二〇一四年六月十一日、恒例「日本を語るワインの会」が代表自邸にて開催されました。「ふるさと担当」の内閣総理大臣補佐官として安倍首相を支える衆議院議員の木村太郎氏、設立から約九年で急成長を果たしている株式会社ティーケーピー社長の河野貴輝氏、分党に伴って石原慎太郎氏と行動を共にする決意をした衆議院議員の西野弘一氏、人気テレビ番組「料理の鉄人」のフレンチの鉄人として知られるラ・ロシェル店主の坂井宏行氏と、同店統括総支配人の湯浅徹氏をお迎えし、現在の政局やビジネスでの必勝法などのテーマを大いに語り合いました。

 

燃料輸入元の分散化がエネルギー安定化に繋がる

日本維新の会がとうとう分裂した。当初からの考えを貫いているのは、石原慎太郎氏を中心とする議員達であり、政策が異なってもとにかく野党を結集させて大きな勢力にしようという橋下徹氏の側は、単なる選挙当選互助会になってしまうだろう。橋下派に結いの党、民主党の一部などが合流した党には意見の違いが多すぎて、党綱領などできない。結局は分党となったが、石原氏は橋下氏にかつての自分を見るからか、息子のように思っている感じだ。橋下氏は単に勉強不足であり、もっと歴史観、国家観、世界観を磨けば、さらに迫力が出るだろう。石原慎太郎氏の新党と、田母神俊雄氏が立ち上げた日本真正保守党が手を組むかも知れない。日本真正保守党が目指すのは、自主憲法の制定と原子力発電の推進だ。日本の経済力アップのために原発は必要不可欠だ。原発を新設するには議論が必要だが、既存のものは動かせばいい。安全に稼働していたものを法的な根拠もなく止めているが、その状態でも冷却は続けなければならない。事故の危険性は、止めていても存在するのだ。同じくリスクをとるなら、稼働すればいい。年間三兆六千億円の無駄な燃料費を石油メジャーに貢ぐ必要もないだろう。火力で発電した電気を使って、原子炉を冷却しているというのは大いなる矛盾だ。この冷却コストも電力会社の収益の圧迫に繋がっている。小泉氏と細川氏の二人の首相経験者がなぜ反原発を主張し始めたのかは謎だ。特に小泉氏は、何を言えば世間の注目と支持を集められるのかだけを考えているとしか思えない。
安倍首相が考えているのは、原子力発電への依存率を減らして、再生エネルギーなど新エネルギーを加え、エネルギーのベストミックスを実現することだ。エネルギー源や燃料の供給元の分散化は、安全保障上も必要だ。木村太郎氏は安倍首相の信書を携えてブルネイ国王に謁見してきた。この人口が約四十万人、三重県とほぼ同じ面積の国から産出する天然ガスの三割を日本が購入していることは、あまり知られていない。地道な努力によって、日本は供給地の分散を行い、安定的な資源の確保を行っているのだ。一時期は全発電量の二◯~三◯%に及んだ原子力発電の比率だが、今は全くゼロになった。そして日本は化石燃料の九◯%を、ホルムズ海峡を経由して輸入している。ここに機雷を敷設されてタンカーが航行できなくなった場合、日本への石油や天然ガスの供給が絶たれ、かつてのオイルショック以上の深刻な事態が到来するだろう。シェールガス・オイルの開発が進むことで、一躍エネルギー輸出国となったアメリカにとって、中東の重要度は大幅に下がっている。アメリカ中央軍に所属する海軍の第五艦隊はバーレーンを基地に、陸軍の第三軍はサウジアラビアを中心に展開しているが、これらが撤退する可能性が出てきている。撤退した場合、誰がホルムズ海峡の安全を確保するのか。この海峡への依存度が高い日本が行うしかないだろう。今、日本では集団的自衛権の行使を限定的に認めるかどうかなどの議論が行われているが、限定など自らの首を絞めることに他ならない。集団的自衛権の行使などは当然であり、ホルムズ海峡は日本がアメリカと連携しながら守っていくべきだ。攻撃当日、なぜか日曜日にも拘わらず戦艦アリゾナの乗組員は船に留まることを命令された。そして謎の弾薬庫の爆発によってアリゾナは沈没、約千二百名の将兵が船と運命を共にした。結局、真珠湾攻撃では約二千三百人の将兵が戦死し、アメリカ国民は「リメンバー パールハーバー」で結束した。米西戦争の時も「リメンバー ザ メイン」と、米戦艦メイン号の爆沈原因をスペインのせいにしてアメリカは戦争を起こした。しかしメイン号の爆沈原因も「謎」だ。アメリカが「リメンバー」を合言葉にする時の事件は、いずれの場合も捏造の匂いがする。こんな謀略は、歴史上には枚挙に暇がない。一九九九年に起きたモスクワなどの高層アパートの連続爆破テロでは約三百人もの犠牲者が出たが、当時首相だったプーチンはこれをチェチェンの独立武装勢力の仕業と断定、第二次チェチェン戦争を仕掛けた。その結果、ロシア国民の人気を集めたプーチンは、大統領の座まで上り詰めた。しかし今では、この連続爆破はプーチンの自作自演だったという説が有力だ。
 

現行憲法は違法で無効新たな自主憲法の制定を

集団的自衛権を文句なく行使できるようにするためにも、憲法は変えなければならない。しかし日本国憲法第九六条に従っての憲法改正は非常に難しい。国会議員総数の三分の二の賛成は得られても、国民投票で有効投票数の過半数の賛成を得ることは困難だ。改憲に反対する「九条の会」は日本国内に七千~八千もの拠点を持っていて、反改憲運動が本格的に行われた場合、かなりの影響力を持つことが容易に想像できるからだ。勝兵塾の講師・特待生である弁護士の南出喜久治氏が主張する通り、そもそも占領下に制定された恒久法である日本国憲法は無効であり、大日本帝国憲法の改正条項である第七三条に従って、新たな自主憲法を制定するのが筋だ。大日本帝国憲法の第七三条では、両議院のそれぞれ三分の二が出席する議会において、出席議員の三分の二の多数を得れば、改憲が可能だと定めている。こう考えれば、自主憲法制定の可能性がぐっと高まるだろう。
今の政治の体たらくは、正に野合と言うしかない「自社さ連立政権」が誕生してからだ。現状は一強の自民党に対して弱い野党集団という構造だ。ここで野合するのではなく、自民党と一部の野党で保守の価値観を共有できる部分は共有し、一方経済政策についてなど協議すべきことは、しっかりと協議していく。自民党も政策で一致する党になるべき。先般、憲法第九条にノーベル平和賞を与える運動に署名している自民党議員がいたが、そんなことでは駄目だ。田母神氏は数が少なくても、ちゃんと政策で一致する人と組んでいくべきだ。そして石原慎太郎氏の新党と共に自民党のさらに右を行く保守政党として、安倍丸をタイタニック号にしないための砕氷船としての役割を担うべきだろう。東京都知事選から政治に関わり、さらに国政に向かう田母神氏の、日本真正保守党が次の選挙で議席を獲得できるかは不明だが、影響力はきっと出てくる。石原新党と一緒になれば、さらに良い結果となるのではないだろうか。
 

弱肉強食の現状ではトップ戦略が極めて有効だ

安倍首相は極めて堅実に政権運営を行っている。真っ向勝負を避ける時もあるが、集団的自衛権の時のように、「やる時にはやる」だ。安倍首相の不退転の姿勢を見て公明党の一部が折れてきており、まもなく閣議決定ができるようになるだろう。この集団的自衛権行使については、野党内でも支持者が多い。公明党はアメリカの命を受けて、安倍政権のアンカーの役を担っているが、これ以上集団的自衛権行使に反対しては、「切られる」と考えたのだろう。解散とか内閣改造とか囁き、公明党を揺さぶるのは非常に効果的だ。六月の民主党海江田代表との党首討論でも、安倍首相は立場を明確にしている党として日本維新の会やみんなの党を挙げたが、公明党には触れなかった。これも揺さぶりのひとつだ。
今の日本では、富は強い所、大きい所に集まってくる。河野貴輝氏が社長を務める株式会社ティーケーピーは、貸し会議室業界で六五%のシェアを誇る。ここまで握っていると、次の事業展開への道がどんどん開けていく。アパホテルの会員数は約七百四十万人。ホテルの会員数の二位が数十万人だから、その差は圧倒的だ。トップ戦略を採用することによって、業績は自然に上昇してくる。坂井宏行氏は戦後の食糧難を見て、料理人になろうと決心したという。料理の美味しい国は文化レベルが高い。また国内でも、美味しいパン屋さんがあるエリアは、文化レベルが高い。アパホテルの一つであるアパホテル〈京都祇園〉EXCELLENTは、京都の八坂神社の目の前にある好ロケーションのホテル。葛切りで有名な鍵善良房本店の斜め前にある。古くから南座に出演する歌舞伎役者さんの定宿となっていた。この建物の高さは、今の基準では無理。屋上のビアガーデンからは、毎年八月十六日に行われる五山送り火の全ての文字を見ることができる。このアパホテル〈京都祇園〉EXCELLENTも買収したホテルの一つ。買収前には三割だった稼働率が、買収後には九割にまで上昇した。アパホテル&リゾート〈東京ベイ幕張〉も買収したホテルだが、購入後七年でグループ内のドル箱ホテルに成長し、この春に五百室の増室を行った。また買収しても、希望する従業員の雇用を継続するのが、アパホテルの特徴だ。雇用の場を作ることは、企業が行う最大の社会貢献だからだ。また治安の悪い国は失業者が多い。安倍首相も求人倍率を非常に気にしている。
 

株式配当や相続税の二重課税を撤廃すべき

企業オーナーが銀行との付き合いの中で最も気をつけることは、個人資産の現金をメインバンクに預金しないことだ。個人のキャッシュ量がわかると足元を見られるし、なんやかんやと理由をつけて、引き出しを拒否してくる。流動性が低くなっても良いキャッシュであれば、不動産等に変えて資産として持つ方が正解だろう。アパホテルは、ほとんどのホテルの土地建物を保有している。保有することのメリットは、減価償却で利益を圧縮して節税できることだ。償却に従って簿価が下がるから、簿価利回りも年々増加する。各ホテルによって利回りは異なるが、アパホテルの場合、利回りが五〇%を越えるホテルも存在する。償却が終われば、あとは利益を産むだけだ。全国チェーンのホテルでも建物を借りて経営しているところがある。三年ごとの契約更改毎に家賃を上げられて、年々経営が苦しくなっている。このような形をとれるのは、アパグループがオーナー企業だからだ。上場企業の場合はステークホルダーが多いので、柔軟性のある経営ができず、バブル崩壊の予兆がありながら、手続きが進んでいたためにロックフェラーセンターを購入した三菱地所のようになってしまう。オーナー企業は、経営者が機敏に判断して行動することができるのが取り柄だ。また不動産など資産を買ったら、「売らない」というのが基本方針だ。買ったり売ったりするには、税金が掛かるからだ。頭の半分で儲けを考えながら、あと半分で常に節税を考えておくべきだろう。かつては法人税率が六◯%を超えていたが、今は三◯%台になった。さらに法人税減税で、二◯%に近くなっていくだろう。また企業が法人税を支払った後の利益から出る配当について、投資家がさらに所得税を支払うのは二重課税だ。同様に二重課税である相続税と共に、税制を見直して改める必要がある。