Big Talk

プレスコード議連を 立ち上げて新聞・テレビの 実態を検証せよ

政治の道を志して地方公務員を退職、母であり、妻でありながら、保守を貫く政治家として注目を集める衆議院議員の杉田水脈氏。国会で二度に亘ってプレスコードに関して質問するなど、現在のメディアの在り方に疑問を持つ氏に、質問に至った経緯や次世代の党を選んだ理由、若い世代に期待することなどをお聞きしました。

「神の国」発言が一斉に批判されたのは プレスコードで禁止されていたからだ
プレスコードについて 二度に亘って国会で質問

元谷 本日はビッグトークにご登場いただき、ありがとうございます。杉田さんは兵庫県選出の衆議院議員ということで、勝兵塾の関西支部で講演もしていただきました。
杉田 その節はありがとうございました。今日もよろしくお願いいたします。
元谷 私は今年三月五日に発行したApple Town四月号のエッセイで、GHQが終戦直後の昭和二十年九月十九日に発令した俗にいうプレスコード(新聞編集綱領)について触れ、この言論統制の流れが現在まで続いていることを指摘しました。またその文章を三月十二日の産経新聞に広告として掲載しました。そして四月になって、杉田さんが国会の法務委員会と内閣委員会の二回にわたって、プレスコードについて質問をしたのです。杉田さんは、どうしてこの質問をしようと思ったのですか?
杉田 三月に地元の宝塚ホテルで国政報告会を行った時に、質疑応答の中で、プレスコードの影響が今まで続いていると思えることが多い、ぜひ国会で取り上げて欲しいというご意見が出たのです。私もプレスコードの存在は知っていましたが、詳しくはなかった。そこで、勉強して質問してみようと思いました。
元谷 なるほど。それでは、その質問者の方が、Apple Townか産経新聞の広告をご覧になったかもしれませんね。
杉田 その可能性は十分にあると思います。
元谷 私が今回プレスコードを取り上げたのは、今のメディアの在り方がおかしいと感じたからです。産経新聞が発行する夕刊フジに、私は連載コラムを持っていたのですが、保守系の新聞だと思っていたのに、再三文章の訂正を求められるのです。それがプレスコードの存在に気づくきっかけでした。調べてみると、問題発言としてメディアが一斉に批判を繰り広げることのバックには、常にプレスコードが禁止した三十項目があったのです。例えば森元首相は、在任時の「神の国」発言で全メディアから袋叩きの目に遭いました。それはプレスコードによって「神国日本の宣伝」が禁止されていたからです。
杉田 私もそう思います。国会で「プレスコードは今でも有効なのですか」と質問をした時には、政府参考人の外務省大臣官房参事官の水嶋光一さんが、「サンフランシスコ平和条約の発効に伴って失効している」と答弁しました。表面上はそうかもしれませんが、実質は異なります。アメリカは昭和三十年代までパルプの配給を抑えていて、これで新聞社を実質的にコントロールしていました。
元谷 その通りです。失効したはずなのにパルプでアメリカは圧力をかけ、その後はメディア自体が自主規制としてプレスコードを守り続けたからこそ、一斉批判という習慣が生まれたのです。これはメディアの根深い問題であり、日本が今のような自虐的な国になってしまった元凶でもあります。これを打ち破らなければなりません。私が産経新聞に掲載した広告は、戦後プレスコードという言葉が初めて新聞に掲載された「事件」だと自負していますが、杉田さんの質問も、国会の議事録にプレスコードの文字を載せたということで、非常に意義のある歴史的快挙だったと思います。
杉田 ありがとうございます。
元谷 第二、第三の杉田さんが現れることにも期待したいのですが、さらに一議員の活動を越えて、党としてぜひこの問題に取り組んで欲しいのです。日本維新の会の分党によって、杉田さんは石原慎太郎さんのグループ「次世代の党」に参加するとのこと。ぜひ自主憲法制定と共に、このプレスコードの撤廃を次世代の党の綱領で取り上げて欲しいのですが。
杉田 ぜひそうしたいです。
元谷 これは大変な仕事になります。なぜなら、戦後日本を牛耳ってきた「ステルス複合体」が激しく抵抗するからです。終戦直後からアメリカ占領軍は言論統制に力を入れ、四千人以上もの日本人検閲官を動員して、出版物の検閲から郵便物の開封チェックまでを行っていたのです。そして日本が独立を回復した後も、その時の国賊的行為を糾弾されないよう、元検閲官達はアメリカと連携しながら、日本社会で主要な地位を占めて、戦後敗戦利得者となっていきました。その後継者が東大法学部出身者を中心とするエリート集団・ステルス複合体となり、アメリカの意向を汲んで、日本をコントロールしています。来年で戦後七十年になります。もういい加減、日本は真っ当な国にならなければ。
 

談合や記者クラブを撤廃 メディア改革を急ぐべきだ

杉田 反日日本人の存在というのは、海外から見ると全く理解できないそうです。しかし日本では教育や報道の力によって、数十年掛けて反日日本人を育成してきました。日米安保条約締結時には、日本中で学生運動が巻き起こりました。結局運動を止めて卒業して企業に就職する人が大半の中、最後まで活動を続けた人が大学に残って学者になるか、マスメディアに就職するかしたのです。この影響は、今でもいろいろなところに残っています。
元谷 一見逆に見えますが、実はアメリカが左翼をコントロールして、日本を傀儡にするための力として使っています。その際のツールがプレスコードなのですが、メディアは存在を隠し続けてきました。だから杉田さんの国会質問やそれへの答弁も、新聞やテレビは一切報道していません。無視戦略です。
杉田 そうですね。またプレスコードのために、日本は南京大虐殺や従軍慰安婦問題で、毅然とした態度がとれません。
元谷 韓国や中国への非難ができないのは、プレスコードで「朝鮮人への批判」「中国への批判」が禁じられているからです。だから南京大虐殺にも従軍慰安婦にも反論できず、今では世界中の人がこれらを歴史的事実だと考えてしまっています。プレスコードがなければ、終戦後、まだまだ生き証人が多かった時代に、南京も慰安婦も徹底的に否定できたのです。しかしこれらの問題は、証人が減ったここ数十年の間に提起されてきたのです。
杉田 確かにそうですね。
元谷 ニューズウィークなど海外の報道も読むのですが、日本の言論統制に縛られていない記事が新鮮だったりします。日本では、新聞やテレビは自主規制による談合報道ばかりです。これは保守と言われる産経新聞でも同じです。スポーツ紙や週刊誌の方が、まだ報道の自由があります。しかし最も自由に意見が言えるのは、今はインターネットメディアでしょう。個人の発信ですから間違ったことも多い。確かに玉石混交という状況はありますが、正しい意見には多くの支持者がついてきます。ネット上の淘汰によって、議論が真実に収斂されていくのです。だからネットには真実が溢れています。私も応援している田母神俊雄さんのネット上での支持率は圧倒的です。しかしネットを見ない高齢者が選挙に行き、ネットを見る若い人は選挙に行かない。だから東京都知事選では、残念な結果になってしまいました。それでも六十一万票ですから、大善戦です。
杉田 マスメディアは全く取り上げてくれないのですが、ネットでは少しは私の名前も知られるようになりました。次世代の党もネット上では、やっと支持できる政党ができたなど、非常に好意的な反応が多いのですが、支持率を調査すると◯・一%にしかなりません。やはりネットを使う人と使わない人の間には、大きな溝がある。ネットだけでは駄目だと、五月に「なでしこ復活‐女性政治家ができること」(青林堂)という本を出しました。地元の高齢者の方にも読んでいただきたいと、大売り出し中です(笑)。
元谷 そういった両面作戦は必要です。もう少しマスメディアが真っ当であれば、杉田さんも多少楽だと思うのですが…。
杉田 おっしゃる通り、一部活動家が煽動する運動をクローズアップして取り上げるマスメディアと、ネットではトーンが正反対です。集団的自衛権行使容認の閣議決定について、関西から東京に来て驚いたのは、あの国会周辺のデモです。そして新聞には「日本は戦争ができる国になった」の文字が踊ります。一方ネットでは、国際法で認められている集団的自衛権の行使が可能になったのは、遅すぎるくらいだという論調です。フィリピンやベトナムなどに手を伸ばしている中国の脅威を、ネット世論はちゃんと認識しているのです。日本が正常化していることを感じる一方、どうして旧来からのマスメディアはこういうトーンで書かないのかと思います。
元谷 中国に関しては、日中記者交換協定の影響が大きいですね。これは、特派員を置かしてもらっている代わりに、中国を悪く言う報道ができないという不平等協定です。中国の報道機関は日本批判をどんどん行っているのですから。相手が一国である以上、個々の報道機関では太刀打ちできないので、日本政府がこの協定の破棄に向けて動くべきです。
杉田 その通りだと思います。
元谷 プレスコードについては、まず次世代の党が全面的に撤廃を主張していただきたいのですが、その次のステップとしては、党を越えて超党派の議連を立ち上げるべきです。杉田さんが中心となって、実際マスメディア内部でどのようにプレスコードが自主規制として守られているのか、徹底的に検証するのです。自民党や民主党など、私の親しい国会議員にも声を掛けますので、杉田さんが主導する形でぜひ実現して欲しい。日本が自虐国家となった元凶は教育とメディアの報道にあります。教育については、安倍政権が教育委員会改革や教科書改革を進めています。杉田さんには議連の先頭に立って、メディア改革を進めて欲しいですね。
杉田 わかりました。
元谷 もう一つメディア改革で大切なのは、記事談合の禁止でしょう。商売での談合を公正取引委員会が規制するように、なんらかの組織がマスメディアの談合を監視して、止めさせるべきです。また官庁などのメディアへの利益供与となっている記者クラブも撤廃すべきでしょう。
杉田 確かにそうです。
元谷 しかし集団的自衛権行使反対など、相変わらず左翼は、様々なことで日本再興の足を引っ張っています。一九九〇年のソ連崩壊が転機でした。彼らの目的は、社会主義国家実現から真っ当な政策の足を引っ張ることに変わったのです。それをメディアが後押ししてきました。
杉田 脱原発に特定秘密保護法、集団的自衛権反対と、左翼の人は次々にネタを見つけてきます。デモなど運動の主体は全部同じで、どんどん乗り換えていくのです。脱原発の前は環境とか地球温暖化だったのです。矛盾していますよね(笑)。男女共同参画でも左翼が絡んでいて、踏み込むと反撃がきます。国会で森大臣に質問したのですが、全国にある男女共同参画センターには法的根拠が全くないのです。にも拘わらず次々に建設され、指定管理者に怪しげな左翼団体が入っているケースが多いのです。いかにも左翼的な動きです。
元谷 確かにありそうな話です。
 

原発、特定秘密保護法、集団的自衛権… 左翼は常に反対するネタを見つけてくる
橋下グループの行く末は 民主党の二の舞いだ

元谷 橋下徹さんと離れて次世代の党となって、私はすっきりしたと思います。橋下さんの突破力は凄いですが、歴史認識についてはまだまだ勉強不足です。また結いの党と一緒になり、さらに民主党の一部を取り込んで、最大の野党勢力を作るというのが橋下さんの目指していることだと思いますが、これではかつての民主党がそうだったのと同じ、党綱領も作れない選挙当選互助会になってしまいます。
杉田 私も同感です。国民は何が嫌だったかというと、民主党の決められない政治でした。民主党の中には保守の人もいれば、共産党よりも左の人もいるので、一つの意見にまとめることができないのです。日本維新の会でも意見の相違はありましたが、議論をして決める時は決めることができました。それは保守という基盤があったからだと思います。しかし結いの党には憲法前文を国会で読み上げた議員もいますし、護憲が基本方針です。議論してもまとまりません。また私達は与党自民党に対しても、是々非々でやってきました。しかし大きな野党になると、与党に対してなんでも反対になってしまいます。だから私は、次世代の党に加わることを決断したのです。
元谷 非常に賢明な選択だったと思います。私は一昨年の衆院選で安倍政権が誕生していなければ、今頃日本は中国の脅威に対して、危機的状況になっていたと思います。この一年半の安倍政権は国民に希望を与えました。この先どれだけ安倍さんが政権を担当するかで、日本の将来の運命が決まります。しかし安倍自民党が最右翼の政党だと、他の政党からの集中攻撃を受けることになります。だから、安倍さんが中道に見えるよう、自民党よりもさらに保守の考えを明確に打ち出した政党が必要になると思うのです。安倍船長の自民党丸の先を進む砕氷船のようなイメージですね。石原慎太郎さんと平沼赳夫さんの次世代の党や、田母神俊雄さんが立ち上げた日本真正保守党に期待するのもそこなのです。
杉田 そのお気持ちは非常によくわかります。先日次世代の党の若手とみんなの党の保守の若手が石原慎太郎さんを囲む食事会がありました。そこで石原さんは東京裁判を見学した話をされていました。英語が全てわかったわけではないが、これ以上ないという程の理不尽さを感じたそうです。これが石原さんの原点なのでしょう。橋下さんは、先の大戦は侵略戦争ではなかったという石原さんの感覚は「わからない」と言います。もちろん世代が異なるので感覚が違うのはやむを得ないかもしれませんが、先の大戦についての東京裁判での評価という根本的な部分への違和感が持てないと、戦後レジームからの脱却はできないと私は考えています。
元谷 私は石原さんと同じ感覚です。石原さんは党首にならないとおっしゃってますが、では誰がリーダーになるのか。今の次世代の党では、石原さんと平沼さん以外の方の顔が見えないのです。これが一番今、私が懸念していることですね。
杉田 ご心配をお掛けしていますが、決まるべき方に決まると、私は信じています。
 

女性はいずれ母となり子供を育てる 若い女性が保守になるのは心強いこと
議論は喧嘩とは異なる 学校でディベート教育を

元谷 選挙への影響の大きさから自民党は公明党と連立してきましたが、公明党はその母体の分裂の危機から党自体の存亡が危うくなりつつあります。これもあって、与党の旨味を味わった公明党が、自ら三行半を突きつけてはこないと踏んだ安倍首相は、集団的自衛権問題で有利に話を進めることができたのです。しかし近い将来には、自民党は公明党と袂を分かって、次世代の党や日本真正保守党と協力していくべきではないでしょうか。
杉田 私もそうなるべきだと思います。
元谷 先日勝兵塾のメンバーらとベトナムを訪問してきました。虐殺や強姦などによる混血児・ライダイハンの存在など、ベトナム戦争時に韓国軍がベトナムで行った蛮行の数々に対して、ベトナムは韓国に抗議をしていません。その理由は、ベトナムが中国同様一党独裁の国だからです。経済大国となった韓国から恩恵を受けている体制側の人々にとっては、過去を追求するなど余計なことで関係を悪化させたくないのです。
杉田 被害を受けた人々にとっては、酷い仕打ちですね。
元谷 利益を得る層にとってそんなことは、痛くも痒くもないのでしょう。ただ日本も似たようなことを行っています。戦後敗戦利得者は、アメリカとの関係を重視する余り、原爆投下を批判してきませんでした。この風潮を、メディアはプレスコードを背景にして支えてきたのです。そもそもプレスコードができたのは、昭和二十年九月十八日に朝日新聞が「原爆は国際法違反の戦争犯罪である」という鳩山一郎の談話を掲載したからです。朝日新聞は二日間の発行停止処分を受け、翌十九日にプレスコードが発令されています。そして、そもそも南京大虐殺も従軍慰安婦も最初に着目したのは日本人です。海外の反日勢力がそれを利用している。日本人が真に結束すれば、そんな勢力を跳ね返すことができるはずです。そのためにも、杉田さんには反プレスコード議連を実現していただきたいですね。
杉田 はい、頑張ります。
元谷 いつも最後に「若い人に一言」をお聞きしているのですが。
杉田 日本では今、考える力をつける教育が欠けています。江戸時代の教育は、師と議論することで、考える力を育成していました。議論と喧嘩は違います。学校教育で議論を教えるようにして欲しいですし、若い人達も恐れずに議論できるよう、自分の核を作る訓練をして欲しい。
元谷 日本は単一言語で大多数が同じ民族という恵まれた国家ですから、惻隠の情や思いやりというものが機能してきました。しかしこれらは国際社会では通用しません。これまで日本では暗記が得意な偏差値勝者がエリートと呼ばれてきましたが、もっとディベートが強い人を養成して、外交官などとして国際社会に送り出すべきです。議論を尽くして、納得ずくで方向性を決めるのが民主主義です。まずメディアの主張の丸暗記ではなく、いろいろと勉強して自分の意見を持つことが大事なのではないでしょうか。
杉田 その通りだと思います。先日、先の大戦で特攻隊として散った若者の遺書を読んだのですが、その教養の高さに驚きました。字がきれいなのはもちろんのこと、歌を読んだりしていて。当時の人々は皆イエスマンではない。実は今以上にそれぞれの考えがあって、それを表現する豊かな教養もあったのではないかと感じました。
元谷 そういえば、先日特攻隊を描いた舞台「帰って来た蛍」を観て、大変感動しました。また観客に若い女性が多くて。最近、若い女性で保守に共感する方が増えているそうですね。
杉田 女性はいずれ母となり子供を育てますから、若い女性に保守が増えているのは、心強いことです。
元谷 杉田さんにはそれら女性の先頭に立って、日本を良い国にする力があると思います。頑張ってください。今日はありがとうございました。
 

杉田水脈氏
1967年生まれ。1990年鳥取大学農学部林学科修了、積水ハウス木造株式会社を経て、1992年西宮市役所に入所。2010年に退職して政治の道を志し、2012年日本維新の会から出馬して初当選。

対談日:2014年7月4日