安倍晋三首相と中国の習近平国家主席による三年ぶりの日中首脳会談が行われた。十一月八日の朝刊各紙には、この会談実現の為に作成された四項目からなる日中両国政府の合意文書が報道されていた。
安倍首相は「日本も中国も首脳会談を行った方が両国に有益だと考えているのは間違いない」と語ったが、今回の会談が実施されたのは、日本との関係悪化で日本からの投資の激減と中国から撤退する日本企業が後を絶たず、ただでさえ中国バブルが崩壊しつつある中、中国側がこれ以上日本との関係悪化に耐えられなくなったからである。
会見にあたっての合意文書に、「双方は、歴史を直視し、未来に向かうという精神に従い、両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の一致をみた」という文言があり、四項目目には、「双方は、尖閣諸島など東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識」といった、非常に玉虫色の、どうにでも解釈できるような表現があるが、歴史を直視していないのは中国だけだ。中国は尖閣諸島の領有権を主張しているが、歴史的根拠は全くない。
ここ数年の日中関係悪化の発端は、民主党の野田政権下で行われた尖閣諸島の国有化だ。アメリカは一九七二年に沖縄と一緒に尖閣諸島の施政権を日本に返還したが、その領有権に関しては与り知らないと日中間に争点を作って返還した。日中国交正常化時に尖閣諸島を両国合意で棚上げにしてきたのに、国有化によって日本がこの合意を破ったというのが、中国の言い分だ。当時の石原慎太郎東京都知事が寄付金を募り東京都として民間所有の尖閣諸島を購入して、それが実現していれば、島に船溜まりを造るなど、実効支配を強める行動に出ることは明らかだった。船溜まりができれば、必ず棚上げ合意違反だと主張してくると中国を慮って、野田首相は国で購入することを決断したのだが、中国は、それを逆手にとって「国が買い取ったことは棚上げの合意に反する」と批判を強め、尖閣諸島海域での緊張状態を作り出してきたのである。
しかし二年前の第二次安倍政権発足以来拒み続けていた日中首脳会談を、このタイミングで行う必要性に迫られたのは切羽詰まってきた中国側だ。中国は今数多くの問題に直面している。まず近隣諸国との力関係の変化によって、一方的な膨張主義を変えざるを得なくなってきている。これまで、南シナ海の南沙諸島、西沙諸島での領有権の主張を活発に行ってきた中国は、アメリカ軍がフィリピンから撤退したタイミングの一九九五年、南沙諸島のミスチーフ礁に上陸し、フィリピン領だったこの島を略奪してしまった。しかし今年、アメリカとフィリピンは、再度アメリカ軍のフィリピン駐留を認める協定に調印した。これにより今後、中国はこれまでのようなゴリ押しでの海洋進出をすることが困難となってきた。
日中首脳会談は北京で開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力)のタイミングで行われたが、これにはアメリカの中間選挙で大敗し傷心のオバマ大統領も出席、これに中国は破格の国賓待遇で迎え二大国ぶりを演出してみせた。
中国はバブル経済の崩壊が進んでいて、これまでのような経済成長は今や望めなくなってきており、香港では、すわ天安門事件の再来かと思わせるような学生中心の民主化要求デモが行われる一方、新疆ウイグル自治区ではイスラム教徒によるテロが頻発している。今中国政府にとっては国内の治安の維持が急務であるし、経済や対外政策については路線の見直しが求められている。国家主席の習近平は、まだ全ての実権を握っているとは言い難い。前々主席の江沢民と前主席の胡錦濤との、時には味方になり時には敵になりの三つ巴の権力争いが今なお、繰り広げられている。習近平は腐敗摘発ということで、まず江沢民派の政府高官を摘発、さらに胡錦濤との全面対決も噂されている。国内的にも対外的にも厳しい中、日本との関係もこの辺りで落とし所を探さないと、習近平体制自体が維持できなくなってくるのではとの判断があったのではなかろうか。こういった事情から、弱ってきた中国側から擦り寄ってきて、今回の日中首脳会談に至ったのだろう。
中国側は会談開催にあたって、安倍首相が靖国神社に参拝しないことや、尖閣諸島に領有権争いがあることを日本政府が認めることなどの条件を出してきたが、日本はこれを突っぱねた。早期の首脳会談がなければ事態が悪化するのは中国の方であり、日本は何ら慌てる理由がない。日中関係の最大のメリットは経済関係だが、経済の為に政治的妥協をするべきではない。安倍総理は堂々とこの点を守ったことは、大いに評価すべきだ。日本の政治は経済を第一に考えなければならない。今最大の懸念事項は、消費税増税後の景気回復が、期待通りではないことだ。十月三十一日に行われた日銀による追加の金融緩和、俗に言われる「黒田バズーカ二」によって、株価は上昇、円安も一気に進行したが、実質GDPは直近七‐九月期前期比でマイナス〇・四%、年率でマイナス一・六%と厳しい結果となった。四‐六月期のマイナス七・三%からはずいぶん回復している。アベノミクスにより株価は二倍に上がり、雇用の増加は百万人を超え、消費も増えているが、住宅投資の落ち込みが前期比マイナス六・七%と大きい。これは駆け込み需要の反動が大きかったのと建築費の急激な値上がりで販売戸数そのものが減ったことが原因である。平成二十七年十月一日に予定されていた消費税二%増税は、民主党政権下で民・自・公の三党合意で既に法案化しているもので、これをずらせば、決めたことを実行できない総理とメディアがはやし立てる。そのことを考えて安倍総理は公明党や自民党の一部が主張するように増税を一年半先伸ばすのであれば解散する、とブラフをかけて外遊に出かけたらメディアが勝手に解散を煽って全ての新聞・テレビが連日解散解散と報じて解散一色となった。これは大義名分なき解散を師走のこの時期にすれば投票率が下がり、有利になる組織政党の公明党と共産党が解散総選挙を支持し煽った結果であり、このままではいけないとの思いで私は勝兵塾の塾生に向けて先の塾長通達を出した。
(第一弾 二〇一四年十一月十七日の十五時)
読売をはじめメディアが大義なき解散を煽っている。かつて民主党が政権をとった際も、民主党が勝ったのではなくメディアが「チェンジ」をキーワードに国民を煽った結果である。今回はメディアが自民党を自滅させる為に解散に追い込み、安倍政権が長期政権となるのを阻止しようとしている。七‐九月期の実質GDP成長率が年率マイナス一・六%と発表されたが、消費税再増税を断行しようと先送りしようと、それは解散とは関係ないことだ。国民の七割が支持しない解散を今行うことは自民党にとって何のメリットもない。衆議院での議席が与党で三分の二を確保できなくなり、政策遂行が困難になる。さらにこのタイミングでの解散は、「アベノミクス失敗」「疑惑隠し」と非難されるだけである。本来解散は最も有利な時期に行なうものであり、負けをわかってやるのはいわば大政奉還としての大義名分がある場合である。勝兵塾講師特待生にも国会議員が多数おられるが、常に選挙を想定して組織を点検し、シミュレーション(防災訓練)を行う必要はあるが、解散風に煽られて選挙準備に資金を投入することのないよう冷静な行動をとって頂きたい。
(第二弾 二〇一四年十一月十八日十一時)
当初解散総選挙は消費税増税先送りの為に党内の結束を図る為のブラフだったが、これをメディアが大きく騒ぎ立て、安倍総理はここで解散しなければ、むしろ決断できない弱気な総理として、政権がレームダック化してしまうところまで追い込まれた。大義名分なき総選挙は、投票率の低下を招き、公明党や共産党など強固な組織票を持つ政党が議席を伸ばす。メディアの喧騒の背景には、衆参同時選挙の流れを断つ為の公明党の謀略も考えられる。おそらく安倍総理は外遊前にはすでにGDPの数値が予想以上に悪くなることを掴んでいたのだろう。今年四月の消費税三%引き上げから不安を持っていたが、GDPが予想を下回ったことで、民主党政権の下、三党合意で決めた消費税の増税を延期し、アベノミクスの成果を見てから自らの手で増税を行なうつもりだと考えられる。解散を決めたのなら、一年半後の消費増税として信を問い、それまでにアベノミクスの成果を断固出さなければならない。これからメディアはネガティブキャンペーンを張り、安倍政権を叩いてくるだろう。勝兵塾としても、安倍政権を支える為、右から安倍政権を支える真正保守の党である次世代の党、太陽の党を支援していきたい。
東日本大震災時の福島第一原発の事故に対する民主党政権の対応のまずさが、今の原発稼働ゼロに繋がっている。しかしこの冬、地元自治体と鹿児島県知事の合意を得て、九州電力の川内原発が再稼働する見込みとなった。これで東京電力福島第一原発の事故の影響で昨年九月から続く「稼働原発ゼロ」の状態が、一年数カ月ぶりに解消する。石油メジャーの謀略戦に乗せられたメディアの煽りで原発停止に追い込まれ、増加している火力発電用の燃料費は円安で更に負担が増えてきている。日本は世界で一番厳しい基準を設定したのだから、これに適合した原発は粛々と再稼働させるべきだ。安全性が確保されていないと反対する左翼は、そもそも原発の存在そのものを認めない勢力で、反対の為に究極の安全性を要求しているが、一〇〇%安全なものはない。これまで石炭・石油・天然ガスの採掘と利用でどれだけの犠牲を払ってきたのか? おそらく原発の数万倍の死傷者を出してきたと思われる。
原発が停止し続けている結果、電力料金は値上がりし、火力発電による二酸化炭素の排出が進んでいる。これで良いはずがない。本来であれば、日本の優れた原発技術を世界中に輸出して、安全性に疑問がある韓国製や中国製の原発が広がることを阻止すべきだ。二〇〇九年に鳩山首相は温室効果ガスの二五%削減を国際公約として明言したが、その時の計画では二〇一〇年段階で二八・六%だった原発の電力構成比を五〇%にすることになっていた。しかし原発事故後、民主党政権は原発ゼロに転換した。安倍首相は再び原発五〇%を目標に、日本が原発大国となる方針を打ち出すべきではないか。
先端科学技術の分野において、日本は世界のリーダー的存在だ。その先端科学技術を安い価格で提供し、その技術が組み込まれた商品を、非常に高い金額で購入させられているのが現状だ。旅客機でも兵器でもそうだが、電池やiPhoneのような電子機器でも同様だ。日本の技術はもっと高い値段で売れる。原発や国産の兵器を高い価格で輸出し、アメリカのようにそのメンテナンスを行う技術でその国をコントロールし、収益を上げるビジネスモデル構築を国家目標とするべきだ。これによって日本は技術力で他国のエネルギーや軍事力の一部をコントロールすることが可能となる。日本の優れた先端技術の有効活用を図ることが必要なのだ。
先端科学技術を使って今回三菱重工業名古屋航空宇宙システム製作所(零戦を生んだ三菱重工業名古屋航空機製作所の流れを汲む)の国産初のステルス戦闘機開発に向けた試作機「先端技術実証機」(通称心神)が初の飛行試験を行うとのこと。心神が炭素繊維の電波吸収材により敵のレーダーに映りにくくするステルス性能を備え、炭素繊維強化プラスチックを使用するなどで軽量化。エンジンはIHI石川島播磨重工業が開発したように、日本独自の兵器等の開発を行うことも重要だ。膨張する中国と撤退するアメリカの狭間となる東アジアに力の空白域を作らない為には、日本の軍事力の増強が急務だ。先端科学技術を駆使した攻撃用兵器を保有することで日本の抑止力を増強、力のバランスを維持することで、東アジアに戦争が起こることを防がなければならない。アメリカとは当然友好関係を維持するべきだが、憲法を改正して、自分の国を自分で守れる国となるように自衛隊の兵器等の国産化を進めて、少なくとも日本が独自に東アジアを網羅するGPS衛星を打ち上げたり、自衛隊は独自のコンピューターシステムや敵味方識別装置を持つ必要がある。自衛隊を軍として独立させ、日米安保を対等互恵のものに改めて、日本自体が真の独立国となることが望まれる。
小笠原諸島近海に中国漁船が大挙押し寄せ、赤サンゴの密猟を行っている。排他的経済水域どころか領海内にまで入ってくる漁船もいるのは、日本側の対応が甘いことを漁民が知っているからだ。領海侵犯船には警告を与え、それでも退去しない場合には警告射撃をして、尚退去しない場合は撃沈するぐらいの対応でもよいのではないか。海上保安庁が領海侵犯の中国漁船を一隻でも撃沈すれば、蜘蛛の子を散らすように漁船団は消え失せてしまうだろう。領海や領土を守るということは、独立した主権国家として当然のことである。また独立した主権国家の首相が、国内のどこに行こうが他国から批判される筋合いはない。外国に言われたから、靖国神社に参拝できないということはあってはならないのだ、靖国参拝問題は日本のメディアが騒ぎ立てるからで、むしろ毎月のように参拝を繰り返せば、話題にもならなくなる。
日本の国会議員の多くはアメリカ派か中国派となってしまっていて、本当に日本の国益を第一に考える日本派の国会議員は極少数だ。これを増やさなければならない。日本派の国会議員増加の中心となるのは、太陽の党と次世代の党だ。諸外国から極右だと批判される安倍自民党だが、太陽の党と次世代の党という自民党の更に右を行く二つの政党が勢力を増せば、左側に民主党と共産党を置く自民党は「中道」となる。日本派議員増加策として、太陽の党は候補者を出さない選挙区において、党派を問わず基準に合う候補を推薦する方針を打ち出すべきだ。その推薦基準は以下の通りだ。
一、経済第一に再び世界第二位の経済大国を目指す。
一、原発推進をエネルギー政策の中心に据え、電力の五〇%を原発で賄うことを目指す。
一、税の誘導で大家族制度を復活させ、天皇を中心とする大家族国家を目指す。
一、自主憲法を制定し、独立国家として当然の防衛力を整備する。
一、医療と先端科学技術で世界第一を目指す。
一、観光大国を目指す。
一、教育とメディアの正常化で誇れる祖国「日本」の再興を目指す。
特に重要なのが、世界第二位の経済大国を目指すことだ。モンゴルやチベット、東トルキスタンなどを武力によって無理やり併合している中国は、いずれ旧ソ連のように分裂する。日本が再び世界第二位に返り咲くことは、十分に可能なのだ。日本派の議員が増え、太陽の党と次世代の党の党勢が増したところで、現在の自公連立を解消して、太陽、次世代、自民による保保連立に変える。自公連立協定で「公明党が立候補する選挙区に自民党の候補を出さない」ことは自民党の支持率が42%もあるのに、自民党支持者の投票の機会を奪うものだ。保保連立のために、自民党の空白選挙区の全てに自民党に替わる保守の候補を立てて、公明候補を打ち破り、自公連立を解消させるべきである。
メディアの謀略で解散総選挙となったが、これは安倍自民党を長期政権化させない為であったが、野党で勝てる党が見当たらない現状を考えると自民党はかなり善戦し、来年九月予定の自民党総裁選挙も無投票で安倍総裁が再選されると思われる。これこそが、安倍総理が解散を決意した真相かもしれない。
選挙でより強い党内基盤を作った安倍総理が、ロシアのプーチン大統領を迎え、懸案の日ロ国交回復を図り、中国・アメリカとバランスをとる政策を考える時が来たとも言える。
2014年11月25日(火)1時30分校了
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