「ウクライナ情勢を巡る対露経済制裁への対抗措置として、ロシアは米国、欧州連合などからの肉類、魚介類、青果物、乳製品などの輸入を禁止したと発表した。禁止措置は一年間で日本は含まれていない。」という。日本が含まれていないのは、欧米と日本を分断しておこうというプーチン大統領の作戦だろう。この欧米とロシアとの緊張関係の責任の多くは、オバマ大統領にある。
雑誌SAPIO二〇一四年九月号の落合信彦氏の「新世界大戦の時代」の中で、シリアやウクライナの紛争に何ら手を打たず、韓国が中国に取り込まれるのも黙って見ているオバマ大統領を、多くのアメリカ人が見限っている証として、「アメリカのキニピアック大学世論調査研究所が七月に発表した全米世論調査で、オバマは全体の三三%の得票を得て、『戦後最悪の大統領』に選ばれた」と伝えている。
八月八日付けの産経新聞の「正論」でも、北海道大学名誉教授の木村汎氏が、「戦後秩序の崩壊を許すオバマ氏」として、明快にオバマ批判を展開している。第二次大戦後の国際秩序は、武力の行使や脅しを用いる領土や国境の変更を禁じている。にもかかわらず、ロシアのプーチン大統領はウクライナの歴とした領土、クリミアを併合した。結果として、米欧諸国とロシアとの関係は悪化し、ロシアは主要国(G8)から事実上除名されたうえ、数々の制裁措置を被ることになった」「二期目就任早々のオバマ大統領は『核兵器なき世界』構築の理想をうたった功績で、ノーベル平和賞の栄誉に輝いた。それ自体は慶賀すべきことだったが、同大統領は単に核兵器ばかりではなく、武力一般の行使すらも極度に抑制する姿勢を顕著に示すようになった」「ウクライナ危機の勃発に際しても、オバマ氏は早々と宣言した。ロシアによるクリミア併合、その他の国際法侵犯行為に対し、米政府は『あらゆる手段を用いて対露制裁措置を講じる。』ただし『軍事力の行使を除く。』と」「『ソフト・パワー』と『ハード・パワー』の両方を用いる決意や可能性を示して初めて、紛争を解決できる」「クレムリンに返り咲いたプーチン氏は、三期目の統治を正当化する新イデオロギーとして、『保守主義』概念を打ち出した。ロシア民族独自の伝統、文化、価値を尊重し、外部からの干渉を断固排除する。これがその中核を成す考え方である。この新機軸によって氏が強調しようとしているのは、民主主義や市場経済に関する米欧型のモデルを峻拒して、具体的には反米主義、ロシア愛国主義にアピールすることである」という。
今回のウクライナの混乱は、親露派のヤヌコビッチ大統領を、親欧米派を中心とする反政府側が、デモなどの非合法な手段で追放したことから始まった。しかしそれにはもっと以前からの歴史的な背景がある。ソ連時代の一九三〇年代、ウクライナのロシア化を進めるため、政権は人為的な飢饉(ホロドモール)を引き起こし、これによって数百万人のウクライナ人が餓死したという。その分の人口を補うべくロシア人の入植が進み、特に東部ではロシア人の比率が高くなっていった。一九九一年にソ連が崩壊した時にウクライナは独立したのだが、ソ連内でもウクライナの東部は、航空機産業や軍需産業などを擁する工業エリアであり、クリミア半島はロシア・黒海艦隊の基地もあり、とても手放したくなかった地域である。そんなウクライナの東部は、ロシアにとってどうしても、もう一度併合したい所である。
一九九九年のチェコ、ハンガリー、ポーランドに続き、二〇〇四年にはラトビア、エストニア、リトアニアのバルト三国がNATOに加盟、ウクライナもNATO入りを検討するようになると、周辺をNATOによって包囲される恐怖を、ロシアは強烈に感じるようになる。そしてせっかくウクライナに正当に誕生した親露派大統領ヤヌコビッチが非合法な親欧米派のデモによって追放されたことで、ロシアの危機感は最高潮に達した。このロシアの感覚を認識していないと、ウクライナ問題を正しく理解することはできない。西側メディアの報道はとても公平とは言えないものだった。
三期目のプーチン大統領はNATOや欧米派からのプレッシャーに対抗するために、チェチェン戦争に動員された傭兵などから成る親露派武装勢力をウクライナに送り込んだ。彼らがウクライナ正規軍の空爆によって崩壊しそうになると、今度はブークという移動可能な対空ミサイルシステムを提供して、爆撃機を狙わせたのだ。その結果、間違ってマレーシア航空機を撃墜してしまった。このことで欧米諸国が行った各種の制裁措置に対抗してプーチン大統領が決断したのが、冒頭に挙げたロシアの欧米向け制裁だ。
強気のプーチン大統領に対して、オバマ大統領の弱腰のスタンスが目につく。これが、今の世界の混乱の元凶だ。シリアやウクライナだけではない。アジアからアメリカ軍を引き上げる一方、膨張する中国に対して適切な対応をとらないために、東シナ海では日本と尖閣諸島を巡る争いが、南シナ海ではフィリピンやベトナムとスプラトリー諸島やパラセル諸島を巡る争いが、中国によって引き起こされている。中国やロシアなどが帝国主義時代の再来のような領土・領海の膨張策を展開する一方、アメリカは冷戦時代のオーバーコミットメントから一転、新モンロー主義とも言えるような内政を重視した姿勢に傾き、国防予算も今後十年で五千億ドル(毎年、日本の防衛予算並の五兆円ずつ)を削減する強制歳出削減を実施中だ。
そんなオバマ大統領が昨年九月「米国は世界の警察官ではない」「私は、武力行使の必要性に対して抵抗した。なぜなら、イラクとアフガニスタンの二つの戦争の末、他の国の内戦を解決することはできないからだ」とシリアでの内戦で空爆することを避けたことで、莫大な犠牲(アフガニスタン侵攻とイラク戦争で、約八千人の兵士が死亡した)を払い、どうにか安定させ撤退できたイラクに、イスラム教スンニ派過激派組織ISIS(イスラム国)が勢力を拡大してイラク北部の領土を奪い支配を広げてきている。そのISISの攻撃にさらされているクルド系少数宗派ヤジド教徒を守り、米軍などの要員の保護とクルド人に対する人道上の観点からと、アメリカは空爆を行った。しかし、戦闘機から爆弾を落とし、無人機からの攻撃をしかける空爆だけではISISを止められないことは明らかであり、いずれイラクはリビアのように四分五裂の内戦となる。
ヨーロッパやアジア、中東から撤退するアメリカと冷戦終結で油断するNATOの狭間にあったウクライナで紛争が起こったのは、「武力一般の行使すらをも極度に抑制する」オバマ大統領によって、戦争を呼び込む力の空白域が生じたからだ。イラクも同様であり、アメリカの撤退によって生じた空白に、今「イスラム国」と自称する勢力が進出し、シリアからイラクに亘っての広大な土地の領有を主張している。膨張する中国やロシアと北朝鮮が核兵器を保有する東アジアで力のバランスを維持するためには、NATO加盟四カ国(ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ)がアメリカと行っているニュークリア・シェアリング(核兵器の共有を受け、軍備を提供し、核兵器を自国内に備蓄する国)を、日本も非核三原則の国会決議を廃棄して協定すべきだ。さらに日本は情報謀略戦を戦える力を獲得しなければならない。
尖閣諸島や竹島だけではなく、沖縄や対馬まで中国や韓国は自国の領土だと主張しようとしている。そのために南京で三十万人が虐殺されたとか、従軍慰安婦として二十万人が朝鮮半島から連れて行かれ性奴隷にされたとか、ありもしないことを、慰安婦像を作るなどして世界中に広めていて、欧米のインテリ層までがこれらを事実として信じてきているのが現状だ。この様にしてしまった原因は、吉田清治が一九八三年に『私の戦争犯罪』などの著書で、済州島などで戦時中に朝鮮人女性を慰安婦にするために軍令で強制連行(「慰安婦狩り」)をしたと全く嘘の告白本の出版を行い、朝日新聞がその内容を何度も取り上げ、植村隆記者が事実ではないと分かっていたのに元慰安婦と称する金学順が「女子挺身隊の名で戦場に連行された」と虚偽の報道を繰り返し、さらに一九九二年一月十三日の夕刊コラムでは、朝日の北畑清泰大阪本社論説委員が『従軍慰安婦』と題して以下のように書いたことが軍の強制連行と性奴隷と報じられる原因となったのだ。「記憶のなかで、時に心が痛むのは従軍慰安婦の強制連行だ。吉田さんと部下、十人か十五人が朝鮮半島に出張する。総督府の五十人、あるいは百人の警官といっしょになって村を包囲し、女性を道路に追い出す。木剣を振るって若い女性を殴り、けり、トラックに詰め込む。一つの村から三人、十人と連行して警察の留置所に入れておき、予定の百人、二百人になれば、下関に運ぶ。女性たちは陸軍の営庭で軍属の手に渡り、前線へ送られて行った。吉田さんらが連行した女性は少なく見ても九百五十人はいた。『国家権力が警察を使い、植民地の女性を絶対に逃げられない状態で誘拐し、戦場に運び、一年二年と監禁し、集団強姦し、そして日本軍が退却するときには戦場に放置した。私が強制連行した朝鮮人のうち、男性の半分、女性の全部が死んだと思います』と書いた。
こんな記事を自国の大新聞朝日が書き続けていればどこの国の人でも「日本はかつて従軍慰安婦二十万人を朝鮮から強制連行し、性奴隷とした」と信じてしまう。その朝日新聞がこの度ようやく三十二年ぶりにやっとそれが誤報であると認めた検証記事を書いたが、そこには謝罪の言葉もない。私はこれは誤報ではなく反日メディアの朝日が捏造した「戦後最大のメディア犯罪」であり、社長を始めこれに関わった全ての者が謝罪会見をし、即刻辞職すべきであると思う。
このようなことが中国や韓国に利用され、明らかな嘘でも真実だと思われてしまったように、これまでの日本のプロパガンダ力の弱さを補うためにも、三千人規模で年間予算三千億円程度の情報省を設立し、日本に関してあらゆる言語の報道をキャッチ、誤った報道には二十四時間以内に抗議し、訂正させるというような体制を築くことが必要だ。先の大戦の日本の敗因は、使用していた海軍暗号と外交暗号がことごとく解読されていたことが大きい。しかし今や、世界は隠し事ができない時代になってきた。元CIAのスノーデン氏が持ちだした情報で「ドイツのメルケル首相の個人携帯電話まで盗聴されていた」と世界中に衝撃を与えたが、八月には別の情報提供者によってアメリカで監視中のテロリスト六十八万人のリストがインターネットの暴露サイトにアップされた。このような暴露にもはや打つ手はない。
憲法九条があったから日本は平和だったというお伽話を信じている日本人はまだ多い。実際には強大な軍事力を保有するアメリカが日本を再軍備させないために日本と安全保障条約を締結していたから、他の国が手を出せず、日本は平和を維持できたのだ。撤退を始めているアメリカと膨張してくる中国の存在を考えると、これからも日本に平和が保たれる保障はどこにもない。このタイミングで、安倍内閣が集団的自衛権の行使容認を閣議決定したことは、非常に重要だ。さらに安倍首相は、武器輸出や兵器の共同研究にも道筋をつけようとしている。
今や兵器は無人化の時代を迎えている。無人偵察機だけではなく無人攻撃機も実戦配備されるようになった。八月八日付けの読売新聞の一面には、「無人潜水艦 日米で研究」という記事も掲載されている。一カ月連続して海中で稼働できる無人潜水艦開発に向けて、防衛省と米軍は、まず高性能の燃料電池の開発を行うという。「当初は日本単独で開発を行うことを予定していたが、米海軍が強い関心を示したことから共同研究に向けた協議を始めた」そうだ。これが実現できれば、魚雷を装備した小型の無人潜水艦によって、大きな潜水艦や艦船の行動を把握し、無力化することも可能になる。いわば、少額の投資で他国の大きな投資を無に帰すことができるのだ。この潜水艦の例だけではなく、例えば高価な戦闘機を安価な手持ちの対空ミサイルで確実に撃墜できるようになれば、戦闘機を装備することが割に合わなくなってくるだろう。
技術立国である日本には、世界に誇れる先端科学技術がある。これまで日本はこの技術を使って防御兵器しか作ってこなかったが、攻撃用兵器を造るようになれば、従来の兵器体系を大幅に変えるような画期的なものを生み出せるのではないか。これが日本の兵器開発の大きなテーマとなるだろう。確度の高い安全保障のためには抑止力を高めることが必要だが、そのためには攻撃力を持つ方が断然有利だ。日本は報復攻撃力を持って、相手の攻撃の意志を削ぐことが重要なのだ。またこれまでは日本の高い技術を安く買い叩かれてアメリカに持って行かれ、それを組み込んだ兵器を高く買わされていた。これからは技術に対して正当な対価を得ることができるよう、しっかりと主張すべきだ。
冷戦時代はソ連を中心とした東側と、アメリカを中心とした西側がある種の秩序を保って対立し、それ以外のいざこざは起こらなかったのだが、今は各国が自らの国益を求めて秩序なく争っている。正に新帝国主義時代の到来と言っても過言ではない。その中で日本が先の大戦後築き上げてきた経済的繁栄と平和を保つためには、東アジアの力のバランスを自らの力で守りぬくことが求められている。日本の技術を世界の平和に役立たせるためにも、先端科学技術を用いた核弾道ミサイル迎撃レーザー砲や小型核兵器に匹敵する破壊力のある衛星発射の超高速弾道ミサイル等、攻撃用兵器の開発が必要だ。
戦後日本に大きな影響を与えたのは、終戦直後にGHQによって設定されたプレスコード(新聞編集綱領)の存在だ。この下にGHQは日本人検閲官を使って、アメリカや連合国の不利益にならないよう、ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(戦争についての罪悪感を日本人の心に植えつけるための宣伝計画)に基づき、徹底的に言論操作を行った。サンフランシスコ講和条約発効でプレスコードは失効したにもかかわらず、メディアは自主規制によって今に至るまでそれを守り続いている。また日本人検閲官はその後、大学やメディアなどに流れ、記憶力勝者である東大法学部出身者の偏差値エリートを中心とするステルス複合体と呼ばれるグループに引き継がれ、彼らが戦後敗戦利得者として、官界、財界、政界、法曹界、メディア界を牛耳り、アメリカと連携をして日本を支配、アメリカの「年次改革要望書」を実現させることに注力してきた。郵政民営化も「年次改革要望書」に書かれていたことを、小泉元首相が実行しただけのことだ。アメリカ派の政治家である小泉元首相は、今、細川元首相と組んで反原発運動を行っているが、それはアメリカの石油メジャーが米国内のシェールガスの開発によって下落のおそれのある原油価格を下げないために日本の原発を再稼働させたくないからだ。原発停止による火力発電のための石油輸入の増大で、年間三兆六千億円もの金が余分に石油メジャーに流れている。
就任以来積極的に外遊を行ってきた安倍首相の訪問国数は、この九月で歴代トップの四十九カ国になる。世界と連携することで対中包囲網を築き、中国の孤立を図ることは、日本の安全保障上急務と言えることだ。今の日本に求められているのは日本派の政治家であり、再来年に行われる国政選挙では、日本派の保守の政党が躍進しなければならない。平沼赳夫氏、石原慎太郎氏を中心とする次世代の党や、田母神俊雄氏が立ち上げた日本真正保守党が、自民党よりも保守色を前面に出すことにより、安倍自民党を極右政党視させず、長期政権を実現させることが日本にとって一番大事である。安倍首相の手でオリンピックの開会式を仕切れる様にする為に、私は、安倍首相を全力で支える所存だ。
2014年8月21日(木)18時00分校了
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