二〇一三年十一月七日、恒例「日本を語るワインの会」が代表自邸にて開催されました。今年の六月に行われたアフリカ開発会議でズマ大統領が来日した南アフリカ共和国特命全権大使のモハウ・N・ペコ氏と一等書記官のヴィレム・ボーテス氏、令夫人のリン・ボーテス氏、博士号も持つ自民党の衆議院議員・牧島かれん氏、勝兵塾でも論客として鳴らしている弁護士の高下謹壱氏をお迎えし、日本とアフリカの関係などについて、語り合いました。

大きな意義がある安倍首相のアフリカ訪問

 
無事に決定した東京オリンピック。これで日本の更なる発展が期待できる。代表はこれまで駐日大使や世界の要人と会う度に、東京オリンピック開催と国連憲章の敵国条項の撤廃の支持をお願いしてきた。前者は達成されたのだが、後者の目途はまだ立っていない。「敵国」に該当する国は、日本、ドイツ、イタリア、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、フィンランドの七カ国だ。一九九五年に敵国条項を憲章から削除する決議案が国連総会で採択されているが、総会構成国の三分の二の批准が終了していないために、まだ実際には決議は効力を発生していない。日本の外務省もこの件への努力を怠っていることは、多くの大使や要人の証言からも明らかだ。国際連合は誤訳で、正しくは「連合国」であり、依然として先の大戦の勝者が安保理の常任理事国を独占している。この敵国条項を撤廃して、日本などが名実ともに戦勝国と対等にならなければ、国連は真に平等で国際的な平和維持組織とはならないだろう。
 安倍首相は最初の政権時の教訓から、巧みに迂回戦略を取りながら、保守的な政策を進めている。内閣法制局長官や海上保安庁長官の人事もそうだし、NHK経営委員会の委員に『永遠の0』の百田尚樹氏や長谷川三千子氏など真っ当な考えを持つ人々を充てた。国家安全保障戦略に関する有識者会議も進められ、武器輸出三原則の見直しを打ち出すなど、画期的な提言を行っている。国家安全保障会議(日本版NSC)創設関連法案も無事衆院を通過し、今国会で成立、来年一月から本格的に稼働する見込みだ。上手くアメリカとの連携を維持しながらも、日本は独立自衛の国家への道を進んでいかなければならない。南アフリカから見ると、アメリカの核の傘の下にいる日本は、とても居心地が悪いように見えるそうだ。日本はアメリカ以外の国々、特にアフリカ各国との絆を深めていく必要がある。安倍首相は来年一月に南アフリカやコートジボワールなどアフリカ諸国を訪問する予定だ。現職の日本の首相で初めてアフリカを訪問したのは森喜朗氏。二〇〇一年に南アフリカ、ケニア、ナイジェリアを訪問している。小泉純一郎氏も在任中にエチオピアとガーナを訪問したが、南アフリカに日本の首相が訪れるのは、森氏以来、久しぶりのことだ。代表とは旧知の仲である森氏だが、安倍氏とは異なり、立ち位置としては保守というより中道で、強いリーダーシップを発揮するというよりは、調整型の政治家だ。しかしアフリカとの関係を築いたという功績は、非常に大きい。

アパの懸賞論文制度がメディアへの登竜門に

 「真の近現代史観」懸賞論文も今年で第六回を迎え、最優秀藤誠志賞には民主党の国会対策委員長である松原仁衆議院議員の論文「我らが日本! 『3つの敗戦』から脱却して力強い国家を」が選ばれた。この懸賞論文で最優秀賞を獲得することは、その後の論壇への登竜門となってきている。第一回の最優秀賞は当時現職の航空幕僚長だった田母神俊雄氏の「日本は侵略国家であったのか」が獲得したが、そのタイトルから氏は航空幕僚長を更迭され、全マスコミからのバッシングを受けるという騒ぎになった。しかし多くの国民は冷静に論文を読んで田母神氏支持となり結果、日本の世論が変わる大きなきっかけとなった。その後の講演や著作物での田母神氏の人気は凄まじいものだった。第二回の最優秀賞は、今やテレビや講演にひっぱりだこの竹田恒泰氏の「天皇は本当に主権者から象徴に転落したのか?」に贈られた。竹田氏が受賞の連絡を受けたのは、明治神宮で受賞祈願の禊を終えたばかりのタイミングだったそうだ。第三回の最優秀賞は、佐波優子氏の「大東亜戦争を戦った全ての日本軍将兵の方々に感謝を」だった。佐波氏はこの十一月に「女子と愛国」(祥伝社)を出版、ますます活躍の幅を広げている。
 終戦直後にGHQが華族制度を廃止し、十四宮家の内、昭和天皇の兄弟を除く十一宮家の皇籍離脱を命じたのは、マッカーサーが仕組んだ皇統断絶の「時限爆弾」だった。皇室典範の「男系の男子」のみを皇位継承資格とする規定はそのままに、時代の要請として明治天皇や大正天皇の時のように側室制度を設けるわけにもいかないまま戦後七十年近くが経ち、正に天皇制自体が風前の灯となってきている。本来であれば、サンフランシスコ講和条約が発効して日本の主権が回復された一九五二年の段階で、日本政府は旧皇族の皇籍復帰を行う事を検討すべきだったのだ。竹田恒泰氏が、「旧皇族の多くが皇位の男系継承を継続するために皇籍復帰を要請されれば、『一族として応えるべきだ』とする意向を固めている」と主張している。今からでも旧宮家の復活を行う事を検討すべきである。

大きな不幸だった民主党政権下での震災発生

 
秋の園遊会での山本太郎参議院議員の行動が問題となっているが、山本氏には皇室を敬うという感覚がない。単に自分の偏った考えに権威付けを行い、自身の存在感を示すために、天皇を利用しようと考えた行動だったのだろう。天皇という存在の意味すら理解していない山本氏の国会議員としての資質には、大いに疑問がある。
 民主党政権で最初に首相となった鳩山由紀夫氏は単にいい人である。このワインの会に出席して、田母神俊雄氏と日本の核武装論に関して大いに共感しあっていたはずなのに、田母神氏の更迭事件の際にはメディアの取材に対して、会の最後の集合写真に写っているのに「会には行ったが、話が合わないのですぐに帰った」と嘘を言っていた。常に周囲の人間の話に迎合し、最後に会った人の考えになってしまうのが鳩山氏の最大の欠点だ。民主党政権二番目の首相になった菅直人氏の時に東日本大震災が起こってしまったのは、日本にとっては大きな不幸だった。菅氏は外国人からの政治献金問題が明るみに出て、辞任は時間の問題だった。そこに発生した震災をこれ幸いと政権延命に利用。ヘリコプターで現場視察を強行し、原子炉のベントのタイミングを遅らせ、水素爆発を招いたり、法的な根拠なく中部電力の浜岡原発を止めたりと、後々に大きな禍根を残すことを繰り返した。
 福島第一原発の事故時の避難体制には、大きな問題があった。災害関連死で沢山の方が犠牲になったが、直接放射線の影響で亡くなった方はいない。多くが病院や老人ホームからの急速避難に伴うストレスなどが原因だ。避難対象地域は、年間で受ける放射線が二十ミリシーベルトを超えると思われる場所としたのだから、一週間程度長くいたとしても影響はほとんどない。必要であれば状況を見て、ゆっくりとストレスなく避難させるべきだった。
 この事故による放射能の影響への不安を、アメリカやフランスが煽った。その目的は、日本が世界に原子力発電所の技術を輸出することを妨げ、最終的には核技術を取り上げることにある。核保有国は、今でも核の独占を第一義に考えているのだ。だからアメリカは空母「ロナルド・レーガン」を福島第一原発から百六十キロ離れたところに停泊させ、現地から戻ってきたヘリコプターの被曝量を公開せずに、ただ除染を行う映像だけを流して世界中を不安に陥れたのだ。

小泉氏のロジックは政治家として邪道だ

 海外の人々が不思議に思っているのは、小泉純一郎氏がどういう立場で、急に脱原発を訴えだしたのかということだ。小泉氏はすでに国会議員ではないが、息子の小泉進次郎氏を何が何でもいずれ首相にしたいという思いがあり、いろいろと話題作りを考えて行動しているのだろう。ただあの理由はおかしい。原発賛成では政治家をまとめられないが、反対ならまとめられるから「反対だ」というのは、筋が通らない。政治家であれば、まず自分がこうあるべしという意見を表明した上で、それに賛同する人々を集めるというのが王道だろう。まとまりやすい意見に迎合するなど、そんな世論調査政治家など邪道の極みだ。もともとポピュリズム政治家である小泉氏らしい発言だが、政界を引退した今、脱原発新党の目玉に担ぎ出されて晩節を汚さぬよう、大人しくしているのが無難だろう。
 盛んに脱原発を主張するメディアや政治家の意図は何か。日本の原発が止まって得をするのは誰かと考えると、それは「石油メジャー」に他ならない。彼らは日本が原発大国になって海外輸出まで手を出すよりも、火力発電に頼って年間四兆円にも及ぶ燃料費の負担増に耐え続けている方が儲かるのだ。「脱原発」には、常に石油メジャーの陰謀が背後にあることを意識しておく必要があるだろう。
 十一月七日にアパホテル〈銀座 宝町〉がオープンした。東京のアパホテルはどこも絶好調で、稼働率も非常に高く、十一月の三連休初日には平均客単価の過去最高記録も達成した。今、アパホテルの客室価格は航空機の料金設定と同じ考え方をしていて、空いている時は安く、満室が予測される日は高くなる。ただ青天井にならないよう、高くてもタリフレート(正規料金)の一・八倍をリミットにすることを、会社としてルールにしている。各アパホテルの支配人は稼働率を上げるだけではなく、高客単価もキープすることを目指してサービスに努め、日々良いホテル作りに切磋琢磨している。中期経営計画「サミット五」の目標である、都心での五十ホテルの建設も着々と進んでいるが、再来年七月オープン予定の六百二十室のアパホテル〈歌舞伎町タワー〉のように、次第にホテルの規模が大きくなってきている。
 正しい歴史認識を広め、誇れる国日本の再興を目指す「勝兵塾」の活動が益々盛り上がっている。この塾の大きな特徴は、右とか左とかのイデオロギーには関係ないことだ。人民日報日本支社長の韓暁清氏やアエラの元編集長である宇留間和基氏も、この勝兵塾で講演を行っている。今後さらに多くの塾生を集め、日本の行く末を決める大きな勢力へと発展させていくことが期待できる。