Big Talk

日本国憲法の改正は まず前文から行うべきだ

慶應義塾大学とジョンズ・ホプキンス大学で修士号を取得、日本人として初めてアメリカ外交問題評議会の研究員になるなど研究者としてのキャリアから、政治の世界へ転じた衆議院議員の長島昭久氏。民主党内の外交・防衛問題のスペシャリストとして要職を歴任した長島氏に、これからの日米関係や日本国憲法の在り方などをお聞きしました。
長島 昭久氏
1962年生まれ。1984年慶應義塾大学法学部法律学科卒業、1986年同政治学科卒業。1988年慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了(憲法学)。衆議院議員の公設秘書、アメリカのヴァンダービルト大学客員研究員を経て、1997年ジョンズ・ホプキンス大学大学院修士課程修了(国際関係論)。1997年日本人として初めてアメリカ外交問題評議会研究員に。帰国後東京財団主任研究員を経て、2003年衆議院議員に初当選。以後5期連続で当選。民主党政権下では首相補佐官、防衛副大臣を歴任。

戦後七十年の安倍談話でアメリカに呼びかけを
元谷 今日はビッグトークにご登場いただき、ありがとうございます。長島さんにはワインの会や勝兵塾にもお越しいただいて、以前から私と考え方が似ていると感じていました。もっと早くビッグトークもお願いしたかったのですが、このタイミングになってしまいました。
長島 お招きいただきありがとうございます。今日はよろしくお願いいたします。
元谷 私は長島さんと同じ民主党の衆議院議員である鷲尾英一郎さんとも親しく、会うといつも長島さんのお話もしています。
長島 そうですか。昨年の夏、鷲尾さんと一緒にアメリカのワシントンへ行き、戦略研究家のエドワード・ルトワックさんの自宅にお邪魔しました。
元谷 そうですか。ルトワックさんのことは友人の関西学院大学教授の鷲尾友春さんからもよく聞いていて、著作も読んでみました。ルトワックさん曰く、アメリカは日本が真の独立国家になることは望んでいないが、強力な同盟国であることは求めていると。だから日本がロシアに接近することを、アメリカは非常に警戒しているというのです。
長島 ルトワックさんらしい直截的な指摘ですね。アメリカの本音はそんなところだろうと思います。ただし、私は常々アメリカ合衆国に統一的な意思が存在すると考えることの短慮を戒めています。ワシントンとニューヨーク、共和党と民主党、ホワイトハウスと連邦議会、東海岸と西海岸、白人と黒人、さらにはスパニッシュ系との間には様々な意見や利害の対立があります。「アメリカの」と言った時には、いったいどのアメリカの見解なのか注意深く分析する必要があると思っています。
元谷 私が最近主張しているのは、今月のApple Townのエッセイのタイトルにもなっていますが、「アメリカの『原爆投下』の呪縛を解き真の日米友好を」です。日本だけではなく、アメリカも呪縛をかけられているのです。
長島 それはどんな呪縛でしょうか。
元谷 先の大戦末期、アメリカは日本に原爆を投下しました。アメリカは様々な情報源から、日本に降伏の意志があることを知っていましたから、戦争を終結させるために原爆投下を行ったのではありません。ヨーロッパ戦線でナチス・ドイツに対抗させるために、アメリカはソ連に多大な軍事援助を行い、この国を軍事的なモンスターにしてしまいました。ナチス・ドイツ降伏後に、ソ連が世界赤化活動を活発化してアジアからアフリカに至るまでを共産主義化しようとし、これに対抗するアメリカとの間に第三次世界大戦が勃発することは必至だったのです。原爆投下はこのソ連を牽制して、世界赤化を鈍らせるための行動でした。だから原爆完成まで、天皇制の存続が日本の降伏条件の第一にあることを知りながら回答を引き伸ばして、時間を稼いだのです。
長島 なるほど。ソ連のみならず、戦後のアメリカは、アフガニスタンもイラクも自らの軍事援助によってとてつもないモンスターに仕立て上げてしまいました。911後の対テロ戦争の大半はその後始末に追われたとも言えます。
元谷 しかしやはり原爆投下は犯罪的行為です。投下したアメリカが免罪符を受けるためには、悪い国日本との戦争終結のためにやむを得ず投下したというストーリーを作る必要がありました。だから先の大戦は侵略戦争であり、南京大虐殺で三十万人が犠牲になったとか、従軍慰安婦として朝鮮半島から二十万人の婦女子が連行されたとか、歴史の事実をねじ曲げて、日本に罪を負わせたのです。当然アメリカは南京大虐殺も従軍慰安婦も虚構だと知っていますが、原爆投下という罪を被らないためには、虚構だと認めるわけにはいかない。これがアメリカが囚われている原爆の呪縛です。
長島 たしかに南京大虐殺説は東京裁判の中で取り上げられましたが、慰安婦も連合軍発だったのですか。私は、てっきり例の吉田清治のでっち上げが事の発端で、「人道主義」的なアメリカ知識人が飛びついたと思っていましたが。
元谷 原爆投下は非常に悲惨な被害を生み出しました。しかしこれが行われていなければ、ソ連と陸続きの国は全て赤化されて、今でも世界は共産主義に苦しんでいたかもしれない。その前に第三次世界大戦で何千万人もの人々が死んでいたかもしれない。アメリカの国益に沿って考えれば戦後世界覇権を握り、自由主義陣営を守るという大義のためには、あの原爆投下は「アメリカにとって必要だった」と日本人が理解してあげて、アメリカの原爆投下の呪縛を解いてあげるのです。そうなれば日本を悪い国にし続ける必要はなくなります。侵略や南京大虐殺、従軍慰安婦など日本に対して掛けられている虚構の汚名を、アメリカが否定するようになれば、中国や韓国が南京大虐殺や従軍慰安婦強制連行、性奴隷説を持ち出すこともなくなります。
長島 興味深い見解ですが、その呪縛を解くことは一朝一夕にはできそうもないですね。ナポレオンがその汚名を挽回するのに百年かかったと言われています。
元谷 七十年間も続いた呪縛ですから、おいそれとは解けません。しかし今年がチャンスではないでしょうか。安倍首相が準備している戦後七十年の安倍談話ですが、先の村山談話、河野談話は取り敢えず脇に置いておいて、今考えていることを全て盛り込んだ方がいいでしょう。その中で、原爆投下を批難しないから、本当のことを語りましょうとアメリカに呼びかけるのです。そうすることが、これからの日米関係の真の友好に繋がります。レームダック化しつつあるオバマ大統領とは多少ぎくしゃくしてもいい。アメリカの議会は今、上院も下院も共和党が多数となり、次の大統領も共和党から出る可能性が高くなりました。親日度合いが高い共和党政権になった時に、しっかり関係を修復すればいいのです。
 
中国の膨張政策を利用して日米がしっかりタッグを

長島 ただ共和党が常に日本びいきとも限らないのですが…。ことはそれほど単純ではないのです。戦略的思考のできる指導者であれば、党派に関わらず日米同盟の重要性を深く理解します。たとえば、民主党でも次期大統領の呼び声が高いヒラリー・クリントンは確固とした同盟強化論者ですし、一方で元国務副長官で世界銀行総裁も務めたロバート・ゼーリックなどは、共和党ですが明らかに日米同盟を飛び越して対中宥和路線です。
元谷 外交の基本は国益の主張です。相手国の言い分に寄り添って、言われた通りに動くことではありません。冷戦の終結までは、日本が自由主義陣営の一員として内部分裂を招くような、戦後秩序を乱すような発言を控えてきたのはやむを得ないことでした。しかし冷戦終結後は事情が変わりました。アメリカの仮想敵国がソ連から経済的ライバルの日本やドイツに変わったのです。アメリカが血と汗と金を使って冷戦勝利を目指している間、日本やNIES(新興工業経済地域)が冷戦漁夫の利で経済的な成長を貪ったのです。このままではソ連に勝ったのに、日本に負けたとなりかねない。これを取り戻すためにアメリカは、一九九七年アジア通貨危機を起こしました。ただこれもアメリカから見れば仕方がないでしょう。
長島 冷戦が終わった時に日米関係を新たなパラダイムの下にリセットすれば良かったのは確かです。当時の首相は海部俊樹さんであり、宮澤喜一さんでしたが、彼らの責任は大きいでしょう。対ソ同盟からアジア太平洋地域の平和と安定のための公共財として位置づけ直す同盟再定義の努力は行われましたが、代表が仰った「原爆の呪縛」のような東京裁判史観からの脱却も含めたリセット作業は全く行われませんでした。
元谷 政権担当期間も二年前後と短かったですね。日本で在任期間二年程度の首相が非常に多いのは、長期間続く力のある政権が誕生することを、日本を影で支配する東大法学部出身者のゆるやかな連携体である「ステルス複合体」が阻んできたからです。彼らはアメリカと通じ合い、例えば田中角栄に対してロッキード事件を暴くような方法で、阿吽の呼吸で談合して自らの利益のために政権をコントロールしてきたのです。このような少数の影の権力層による日本の支配は、欧米の植民地支配の常道です。一九九四年のルワンダ虐殺では、フツ族によるツチ族の虐殺が行われました。しかしそもそもこの二つの民族に違いはありませんでした。ここを植民地としたベルギーが、家畜を多く所有するなど比較的裕福な少数派をツチ族として支配層とし、それ以外を被支配層のフツ族とすることで、効率的な間接支配体制を築いたのです。
長島 アメリカの政権について言えば、オバマ大統領の任期があと一年数カ月となり、次の大統領が共和党から選出される可能性が高いというのは、その通りだと思います。ただ共和党政権になったからと言って、日本に対する理解が飛躍的に高まることはないでしょう。私は、むしろ民主党でもクリントン女史の大統領就任に期待したいところです。
元谷 アメリカには親日派も親中派もいますが、最近親中派の方が多くなってきていると言われています。日本人としては、これをなんとか巻き返さないと。そのためには、私はこのApple Townで実行していますが、英語での発信が重要です。日本は情報省を創設し、三千億円の予算で三千人の職員を抱えて、二十四時間体制で世界中の報道をチェックして、日本に不利益なものがあれば即座に反論する体制を整えるべきです。世界では、嘘が渦巻く情報謀略戦が常に行われているのですから。
長島 嘘も百回繰り返せば、真実になりますから。代表が仰るように、中国市場に眼がくらみアメリカで親中派が増えているのは確かですが、連邦議会を中心に中国に対して警戒心を持つ人も党派を超えて増えています。日本はこの層との連携を急ぐべきでしょう。中国が強大化すればするほど、軍事的な軋轢はもとより、人権や環境破壊などアメリカの価値観と相容れない分野が急速に拡大して行くと考えます。
元谷 その通りです。日本の防衛費は年間約五兆円ですが、それに近い金額をアメリカが毎年軍事費を削減しています。この削減を受けて、韓国や沖縄の海兵隊をグアムに配置転換するなどで、東アジアに力の空白域が生まれる可能性があります。周囲の陸続きの国全てと戦争で国境を確定し終えた中国は、今海洋に進出してきました。半ば冗談で、アメリカ軍のキーティング太平洋軍司令官に、「ハワイから東をアメリカ、西を中国で管理しないか」と提案を持ちかけた中国軍の幹部がいたそうですが、実際に尖閣諸島など東シナ海や、ベトナムやフィリピンなどが領海を持つ南シナ海へ盛んに公船、軍艦を出しています。このエリアでのパワーバランスを保つために一番有効なのは、アメリカは認めませんが、日本が核兵器を保有することです。せめてNATO加盟の四カ国が提供を受けているニュークリア・シェアリングをアメリカに求めるべきではないでしょうか。
長島 核はともかく、日本は中国の膨張政策を戦略的に利用して、アメリカとしっかりタッグを組む必要があります。とくに、今後は宇宙やサイバー空間など「グローバル・コモンズ」(地球規模の公共空間)と呼ばれる新たな領域における日米の連携は死活的に重要です。核兵器による攻撃よりも、衛星破壊兵器やサイバー・アタックによる先制攻撃で兵器体系を支えるシステムそのものを麻痺させられたらひとたまりもありません。いかに強大な核報復力を保有していても反撃することすらできませんから。
 

影の支配層と戦うために日本派の政治家を増やす

元谷 そのためにも、アメリカの原爆投下の呪縛を解いてあげる必要があるのです。先ほど南京大虐殺や従軍慰安婦など虚構の歴史を日本人に植えつけた話をしましたが、占領軍はWGIP(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)を実施、プレスコード(新聞編集綱領)でメディアを縛り日本人検閲官による検閲などで非常に巧みに日本人の洗脳を行いました。戦後敗戦利得者といえる検閲官の流れが、ステルス複合体に受け継がれているのです。彼らは官界、法曹界、メディアなど日本の主要部分を押さえています。
長島 なるほど。占領期における日本人に対する苛烈な思想統制の実態については、江藤淳さんの『閉ざされた言論空間』が有名ですね。私も学生時代に読んで改めて戦後の日本人を呪縛し続けた占領政策に驚愕しました。
元谷 私は世界八十一カ国を巡り、各国の要人と話をしてきました。どの国でも日本に対して非常に高い評価をしてくれています。世界の中で反日国は三つ。韓国と中国、そして日本自身です。こんなことを日本の国会議員は知りません
長島 戦後の日教組教育の成果といえます。最近の言論空間における保守化は、戦後五十年あたりを境に進歩的文化人と言われる人々のまき散らした自虐史観に対する反動という側面もありますね。
元谷 真実を知れば、皆保守になるはずです。そのためにも、アメリカの原爆の呪縛を解く必要があるのです。
長島 代表が凄いのは、通常であれば原爆投下でアメリカを非難するだけで終わるのに、その先を考えていることです。アメリカが国益を重視した事情もちゃんと踏まえるべきというのは、重要な視点です。
元谷 アメリカ政界では、産軍複合体が力を握っていることも知っておかなければなりません。ケネディ大統領暗殺は、副大統領だったジョンソンを大統領にしてベトナム戦争を拡大するために、産軍複合体が指令したとの説もあります。戦争はアメリカの公共事業だとも言えます。
長島 確かにアメリカは十年置きに戦争をしています。朝鮮戦争、ヴェトナム戦争、冷戦、湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争、そして今、ISとの戦争に乗り出しました。
元谷 しかしそのアメリカの意志を理解しなければ。
長島 私は単に反米でもなく親米でもない。「活米」であるべきだと主張しています。アメリカの力を日本の主体性をもって活用するのです。独自の戦略を持って、その戦略目標を達成するためにアメリカをどう利活用するか構想を巡らせるべきです。そのために必要なのは、情報収集、分析能力です。一昨年末、官邸に国家安全保障会議(NSC)を創設しましたが、そこに必須の情報統合機関が未完成のままでは画竜点睛を欠くと言わざるを得ません。
元谷 それは全く同感です。今の日本に不足しているのは、世界の常識に照らして考えることでしょう。歴史的に見ても、世界は力の論理によって変動してきました。弱肉強食です。そしてその中で主導権を取るためには、情報謀略戦が欠かせないものでした。武士道精神を重視し、謀略を基本的に卑怯と考える日本でも、日露戦争の時にはヨーロッパにおける明石元二郎大佐によるロシア革命支援工作が勝利に大きく貢献しました。今の日本の為政者はこの頃の感覚を取り戻すべきなのですが、ステルス複合体はこの世界の常識が理解できていません。
長島 代表はどうやってそのステルス複合体と戦えばいいとお考えですか?
元谷 長島さんのような、日本派の政治家を増やすことではないでしょうか。民主党でも自民党でも親米派や親中派の政治家はいますが、日本派はごく少数です。安倍首相も党内では少数派なのです。自民党総裁に再選された二〇一二年の選挙は、安倍さんは同じ清和会の町村信孝さんと一緒に出馬しました。途中町村さんは病で入院したのですが、その時私は町村さんを「絶対降ろすな」と町村派の議員に叱咤激励をしました。その結果、票が割れて安倍さんと石破さんとの決選投票となり安倍さんが勝利することができたのです。昨年十二月の総選挙で勝利したことで、安倍政権の基礎は盤石となりました。しかし日本が真っ当な国になることを嫌う層は、また補助金を受けた企業による数十万円程度の献金を大げさに取り上げて、スキャンダルにしようとしています。
長島 しかしこのスキャンダル攻撃は必ず失敗しますよ。私の事務所ではそういうケースはたまたまなかったですが、企業献金を受ける時に相手企業が補助金を受けているかどうかなど、意識していません。また賃上げする企業を補助するなど、様々な名目で補助金が増えていますから、企業側での把握も難しいのではないでしょうか。
元谷 その通りです。多くの企業は環境対策でエネルギー効率が良い機器に転換するための補助金を受けています。かつての年金未納問題のように、悪意がなくても多くの国会議員に当てはまってしまうような話です。そもそも議論の場であるはずの国会が、単なる批難の場と化しています。
長島 そうです。結局岡田克也代表にまで波及したことで追及は止めようと。あの政権攻撃は戦術的に完全に失敗です。こういうやり方では、民主党の評価は上がりません。
 

民主党内の保守派は早晩決断を迫られる

元谷 民主党の国会議員に関してさらに言えば、会合に出席したNHKの籾井勝人会長への発言がそもそも喧嘩腰なのもどうかと…。まあ籾井会長の受け答えにも問題はあるのですが(笑)。まず民主党は綱領を作らないと。
長島 いや、二年前の二〇一三年に綱領は作ったのです。
元谷 それはしっかりと守られているのでしょうか。民主党内には私と考えを同じくする長島さんのような人もいれば、むしろ共産党と考えの近い人もいます。正に選挙当選互助会。考えがばらばらのまま政権与党になったことが、三年後に下野せざるを得なかった原因ではないでしょうか。
長島 それに関しては反論しません。
元谷 政党というのは、政策で一致する人が集まって結成するものです。その政党を支持する国民が多くなって、初めて政権を担うことができるのです。
長島 仰る通りです。しかし考えが同じ人が集まった次世代の党は、今回の選挙では残念なことになりました。
元谷 二〇一二年の選挙では、国民の不満が第三極と呼ばれた日本維新の会に流れ、多くの候補者が当選しました。今回は維新の名前を大阪に取られてしまった。党の名前を刷新した直後の選挙では、勝ち目はありませんでした。あのタイミングでの解散総選挙は、次世代の党を壊滅するための謀略だったのかもしれません。
長島 そうだとすると、安倍首相が次世代の党を潰す目的とは何だったのでしょうか。
元谷 安倍首相というよりは、次世代の党との保保連立の流れを遮るために、公明党と自民党の親米保守層が真正保守の次世代の党潰しを図ったのではと考えられます。
長島 なるほど。それにしても、保守はよく分裂しますね。
元谷 そうですね。私は自公連立を絶たないと、日本は真っ当な国にならないと考えています。長島さんのような民主党の保守層が真正保守の考えを持つ人々と組んで、新党を結成し保保連立になれば、真っ当な国造りが進むのではないでしょうか。はっきり言いますと、民主党が再び政権与党になるのは無理です。民主党内の保守派は、早晩なんらかの決断を迫られることになりますよ。
長島 それは、十分覚悟しております。いま、天の時到来を窺いつつ、鷲尾代議士ら同志と共に大義の旗を準備しています。
元谷 一方政治家は当選してなんぼです。徐々に味方を増やして、どこかで決起してください。長島さんとその仲間なら、勝兵塾でも推薦します。先の総選挙では、勝兵塾の推薦者の七五%が当選しました。党派を超えて、日本の国益に沿って行動できる人であれば必ず推薦しますので。最後にいつも「若い人に一言」をお聞きしているのですが。
長島 英語で憲法を意味するコンスティテューションという言葉には、骨格とか背骨という意味もあります。戦後日本はこの「背骨」を失ったのです。仮に同じ文言になるにせよ、憲法は自らの手で作ることに意味があります。これに向けて真剣に取り組める若い世代を増やしていきたいですね。
元谷 自国の憲法を自分達で作るのは当然なのに、プレスコードに縛られて、現行憲法を批判すること自体を批判するメディアがいるのがおかしいのです。憲法改正の動きとして、安倍政権ではまず緊急事態条項の新設から手掛けるようです。九条など物議を醸すところからではなく、比較的賛同を得ることができそうな分野からという意味でしょうが、それでいいのでしょうか。少なくとも憲法前文はすぐに改める必要があります。
長島 全く同感です。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」など、リアルな国際政治に照らして考えるとあり得ない一文です。これは、戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認を謳った憲法九条の原型である「マッカーサー草案」の第二項の一節「日本はその防衛と保護を、今や世界を動かしつつある崇高な理想に委ねる」に由来します。ここでいう「世界を動かしつつある崇高な理想」は、米ソ冷戦によってほどなく吹き飛ばされますが、その後もこの背骨なき憲法を後生大事に守って来たのです。
元谷 この前文を前提として第九条があります。安倍首相が初めて憲法改正を行った首相になるために譲る部分が出るのはやむを得ないですが、前文はまず変えるべきでしょう。
長島 集団的自衛権も各論になると、公明党との協議によって結局個別的自衛権に毛が生えた程度のものになってしまいました。
元谷 日本の自衛隊は、法律に書かれたことしかできない「ポジティブリスト」による軍隊です。しかし世界の軍隊は、絶対にやってはいけないことだけを定めた「ネガティブリスト」によって運用されています。国際的な軍運用の標準に合わせないと、恒久法により認めようとしているPKOなどの国際貢献活動にも支障をきたすでしょう。とにかく全ての第一歩として、戦後七十年の今年、アメリカの原爆投下の呪縛を解いてあげることが大事です。
長島 そうですね。原爆投下に由来する日米の呪縛の話は大変興味深く聞かせていただきました。
元谷 今日はありがとうございました。