明らかにバランスを欠く。日本が参加しなかったのは正解なのだが、AIIBによる中国の覇権形成を黙ってみているのかどうかは問われるだろう。これまで官需で景気を支えてきた中国だが、それが限界に到達したために考えたのがAIIBだ。アジアにインフラが必要なのは確かなのだが、不安材料はバブル崩壊が迫るとも言われる中国だ。中国はこれまで言ったことの七%しか実現させていない。日本は六二〜六五%を実現させているという。
この分野ではやはり中国が提唱するAIIB(アジアインフラ投資銀行)の動向がポイントだ。世界銀行、IMF、そしてADB(アジア開発銀行)に替わる機能を持とうとしている。インドは当初参加するつもりはなかったが、最終的には入って内部からコントロールすべきと考えを変え参加した。しかし中国が議決権の二五%で事実上の拒否権を持ち、本部も北京、初代総裁も中国人と国際機関としては明らかにバランスを欠く。日本が参加しなかったのは正解なのだが、AIIBによる中国の覇権形成を黙ってみているのかどうかは問われるだろう。これまで官需で景気を支えてきた中国だが、それが限界に到達したために考えたのがAIIBだ。アジアにインフラが必要なのは確かなのだが、不安材料はバブル崩壊が迫るとも言われる中国だ。中国はこれまで言ったことの七%しか実現させていない。日本は六二〜六五%を実現させているという。
日本とインドが中心となりアジアにEU的な連合体を
胡錦濤や江沢民と異なり、鄧小平といった大物の後ろ盾のない中国の習近平主席は、軍の元トップを粛清することで人民解放軍をコントロールできるようになり、ようやく日本との関係を正常化する余裕が出てきた。基本的に中国には日本の援助が不可欠なのだから、習近平の態度は当然のことだ。中国の習近平もロシアのプーチンも、一党独裁から単独の独裁者として道を歩み始めているように思える。習近平の腐敗撲滅運動は、胡錦濤派、江沢民派ばかりで自分の派閥には及んでいない。
中国の膨張は日本・インド・アメリカで抑えるべきだろう。一九九八年にインドは地下核実験を行い、核保有国として認知されるようになった。この時、日本の政治家の多くはインドを非難したが、インド側にも言い分はある。先の大戦後、四十年に亘ってインドは核兵器に反対してきたが、世界には核が広がり、インドを脅す国まで出てきた。言葉では交渉できず、核しか通じない国には、やはり核という言葉で語るしかない。事実、インドの核保有で中国の態度が変わった。パキスタンや北朝鮮の核兵器は、中国に持たされているものだ。これを踏まえアジアの力のバランスを考えると、インドの核は日本にとってプラス材料である。
インドが今、安倍首相に提案しているのは、インドと日本が組んで、アジア・アフリカ経済開発銀行を作るということだ。キーワードはエネルギーと環境とサステナビリティ。中国の進出が著しいアフリカは、中国の正体に気づいている。アジアとアフリカの二大陸にまたがることで、多くの参加国を集めることができるはずだ。日本がアジアの中心になるためには力をつける必要がある。その力の源泉は核兵器だ。日本の周囲は核保有国だらけだが、アメリカは日本が核を保有することを決して認めない。であれば、NATOで採用されている有事のみ核兵器使用の指揮権をアメリカから該当国に移譲する「ニュークリア・シェアリング」の仕組みを、日本に導入することをアメリカに認めさせるべきだ。さらに進んで、アフリカで国家の連携が盛んなように、日本とインドが中心となってアジアに連合体を作るべきだ。日本とインドはハードは異なるがソフトは同じ。日本と中国はハードは同じだがソフトが違う。インドと中国はハードとソフト、両方が違う。ソフトが同じ日本とインドがしっかり手を組む。そしてインドが世界の製造業のハブになる。これを中国が一番嫌がっている。連合体の中心にはやはり核が必要だ。EUはフランスという核保有国があるからまとまった。仏独と同じ役割を、インドと日本が果たすのだ。
インドが今迷っているのは、経済の成長・開発モデルを欧米型で行うのか、インド独自の形を追求すべきなのかということだ。ポイントはエネルギー問題。十二・五億人という人口の多さのため、化石燃料だけには頼れない。それを補うのは太陽光や風力などの再生可能エネルギーなのか、それとも日本と協定を締結した原子力発電なのか。熟慮が必要だ。原子力発電をはじめ、日本の科学技術は凄い。中国や韓国には主要分野でのノーベル賞受賞者はいないが、日本は違う。インドにも物理学賞や日本にはいない経済学賞の受賞者がいる。
中国の膨張は日本・インド・アメリカで抑えるべきだろう。一九九八年にインドは地下核実験を行い、核保有国として認知されるようになった。この時、日本の政治家の多くはインドを非難したが、インド側にも言い分はある。先の大戦後、四十年に亘ってインドは核兵器に反対してきたが、世界には核が広がり、インドを脅す国まで出てきた。言葉では交渉できず、核しか通じない国には、やはり核という言葉で語るしかない。事実、インドの核保有で中国の態度が変わった。パキスタンや北朝鮮の核兵器は、中国に持たされているものだ。これを踏まえアジアの力のバランスを考えると、インドの核は日本にとってプラス材料である。
インドが今、安倍首相に提案しているのは、インドと日本が組んで、アジア・アフリカ経済開発銀行を作るということだ。キーワードはエネルギーと環境とサステナビリティ。中国の進出が著しいアフリカは、中国の正体に気づいている。アジアとアフリカの二大陸にまたがることで、多くの参加国を集めることができるはずだ。日本がアジアの中心になるためには力をつける必要がある。その力の源泉は核兵器だ。日本の周囲は核保有国だらけだが、アメリカは日本が核を保有することを決して認めない。であれば、NATOで採用されている有事のみ核兵器使用の指揮権をアメリカから該当国に移譲する「ニュークリア・シェアリング」の仕組みを、日本に導入することをアメリカに認めさせるべきだ。さらに進んで、アフリカで国家の連携が盛んなように、日本とインドが中心となってアジアに連合体を作るべきだ。日本とインドはハードは異なるがソフトは同じ。日本と中国はハードは同じだがソフトが違う。インドと中国はハードとソフト、両方が違う。ソフトが同じ日本とインドがしっかり手を組む。そしてインドが世界の製造業のハブになる。これを中国が一番嫌がっている。連合体の中心にはやはり核が必要だ。EUはフランスという核保有国があるからまとまった。仏独と同じ役割を、インドと日本が果たすのだ。
インドが今迷っているのは、経済の成長・開発モデルを欧米型で行うのか、インド独自の形を追求すべきなのかということだ。ポイントはエネルギー問題。十二・五億人という人口の多さのため、化石燃料だけには頼れない。それを補うのは太陽光や風力などの再生可能エネルギーなのか、それとも日本と協定を締結した原子力発電なのか。熟慮が必要だ。原子力発電をはじめ、日本の科学技術は凄い。中国や韓国には主要分野でのノーベル賞受賞者はいないが、日本は違う。インドにも物理学賞や日本にはいない経済学賞の受賞者がいる。
陸軍=悪玉、海軍=善玉は誤った歴史の見方だ
来年はアメリカ大統領選挙の年だ。民主党で黒人のオバマ大統領に多くの国民は失望しており、次の大統領は白人で共和党が強いという説がある。メディアでは民主党のヒラリー・クリントン、共和党ではジェブ・ブッシュが有力候補とされているが、いずれも元大統領関連の人材であり、賞味期限切れの感は拭えない。注目は共和党のマルコ・ルビオ上院議員だ。二〇一四年、彼は中国の尖閣諸島絡みの防空識別圏の設定を批判し、非難決議案を議会に提出して可決させている。両親はキューバからの移民であり、宗教はカトリック。ヒスパニック層やインド系層の支持を受けている。まだ四十代と若いルビオは、従来のWASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)国家から有色人種国家へと変貌しようとしているアメリカの、将来の有望な大統領候補であることは間違いない。
先の大戦の一番の敗因は、日本の陸軍と海軍の仲が悪く、連動した作戦を展開できなかったことにある。旧軍の暴走と言うと陸軍を指し、海軍は善玉のようなイメージがあるが、そんなことはない。海軍の将校が起こした五・一五事件は微罪で済まし、陸軍の将校が起こした二・二六事件は厳罰に処せられた。海軍びいきは日本海海戦勝利からの伝統だ。例えば真珠湾攻撃は海軍の作戦だが、なぜあの攻撃の後に真珠湾を占領しなかったのか。燃料タンクもドックもそのままにしていたために、大半の沈められた船が引き上げられて、ドックで修繕されて、前線に戻ってきてしまった。山本五十六大将を神格化する人も多い。彼は開戦前に近衛首相に「半年や一年はずいぶんと暴れてご覧に入れますが、後はいけません」と答えたというが、なぜきちんと日米開戦に反対しなかったのか。山本は真珠湾攻撃の時は「長門」に乗って瀬戸内海に、ミッドウェー海戦の時は「大和」に乗って、空母群から五百キロ以上後方にいた。日本海海戦の東郷平八郎とは全く異なり、常に前線に出ない将だったのだ。これでは部下が浮かばれない。一九四三年に乗機が墜落して死ぬが、これは国葬を狙ってのことではないか。もし山本が終戦まで生きていれば、ここまで神格化されることはなかっただろう。先の大戦は頭でっかちのエリートが始めた戦争。戊辰戦争で硝煙と刃の下をかい潜った男たちが行った日露戦争とは、全く様相が異なっている。真珠湾を占領して、さらにパナマ運河の封鎖まで行えば、アメリカのヨーロッパ参戦は大幅に遅れ、状況は決定的に変わっていた。戦争を始めるのであれば、それぐらい徹底的にやるべきだったのだ。
先の大戦の一番の敗因は、日本の陸軍と海軍の仲が悪く、連動した作戦を展開できなかったことにある。旧軍の暴走と言うと陸軍を指し、海軍は善玉のようなイメージがあるが、そんなことはない。海軍の将校が起こした五・一五事件は微罪で済まし、陸軍の将校が起こした二・二六事件は厳罰に処せられた。海軍びいきは日本海海戦勝利からの伝統だ。例えば真珠湾攻撃は海軍の作戦だが、なぜあの攻撃の後に真珠湾を占領しなかったのか。燃料タンクもドックもそのままにしていたために、大半の沈められた船が引き上げられて、ドックで修繕されて、前線に戻ってきてしまった。山本五十六大将を神格化する人も多い。彼は開戦前に近衛首相に「半年や一年はずいぶんと暴れてご覧に入れますが、後はいけません」と答えたというが、なぜきちんと日米開戦に反対しなかったのか。山本は真珠湾攻撃の時は「長門」に乗って瀬戸内海に、ミッドウェー海戦の時は「大和」に乗って、空母群から五百キロ以上後方にいた。日本海海戦の東郷平八郎とは全く異なり、常に前線に出ない将だったのだ。これでは部下が浮かばれない。一九四三年に乗機が墜落して死ぬが、これは国葬を狙ってのことではないか。もし山本が終戦まで生きていれば、ここまで神格化されることはなかっただろう。先の大戦は頭でっかちのエリートが始めた戦争。戊辰戦争で硝煙と刃の下をかい潜った男たちが行った日露戦争とは、全く様相が異なっている。真珠湾を占領して、さらにパナマ運河の封鎖まで行えば、アメリカのヨーロッパ参戦は大幅に遅れ、状況は決定的に変わっていた。戦争を始めるのであれば、それぐらい徹底的にやるべきだったのだ。
憲法学者は国家を守れない命を賭して守るのは政治家
国際関係では黙っていることは美徳ではない。世界では嘘も百回言えば本当になってしまうのだ。三千億円の予算で三千人の人員を配置した情報省を作り、日本に関する誤った情報はすぐに修正する体制を作るべきだ。現状は国家的な広報活動については多少予算は増えたかもしれないが、微々たるものだ。現代の国家間の戦いは銃火を交えるのではなく、情報謀略戦だ。下手を打てば、謀略に絡め取られてどんどん属国化してしまう。世界で一番の反日国家は中国でも韓国でもなく、日本自身だ。靖国参拝にせよ慰安婦にせよ、相手に言われる前に日本人が言い出して問題化している。この反日の理由は、戦後一貫して日本人の意志を分断する政治が行われてきたからだ。そして政治家は中国派やアメリカ派ばかりで日本派がおらず、日本派になろうとすると右翼だと批判された。二〇〇八年の田母神騒動が覚醒効果を発揮し、しだいに世の中が変わりつつある。
安保法制問題が国会の焦点となっている。憲法学者は安保法制が憲法に違反しているというが、ではどうやって日本を守るかを聞くと、それは私の分野ではないという。法律が違憲か合憲かを最終的に判断するのは、憲法学者ではなく裁判所だ。政治家は日本を守るという一番大切な目的のため、憲法の解釈の範囲内のぎりぎりのところで法律を考えている。国民もこれは理解するべきだ。憲法学者にも「業界」があり、あまりにも人と異なることを主張すると、業界では生きていけない。
人生で一番大事なのは、なんといっても運と巡り合わせだ。それも実力の内といえば、そうなのだが。「自分は運が良い」と思えることが、実際に運が良くなることの始まりだ。人生は自分がそれをどう考えるかで、どんどん変わっていく。ポジティブシンキングには意味があるのだ。
安保法制問題が国会の焦点となっている。憲法学者は安保法制が憲法に違反しているというが、ではどうやって日本を守るかを聞くと、それは私の分野ではないという。法律が違憲か合憲かを最終的に判断するのは、憲法学者ではなく裁判所だ。政治家は日本を守るという一番大切な目的のため、憲法の解釈の範囲内のぎりぎりのところで法律を考えている。国民もこれは理解するべきだ。憲法学者にも「業界」があり、あまりにも人と異なることを主張すると、業界では生きていけない。
人生で一番大事なのは、なんといっても運と巡り合わせだ。それも実力の内といえば、そうなのだが。「自分は運が良い」と思えることが、実際に運が良くなることの始まりだ。人生は自分がそれをどう考えるかで、どんどん変わっていく。ポジティブシンキングには意味があるのだ。