五月十六日付の読売新聞朝刊の一面トップ記事の見出しは、「企業利益二〇兆円超に」「東証一部 最高益を更新」だった。続くリードはこうだ。「東京証券取引所一部に上場する企業の二〇一五年三月期決算が一五日、ほぼ出そろった。SMBC日興証券の一四日時点の集計によると、金融を除く企業の税引き後利益は合計で一九兆四、三三〇億円に達し、リーマン・ショック前の〇八年三月期を上回って過去最高になった。最終的に初めて二〇兆円を超えるのは確実で、一六年三月期も最高益の更新が見込まれている」。日本経済新聞の同日の一面トップも「株式配当初の一〇兆円」「上場企業 消費を下支え」という見出しで、以下のような本文が続く。「上場企業が株主への配当を増やしている。二〇一五年度の配当総額は過去最高だった一四年度を上回り、初めて一〇兆円を超える見通しだ。設備投資など将来をにらんだ投資も活発で、企業が資金を必要以上に貯め込まず、株主還元や成長投資に振り向ける動きが広がっている。配当の増加は今春に相次いだ賃上げの動きとともに、国内消費を下支えしそうだ」とある。
二〇一二年十二月二十六日に第二次安倍政権が誕生してから二年五カ月だが、これら上場企業の好業績は、一に経済、二に経済、三四がなくて五に外交と、安倍政権が経済政策に注力してきた成果だろう。安倍首相が自民党総裁に就任した二〇一二年九月二十六日の日経平均株価は八千九百六円、為替レートは一ドル七十七円七十二銭だった。これに比べると、今株価は二・二倍、円は五割も円安となり三分の二となった。以前、元台湾総統の李登輝氏と話をした時も意見が合ったのだが、日本経済をこの二十年間苦しめてきたデフレの原因は、異常な円高だった。これに安倍氏が首相となってすぐメスを入れ、日銀の異次元の金融緩和政策で超低金利という状況を作り出し、その結果が今の円安株高となったのだ。
円安は上場企業の二年連続の好業績を牽引する一方、海外からの観光客の激増も招いている。企業業績上昇による出張の増加や賃金アップによる国内旅行の増加も加わって、今ホテル業界は好況に沸いている。アパグループでは二〇一〇年四月から第一次中期五カ年計画・頂上戦略「SUMMIT5」を実施、東京でトップを獲るべく都心一等地で三十七のホテルプロジェクトを推進している。このプロジェクトで、既に完成したほとんどのホテルの月間稼働率は一〇〇%だ。今年のGWではアパホテル全体で過去最高となる日商五億二千万円超を達成した。高稼働率・高単価のトレンドは、東京から大阪など西日本、北陸新幹線開業に沸く金沢、そして札幌へと日本全国に広がってきた。私はアパホテルの好調から、日本全体の好景気を実感している。
そもそも日本は自然が豊かで、独自の文化が根付いていて、観光資源が豊富で国際的な観光大国となるポテンシャルを備えている。治安も良く女性の夜歩きも可能だし、食べ物も安心して食べられ非常に美味しい。公共交通機関のバスや電車、そして飛行機も、時間通りに運行されるなど、基本的な社会的環境がしっかりと整っている。また、第二次安倍政権が誕生して以降、次々と日本での世界的スポーツイベント等の開催が決定している。二〇一五・二〇一六年FIFAクラブワールドカップ、二〇一七年アジア冬季競技大会(札幌・帯広)、二〇一八年バレーボール女子世界選手権、二〇一九年のラグビーワールドカップ、二〇二〇年には東京オリンピック開催に大阪・横浜でカジノ解禁と枚挙に暇がない。更に今年顕著だったのは、海外からの花見客の増加だ。あまりの海外からの観光客増加によるホテルの高稼働と高単価に、手配に苦慮している旅行代理店も出てきている。
アパグループでは五月十日に創業四十四周年として、産経新聞に見開き二ページの全面広告を出した。この広告のメインビジュアルとなっているのは、日本最大級の二千四百室を擁して二〇一九年に誕生する予定のアパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉だ。今年九月にはかつての歌舞伎町噴水広場前の二十八階建全六百二十室のアパホテル〈新宿 歌舞伎町タワー〉、十二月にはJR田町駅と品川駅の間に新設される新駅にも近い泉岳寺駅前の地上二十一階建全五百六十三室のアパホテル〈品川 泉岳寺駅前〉など、今年度だけでも東京で新たに六つのホテルがオープンする。マンションも第一次中期五カ年計画で都心一等地を中心に十七のプロジェクトが進行中で、ホテルと合わせると五十四プロジェクトが完成・進行中となっている。マンションのフラッグシップブランドとして今年登場した「ザ・コノエ」シリーズ第一弾のザ・コノエ〈代官山〉も、最大倍率二十二倍と非常に好評をいただいている。近日発表となる第二弾のザ・コノエ〈一番町〉にも期待できるだろう。
四十四年間、一度の赤字も一人のリストラもなく事業を進めた、信用累積型経営の結果、三十一年前に始めたアパカードにポイントが貯まるホテルの数は全国で三百二十六ホテル、提携・フランチャイズを合わせた客室数は、建設中を含めると五万二千三百十室、そしてアパカード会員は九百十三万二千八百三十二人に達し、アパホテルは東京のみならず日本でも最大級のホテルグループとなり、その高収益のビジネスモデルは、ホテル業界に革命を起こしている。この躍進のベースにあるのは、私が提唱している、高品質・高機能・環境対応型の「新都市型ホテル」モデルだ。かつてアメリカでは、フルサイズのリンカーンやキャデラックのような大型車に乗ることが高所得者のステータスであったが、今や小型のハイブリッドのプリウスやテスラのような電気自動車に乗るのが高所得者やエリートのトレンドとなった。旅客機もかつてのエンジン四発のジャンボ機は姿を消し、ボーイング七六七やボーイング七七七、最新式の炭素繊維の胴体で軽量化されたボーイング七八七もエンジン二発機だ。更にリージョナル・ジェット機のような燃費の良い小型機で地方空港を結ぶ需要が増加している。いずれもキーワードは高品質・高機能・環境対応型であり、ホテルもこれに沿うべき時代なのだ。
最新のアパホテルの炭酸ガス排出量は、当社調べだが都市ホテルの三分の一だ。卵型の浴槽は従来の八〇%の湯量しか必要とせず、サーモスタット付きの定量止水栓で一定量のお湯が入った段階で自動的に給湯をストップしてくれる。シャワーも空気を混ぜることで、水圧は維持しながら節水を行うタイプを導入、また遮熱カーテンで冷暖房費の削減も行っている。部屋はコンパクトだが、ベッドはシングルでも標準で一、四〇〇ミリと大きく、アパホテルオリジナル開発の高級ベッド「クラウドフィット」を使用、アメニティも高品質で高級ホテルと同じ、テレビは四〇~五〇インチの大型のものを設置、スイッチ類を枕元に集約して便利に…など、高機能・高品質にも力を入れている。これらを背景に、「誇りを持って泊まってもらえるアパホテル」は、「アパホテルに誇りを持ったスタッフによるお客様へのサービス」こそが大きな魅力だ。今年から開始した第二次五カ年計画では、前半の三年で日本国内での独走態勢を固め、後半では日本発の新都市型ホテルモデルを引っ提げて、海外に打って出る予定だ。
日本は今後観光大国への道を歩む。二〇二〇年までに訪日外国人旅行者を二千万人にまで増やすという我が国の目標を、先日、五〇〇万人増の二千五百万人に上方修正したが、今の流れではこれをも大幅に上回るだろう。将来的には、五千万から六千万人の外国人旅行者が来てもおかしくないポテンシャルがあるのだ。またインド、中国、インドネシアなど、近隣に多くの人口を持つ国があり、それらの国々の所得水準が高くなってきていることも、日本にとっては好材料だ。『棘』となっているのは、歴史問題に端を発した日中、日韓の関係のもつれだろう。しかし中国は南京で三十万人が虐殺されたとか、尖閣諸島は中国領などとこれ以上主張しても、捏造であることが明らかになるばかりと悟ったのか、トーンダウンしてきている。二十万人が強制連行されて性奴隷になったと主張する韓国は相変わらずだが、最近、アメリカの公文書で韓国軍がベトナム戦争当時、ベトナム人女性を使った軍の慰安施設を作っていたことが明らかになったり、韓国軍がベトナムで行った住民虐殺がモザイクのタイルによる壁画となって残っている数々の慰霊廟(昨年六月に私も訪れた)が話題となってきている。韓国は事実でもない事で日本を糾弾する前に、自らのベトナムでの行為を謝罪すべきだろう。私は日本にまつわる捏造の歴史を改めるべく、『理論近現代史学』という本を執筆、この六月に出版記念パーティーを行う予定だ。
この本の中で強調したのは、日本とアメリカが真の友好関係を結ぶためには、アメリカが抱える原爆投下の呪縛を日本が解いてあげることが必要だということだ。先の大戦末期、ポスト第二次世界大戦が世界赤化の戦争(第三次世界大戦)となることを抑止するために、アメリカは議会機密費で開発していた原爆が戦争が終われば使用できなくなるため、日本が国体護持を条件に様々なルートで降伏を求めているのを知りながら、これを無視して戦争を継続させて時間を稼ぎ、原爆を完成させ、広島・長崎に投下した。当時の陸海軍トップやマッカーサーまでもが無警告投下に反対したにも拘らず、バーンズ国務長官は、ソ連に対する威嚇と被害の程度を測る実験を有効に行うために、種類の違う二つの原爆を投下することが絶対必要だと考え、それらを押し切ったのだ。
ルーズベルト大統領の急死によって大統領となったトルーマンは、それまで副大統領でありながら原爆を開発していることすら知らなかった。バーンズはそんなトルーマン大統領を説得して、無警告での原爆投下に踏み切らせた。冷徹なバーンズによってアメリカは、ソ連を威嚇し大戦後の世界覇権を握ると同時に、第三次世界大戦を冷戦に変えた。アメリカの国益から考えれば、原爆投下は当然で必要不可欠な行動だったと言える。 しかしやはり民間人の大量虐殺は人類に対する罪であり、原爆を投下したアメリカがその後も良い国であり続けるためには、日本が悪い国である必要があった。そこで、占領後の統治を考え、アメリカは日本を軍国主義者と彼らに引きずられた一般国民とに分断して日本の戦争責任を一部の軍国主義者のみに押し付けた。
日本は西洋列強が侵略して植民地化していたアジアの植民地軍と戦い、宗主国を追い払った植民地解放の戦いを行ったのに、東京裁判では、反対に日本が侵略国家であり、中国国民党政府軍が謀略戦としてつくった捏造の歴史によって、南京大虐殺を引き起こした悪い国だと決めつけられた。アメリカはその悪い国「日本」に原爆を投下して良い民主主義国家に変えたというストーリーを作ったのだ。このストーリーをアメリカは、日本人に戦争についての罪悪感を植え付けるための宣伝計画であるWGIP(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)に基づき、プレスコード(言論統制)を発令し、新聞やラジオ、私書までも開封して検閲し、連合国に不都合な図書七、七六九書を没収、焚書、戦争中公職にいた二十万人もの人々を追放し、日教組を作って教科書を都合の良いように作り変え、アメリカは戦争に対する贖罪意識を徹底的に日本人に刷り込んだ。その洗脳工作は、戦後七十年経っても解けず、世界最大の反日国家は日本自身となってしまっている。そしてアメリカは今も原爆投下の罪の意識の呪縛に囚われ、虚偽のストーリーを守り続けている。
安倍首相が四月二十九日に、日本の首相として初めて行った米国連邦議会上下両院合同会議における演説は、十四回のスタンディングオベーションが沸き起こるほどの素晴らしいものだった。「先の大戦に対する痛切な反省」は述べたがお詫びはせず、植民地支配にも触れなかった。そして「自由、民主主義、法の支配、私たちが奉じる共通の価値を世界に広め、根づかせていく」。そのために「経済規模で世界の四割、貿易額で世界の三分の一を占める一円に」私たちの子や孫のために「永続的な『平和と繁栄の地域』をつくりあげる」必要があり、民主主義国家で経済規模が第一位のアメリカと第二位の日本が、TPPを成し遂げなければならないと主張した。
中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)は中国バブル崩壊の後始末のために考えられたものだ。世界中から金を集めてアフリカやアジアにインフラ融資を行い、実際の建設は中国企業が受託することで、これまで中国経済を支えてきた需要を伴わない国内インフラ整備や巨大都市開発の官需を、国際的に広げただけに他ならない。日本が入る必然性は何もなく、これは、アジア開発銀行やIMFという日米の枠組みへの挑戦だ。更に南シナ海への海洋進出を活発化させている中国を牽制するために、TPPをはじめとする日米の緊密な連携が必要だ。安倍政権は経済を発展させる一方、正面からアメリカを非難するのではなく、迂回戦略によってこのアメリカの原爆投下の呪縛を解いていこうとしている。その第一歩がこの演説なのだ。
演説は更に日本は、「米国、そして志を共にする民主主義諸国とともに、最後には冷戦に勝利しました」と続く。『中国の現政権』や、冷戦に敗北し内乱に勝利しただけのロシアが対日戦争勝利七〇周年とか言っているが、毛沢東がかつて、「我党が政権を取れたのは、皇軍(日本軍)のおかげである。」と言っていたように、中国共産党軍や現ロシアが自ら(日本軍と)戦った訳ではないのだ。「更にこれからの話として、「アジア太平洋地域の平和と安全のため、米国の『リバランス』支持」を表明し、日米同盟を基軸に、オーストラリア、インド、ASEAN諸国や韓国と協力を深めることで地域の安定を図ることを宣言。アジアの海の「三つの原則」として、「第一に、国家が何か主張をするときは、国際法にもとづいてなすこと。第二に、武力や威嚇は、自己の主張のため用いないこと。そして第三に、紛争の解決は、あくまで平和的手段によること」を提唱し、これを守るための日米同盟であり、日本の安保法制の充実であることを明確にした。そして改めて「国際強調主義にもとづく、積極的平和主義」の旗を掲げる日本は、日米同盟により、世界の様々な問題に「ともに立ち向かう」として、最後に「米国が世界に与える最良の資産、それは、昔も、今も、将来も、希望であった、希望である、希望でなくてはなりません。米国国民を代表する皆様、私たちの同盟を、『希望の同盟』と呼びましょう。アメリカと日本が力を合わせ、世界をもっとはるかに良い場所にしていこうではありませんか」と結んだ。私はライブでこの演説を聞き、その素晴らしさに即座に勝兵塾生全員に演説の内容を送った。
この演説を批判しているのは、朝日新聞など日本の偏向した反日メディアや、中韓のロビー活動に飼い慣らされている一部の反日政治家、NYタイムズなどの海外メディアだ。これらの報道を真に受けてはいけない。アメリカではあの演説はしっかりと評価されている。オバマ大統領の任期もあと一年半となった。彼は何をやったのか。就任早々に世界最大の核保有国でありながら核の廃絶を訴えて、ノーベル平和賞を取り、世界の警察官の立場を放棄すると宣言して、ウクライナの紛争やイスラム国や中国の台頭などを招いた。
ここのところの世界の混乱の全ては、オバマが軍事力を誇示するだけで行使はしない(オバマ・ドクトリン)に起因していると言っても良い。弱い大統領の次には強い大統領が誕生すると、アメリカの著名な戦略研究者のエドワード・ルトワック氏も語っている。次の大統領は民主党のヒラリー・クリントンだと言う人も多いが、共和党の候補はまだ固まっておらず、激しい予備選挙を経て選ばれた大統領候補が一気に当選する可能性が強い。アメリカ大統領選に共和党のルビオ上院議員が出馬を表明した。私は、彼もまた有力な大統領候補であると思う。
分裂する可能性の高い中国、資源外交で行き詰まりをみせるロシア、相次ぐ粛清で国家崩壊の危機が迫る北朝鮮など東アジアの情勢は不安定であり、これに対抗するには日米の良好な関係が不可欠だ。いかなる事態にも対処できるよう、安保法制の充実を実現し、憲法改正も急がなければならない。それをクリアしなければ、日本は世界のリーダー国としての責任を果たすことは出来ない。安倍首相の任期中に憲法改正が成されなければ、今後三十年、四十年経っても改憲のチャンスは巡ってこないだろう。安倍総理は先端科学技術大国・先端医療技術大国と観光大国を目指し、十年を超える長期にわたって政権を担って欲しい、アメリカの原爆投下の呪縛を解き、さらに憲法を改正して日本を真っ当な国として欲しい。このような思いも籠めた私の最新著書である『理論近現代史学』、興味があれば是非ご一読をお願いしたい。
2015年5月27日(水)1時00分校了